※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
April 19, 2006

業務時間に強制的に制約をかければ、効率化のアイデアが自然と出てくる

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 私が現在いるプロジェクトでは、毎朝決まった時間にメンバーがホテルのロビーに集合して、車でクライアント先に移動し、夜には再び決まった時間に全員揃ってホテルに戻ってくるというスタイルをとっています。コンサルティングのプロジェクトというと、「とにかく忙しい」「際限なく仕事をする」というイメージがありますが、今のプロジェクトは比較的スケジュール通りに進んでおり、生産的な仕事をしています。もちろん、ホテルの自室で残った仕事をすることはありますが、意外なことに(?)徹夜は今のところありません。

 移動時間が決まっている、クライアント先にいることのできる時間に限りがあるという制約条件が、逆説的に大きなメリットをもたらしていると考えられます。時間が限られているために、どの仕事をするのか、逆にどの仕事をしないのか(※注)という優先順位づけに対してとてもシビアになります。また、なすべき仕事についても段取りに気を遣うようになります。こういったタイムマネジメントが暗黙のうちに行われていることもあってか、大きな手戻りもなく、予定された成果を上げながらプロジェクトが順調に進んでいます。

 知識労働者は、仕事の波が予測しやすく労働時間に比例して成果も増大する肉体労働者とは大きく異なります。そのため、肉体労働者の賃金体系は知識労働者にはそぐわず、知識労働者に対しては裁量労働制が適用されるようになりました。企業としては一定の賃金しか労働者に払わない(深夜・休日割増賃金は別)代わりに、各個人は好きな時間にやりやすい方法で仕事をしてよいというのが裁量労働制です。企業にとっては人件費を抑制する効果が、労働者にとっては生産性を向上させることができる効果があると言われています。しかし、前者の効果はあるとしても、後者に関しては私はかなり懐疑的です。

 好きな時間に仕事をしていいと言われると、だいたい人間は予定通り仕事をしなくなります。時間の使い方を自由に決定できる学生は、たいていスケジュール通りにレポートや論文を仕上げることができません。学生と社会人は違うと反論する人もいるでしょうが、エリヤフ・ゴールドラット博士の『クリティカルチェーン』を読めば納得してもらえるのではないかと思います。

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
エリヤフ ゴールドラット 三本木 亮

ダイヤモンド社 2003-10-31

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 1人か数人で仕事をする場合は別としても、大部分の知識労働者はチームで仕事をします。チームである以上、各メンバーの仕事には依存関係があります。Aさんの仕事の成果物が、Bさんの仕事のインプットになる、という具合です。それぞれのメンバーの仕事は密接に連携し合っているにもかかわらず、裁量労働制だからといってメンバーが好きな時間に出勤・退社しようものならば、できるはずの仕事もできなくなってしまいます。

 実際には、いくら裁量労働制とはいえ、夕方の4時に堂々と出社する人は特別な事情がない限りいません。皆だいたい朝には出社します。ところが、「だいたい朝」というのがミソで、ある人は9時半、ある人は10時というふうに、微妙に出社時間がずれているものです。その数十分のタイムラグのために、朝できたはずの仕事が後回しになります。しかし、遅れた仕事はそれほど影響が大きくないという理由でしばしば無視されてしまいます。けれども、そういった後回しが積み重なればかなりの時間ロスになるのです。

 裁量労働制は、よほどうまく運用しない限り仕事の生産性はおそらく上がりません。知識労働者であっても、時間に区切りをつけて仕事をする必要があります。仕事の生産性を上げるためには、投入できる資源に限りがあることを十二分に認識することが欠かせないのです。


(※注) 「どの仕事をしないのか」という意思決定は決して軽視できません。「どの仕事をするのか」という意思決定のみでは、知らず知らずのうちに、やらなくてもよい仕事まで増えてしまうという事態が往々にして起こります。「しない」という決断により、無駄な作業を省くことが重要です。
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする