※2012年12月1日より新ブログに移行しました。自分で言うのもおこがましいですが、20代の頃に書いた本ブログよりも、30代に入ってから書いている現行ブログの方がはるかに中身が濃く、内容が多岐にわたり、面白いと思いますので、是非ご覧いただけるとありがたいです!
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July 03, 2012

水曜どうでしょうを支えるミスターの自己犠牲の精神

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 水曜どうでしょう好きにしか伝わらないような自己中心的な記事を書いてみようかと。どうでしょうを見ていて最近思ったのは、この番組を支えているのは、やっぱりミスターの自己犠牲の精神だということである。ミスターは初期を除いてほとんどしゃべらないので、ミスターの性格を推し量るのは容易ではないものの(怒ると怖いらしいが)、TOKYO-MXでのClassicやDVDを繰り返し見ているうちに、ミスターの自己犠牲の姿勢が見えてきた。ただし、ここで言う自己犠牲とは、

 ・甘いものが嫌いなのに無理やり食べさせられる(その際たるシーンが、2011年の「原付日本列島制覇」で、嬉野Dが「ミスターが爆発する瞬間をファインダー越しに始めて見た」と感嘆した赤福勝負のシーン)。
 ・初期の「サイコロの旅」で、ゴールから遠ざかる目ばかりを出して、“ダメ人間”呼ばわりされる。
 ・「アメリカ合衆国横断」では、肝心なところでインキーをしてしまい、土下座で平謝りをさせられる。
 ・「ユーコン川160km」では、カヌーの前方に座った時に限って、後ろに座った大泉さんや藤村Dの舵取りの失敗により、川岸や流木の流れ込みに突っ込んでしまう。
 ・どうでしょう全般を通じて、自分で企画を考えておきながら自分でつらい目に遭う。

といった類のものではない。これらは、ミスター自身が面白く映るような自己犠牲であって、笑いにはつきものの精神である。そうではなく、ミスター自身が”面白く映らない”ような自己犠牲こそが、この番組を支えているのである(※)。

 ミスターの自己犠牲の歴史は、「ヨーロッパ21か国完全走破」に始まる。スケジュールの遅れを取り戻すべく、1日で5か国を回るという恐怖の“合宿計画”を立てて必死に車を運転するミスター。そのミスターが運転交代後に眠りについたのをいいことに、藤村Dが大泉さんをそそのかし、ドイツのロマンティック街道や古城街道へと寄り道させてしまう。ミスターは当然機嫌を悪くしたものの、内心では、「この番組は自分が頑張るより、大泉・藤村Dの2人に自由にやらせた方が面白いんだ」と悟ったのである(DVD副音声より)。これ以降、ミスターの饒舌さは影をひそめ、無口なミスターへと転向していく。

 ミスターの“面白くない”自己犠牲の例として、私は次のような場面を挙げたいと思う。

 ・カブ企画では、必ず先頭を走らされる。先頭を走ると、前方確認をしなければならないし、何よりもカメラに映りにくくなる。
 ・「マレーシア ジャングル探検」でも、D陣が下見をしておらず、どんな危険生物が出るかも解らない道なのに、先頭を歩かされる。ここでもやはり、カメラに映りにくくなる。
 ・「アメリカ合衆国横断」では、カメラが回っていないところで、実はミスターが長時間運転している。ミスターも「どうぞ寝ていてください」と言うものだから、他の3人は収録を忘れて寝ている(DVD副音声より)。
 ・「シェフ大泉 夏野菜スペシャル」では、半角斎(大泉さん)とく斎(藤村D)が粘土細工を作って遊んでいる横で、料理に必要な皿を人数分黙々と作り続ける。
 ・「ヨーロッパ・リベンジ」では、初日にいきなりドイツで野宿をするハメになり、タレント陣は車中で、D陣はテントで寝ることになった。しかし、D陣がキーを持って行ってしまったために、開いていた車の窓を閉めることもできず、寒い一夜を過ごす。翌朝、大泉さんはD陣にそのことをボヤいていたが、本当は同じく寒い思いをしたミスターだって愚痴の一つでも言いたかったはずだ。
 ・「中米コスタリカ」では、完全に”写真家大泉”のアシスタント役に回ってしまい、他の企画以上にミスターが映っている時間の割合が少ない。
 ・「ヨーロッパ20か国完全制覇 完結編」では、大泉さんと藤村Dが子供じみた口喧嘩複雑をしている横で、スペインの複雑な道路地図に悪戦苦闘して神経をすり減らし、結局はその日の夜のホテルで吐いてしまう。
 ・「喜界島一周」や新作の「原付日本列島制覇」などで、宿(喜界島はテント)の狭さをめぐって大泉さんとD陣の3人が喧嘩をしている時、ミスターはどちらにも味方せず、必ず黙って成り行きを見守っている。

 ミスターの“面白い”自己犠牲の最たるものが前述した赤福対決であるならば、“面白くない”自己犠牲の最たるものは、レギュラー放送の最後の企画「ベトナム縦断1,800km」だろう。ホーチミンにゴールした後(すなわちそれは、レギュラー番組の終了を意味する)、藤村Dがこらえきれずに号泣し、つられて大泉さんも涙を流した時、ミスターだけは気丈な態度で「ダメだよ、ダメだよ、君たち」と周囲をけん制し、笑顔で3人に握手を求めるのである。

 後の日記でミスターは、「自分も泣きたかったが、自分も泣いてしまったら寒い。自分はミスターである。だから、どうでしょうの象徴として振る舞わなければならない」と振り返っている。これによってミスターは、視聴者から「冷たい人間だ」という評価を受けたかもしれない(事実、どうでしょうのテーマソング「1/6の夢旅人2002」のCDに収録されたエクストラ映像での対談を見ると、ミスターがそういう風に言われたことが示唆されている)。しかし、ミスターとしてはそれでいいのである。

 ミスターの自己犠牲は、他の3人に手柄を譲るという点で非常に重要である。ミスターが黙ることで、番組作りは大泉さんと藤村Dの罵り合いにフォーカスが絞られる。また、ミスターが「自分は画面に映らなくてもいい」というスタンスをとることで、嬉野Dは遠慮なく大泉さんのリアクションをどアップで撮影することができる。仮に、ミスターも貪欲に笑いを追求したら、おそらく全員で笑いのつぶし合いになり、やかましいだけのガサツな番組になっていただろう。ミスターの自己犠牲の精神は、どうでしょうの画を落ち着かせ、同時に笑いを増幅させる役割を果たしていると思うのである。

 ここまでの話からいきなり飛躍するけれども、ミスターの自己犠牲の精神は、人の上に立つ者に必要不可欠な精神である。いわば、ミスターは上司の鏡である。ミスターが自分を犠牲にしたことで、大泉さんは“北海道出身の面白いタレント”という地位を確立し、藤村・嬉野両Dは、“面白いローカル番組を作れるディレクター”という評価を得た。レギュラー番組終了後、3人が全国で活躍していることは周知の通りである。

 最近はプレイングマネジャーが増えて、部下の成果を横取りしてしまう管理職がいるという話も聞く。これは自己犠牲の精神とは真逆である。自己犠牲の精神は、逆説的だが後々になって報われる。大泉さんの活躍によって、大泉さんが所属する劇団「チーム・ナックス」の知名度も上がり、ミスターが社長を務める事務所「クリエイティブ・オフィス・キュー」も所属タレントの数が増えている。人の上に立つ者は、自分の下にいる者が成功を収めて出世しなければ、自分も出世できないことを知るべきであろう(ミスターの場合は、自身が既に社長なので、事務所自体の成長が出世に該当する)。

 そして、さらに話が飛躍するが、私なんかは、ミスターの自己犠牲の精神を見るにつけ、老子の次の言葉を思い出さずにはいられないのである。
 大上は下之れ有るを知るのみ。其の次は親しみて之を譽(ほ)む。其の次は之を畏れ、其の次は之を侮る。信足らざれば、信ぜられざる有り。悠として其れ言を貴(わす)れ、功成り事遂げて、百姓、皆な我れを自然と謂う。(『老子』第17章より)

【現代語訳】
 最も優れたリーダーは、部下がその存在を知るだけの人のことである。次に優れたリーダーは、周囲から親しまれ賞賛される人である。その次は、人々から畏れられるリーダーである。最低なリーダーは、人々から軽蔑される。人を信頼しなければ、人から信頼されない。優れたリーダーは、目的が達成された時も悠然として何も語らず、部下が口を揃えて『自分たちがやったのだ』と言う。

(※)ちなみに、サイコロなどの運任せ企画に関して言えば、ミスターは“ダメ人間”呼ばわりされている割には、実は随所でいい目を出している。
 ・「韓国食い道楽サイコロの旅」では、麗水で一泊の目を出している。
 ・「香港大観光旅行」では、初日の夕食の食卓で「全員食える」のカードを引き、「韓国食い道楽サイコロの旅」の悪夢を払しょくした。
 ・「サイコロ6」では、4人の体力が限界を迎えた2日目の夜、大阪での「生きるか死ぬかの大勝負」で大阪一泊の目を出し、大泉さんから崇められた。
 ・「日本全国絵はがきの旅2」では、宮崎県・綾町で行われた「究極の選択」で、綾の絵はがきを見事に引き当て、綾での宿泊を確定させた。

 にもかかわらず、そんなことは他の3人からすっかり忘れられて“ダメ人間”扱いされ、「サイコロ5」では藤村Dから「(指宿温泉の)砂に埋まってろよ」とまで罵倒されているのも、ある種の自己犠牲であるわけだが、私が言いたい自己犠牲とはそういうことでもないことをここで断っておく。

腹を割って話した腹を割って話した
藤村 忠寿 嬉野 雅道

イースト・プレス 2011-03-10

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けもの道けもの道
藤村 忠寿

メディアファクトリー 2011-04-22

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人生に悩む人よ 藤やん・うれしーの 悩むだけ損!人生に悩む人よ 藤やん・うれしーの 悩むだけ損!
藤村 忠寿 嬉野 雅道

アスキー・メディアワークス 2012-03-24

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June 24, 2012

部下へのフィードバック法「SBI(Situation-Behavior-Impact)法」ついての補足

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 数年前の記事「効果的なフィードバックを行うための3つの要素」への補足。この記事では、部下に対する効果的なフィードバックの方法として、アメリカのCCL(Center for Creative leadership)が開発した「SBI(Situation-Behavior-Impact)法」という技法を紹介した。昔の記事にはCCLへのリンクがなかったので、以下に掲載しておく。

 Feedback That Works: How to Build and Deliver Your Message (Executive Summary)
 The SBI Observation Form 

Feedback That Works: How to Build and Deliver Your MessageFeedback That Works: How to Build and Deliver Your Message
Sloan R. Weitzel

Center for Creative Leadership 2008-08-30

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 CCLから書籍も出ているけれども、上記リンクのエグゼクティブサマリでおおよその内容は理解いただけると思う。SBI法では、フィードバックの対象者に対し、"Situation(状況)"⇒"Behavior(行動)"⇒"Impact(影響)"の順番でフィードバックを行う。

 (1)Situation: To capture and clarify the specific situation in which the behavior occurred. (フィードバックの対象となる行動が起きた時の状況を明確にする)
 (2)Behavior: To Describe behavior. (その行動の具体的な中身を説明する)
 (3)Impact: To relay the impact that the other person’s behavior had on you. (その行動が自分に与えた影響をリアルに伝える)

 3番目の「相手の行動が”自分に”与えた影響を相手に伝える」というのがSBI法のミソであり、これによって上司は部下に対し、「部下と自分の関係を重視している」というメッセージを送ることになる。また、部下の立場からすると、「自分の行動は上司から見られている」というプレッシャーを受けると同時に、「上司は自分のことをよく見てくれている」という一種の安心感を感じ取ることができる。

 ところが最近、このSBI法について考えを少し改めなければならないかも?と思うような出来事があった。ある診療所の待合室で、診察の順番を待っていた時のこと。待合室には1組の親子が座っていた。子どもは退屈しのぎのためか、診察室にあった置物でがちゃがちゃと音を立てながら遊び始めた。それを見た母親は、「やめてちょうだい!お母さんの頭が痛くなるでしょう?」と子どもを叱ったのである。

 SBI法に従えば、(1)(2)のステップは省略されているものの(この場合、(1)(2)の内容は自明なので触れるまでもないのだが)、(3)のステップには忠実に従っている。だが、子どもの行為で影響を受けたのは母親だったのだろうか?確かに、その母親が深刻な頭痛持ちであったならば、子どもの音に不快感を示しても仕方なかろう。しかし、子どもの行為で一番影響を受けた、言い換えれば、一番迷惑を蒙ったのは、同じ待合室で待っていた(私を含む)他の人たちだったはずだ。それなのに、母親が自分の利害を最優先にして子どもを叱ったことに対して、(他の患者はどう感じたか知らないが、)少なくとも私は違和感を覚えたわけである。

 冒頭に掲載した昔の記事の中で紹介している例も、読み返してみると「本当にこれでいいのかなぁ?」と自問自答したくなるようなものがある。
<良い例>
 「君の作ったシステム構成図には何点か不備があった。お客さんの期待に応えられなくて私は残念だ」
<悪い例>
 「君の作ったシステム構成図には何点か不備があった。お客さんはそれを見て不満げだった」
 仮に<良い例>のようなフィードバックを受けたとすると、今の私ならばきっと、「お前の手柄のために仕事をしているんじゃない。お客さんのために仕事をしているんだ」と心の中で反発するに違いない。むしろ、<悪い例>のようなフィードバックの方が効くと思うのである。

 ただし、お客さんの心情をもう少し具体的に表現する必要はあるだろう。例えば、「君の作ったシステム構成図には何点か不備があった。お客さんは今回のシステムリニューアルに並々ならぬ情熱を注いでおり、君が開く要件定義の会議にお客さんは何度もつき合って、システムへの希望をモレなく伝えてくれた。今日の会議にしても、普段の会議にはなかなか顔を出さない部長クラスの方々が、忙しい業務の合間を縫って出席してくれた。それなのに、君のシステム構成図を見たら、『あの会議は無駄だった』、『あの人にシステム設計を任せて大丈夫なのか?』とがっかりしたかもしれない」といった具合である。

 要するに何を言いたいのかというと、(3)のImpactのステップでは、「部下の行動が自分に与えた影響」を伝えるのではなく、「部下の行動によって、最も被害を蒙った人々の気持ちを代弁すること」が重要ということだ(そんなの当たり前じゃないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれないが・・・)。これがアメリカと日本の文化の違いに起因するのかどうかはよく解らないけれども、上司がSBI法に素直に従ってフィードバックを行うと、日本では自己本位的と受け取られる可能性が高いのではないか?と思うのである。
December 15, 2011

「残念な上司」を生まないために各社がやっていること(2/2)―『日経情報ストラテジー(2012年1月号)』

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日経 情報ストラテジー 2012年 01月号 [雑誌]日経 情報ストラテジー 2012年 01月号 [雑誌]
日経情報ストラテジー

日経BP社 2011-11-29

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【987本目】1,000エントリーまであと13。てか、今年残りあと16日で13本書かないとダメってか??

 (前回の続き)

(3)巻き込み
マツダ:「i-stop」を搭載するために300人の技術者を1人ずつ巻き込み
 「i-stop」はアイドリングストップを軸とした省エネルギー技術であり、デミオ、プレマシー、ビアンテなどマツダを代表する車種に搭載されている。ただし、i-stop搭載車の量産には全社の賛同が不可欠だった。i-stopが作動すると、エンジンが止まるのはもちろん、エンジンからの電力で動く空調や制御機器などの機能まで全てストップしてしまうのだ。止めることなく省エネを実現している他の自動車のハイブリッドカーとは、思想が根本的に異なる。完全に止めてしまう分だけ、他社技術より省エネ効果は大きいものの、全ての部品を連動させなければ、十分な効果を発揮できない。

 i-stop開発者は、総勢300人の技術者を1人ずつ地道に巻き込む作戦を練った。「i-stop解説書」と銘打った自作の小冊子を配りに社内を歩き回り、興味を示した技術者には、すかさず試作車でのドライブを持ちかけた。技術的な議論は一切せず、とにかくi-stopのことを知ってもらうことだけに数ヶ月の時間をかけた。

 試乗したエアコンの技術者からは、「エアコンも止まってしまうのは不便だね」と指摘された。だが、こうした反応こそ期待していたものであった。「具体的に問題点を指摘されるのは巻き込み成功のサイン。そこから先は課題の解決に向けて自然に話が進んだ」という。
《一言コメント》5つの力のうち、この「巻き込み」だけは、「なぜなぜ分析」のような明確な方法論が未だ存在しないし、「あした会議」のように能力を底上げする社内制度も存在しないと思う。その意味では、非常に属人的なヒューマンスキルである。だが、ジョン・コッターがリーダーの役割を「アジェンダ(課題)設定」と「ネットワーキング」に大別していることからも解るように、「巻き込み」は変革の推進に必要な仕事の半分を占めている。個人的には、どうにかしてこの「巻き込み」、「ネットワーキング」の能力を学習できるツールを開発したいと思っているんだけどなぁ・・・

宝島社:雑誌にマーケティング・ミックスを導入
 宝島社は、MBAを修了したマーケティング本部の部長の下で、出版業界にはあまり馴染みのなかったマーケティングを取り入れた。具体的には、マーケティング・ミックス(マーケティングの4P)のうち、価格(Price)とチャネル(Place)を変えることにした。価格に関しては、雑誌は固定価格であるという常識に反して、その都度価格を変えるよう、営業と編集を巻き込んだ議論を行った。

 チャネルについては、今度は書店を巻き込んだ。2010年から、書店の一角に「宝島社書店」と呼ぶスペースを設けてもらう取り組みを開始。「宝島社書店」では、立てる・つるすといった立体的な陳列を導入したり、動画CMを流したりする。「整然と陳列する」、「売り場は静かにする」といった書店の常識に反する取り組みであったが、興味を示してくれる店長を探し、店長権限で売り場変更が可能な店舗を徐々に巻き込んでいった。
《一言コメント》記事には書かれていなかったけれども、「整然と陳列する」、「売り場は静かにする」といった書店の常識をめぐる議論と合わせて、この取り組みが書店と宝島社の双方にとって、”数字上のメリット”をもたらすことを明確にしておかなければならないだろう。

 書店にとってのメリットとは、(1)従来の陳列を取り払って「宝島社書店」を設けた方が、同じスペースからの売上が高くなること、(2)「宝島社書店」の効果で来店者数が増え、他のスペースからの売上も上がることの2つである。宝島社にとってのメリットとは、新しい陳列棚や動画CMなどの追加コストを自社で負担しても、それをカバーできる利益が「宝島社書店」から得られることである。

(4)部下理解
三井化学:外国人部下の増加に伴って「エンパシー(共感力)」を強化
 三井化学は2005年から外国人も含め、海外経験者の採用を強化している。2009年には新卒採用者に占める外国人の比率は10%弱にまで高まった。ところが、取り組みを進めるうちに、外国人を部下に持つミドルに戸惑いが広まったため、2011年9月から「PEDI(Personal Effectiveness for Diversity and Inclusion)」研修を開始した。この研修では、「EAR(Empathy/Ask/Reflection)」と呼ばれる傾聴の理論を学習する。まずは聴く耳を持ち、自分との違いを理解することに主眼を置いている。

川崎重工業:「傾聴」にポイントを置いたミドル向け研修
 川崎重工業は2007年、「傾聴」にポイントを置いた研修を課長向けに開始し、2009年には部長にも広げた。狙いはミドルが備えるべき資質と位置づける「部下育成」、「リーダーシップ」、「部門目標達成」の3本柱の強化である。研修を受講した課長からは、「報告待ちの姿勢では部下の本音は解らない。情報を得るために傾聴を意識するようになった」という声も寄せられている。
《一言コメント》PEDI研修については、どこの研修会社なのか調べたが解りませんでした(汗)。2つの事例に対して共通のコメントを2点ほど。まず1つ目は、「ミドルが理解すべきは部下だけなのか?」ということ。答えは当然Noであって、ミドルは上司や顧客、取引先とも関係を持つし、何か大きな改革を行う際には他部門のメンバーとも関わりを持つ必要が出てくる。

 上司のことを理解できていないミドルは、「口癖で解る残念な上司チェックシート」にもあったように、「何だよ、あの上司は」とか、「上が決めたことだから」などとと口走るに違いない。ところが、研修となるとなぜか部下理解に焦点が当たってしまうのが、研修業界に片足を突っ込んでいる私としては、非常に不可解であり不満でもある。

 2つ目は、1つ目とも関連するが、「自分の周囲にいる日本人のことを理解できないうちに、外国人のことを理解できるのか?」ということである。これには異論があるだろうが、個人的には日本人を十分に理解できないうちは、外国人も理解できないと思う。組織のダイバーシティを高めるために外国人採用を強化し、ダイバーシティ研修を行う前に、日本人の相互理解という組織の基本的なケイパビリティが備わっているかどうか注意する必要があるだろう。

(5)危機管理
日立アプライアンス:リスクの発生確率や低減効果も定量化
 日立アプライアンスは、冷蔵庫や洗濯機、エアコンまで家電製品を幅広く製造する。安全対策には力を入れており、2006年に体系化した管理手法を確立した。日本科学技術連盟の「R-Map(リスクマップ)」という手法に基づく独自のリスクアセスメント手法「PSPTA(Product Safety Potential Tree Analysis)」がそれで、製品事故のリスクを定量的に分析し、原因と対策を体系立てて整理するものだ。

 同社はこれに基づき、設計部門を中心にPSPTAが開発や製造に活用できているかを確認する「PSRA(製品安全リスクアセスメント)実践的検討会」を、ミドルが中心となって定期的に開いている。1つの製品開発プロジェクトが完了するまでに15回程度実施するという。特徴は、製品開発に携わっていないミドルが第三者として参加することである。