※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
トップ>マネジメントの基本>「分析」によって事象を分解した後は、「直観」によって全体を統合する
前の記事:「知識」はなぜか敬遠されがちだが、「知識」がなければ仕事はできない
次の記事:ドラッカー流マネジメントにみるソクラテス的な「問いかけ」の手法
前の記事:「知識」はなぜか敬遠されがちだが、「知識」がなければ仕事はできない
次の記事:ドラッカー流マネジメントにみるソクラテス的な「問いかけ」の手法
August 29, 2005
「分析」によって事象を分解した後は、「直観」によって全体を統合する
拍手してくれたら嬉しいな⇒
分析とは最も一般的な思考方法であると考えられています。MBAホルダーや経営コンサルタントが自らの強みである(と自慢している)のもこの分析の能力です。
数年前に「ロジカルシンキング(論理的思考)」をテーマにしたビジネス書が飛ぶように売れた時期がありました。MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive: それぞれが重複することなく、全体集合として漏れがない)やロジックツリーなる手法がもてはやされた時期です。論理的思考が基礎を置いているのは、他ならぬ分析という思考方法です。
分析は何も目新しい手法ではありません。単純だが最も基本的な意味での分析は、すでに古代ギリシアの自然科学にもありました。近世になって認識論(知識の起源・構造・方法・妥当性を研究する哲学の一部門)が関心の的になるにつれ、複雑な知識を単純なものから説明する手段として、分析は重視されるようになりました。この考え方はデカルトやライプニッツに色濃く現れています。分析は近代において、自然科学の大きな発展を強力に下支えしてきました。
分析を自然科学だけではなく、私たちが日常的に使用している言語の世界にも持ち込んだのが、ラッセルやウィトゲンシュタインに代表されるような論理学です。
分析とは、与えられた対象を全体的に知ろうとせずに、その単純な部分である要素に分割して認識していくことです。本来は唯一不可分である事物の外部に視点を取り、当該事物を既知の要素に分解し、還元していくことを指します。そして、分解した諸要素を、言語的矛盾がないように説明し、事物に関わる推論を可能にするのが論理の役割です。
しかしながら、分析は「本来不可分である」事物を分解することから始めるという点において、限界を抱えています。部分に還元すれば全体を知ることができるというのが、分析の大前提でした。だが、メロディーを音符に分解してもメロディーを理解することができないように、そして人間を細胞に還元しても自我の問題は全く見えてこないように、部分を貫く理論と、部分から構成される全体を貫く理論は包摂の関係にはないのです。
分析は、確かに静的な事象を説明するのには抜群の強みを発揮します。静的な事象は、それ自体が時間的、空間的に切り出された「部分的な」事象であり、それをさらに諸要素に細分化するのはたやすいように思われます。
だが、分析は、変化のような連続的、不可逆的な事象の前では萎縮してしまいます。ダイナミズムとは最も対極に位置するのが分析なのです。分析のこうした限界を思い知らされたのが、まさに20世紀という時代でした。ここにきて、「問題は解けなくなってしまった」のです。
哲学に関して言えば、未来に向けて連続的に流れ行く時間の中で、変化という事象をいかに捉えるかという問題が生じてきます。解けなくなった問題に対して、問題を問題として生きる方法が模索されるようになります。フッサールやハイデガーらの現象学や、これに反対したドゥルーズの主張は、ポストモダンの代表的な考え方です。
事物の外部に視点を置くのではなく、まさにその内部に視点を置いて、内から全体を知るのは直観の働きです。真の直観とは、事物それ自体の中に身を置き、既成の概念を捨て去り、事物の全体的、絶対的な把握に到達しようとするものです。
いかようにもなりうる可能性はあるが、今はまだ未決定であるような現在にあって、時間と空間の濁流に飲まれそうになりながらも、それでもより良くなるはずの明日を信じ、未来を生成しようとする。そんなエネルギーを秘めているのが直観なのです。
分析と直観が相まって真に優れた思考が生み出されます。分析だけでは不十分なのです。近代的ではあるが、現代的ではありません。この事実を私たちは謙虚に受け止めなければならないと思うのです。分析がすべてであるかのような驕りは、断じて慎まなければなりません。
数年前に「ロジカルシンキング(論理的思考)」をテーマにしたビジネス書が飛ぶように売れた時期がありました。MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive: それぞれが重複することなく、全体集合として漏れがない)やロジックツリーなる手法がもてはやされた時期です。論理的思考が基礎を置いているのは、他ならぬ分析という思考方法です。
分析は何も目新しい手法ではありません。単純だが最も基本的な意味での分析は、すでに古代ギリシアの自然科学にもありました。近世になって認識論(知識の起源・構造・方法・妥当性を研究する哲学の一部門)が関心の的になるにつれ、複雑な知識を単純なものから説明する手段として、分析は重視されるようになりました。この考え方はデカルトやライプニッツに色濃く現れています。分析は近代において、自然科学の大きな発展を強力に下支えしてきました。
分析を自然科学だけではなく、私たちが日常的に使用している言語の世界にも持ち込んだのが、ラッセルやウィトゲンシュタインに代表されるような論理学です。
分析とは、与えられた対象を全体的に知ろうとせずに、その単純な部分である要素に分割して認識していくことです。本来は唯一不可分である事物の外部に視点を取り、当該事物を既知の要素に分解し、還元していくことを指します。そして、分解した諸要素を、言語的矛盾がないように説明し、事物に関わる推論を可能にするのが論理の役割です。
しかしながら、分析は「本来不可分である」事物を分解することから始めるという点において、限界を抱えています。部分に還元すれば全体を知ることができるというのが、分析の大前提でした。だが、メロディーを音符に分解してもメロディーを理解することができないように、そして人間を細胞に還元しても自我の問題は全く見えてこないように、部分を貫く理論と、部分から構成される全体を貫く理論は包摂の関係にはないのです。
分析は、確かに静的な事象を説明するのには抜群の強みを発揮します。静的な事象は、それ自体が時間的、空間的に切り出された「部分的な」事象であり、それをさらに諸要素に細分化するのはたやすいように思われます。
だが、分析は、変化のような連続的、不可逆的な事象の前では萎縮してしまいます。ダイナミズムとは最も対極に位置するのが分析なのです。分析のこうした限界を思い知らされたのが、まさに20世紀という時代でした。ここにきて、「問題は解けなくなってしまった」のです。
哲学に関して言えば、未来に向けて連続的に流れ行く時間の中で、変化という事象をいかに捉えるかという問題が生じてきます。解けなくなった問題に対して、問題を問題として生きる方法が模索されるようになります。フッサールやハイデガーらの現象学や、これに反対したドゥルーズの主張は、ポストモダンの代表的な考え方です。
事物の外部に視点を置くのではなく、まさにその内部に視点を置いて、内から全体を知るのは直観の働きです。真の直観とは、事物それ自体の中に身を置き、既成の概念を捨て去り、事物の全体的、絶対的な把握に到達しようとするものです。
いかようにもなりうる可能性はあるが、今はまだ未決定であるような現在にあって、時間と空間の濁流に飲まれそうになりながらも、それでもより良くなるはずの明日を信じ、未来を生成しようとする。そんなエネルギーを秘めているのが直観なのです。
分析と直観が相まって真に優れた思考が生み出されます。分析だけでは不十分なのです。近代的ではあるが、現代的ではありません。この事実を私たちは謙虚に受け止めなければならないと思うのです。分析がすべてであるかのような驕りは、断じて慎まなければなりません。
![]() | デカルト―「われ思う」のは誰か (シリーズ・哲学のエッセンス) 斎藤 慶典 日本放送出版協会 2003-05 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
![]() | ライプニッツ―なぜ私は世界にひとりしかいないのか (シリーズ・哲学のエッセンス) 山内 志朗 日本放送出版協会 2003-01 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
![]() | フッサール ~心は世界にどうつながっているのか (シリーズ・哲学のエッセンス) 門脇 俊介 NHK出版 2004-01-30 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
![]() | ハイデガー―存在の謎について考える (シリーズ・哲学のエッセンス) 北川 東子 日本放送出版協会 2002-10 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
![]() | ドゥルーズ―解けない問いを生きる (シリーズ・哲学のエッセンス) 檜垣 立哉 日本放送出版協会 2002-10 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:







