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February 07, 2011

今までのeラーニングなんて面白くなかったんだよ(それは言いすぎか、汗)(1)

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 研修業界で数年前にものすごく注目を浴びたのがeラーニングだった。教育研修コストの削減を望む多くの企業にとって、一度に多数の社員を対象に安価でトレーニングを実施できるeラーニングは、画期的なソリューションになるというのが業界の見方だった。さらに、企業内教育だけではなく、学校教育や個人教育においてもeラーニングが広まるから、全てを合わせると相当な市場になると考えられていた。

 eラーニングの市場予測に関する過去の記事を掘り返してみると、いかにeラーニングへの期待が高かったかがうかがえる。2002年まで遡ったら、こんな予測が出てきた。
 マーケット規模は、2003年には約1100億円、2005年には約3100億円と、2年で2.7倍となる。特に大幅な伸びが予測されるのが、高等教育と企業内教育である。学校教育のマーケットは、現状では企業内教育に比べてWBT(Web Based Training)普及が遅れているようにみえる。しかし今後各種環境整備が進むにつれ、急速にWBTの導入が進むと考えられる。(中略)日本におけるECマーケット規模の成長率などを参考に、2005年(3090.2億円)から年率40%のペースで成長すると、2010年には約1兆円市場になると考えられる。
(先進学習基盤協議会事務局「拡大するeラーニングの世界」)
 い、1兆円かいっ!?って思わず突っ込みたくなってしまったよ。ただ、さすがにこれは過大予測だったようで、2004年になると「2010年には『世界で』1兆円を超える規模になる」と、ややトーンダウンした予測に変わる。
 本日(※2004年11月26日)、日経産業新聞1面に、2010年の世界の有望技術に
ついて特集あり。2010年の世界市場で、成長率3倍以上、市場規模1兆円以上となる市場として、13項目があげられている。うち、IT関係が多く、第4位は、eラーニング

 1位 ICタグ
 2位 薄型テレビ
 3位 電子マネー
 4位 eラーニング
 5位 ブロードバンド通信サービス
(「eラーニング、2010年に大市場|eラーニングの現状と展望」)
 それでも、国内のeラーニング市場の成長予測はまだまだ強気で、AEN(Asia eLearning Network)が2004年に発表した調査レポートには、
今回の調査から予測すると、2005年に500億円のeラーニング市場規模は、2010年には約2倍の110億円(※レポート中では110億円となっているが、文脈からすれば1,100億円が正しい)へと着実に拡大する(年間平均伸長率:20%)見通しである。
(「eラーニング市場動向及び技術動向等の調査」)
と書かれている。

 では、実際のところ、現在のeラーニングの市場規模はどうなっているのだろうか?矢野経済研究所が発表した「eラーニング市場に関する調査結果 2010」では、思わず苦笑してしまうぐらい上記とはかけ離れた数字が出てくる。
 2009年度の「国内eラーニング市場」全体の市場規模は、前年度比8.9%減の1,162億円となる見込みである。しかしながら、インターネット・イントラネットを媒介とした「狭義のeラーニング市場」の規模は、前年度比 0.8%減の 618億円と、不況に関わらず堅調に推移する見込みである。
 なお、矢野経済研究所がいう「eラーニング市場」は、携帯ゲーム機、携帯電話、携帯型デジタル音楽プレイヤー、学習用ソフトウェア、衛星通信などを使用した学習形態も含んでおり(つまり、NintendoDSの学習ソフトなども入っている)、BtoBとBtoCの両方にまたがる包括的な市場として捉えられている。それでも、市場規模は1,000億円ちょっとなのである。ちなみに、いわゆる企業内教育でのeラーニングを意味する「BtoBのネットワーク・ラーニングサービス」の市場規模に限定すると、何と550億円という寂しい数字になってしまう。

 もちろん、それぞれの記事でeラーニング市場の定義が異なるから、数字だけを単純に比較することはできないものの、eラーニング市場が昔の予測のように爆発的な伸びを見せているとはとても言えない。私の会社でも以前eラーニングの製品を持っていたのだけれども、私のほぼ独断(?)で販売の優先順位を思いっきり下げたことがある(こんなこと書いてたら会社から怒られるかも、汗)。もともと他の研修サービスのコンセプトから外れた内容のeラーニングであったこともあるが、一番の理由は「こんなもん、ちっとも面白くねぇ」という、ただそれだけである。

 企業内教育において、eラーニングが思ったほど受け入れられていないのはなぜだろうか?次回の記事では私なりの考えを述べてみたいと思う。

 (続く)
January 12, 2011

(メモ書き)研修をビジネスの成果に結びつけるための6原則―"The Six Discipline of Breakthrough Learning"

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 2年近く前に、研修が現場で効果を上げるための条件をメモ書き程度にまとめたことがあったのだが、ブラッシュアップすることなくそのまま放置してしまっていた(汗)。

 研修が成果につながるための職場の条件を整理してみた

 この4つのプロセスの前に敢えて何か追加するならば、「研修内容を事業戦略とリンクさせる」というプロセスが必要になるはずだ。この点についても、簡単ではあるが以前に記事を書いたことがある。

 戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(1)
 戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(2)
 人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(1)
 人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(2)

 「研修そのものをどうデザインするか?」という「インストラクショナルデザイン」に関する本は日本でも結構出ているのだけれども、「研修の前後も視野に入れ、かつ現場も学習環境の一部とみなして研修をどのように企画・実行するか?」という問題に関する和書は、実はあんまり出版されていないように感じる。仕方ないので、洋書で探してみたところ見つかったのがこの本。

 タイトルの通り、研修をビジネスの成果に結びつけるための原則が6つにまとめられている。今日の記事では、6つの原則のポイントを私なりに整理しておこうと思う(原則によって内容の濃淡が激しいがご容赦ください)。
Discipline1: Define Outcomes in Business Terms
 研修の成果を「ビジネスの用語」で定義すること。つまり、「製造知識の向上」、「提案スキルの強化」、「モチベーションの向上」、「部下マネジメント力の向上」といった言葉で研修の成果を定義するのではなく、
 ・各製造ラインにおける不良品率の低下
 ・商談の成約率の向上
 ・部門別に見た離職率の低下
 ・それぞれのマネジャーが管轄する部門の成果の増大
などのように、「ビジネス上の成果」で表現する必要がある。

Discipline2: Design the Complete Experience
 学習のプロセスを「研修前」、「研修そのもの」、「研修後」の3つのフェーズに分け、それぞれのプロセスが一貫性を持つようにデザインすること。各フェーズで重要になるポイントは以下の通り。
 ≪フェーズ1=研修前≫
 ・研修プログラムに対する受講者の期待値を上げる
 ・受講者のマネジャーの支援をとりつける
 ・研修後のフォローアップがあることを知らせる
 ・研修内容にふさわしい受講者を選択する
 ・事前課題を実施する

 ≪フェーズ2=研修そのもの≫
 ・事業戦略の内容に基づいた研修プログラムをデザインする
 ・成人教育の原則にのっとったプログラムにする

 ≪フェーズ3=研修後≫
 ・受講者に対し継続的なサポートを提供する
 ・アクションプランの進捗をモニタリングし、必要に応じてアドバイスを提供する
 ・マネジャーによる支援、コーチングを実施する
 ・その他の支援ツールを提供する

Discipline3: Deliver for Application
 研修内容と現場での仕事を適切にリンクさせること。とりわけ、研修の最後に、研修後の業務内容を意識した綿密な「アクションプラン」を立案することが求められる。

Discipline4: Drive Follow-Through
 研修後のフォローアップの仕組みを構築すること。同書では、ITを活用したフォローアップシステムが紹介されている。このシステムは、アクションプランの内容を受講者にリマインドする機能や、プランの進捗度合いを数値化する機能、さらにマネジャーやメンターがオンラインで受講者にメッセージを送信する機能などを備えている。

Discipline5: Deploy Active Support
 「原則4」は主にITによるバーチャルなサポートにフォーカスを当てているが、「原則5」はリアルなサポートを取り上げている。例えば(「原則2」のフェーズ3とも関連するが)、
 ・マネジャーによる受講者の支援
 ・人材開発部門によるインストラクション、ファシリテーションの実施
 ・受講者のコミュニティ形成
などを行うことにより、リアル&バーチャルの両面から受講者の学習を促進することが可能となる。

Discipline6: Document Results
 「原則6」では、研修の効果をドキュメントに残すことが必要であると説いている。このドキュメントは、経営陣に対しては研修の投資対効果を説明する資料として、現場の各部門に対しては研修が日常業務に与えるインパクトの大きさを示す資料として活用できる。人材開発部門がこのような資料を作っておけば、社内での研修のプレゼンスが向上する。
 6つの原則の中では、「原則4」が割と特徴的かな。研修後のフォローにITを活用するというのは、何ともアメリカ的な発想だなぁと感じた。ただ、これが日本でどのくらい機能するかどうかは未知数な気もする。もともと日本企業には、OJTに代表されるリアルコミュニケーションを通じた学習の風土が備わっている。

 残念ながら、最近では「OJTは『お前、じっと立っていろ』の略だ」と揶揄されるように、OJTの崩壊があちこちの企業で発生しているようなのだが、崩壊気味のOJTを前述のITがすんなりと補完するとは考えにくい。OJT不全の問題が情報不全の問題であれば、ITという技術的なソリューションが威力を発揮するだろう。しかし、OJT不全とはつまるところコミュニケーション不全のことであり、人間側の問題なのである。

 「じゃぁ、OJTのようなものを復活させて、研修と現場の学習をスムーズにつなぐにはどうすれいばいいのか?」という問いに対しては、私自身もまだ十分な答えを用意できているわけじゃないんだけどね…。結局は、マネジャーの役割に占める人材育成の割合を増やして人事考課上のウェイトも高くし、マネジャーが泥臭いフォローアップを行うように動機づける、といった解決策に落ち着くようにも思える。

 「こっちは日常業務で手一杯だから、人材育成に割ける時間などない」とマネジャーが言うのであれば、マネジャーの業務(あるいは、マネジャーを含む部門全体の業務)を抜本的に見直して無駄な作業を減らし、人材育成の時間を無理やりにでも確保するしかないだろう。ひょっとしたら、そこまで積極的に介入することが、これからの人材開発部門には必要とされるのかもしれない。
August 26, 2010

人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(2)

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 (その1からの続き)

(3)学習プログラムの内容が実務と連動していない
 これは(1)の落とし穴とも深く関連している。(1)の落とし穴にはまると、(3)の落とし穴にもはまる可能性が非常に高くなる。例えば、「営業の提案力を上げたい」と思っている人材育成担当者が、提案力の中身を明確にしないまま、外部の研修ベンダーにお願いして「提案力研修」を実施すると、受講者からは冷たい視線を浴びる羽目になる。

 受講者は顧客企業の業務に対する深い理解を武器にして、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うことが重要だと考えているのに、研修ベンダーが実施したプログラムが顧客企業のIT戦略立案を支援するような内容だったならば、受講者は「こんな研修は現場で使えない!」とすぐに文句を言うだろう。

 提案力のように業務と直結したスキルや知識であれば、企画段階で人材育成担当者と研修ベンダーが密に議論をすることでこうしたギャップを防ぐことができる。だが、その1で述べたような「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ」、あるいは「モチベーション向上」や「自立度向上」、「キャリア開発」といったかなり抽象度の高いものになると、話は難しくなる。

 リーダーシップ研修を例に取ってみよう。よくあるリーダーシップ研修は、リーダーシップのパターン(戦略型、関係調整型、権威型など)を学習して自分がどのパターンに該当するのかを自覚させるものや、心理学の性格分析の手法をベースにし、部下やメンバーの性格パターンに応じた効果的なコミュニケーションの方法を学ぶといったものである。

 しかしながら、仮に会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトにどんどん社員を参画させ、高い成果を上げることを求めているのならば、上記の研修はいずれもほとんど効果を発揮しない。なぜならば、部門横断型プロジェクトで必要なのは、

 ・各部門を代表して集まってるメンバーが、どのような利害を持ってプロジェクトに参画しているのかを、バーバル/ノンバーバルのコミュニケーションから短期間に見抜く
 ・利害対立が生じた場合に、双方の利害を調整して納得のいく合意点を発見する
 ・会議の場で、フォーマルな肩書きにとらわれずに意見を発したり、議論を取りまとめたりする
 ・プロジェクトメンバーの誰が読んでも即座に理解できるドキュメントを作成する
 ・プロジェクトメンバー以外の社員にプロジェクト内容を公表したり、彼らの協力を仰いだりする際に、適切で訴求力のあるプレゼンテーションを行う
 ・現場の業務を兼務している場合は、プロジェクトと現場の仕事を両立する時間管理・タスク管理を実施する

などといった能力だからである。これらの点を考慮せずに設計されたトレーニングは、無駄な投資に終わる。

(4)知識・スキルの習熟度合いと人事考課が連動していない
 人材育成計画のPDCAサイクルを回すために、各社員の能力レベルをモニタリングする仕組みを構築することが重要だと述べたが、人材育成計画のPDCAサイクルと言うと、どうも研修の実施状況や社員の参加率などをモニタリングすることだと捉えられている節がある。

 人材育成の目的は研修の消化ではなく社員の能力アップであるから、測定すべきなのは能力が期待通りに上がっているかどうかである。そのためには、人材育成担当者が能力レベルを把握するアセスメントを開発し、人事考課担当者や現場と協力してアセスメントを定期的に実施することが有効である。

 ところが、人事部の内情をつぶさに観察すると、人材育成担当者と人事考課担当者の関係は必ずしも良好ではない。そのせいか、特定のトレーニングで実施されるテストのスコアが昇進・昇格の条件になっていることはあるものの、それぞれの能力レベルが、人事考課で定められている評価基準と緊密に連携してる例は少ない気がする。

 当たり前のことだが、社員は評価されないことはやらない。どんなに優れた人材育成計画に従って有益なトレーニングを実施したとしても、そこで身についた能力が人事考課で評価されないならば、社員はトレーニング内容を実務に活かそうとはしないのである。

 プレイングマネジャーの増加に頭を悩ます人材育成担当者が、マネジャー向けに部下育成力研修をやったとしよう。だが、マネジャーの評価基準が相も変わらず短期的な数字に偏っていれば、マネジャーは部下の育成などそっちのけで、自分で数字を作ってしまうに違いない。そして、プレイングマネジャーの増加にますます拍車がかかるのである。