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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
February 12, 2006

「平均値」だけではなく「ばらつき(分散)」を見ないと母集団の傾向は解らない

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 経済レポートを集めた「keizai report.com」というポータルサイトがあるのですが、その中からレポートを1つ紹介します。

  統計数値の正しい処理と読み取り方

 国勢調査と住民台帳で日本の人口が異なるなど、統計にはなぜ誤差が生じるのかというテーマについて書かれたレポートなのですが、個人的にこのレポートから学んだ教訓は、「平均値だけを頼りにしてはいけない」ということです。

 1世帯あたりの貯蓄額の平均は、単身世帯も含めた全世帯で1,085万円、うち預貯金では431万円であるという日本銀行の「貯蓄に関する世論調査」について、次のような記述があります。
 何十億円も金融資産を保有する世帯が調査対象の中に存在すれば、その数値に影響されて単純平均値が引き上げられるのは理の当然だが、6)総額の中央値(最高と最低の中間値)を見ると400万円に過ぎず、さらに7)庶民のレベルを示す最頻値(並数、回答が最も多かった数値)では127万円、それに貯蓄ゼロの世帯がなんと23%もあることなどは有識者でもあまり触れることがない。これが貯蓄大国とされる日本の実態なのである。
 平均値だけを取り上げれば日本は世界でも有数の貯蓄大国であり、証券投資意欲を煽る動きが出てくるのも解らなくもないが、実態をつぶさに見ていくと、必ずしも日本国民が貯蓄熱心であるとは言い切れない、これが筆者の主張です。

 もっとも最近は「格差社会」なる言葉が政治のキーワードであり、貯蓄のない世帯が何割か存在することも、所得格差が拡大しつつあることも広く知られた事実になりつつあります。こうした実態は、統計の平均値だけを見ていても決して読み取ることができません。統計のばらつきにも注目しなければならないのです。

 統計を取るのは、実態を調査し、調査結果から母集団の何らかの特徴や問題を発見し、それに対して何らかの策を講じるためです。ところが、平均値だけにとらわれると、取るべき策を誤ることがあります。

 簡単な例を出せば、学校の期末テストでは必ずクラスの平均点が算出されます。生徒にとっては、平均点は自分の点数との比較対象という個人的な問題のために使われます。一方、教師にとっては、テストの結果は自身の授業の成果を測る指標になります。

 30人クラスのA、Bで同じテストをしたところ、どちらのクラスの平均点も50点であり、点数分布は次の通りであったとします。

 A:40点=5人、50点=20人、60点=5人
 B:20点=5人、30点=10人、70点=10人、80点=5人

 平均点が同じなので、クラスA・Bの教師の授業の成果は同じであった、と結論づけることはできません。Bクラスの教師の授業はいい加減で、たまたま塾に通っていた生徒が高得点を挙げただけかもしれません。あるいは、Bクラスの教師は、宿題を忘れた生徒を授業に参加させていなかったために、授業を満足に受けられなかった生徒の点数が低かったのかもしれません。こうした事実は平均点だけでなく、得点分布にも目を向けなければ考えつかないでしょう。

 マーケティングや人事の分野では、顧客満足度調査、従業員満足度調査など様々な調査を実施して統計データを蓄積しています。こうした統計も、平均だけに注目せず、データのばらつきに着目することが実態をより正確に把握するために重要といえます。
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