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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
May 25, 2010
実務的なプロセスKPIにファインチューニングする3つのポイント
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前回の記事「プロセスKPIを設定するための5つの視点」では、プロセスKPIを定義するにあたってまずは測定対象となる業務プロセスを明確にすること、そして「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」という5つの視点を使ってできるだけ網羅的にKPIを設定することを述べた。
(※クリックして拡大表示)
ここから、実務的に運用可能なレベルへと微調整を加えていく。その際のポイントは以下の3つである。
(1)定性的な指標は可能な限り定量的な指標に置き換える
これはとりわけ「質」のKPIについて言えることだが、定性的な指標は読み解くのに時間がかかるし、良い−悪いの判断が難しい。定性的な指標はできるだけ定量的に測定可能なものに変換するのが望ましい。
上図では、すでに部分的にファインチューニングを行っているKPIがある。それは「商談の難易度評価(製品・サービス提供にあたり、自社のリソース・ノウハウで十分対応か否か)」、「商談獲得の見込み評価(受注の確度がどの程度あるか)」という指標である。営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。しかし、こうした定性的な情報はそのままでは非常に測定しにくい。そこで、商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる商談数をカウントすることで、定量的な測定を可能にしている。
営業会議で、「今週のA商談は○件、B商談は○件、C商談は○件…」といった進捗報告を行っている企業もあるだろう。その場合の件数が、まさに商談の質を定量的に測定した数値と言える。
(2)測定困難な指標は代替指標を考えるか、方法を変える
KPIはその数値を継続的にモニタリングすることができなければ意味がない。KPIの値を取得するだけで莫大な時間がかかるのであれば、改善策の検討が大幅に遅れてしまう。だから、KPIは測定が容易で、かつ繰り返し取得できるものにしなければならない。
例えば、上図にある「提案書の質」に関しては、営業担当者が顧客企業に「私が書いた提案書の内容はどうですか?満足していただけましたか?」と聞いて回るのはあまりにも常軌を逸した行動である。また、ある期間内に作成された全社員の提案書をマネジャーが評価することも非現実的である。
こういう場合は、サンプリング調査を行う。無作為に抽出した数十件程度の提案書の内容を社内で定めた基準に従って採点するというやり方である。サンプリングと社内基準が適切であれば、提案書の質に関する全社的な傾向を知ることができる。
(3)最終成果との結びつきが薄い指標は削り、KPIにメリハリをつける
プロセスKPIは最終成果に至るまでのプロセスをモニタリングするものであるから、最終成果をどのように位置づけるかによってKPIの優先順位が変わってくる。
とにかく売上拡大が最優先課題であるような場合は、「時間」や「コスト」に関するKPIはごっそり削ってしまうのも1つの手である。逆に、収益性を重視するのであれば「時間」や「コスト」は重要なKPIになるし、「値引率」や「値引になった商談の割合」も見過ごせない指標となる。
営業活動の効率性を重視するのであれば、「量」のウェイトを軽くする。前回の記事の中で、「営業活動はろ過装置のようなものであり、プロセスが進むに従って顧客・商談数が減っていく」と書いたが、効率的な営業とは、入口(=ターゲット顧客数)が多少狭くなったとしても、ほとんどろ過されずに出口から出てくる(=成約できる)状態を指す。この場合は、「量」の代わりに「質」や「次プロセスへの進行率」に重きを置くことが考えられる。
上記の3つのポイントに従って微調整を行えば、プロセスKPI体系ができあがる。あとは各KPIの目標値を設定し、継続的なモニタリングを通じて目標との乖離をチェックする。そして、必要に応じて改善策を打つ。この繰り返しによって、KPIマネジメントのPDCAサイクルが回っていく。
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ここから、実務的に運用可能なレベルへと微調整を加えていく。その際のポイントは以下の3つである。
(1)定性的な指標は可能な限り定量的な指標に置き換える
これはとりわけ「質」のKPIについて言えることだが、定性的な指標は読み解くのに時間がかかるし、良い−悪いの判断が難しい。定性的な指標はできるだけ定量的に測定可能なものに変換するのが望ましい。
上図では、すでに部分的にファインチューニングを行っているKPIがある。それは「商談の難易度評価(製品・サービス提供にあたり、自社のリソース・ノウハウで十分対応か否か)」、「商談獲得の見込み評価(受注の確度がどの程度あるか)」という指標である。営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。しかし、こうした定性的な情報はそのままでは非常に測定しにくい。そこで、商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる商談数をカウントすることで、定量的な測定を可能にしている。
営業会議で、「今週のA商談は○件、B商談は○件、C商談は○件…」といった進捗報告を行っている企業もあるだろう。その場合の件数が、まさに商談の質を定量的に測定した数値と言える。
(2)測定困難な指標は代替指標を考えるか、方法を変える
KPIはその数値を継続的にモニタリングすることができなければ意味がない。KPIの値を取得するだけで莫大な時間がかかるのであれば、改善策の検討が大幅に遅れてしまう。だから、KPIは測定が容易で、かつ繰り返し取得できるものにしなければならない。
例えば、上図にある「提案書の質」に関しては、営業担当者が顧客企業に「私が書いた提案書の内容はどうですか?満足していただけましたか?」と聞いて回るのはあまりにも常軌を逸した行動である。また、ある期間内に作成された全社員の提案書をマネジャーが評価することも非現実的である。
こういう場合は、サンプリング調査を行う。無作為に抽出した数十件程度の提案書の内容を社内で定めた基準に従って採点するというやり方である。サンプリングと社内基準が適切であれば、提案書の質に関する全社的な傾向を知ることができる。
(3)最終成果との結びつきが薄い指標は削り、KPIにメリハリをつける
プロセスKPIは最終成果に至るまでのプロセスをモニタリングするものであるから、最終成果をどのように位置づけるかによってKPIの優先順位が変わってくる。
とにかく売上拡大が最優先課題であるような場合は、「時間」や「コスト」に関するKPIはごっそり削ってしまうのも1つの手である。逆に、収益性を重視するのであれば「時間」や「コスト」は重要なKPIになるし、「値引率」や「値引になった商談の割合」も見過ごせない指標となる。
営業活動の効率性を重視するのであれば、「量」のウェイトを軽くする。前回の記事の中で、「営業活動はろ過装置のようなものであり、プロセスが進むに従って顧客・商談数が減っていく」と書いたが、効率的な営業とは、入口(=ターゲット顧客数)が多少狭くなったとしても、ほとんどろ過されずに出口から出てくる(=成約できる)状態を指す。この場合は、「量」の代わりに「質」や「次プロセスへの進行率」に重きを置くことが考えられる。
上記の3つのポイントに従って微調整を行えば、プロセスKPI体系ができあがる。あとは各KPIの目標値を設定し、継続的なモニタリングを通じて目標との乖離をチェックする。そして、必要に応じて改善策を打つ。この繰り返しによって、KPIマネジメントのPDCAサイクルが回っていく。
May 24, 2010
プロセスKPIを設定するための5つの視点
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以前の記事「スコアボードを見ずに野球ができるか!−プロセス指標の必要性」では、最終成果だけを測定するのではなく、そこに至るプロセスをモニタリングするKPIの必要性に触れた。そして、営業プロセスを例にとり、KPIを設定する視点として、「量」と「次プロセスへの進行率」の2つを指摘した。今回の記事では、プロセスKPIの設定方法をもう少し深めてみようと思う。
プロセスKPIを設定するに当たって、まず最初にやらなければならないことは「プロセスの定義」である。測定対象をはっきりさせないことには測定しようがない。最終成果に至るまでのプロセスをいくつかの段階に分け、各プロセスにおける社員の行動を記述していく。
以下にごくごく一般的な法人営業のプロセスを書いてみた。コピー機でもITシステムでも工作機械でも何でもいいのだが、顧客企業に対して何らかの製品を販売し、そのアフターフォローまで行うという営業活動を念頭に置いている。
(※クリックして拡大表示)
ここからプロセスKPIの設定に入る。プロセスKPIを設定する視点は、「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」の5つである。この5つの視点に基づいてKPIを設定すると、かなり網羅性の高いKPI体系ができあがる。以下、先ほど定義した法人営業プロセスに対応するKPIを各視点から設定してみた(ごめんなさい、「顧客ターゲティング」の「質」だけどうしてもいい指標が思いつかなかったので、ブランクにしてあります…)。
(※クリックして拡大表示)
(1)量
量はさらに、「各プロセス内における行動量」と「各プロセスのアウトプットの量」に分けて考えることができる。上記の図で言えば、
・各プロセス内における行動量=営業による初期接触回数、顧客訪問・ヒアリング実施回数、顧客との討議回数、価格交渉実施数など
・各プロセスのアウトプット量=抽出した顧客ターゲット数、キーマン情報入手数、パワーポリティクス・競合情報入手数、成約数、1件あたり成約金額など
となる。
(2)質
各プロセスのアウトプットの質を指す。製造プロセスであれば、各工程のアウトプット(中間製品)の品質を測定するのは比較的容易である。それに比べると、営業プロセスは中間成果物が目に見えにくいのでKPIの設定は難しいのではないかと思われるかもしれない。ただ、「提案」においては提案書がプロセスの成果物として必ず発生するから、その品質をKPIとして設定することができる。「アフターフォロー」における「次期商談・製品改善に役立ちそうな情報の数」も同じである。
それ以外のプロセスはどうするか?(1)で挙げた「抽出した顧客ターゲット」、「入手したキーマン情報」、「入手したパワーポリティクス・競合情報」の質を評価するのは非常に難しい。キーマン情報やパワーポリティクス情報が合っているかどうかは、検証のしようがない。
営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。つまり、「自社にとって利益をもたらす優良顧客か否か」、「受注の確度が高い商談か否か」ということである。こうした定性的な情報はそのままではKPIとはならないが、例えば顧客や商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる顧客数、商談数をカウントすれば、KPIの測定が可能になる。
なお、「値引率」、「値引になった商談の割合」を質のKPIとしているのは、それらが「自社にとって利益をもたらす優良顧客か否か」を表す指標となるからである。
(3)時間
各プロセスにおいて求められる行動を実施するのに社員が費やした時間、またはあるプロセスのスタートから次プロセスに移行するまでのリードタイムをKPIとして設定する。
工場であれば、実際にストップウォッチを持って各工程の作業時間を測定することもあるが、営業活動でそれをやるのはかなり難しい。こういう場合は、営業日報から時間を計算したり、アンケート形式で1週間のうちそれぞれの活動に何時間費やしたかを営業担当者に答えてもらったりすることで代用する。
(4)コスト
各プロセスにおいて発生する費用をKPIとして設定する。工場とは異なり、材料や機械を使っているわけではないため、ここでいうコストの大半は人件費である。(3)で計算した業務時間に基づいて、ABC(activity-based costing:活動基準原価計算)の手法を使うと、各プロセスにおけるコストを算出することができる。
もちろん、商談で使った交通費や、契約手続時に発生した法務関連費用など、明確に判明している費用は上乗せする必要がある。
(5)次プロセスへの進行率
製造プロセスにおける「歩留率」を裏返したものと考えていただければ解りやすい。営業プロセスはろ過装置のようなものであり、プロセスが進むにつれて対象顧客・商談数が減っていく。あるプロセスに滞留していた顧客・商談数のうち、次のプロセスに移行することができた割合をKPIとして設定する。この作業をそれぞれのプロセスにおいて行う。
「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」という5つの視点を使うと、プロセスKPIが整理しやすくなる。ただ、これだけ多くの指標を全部チェックしなければならないのかというと、そういうわけではない。5つの視点はあくまでもKPIの網羅性を高めるためのものであり、実務運用上スムーズにモニタリングできるKPIにファインチューニングする必要がある。その方法については、次回の記事で書くことにしよう。
プロセスKPIを設定するに当たって、まず最初にやらなければならないことは「プロセスの定義」である。測定対象をはっきりさせないことには測定しようがない。最終成果に至るまでのプロセスをいくつかの段階に分け、各プロセスにおける社員の行動を記述していく。
以下にごくごく一般的な法人営業のプロセスを書いてみた。コピー機でもITシステムでも工作機械でも何でもいいのだが、顧客企業に対して何らかの製品を販売し、そのアフターフォローまで行うという営業活動を念頭に置いている。
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ここからプロセスKPIの設定に入る。プロセスKPIを設定する視点は、「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」の5つである。この5つの視点に基づいてKPIを設定すると、かなり網羅性の高いKPI体系ができあがる。以下、先ほど定義した法人営業プロセスに対応するKPIを各視点から設定してみた(ごめんなさい、「顧客ターゲティング」の「質」だけどうしてもいい指標が思いつかなかったので、ブランクにしてあります…)。
(※クリックして拡大表示)
(1)量
量はさらに、「各プロセス内における行動量」と「各プロセスのアウトプットの量」に分けて考えることができる。上記の図で言えば、
・各プロセス内における行動量=営業による初期接触回数、顧客訪問・ヒアリング実施回数、顧客との討議回数、価格交渉実施数など
・各プロセスのアウトプット量=抽出した顧客ターゲット数、キーマン情報入手数、パワーポリティクス・競合情報入手数、成約数、1件あたり成約金額など
となる。
(2)質
各プロセスのアウトプットの質を指す。製造プロセスであれば、各工程のアウトプット(中間製品)の品質を測定するのは比較的容易である。それに比べると、営業プロセスは中間成果物が目に見えにくいのでKPIの設定は難しいのではないかと思われるかもしれない。ただ、「提案」においては提案書がプロセスの成果物として必ず発生するから、その品質をKPIとして設定することができる。「アフターフォロー」における「次期商談・製品改善に役立ちそうな情報の数」も同じである。
それ以外のプロセスはどうするか?(1)で挙げた「抽出した顧客ターゲット」、「入手したキーマン情報」、「入手したパワーポリティクス・競合情報」の質を評価するのは非常に難しい。キーマン情報やパワーポリティクス情報が合っているかどうかは、検証のしようがない。
営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。つまり、「自社にとって利益をもたらす優良顧客か否か」、「受注の確度が高い商談か否か」ということである。こうした定性的な情報はそのままではKPIとはならないが、例えば顧客や商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる顧客数、商談数をカウントすれば、KPIの測定が可能になる。
なお、「値引率」、「値引になった商談の割合」を質のKPIとしているのは、それらが「自社にとって利益をもたらす優良顧客か否か」を表す指標となるからである。
(3)時間
各プロセスにおいて求められる行動を実施するのに社員が費やした時間、またはあるプロセスのスタートから次プロセスに移行するまでのリードタイムをKPIとして設定する。
工場であれば、実際にストップウォッチを持って各工程の作業時間を測定することもあるが、営業活動でそれをやるのはかなり難しい。こういう場合は、営業日報から時間を計算したり、アンケート形式で1週間のうちそれぞれの活動に何時間費やしたかを営業担当者に答えてもらったりすることで代用する。
(4)コスト
各プロセスにおいて発生する費用をKPIとして設定する。工場とは異なり、材料や機械を使っているわけではないため、ここでいうコストの大半は人件費である。(3)で計算した業務時間に基づいて、ABC(activity-based costing:活動基準原価計算)の手法を使うと、各プロセスにおけるコストを算出することができる。
もちろん、商談で使った交通費や、契約手続時に発生した法務関連費用など、明確に判明している費用は上乗せする必要がある。
(5)次プロセスへの進行率
製造プロセスにおける「歩留率」を裏返したものと考えていただければ解りやすい。営業プロセスはろ過装置のようなものであり、プロセスが進むにつれて対象顧客・商談数が減っていく。あるプロセスに滞留していた顧客・商談数のうち、次のプロセスに移行することができた割合をKPIとして設定する。この作業をそれぞれのプロセスにおいて行う。
「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」という5つの視点を使うと、プロセスKPIが整理しやすくなる。ただ、これだけ多くの指標を全部チェックしなければならないのかというと、そういうわけではない。5つの視点はあくまでもKPIの網羅性を高めるためのものであり、実務運用上スムーズにモニタリングできるKPIにファインチューニングする必要がある。その方法については、次回の記事で書くことにしよう。
April 20, 2010
入社後4年目からのキャリア開発−内発的動機を育て、仕事に自分色を加える
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社会人は入社してから3年で一人前と言われるが、「10年ルール」という言葉があるように、ある分野を本当に極めようと思ったら、3年では全然足りない。だが、大方の企業において研修が行われるのは3年目までぐらいであり、そこから管理職に上がる30代中盤ぐらいまでは必須研修が全くと言っていいほどない。この「空白の7年間」は、現場の仕事の中で、自らの意思と責任に基づいて能力を高めていかなければならないのである。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の著書『法人営業「力」を鍛える』に、興味深いデータが載っている。ある化学メーカーで、営業スタッフの営業経験年数をX軸に、営業スタッフの成績(3年間の売上成長率)をY軸にとって散布図を作成したところ、両者の間には何の相関関係も見られなかったという。これは、「営業経験が長くなればなるほど、営業成績もよくなるはず」という我々の通念とは反する。
営業職も通常は新卒から3年目ぐらいまでにスキル研修をまとめて行い、後は現場での実践を重視する企業が多い。だが、必須研修がなくなった後の「空白の7年間」をどのように過ごすかによって、その後の営業成績は大きく変わってくることをこのデータは示唆しているように思える。
昨日の記事「入社後3年目までのキャリア開発−仕事の仕組みを知り、自分の得手・不得手を見極める」では、入社後3年目までは、入社時に抱いていた「やりたい仕事」にこだわることなくいろんな仕事に触れ、上司や先輩、顧客などいろんな人から褒められたり叱られたりしながら、入社前には解らなかった得意分野や好きなことを少しずつ見極めていくことが大切だと書いた。
では、入社後3年目以降、つまり冒頭で述べた「空白の7年間」はどうすればよいのか?3年目までは「外発的動機づけ要因」に注目したが、4年目からはいよいよ「内発的動機づけ要因」が本領を発揮する。なお、ここでいう「内発的動機づけ要因」とは、下図にある【1】「自分自身の興味、好奇心、得意分野(図中には「得意分野」を書くのを忘れた)」、【2】「達成感、充実感、やりがい」、【3】「仕事に対する意味づけ」を指す。
一言断っておくと、「内発的動機」はそれ単独で機能することは少ない。「面白そうだと思う仕事をやってみる」(内発的動機)⇒「仕事をサポートしてくれるいい同僚がいる」(外発的動機)⇒「仕事の成果を上司が評価してくれる」(外発的動機)⇒「成果に対していい評価をもらい達成感を感じる」(内発的動機)⇒「その仕事がますます得意・好きになり、さらに打ち込む」(内発的動機)といった具合に、「外発的動機」と「内発的動機」は複雑に絡み合っている。
私のブログも基本的には「ただ好きだから」という理由で書いている。いわば「内発的動機」である。とはいえ、好きだからという気持ちだけで5年近くもやってこれたわけではない。ページビューやRSSリーダーの登録者数が増え、コメントやアンケートでいい評価をもらうと、それがまたブログを書き続けるインセンティブになる。「外発的動機」に負うところも大きいのである(そういう意味でも、いつもブログを読んでくださる皆様、本当にありがとうございます)。
3年目までにおぼろげながら見えてきた「得意分野、好きなこと」という「内発的動機」の芽を、「空白の7年間」では大切に、大切に育てていく。そうすると、先ほど書いたような「外発的動機」との関係で好循環が生まれ、大きな成果を上げられるようになる。BCGのデータで、経験年数が長くても営業成績にばらつきが生じる1つの要因として、こうした好循環を営業担当者が持っているかどうかという点が挙げられると私は考える。
しかしながら、「外発的動機」は「他者」という不確定要素に影響される不安定な動機であるのと同様に、「内発的動機」は「自分の気分」に左右されるという、これもまた不安定な動機である。特に【1】「自分自身の興味、好奇心、得意分野」はそうだ。興味や好奇心は長く続くとは限らない。私だって、いつ自分のブログに飽きるか解らない(事実、1年近く書くのを放棄していた時期もある)。
私の会社の代表は、以前はアクセンチュアというコンサルティングファームに所属していた。コンサルティングファームは一般の事業会社に比べて離職率が非常に高い。離職者の中には、能力不足で辞めていく人もいるが、コンサルタントとして外部から組織を見るよりも事業を自分でやった方が面白そうという理由で辞めていく人とがいる。興味や好奇心は移ろいやすいのである。
【2】「達成感、充実感、やりがい」というのも、効き目が切れる時がくる。ゲームを思い浮かべると解りやすい。どんなに面白いと思ってはまったゲームでも、ある程度のレベルまで行ってしまうと達成感がなくなり、やがてゲームをやらなくなる(だからこそ、ゲーム会社は次から次へと新しいゲームを開発しなければならなくなる)。営業担当者の中にも、会社が与えたノルマだけでは物足りず、自分の中でさらに高い目標を掲げてそれをクリアすることに執念を燃やすタイプの人がいるが、青天井で売上が上がるわけではないから、彼の目標もやがて頭打ちになる。そうすると、「内発的動機」の効き目が切れてしまう。
「内発的動機」を長続きさせるヒントは、残った【3】「仕事に対する意味づけ」にある。【3】は「自分の仕事の使命」と言い換えてもいい。「なぜこの仕事を自分はしなければならないのか?」、「自分の仕事が社会に与える意味とは何か?」という、やや哲学じみた問答を繰り返す。使命とは終わりのない旅であり、それゆえに長い将来を見据えた抽象的なものにならざるを得ない。しかし、抽象的であるということは、包括的であるということでもある。つまり、些細な興味の移り変わりや達成感の変動を超えて、自らの選択肢を増やすことにつながる。
以前、「何かを諦めざる時こそ、大切な価値観に気づく」という記事で、ひじのケガのためにプロ野球の道を経たれた山下という人物の話を紹介した。大好きな野球はもうできない、そんな時に彼を奮い立たせたのは、「仕事の意味づけ」という「内発的動機」であった。
彼はなぜ自分がこんなに野球に夢中になっていたのかを改めて振り返ったのだろう。野球選手は、華やかなプレーで人々を魅了し、感動を与えたいと思っている。それを山下は再解釈した。彼は自分の使命を「野球を通じて人々に夢と感動を与えること」とした。このように意味づけると、必ずしも自分がプレイヤーとして活躍するだけがその手段ではなくなる。だからこそ、山下は「日本で埋もれている逸材をアメリカへ連れて行く」という新しい仕事にやりがいを見出すことができた。
山下の例はかなりドラマティックであるが、ビジネスパーソンは誰しも自分の仕事の使命を見つけることができると思う。もっとも、「空白の7年間」だけでは使命は見つからないだろう。しかし、使命に目を向け、使命と向き合おうとする姿勢が大切である。使命こそが最も持続性の高い「内発的動機」と言える。そして、使命は自己のアイデンティティと深く結びつき、仕事において自分らしさを表現するのに役立つと思うのである。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の著書『法人営業「力」を鍛える』に、興味深いデータが載っている。ある化学メーカーで、営業スタッフの営業経験年数をX軸に、営業スタッフの成績(3年間の売上成長率)をY軸にとって散布図を作成したところ、両者の間には何の相関関係も見られなかったという。これは、「営業経験が長くなればなるほど、営業成績もよくなるはず」という我々の通念とは反する。
営業職も通常は新卒から3年目ぐらいまでにスキル研修をまとめて行い、後は現場での実践を重視する企業が多い。だが、必須研修がなくなった後の「空白の7年間」をどのように過ごすかによって、その後の営業成績は大きく変わってくることをこのデータは示唆しているように思える。
posted by Amazon360
昨日の記事「入社後3年目までのキャリア開発−仕事の仕組みを知り、自分の得手・不得手を見極める」では、入社後3年目までは、入社時に抱いていた「やりたい仕事」にこだわることなくいろんな仕事に触れ、上司や先輩、顧客などいろんな人から褒められたり叱られたりしながら、入社前には解らなかった得意分野や好きなことを少しずつ見極めていくことが大切だと書いた。
では、入社後3年目以降、つまり冒頭で述べた「空白の7年間」はどうすればよいのか?3年目までは「外発的動機づけ要因」に注目したが、4年目からはいよいよ「内発的動機づけ要因」が本領を発揮する。なお、ここでいう「内発的動機づけ要因」とは、下図にある【1】「自分自身の興味、好奇心、得意分野(図中には「得意分野」を書くのを忘れた)」、【2】「達成感、充実感、やりがい」、【3】「仕事に対する意味づけ」を指す。
一言断っておくと、「内発的動機」はそれ単独で機能することは少ない。「面白そうだと思う仕事をやってみる」(内発的動機)⇒「仕事をサポートしてくれるいい同僚がいる」(外発的動機)⇒「仕事の成果を上司が評価してくれる」(外発的動機)⇒「成果に対していい評価をもらい達成感を感じる」(内発的動機)⇒「その仕事がますます得意・好きになり、さらに打ち込む」(内発的動機)といった具合に、「外発的動機」と「内発的動機」は複雑に絡み合っている。
私のブログも基本的には「ただ好きだから」という理由で書いている。いわば「内発的動機」である。とはいえ、好きだからという気持ちだけで5年近くもやってこれたわけではない。ページビューやRSSリーダーの登録者数が増え、コメントやアンケートでいい評価をもらうと、それがまたブログを書き続けるインセンティブになる。「外発的動機」に負うところも大きいのである(そういう意味でも、いつもブログを読んでくださる皆様、本当にありがとうございます)。
3年目までにおぼろげながら見えてきた「得意分野、好きなこと」という「内発的動機」の芽を、「空白の7年間」では大切に、大切に育てていく。そうすると、先ほど書いたような「外発的動機」との関係で好循環が生まれ、大きな成果を上げられるようになる。BCGのデータで、経験年数が長くても営業成績にばらつきが生じる1つの要因として、こうした好循環を営業担当者が持っているかどうかという点が挙げられると私は考える。
しかしながら、「外発的動機」は「他者」という不確定要素に影響される不安定な動機であるのと同様に、「内発的動機」は「自分の気分」に左右されるという、これもまた不安定な動機である。特に【1】「自分自身の興味、好奇心、得意分野」はそうだ。興味や好奇心は長く続くとは限らない。私だって、いつ自分のブログに飽きるか解らない(事実、1年近く書くのを放棄していた時期もある)。
私の会社の代表は、以前はアクセンチュアというコンサルティングファームに所属していた。コンサルティングファームは一般の事業会社に比べて離職率が非常に高い。離職者の中には、能力不足で辞めていく人もいるが、コンサルタントとして外部から組織を見るよりも事業を自分でやった方が面白そうという理由で辞めていく人とがいる。興味や好奇心は移ろいやすいのである。
【2】「達成感、充実感、やりがい」というのも、効き目が切れる時がくる。ゲームを思い浮かべると解りやすい。どんなに面白いと思ってはまったゲームでも、ある程度のレベルまで行ってしまうと達成感がなくなり、やがてゲームをやらなくなる(だからこそ、ゲーム会社は次から次へと新しいゲームを開発しなければならなくなる)。営業担当者の中にも、会社が与えたノルマだけでは物足りず、自分の中でさらに高い目標を掲げてそれをクリアすることに執念を燃やすタイプの人がいるが、青天井で売上が上がるわけではないから、彼の目標もやがて頭打ちになる。そうすると、「内発的動機」の効き目が切れてしまう。
「内発的動機」を長続きさせるヒントは、残った【3】「仕事に対する意味づけ」にある。【3】は「自分の仕事の使命」と言い換えてもいい。「なぜこの仕事を自分はしなければならないのか?」、「自分の仕事が社会に与える意味とは何か?」という、やや哲学じみた問答を繰り返す。使命とは終わりのない旅であり、それゆえに長い将来を見据えた抽象的なものにならざるを得ない。しかし、抽象的であるということは、包括的であるということでもある。つまり、些細な興味の移り変わりや達成感の変動を超えて、自らの選択肢を増やすことにつながる。
以前、「何かを諦めざる時こそ、大切な価値観に気づく」という記事で、ひじのケガのためにプロ野球の道を経たれた山下という人物の話を紹介した。大好きな野球はもうできない、そんな時に彼を奮い立たせたのは、「仕事の意味づけ」という「内発的動機」であった。
彼はなぜ自分がこんなに野球に夢中になっていたのかを改めて振り返ったのだろう。野球選手は、華やかなプレーで人々を魅了し、感動を与えたいと思っている。それを山下は再解釈した。彼は自分の使命を「野球を通じて人々に夢と感動を与えること」とした。このように意味づけると、必ずしも自分がプレイヤーとして活躍するだけがその手段ではなくなる。だからこそ、山下は「日本で埋もれている逸材をアメリカへ連れて行く」という新しい仕事にやりがいを見出すことができた。
山下の例はかなりドラマティックであるが、ビジネスパーソンは誰しも自分の仕事の使命を見つけることができると思う。もっとも、「空白の7年間」だけでは使命は見つからないだろう。しかし、使命に目を向け、使命と向き合おうとする姿勢が大切である。使命こそが最も持続性の高い「内発的動機」と言える。そして、使命は自己のアイデンティティと深く結びつき、仕事において自分らしさを表現するのに役立つと思うのである。