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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
June 04, 2005

提携先企業の社員からも信頼を得るマネジメントの重要性

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 P.F.ドラッカーが1990年代に発表した論文の記述と、現在の我々を取り巻く環境とを比較してみると、合致する部分が非常に多いことに驚かされる。

「企業構造や事業経営における最大の変化は、所有ではなくパートナーシップに基づく関係、すなわち、ジョイント・ベンチャー、共同販売や共同研究強化のための少数株式取得、その他半ば非公式のあらゆる種類の提携関係など、ほとんどがニュースにもならない提携関係の増加である。」

 昨今の日本においても、ライブドアによるフジテレビ買収劇など、合併や買収が大きなニュースとして報じられるが、実際には資本提携や技術提携、共同出資による合弁会社の設立といった企業間の提携の増加のほうが著しい。現に、私の手元に毎日届くニュースメールを見ていると、2日に1件は新たな提携の発表が掲載されている。もちろんニュースにならない提携も合わせれば、その数はM&Aの件数をはるかに上回ると見られる。

 そしてこのような提携関係の増加は、雇用の構造を変化させようとしている。

「とくに知識組織では、働く人たちの現場の状況は、それらの組織に属していない人たち、すなわち、受託会社や提携先企業、半ば独立した請負業者の人たちによって規定されるようになっている。…組織やそのトップ・マネジメントは、組織のために働く人たちが組織の従業員であるか否かにかかわらず、彼らの『信頼』を得なければならなくなる。」

 私はシステムエンジニアリング会社で基幹システムの導入プロジェクトに携わったことがあるので、この記述はなんとなく理解できる。基幹システムのような規模の大きいシステムを構築するプロジェクトを、受注元の会社が単独で行うことはまずありえない。受注元の関連会社や、さらに外注企業と共同でプロジェクトを遂行するのが通常である。そして基幹システムに限らず、システム業界全体を見ても、複数の会社が提携を結びながらプロジェクトが行われるのがごく当然のことになっている。

 しかしながら、上の例で言えば受注元の会社が、自社の社員のみならず、提携先の企業の社員の信頼を得るべくマネジメントを行っているかどうかといえば、それははなはだ怪しいと言わざるを得ない。

 ある組織に属してはいない労働者がその組織のために仕事をするという状況は、何も今に始まったことではない。例えば建設業界においては、受注元の建設会社が、地元で零細企業、個人事業として経営されている工務店などに下請という形で仕事を依頼するということが長年行われてきた。しかし、それはあくまでも受注元の会社のコスト削減のためであり、景気が後退して受注元の業績が悪くなれば、真っ先に下請会社との関係が解消される、というような不安定で緊張した関係である。

 だが、今日増加する提携関係は、従来の下請関係に見られるような関係とは異なるものでなければならないはずだ。単なるコスト削減のためでなく、明日の成果を生み出すために、シナジーを期待できる提携関係でなければならない。

 雇用の構造が変化することは、マネジメントの方法も変化することを意味している。

「外部委託の受託者であれ、ジョイント・ベンチャーの相手方であれ、あるいは少数株主となっている企業であれ、パートナーシップにおいては、命令することはできない。信頼を得ることしかできない。ということは、具体的には、もはや『自分は何をしたいか』からスタートしてはならないということである。
 正しい問いは、『彼らは何をしたいか。彼らの目的は何か。彼らの価値は何か。彼らのスタイルは何か。』でなければならない。」

 私が携わっていたプロジェクトではこの正しい問いが発せられることはなかった。だから関係会社との関係は必ずしもうまくいっていないし、関係会社の構成員はひどくモチベーションを損なわれている。

《参考文献》
『未来への決断−大転換期のサバイバル・マニュアル』P.F.ドラッカー

未来への決断―大転換期のサバイバル・マニュアル未来への決断―大転換期のサバイバル・マニュアル
P.F. ドラッカー Peter F. Drucker

ダイヤモンド社 1995-09

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