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August 11, 2011

嗚呼、懐かしや小泉純一郎政権―『日本の壊れる音がする』

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 (前回からの続き)

 島田晴雄教授は、小泉政権時に内閣府特命顧問を務めた人物であるから、どうしても小泉政権のことを高く評価してしまうのはやむを得ないだろう。島田氏が指摘している小泉改革の成果に加え、本書から読み取れる小泉政権のプラスの側面としては、次の5つが挙げられる。

(1)プライマリーバランスの大幅な改善
 2000年代初頭には28兆円(GDP比5%)の赤字になったが、2006年には9兆円(GDP比1.8%)、2007年には6兆円(GDP比1.2%)まで赤字が縮小した。このまま行けば、2011年には黒字化される可能性もあった。

(2)財政債務残高(対GDP比)の増大スピードの抑制((1)とも関連)
 ・小泉政権前:1997年がGDP比100.5%、2001年(※小泉政権は2001年4月にスタートしており、2001年度予算には関与していないため、2001年は小泉政権前と位置づけている)がGDP比143.7%。4年間で43.2%もパーセンテージが悪化。
 ・小泉政権下:小泉政権の下で最後に予算が組まれた2006年の数値は、GDP比172.1%。2001年のパーセンテージと比較すると、5年間で28.4%の悪化にとどまっている。
 ・小泉政権後:民主党政権が誕生してから初めて予算が組まれた2010年の数値は、GDP比197.2%。2006年のパーセンテージと比較すると、4年で25.2%悪化しており、小泉政権のペースを上回っている。

(3)対内直接投資残高(対GDP比)の倍増
 先進諸国に比べて、日本は異常に対内直接投資が少ない(つまり、海外企業はほとんど日本に参入できない)。小泉氏は、5年間で対日直接投資残高の対GDP比を倍増にするという方針を打ち出し、6年間でこれを達成した。

(4)失業率の低下
 小泉政権が発足した2001年の失業率は5.0%。その翌年には5.4%を記録するが、これが小泉政権下における失業率のワーストである。その後失業率は回復し、2005年は4.4%、2006年は4.1%となっている。

(5)格差の縮小
 構造改革の負の側面として、「格差の拡大」が挙げられることが多いが、これは人口構造の変化によるものであり、構造改革の結果ではないと著者は反論している。若年層に比べると、高齢者層はもともと世代内の格差が大きい。高齢化に伴って、格差が大きい高齢者層が増えたため、全体を押しなべて見れば、格差が広がったように見えるという。

 私も個人的には、島田氏が述べた通り、小泉政権は最近の自民党政権の中で、最も目覚ましい成果を上げた政権だと思っている。だからこそ、小泉政権が懐かしく思えてくるのだ。小泉氏は派閥を否定した一匹狼だったため、因習やしがらみに縛られることなく、数々の構造改革を実行することができた。

 しかし同時に、一匹狼だったがゆえに、後継者へのバトンタッチがうまくいかなかったことが、国民にとって不幸であった。小泉氏は「小泉チルドレン」の面倒をほとんど見なかったし(当選直後に、小泉氏に引き連れられた小泉チルドレンが、国会内部をキャッキャ言いながら見学したという、おまぬけなニュースは流れたが・・・)、後継者として指名した安倍氏に対しても、十分な引き継ぎがなされなかった。

 小泉政権下で長く続いた好景気は、企業が過去最高の利益を続々と記録したのに対し、社員の給与はほとんど増えなかったことから、「実感なき経済回復」などと呼ばれた。だが、バブル崩壊の経験を通じて、固定資産や固定費が多い企業は、通常の企業に比べ経済後退の影響をモロに受けることを学んでいた企業は、固定費である人件費の増額に踏み切れるほどの体力が自社に備わるまで、あと数年待っていたのではないか?と私は思う。

 だから、もう少し小泉政権が続くか、後継者が構造改革を継続していれば、やがては社員も給与増の恩恵を受けられたかもしれない(もっとも、リーマンショックだけは、誰が総理でもどうしようもなかっただろうが・・・)。一般企業でさえ、戦略を大幅に見直し、それが組織全体に浸透するまでには10年前後かかる。優良企業として取り上げられる企業も、戦略の構築から十分なケイパビリティの獲得までには、長い時間がかかっているものだ(※3)。まして国政レベルとなれば、もっと中長期的な取り組みが必要になるであろう。

 しかし、現実は全く逆であった。安倍氏は機能性胃腸炎によって総理の座を降りることになってしまったし、福田氏は消費者庁の設置で満足してしまったのか、こちらも1年ほどで政権が終了。自民党の信頼は失墜し、最悪なタイミングで首相を引き受けてしまった麻生氏は、特に何もしていないのに、失言や読み間違いなど、どうでもいいところを執拗にマスコミから攻撃され総選挙で大敗。またしても短命の内閣となってしまった。

 さらに言えば、自民党政権が長く続きすぎたこと自体が、国民にとって不幸だったのかもしれない。通常の2大政党制の国では、どちらの政党も偏りなく政権を担当するものである(米英がよい例)。しかし日本の場合、戦後長らく自民党が政権の椅子に座り、現在の民主党が誕生するまで「1.5大政党制」と揶揄されるほど、強力な野党が現れなかった。結果的に、政権運営能力を有する政党や政治家が限られてしまったわけだ。

(※3)例えば、ウォルマートは、今でこそ毎年数百単位で新規店舗を出し続けているが、1962年の創業から100店舗を超えるのに約10年かかっている。また、スタバが急成長を遂げたのは、1971年の創業から20年ほど経過した1990年代以降であり、日本での成長も2000年代に入ってからである。マイクロソフトも、Windows95でOS市場のデファクトスタンダードを握るまでに、10年ほどの年月を費やしている。

 日本企業に目を向けると、ユニクロはもう何十年もSPAのビジネスモデルを地道に改善し続けている。トヨタのトヨタ生産方式に至っては、半世紀近い歴史があるけれども、世界のトップ企業にのし上がった今でさえ、トヨタの人ならば「いやいや、まだ不十分だよ」と言うに違いない。

 (続く)
August 10, 2011

民主党がマニフェストを取りやめた方が国債は少なくて済むらしい―『日本の壊れる音がする』

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 先日の記事「「ニーズはあるがお金はかけたくない」事業をどう成立させるかがカギ―『「雇用を創る」構造改革』」などで取り上げた島田晴雄教授の本。本書は、政権交代後の民主党が犯してきた数々の失策を並べ立てるところからスタートしているのだが、それだけで本全体の約3分の1を占めている。自民党はバブル崩壊前後から20年あまりをかけてゆっくりと衰退していったのに対し、民主党はたった2年で崩壊してしまった感がある。

 こう書くと「後出しジャンケンだろう?」と言われるかもしれないけれど、2009年8月の衆院総選挙(民主党が308議席を獲得し、鳩山内閣が誕生した時の選挙)の際には、「民主党には政権を運営するだけの能力がない」と私は思っていた(この選挙では、私は自民党に投票した)。それは、民主党は今まで政権を執ったことがなく、党内には閣僚経験者も少ないため、政権運営のノウハウが少ないという、単純な理由からである。

 民主党がマニフェストの中で大々的に掲げた子ども手当や高速道路無料化、高等教育無償化などの主要政策を推進している裏で、

 ・日本国家の主権を揺るがしかねない「東アジア共同体構想」を進め、
 ・国内ではマイノリティーにあたる在日韓国人の要求で、「外国人参政権」を導入しようとし(※1)、
 ・社民党(というか福島党首を含む一部のジェンダー論者)からの要請に応じて、「選択的夫婦別姓」を盛り込んだ改正民法の成立を目指し(※2)、
 ・国際的な”人権”(特に、子どもの人権)の定義とはかけ離れた、過剰な人権擁護の内容を盛り込み、教育現場の混乱を招くかもしれない「人権擁護法案」を策定し、
 ・地方分権と言いつつ、地方議会の存在を無に帰す危険性がある「住民自治条例」を、各地で成立させようとしている

などといったリベラルな側面については、恥ずかしながら全くと言っていいほど知らなかった。

 そもそも民主党は、政党の成り立ちからして、保守中道を掲げる旧民政党系と、中道左派を掲げる旧民主党系が入り混じった集団であり、政党内の価値観が必ずしも一致していない。だが、前述のような政権交代後の民主党の動きをみると、民主党は「右派の仮面をかぶった左派」と捉えた方が適切である。

 そして、党内の混乱が政治と国民の混乱を引き起こしている間に、中国は尖閣諸島周辺に頻繁に巡廻船を送り出し、韓国は竹島の実効支配を強め、ロシアは大統領が北方領土に足を踏み入れるなど、領土問題が一気に悪化してしまった。戦後の政治を振り返っても、中韓露の3国がほぼ同時期に領土問題に火をつけたことは、おそらくなかったであろう。民主党政権は、周辺諸国から完全に舐められているのである。

 本書を読んで一番驚いたのは、「民主党がマニフェスト通りに各施策を実行すると、国債が恐ろしく膨れ上がる」ということだ。島田氏は、「民主党がマニフェストを全て実行した場合」、「民主党がマニフェストを取りやめた場合」、「マニフェストを取りやめた上で、増税をした場合」の3パターンについて、将来の予算をシミュレーションしている。

 試算の過程が書かれておらず、シミュレーションの信頼性を検証することができないのだが、国債が最も少なくて済むのは、実は最後の「マニフェストを取りやめた上で、増税をした場合」なのである(ちなみに、このケースでは、消費税を12%に引き上げた場合を想定している)。シミュレーションによると、民主党がマニフェストを実行した場合は、2013年度の国債は64.9兆円になる。逆に、民主党がマニフェストをやめて増税に踏み切ると、2013年度の国債は40.6兆円で収まり、約25兆円もの差が生じるのである(本書p66〜p67)。

(※1)過去の記事「外国人参政権を一部でも認めれば、なし崩し的に全部認めることになる」を参照。
(※2)過去の記事「夫婦別姓の根底にある行き過ぎた個人主義の危険性」を参照。

 (続く)
July 30, 2011

「ニーズはあるがお金はかけたくない」事業をどう成立させるかがカギ(2)―『「雇用を創る」構造改革』

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 (レビューの続き)

 もう1つの課題は、生活支援サービスを提供する企業が、経営の安全性を保ちながらどのように人材を確保するか?ということである。すでに述べた通り、企業側としてはあまり定期昇給を行わずに、人件費を抑制したい。一方で、社員としても、医療や介護サービスなどにかかる肉体的・心理的負担の大きさから、長期的な雇用をあまり望まないかもしれない。

 こうした企業側・社員側の事情を組み合わせて考えると、生活支援サービス企業は、通常の企業のように社員が何十年と連続して勤め上げる企業ではなく、「社員が10年程度で入れ替わることを前提とした企業」になるのかもしれない。雇用のターゲットとなるのは、(1)子供がある程度成長して時間的余裕ができた40代前後の女性と、(2)役職定年や定年退職を迎えた50代〜60代の中高年である。

 よく知られているように、日本の女性は、出産と同時に会社を退職し、子育てが終わっても正社員にはならずに、パートやアルバイトになることが多い。女性の労働力比率を年代別に折れ線グラフにすると、30代の労働力比率がガクッと下がり、40代前後で回復するというM字型になる。これが「M字カーブ」と呼ばれる現象である。

 そこで、生活支援サービス企業は、M字カーブの底にいる女性や、パート・アルバイトをしている40代の女性を積極的に採用する。企業側としては、新卒や若手社員を長年に渡って雇用し続ける必要がなくなるし、女性側もパートやアルバイトより高い給与がもらえるに違いない(どのくらいの給与が妥当かは検証が必要だが)。

 もう1つの雇用ターゲットは、50代〜60代の中高年である。つい最近だけれども、定年を65歳に延長する案が政府内で持ち上がり、経団連が反発していることが報じられた。個人的には、超高齢化社会の行く末を想像すると、いつかは定年が伸びることは避けられないと思う。現在は65歳定年案が出ているが、10年もしないうちに70歳定年案が出てくるかもしれない。

 ただし、全ての中高年社員の定年を杓子定規に伸ばすとは考えにくい。なぜならば、企業側の人件費負担が大きすぎるし、そうなると必然的に若年層の採用が抑制されるからだ(中高年社員に限った話ではないが、社員の解雇要件を厳しくしたフランスでは、企業が若年層を採用しなくなり、その結果若年層のデモに発展したことがある)。

 経団連は、65歳定年案、あるいは70歳定年案を受け入れる代わりに、解雇要件の緩和を要求するだろう。つまり、企業にとって不可欠な特殊スキルを持っている社員には定年延長が適用されるけれども、そうではない社員は、企業内の新陳代謝を促すために解雇される時代が来ると思われる(解雇と言うと言葉の響きがキツいので、実務上は通常の解雇と区別するために、何かしら別の用語が生まれるかもしれない)。

 すると、企業から溢れてしまった中高年社員(この表現はやや難があるが・・・)の雇用の受け皿として、生活支援サービス企業が機能する可能性がある。50〜60代の人が一般的な事業会社に転職することは、今でも相当困難だが、おそらく将来もその事情は変わらないだろう。転職はできないけれど、年金を受け取るまでの間にどうしても収入が必要な中高年社員を、生活支援サービス産業が受け入れるのである。

 中高年社員は、生活支援サービス企業に転職しても、前職で受け取っていた高額な給与はもらえない。少なくとも、大企業のように年収が1,000万円単位になることはない。厳密な検証をしなければならないが、おそらく400万円〜500万円程度の年収にとどまると思われる。それでも、完全に無職になるか、アルバイトになるよりはずっと好条件である。中高年社員は、生活支援サービス企業に転職し、年金を受け取るまでの10年あまりの期間をこの企業で過ごすのである。

 こうして、生活支援サービス企業は、子供がある程度成長して時間的余裕ができた40代前後の女性と、役職定年や定年退職を迎えた50代〜60代の中高年を中心とした企業になる。もっとも、事業のスタート時からこういう人員構成を想定した企業は今までに存在しなかったため、人事制度や給与システムをはじめ、マネジメントのあらゆる要素の刷新が求められるだろう。

 もう1つ、固定費の高騰を避ける手段として、地元の中小企業(特に、飲食業やアパレル販売などのサービス業)の活用も考えられる。街中を歩きながら観察してみるとよく解るが、これらの中小企業は、四六時中仕事があるところばかりではない。いつ通っても、店舗が閑散としていることも決して珍しくない。

 そこで、これらの中小企業に勤める社員を、生活支援サービス企業の臨時スタッフとして登録する。臨時スタッフは時給制であり、生活支援サービス企業からの仕事の要請に応じて、余っている時間は生活支援サービスの提供に従事するのである。

 この方法には双方にメリットがある。生活支援サービス企業は、人件費の一部を変動費化することにより、損益分岐点を下げられる。また、中小企業にとっても、本業に加えて生活支援サービス関連の業務を第2の収益源とすることができる。しかも、地元の人々によく知られている中小企業であれば、生活支援サービス企業の顧客からも信頼されやすい。

 以上、かなり突飛なアイデアも含まれるけれども、雇用創出プログラムを実現させる方策を私なりに考案してみた。念のため断っておくが、約30年後には私自身も仕事を続けるかどうかの岐路に立たされるし、医療・福祉サービスなどを頻繁に利用する立場になる。よって、上記のアイデアは決して第三者的な視点で考えているのではなく、当事者の1人として考えている点は誤解しないでいただきたいと思う。