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June 19, 2006

【ミニ書評】武田修三郎著『デミングの組織論―「関係知」時代の幕開け』

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デミングの組織論―「関係知」時代の幕開けデミングの組織論―「関係知」時代の幕開け
武田 修三郎

東洋経済新報社 2002-11

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 自然科学を専門としながら、マネジメントに関する著書も著している研究者は少なくない。武田修三郎氏もその一人である。本書の発表時は東海大学の教授であったが、現在は早稲田大学で教鞭を振るっている。

 『関係知』時代が幕を開けたのならば、他方には幕を閉じた「知」が存在する。それは、デカルトに端を発する近代哲学である。要素還元主義(事象を分解していけば本質にたどり着くことができるとする考え方)とも言われる近代哲学の「知」を、本書では「分割知」と呼んでいる(以前の記事「「分析」によって事象を分解した後は、「直観」によって全体を統合する」で書いたように、私がMECEに小躍りする世の中の風潮に懐疑の目を向けるようになったのは本書の影響である)。行き詰まった近代知を超える現代知は、物事を分解したりせずに、システム、コンテクスト、一連のプロセスとみなす「関係知」である。

 エドワード・デミングは、品質管理の伝道者であり、戦後日本の劇的な発展を語るには欠かせない人物である。しかし、品質管理は終わったと見る向きも少なくない。また、デミングといえば、品質管理の統計的な手法ばかりが注目されるという点も否定できない。ところが著者は、デミングの思想において品質管理は入り口にすぎず、その奥には新しい、そして深遠な組織の哲学が展開されていることを見抜いた。デミングの組織論は「関係知」に立脚したものであり、デミングの組織論こそ、閉塞感にさいなまれる日本にとって必要なものであると断言している。

 著者の研究者としての回顧録も混じっており、楽しんで読める1冊である。
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