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February 13, 2010

良質の「準備ルーチン」は創造性を生む(補足)

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 以前、「良質の『準備ルーチン』は創造性を生む」という記事で、ルーチン業務は人間の創造性を奪うという「計画のグレシャムの法則」に対し、業務外の準備段階におけるルーチンは逆に人間の集中力を高め、本番=業務での創造力を増す効果があるのではないか?ということを書いた。今回はその補足として、いろんな人の「準備ルーチン」を集めてみた。

松下幸之助
 経営者として客観的に、素直な心で物事を観察し、本質を見抜くために長年実施していた準備ルーチン。
 朝起きたら、仏壇のあるところやったら仏壇、神棚のあるところやったら神棚の前で、「きょう一日素直な心で無事にいかせてください」と心に念ずる。

 それを30年やったらな、30年続けたら、まあ大きなまちがいなく、素直な心で、ものは見えるやろうと。要は素直の初段やな。(中略)今、もう35年になるからな、まあ、ようやく初段になったくらいや。だから、こういう考え方はあかん、これはこうしたほうがええということがある程度わかる。初段の程度でわかると。
(松下幸之助述、松下政経塾編『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』PHP研究所、2009年)

松下 幸之助
PHP研究所
2009-03-24
おすすめ平均:
人生訓として是非読んでおきたいです
今年一番の作品 名著
穏やかな気持ちになれる
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中村俊輔
 スポーツ選手の中でも特に優れた選手は、必ずと言っていいほど自分なりに工夫した良質の「準備ルーチン」を持っており、試合の前後に実践していると思う。数いるプロ選手の中でも最前線で活躍し続けることができる選手と、数年で消えてしまう選手の違いはそこにあるような気がする。
 彼は試合後、どんなに疲れていてもフリーキックの練習をして帰宅します。いつも何球蹴るか数字を決めていて、それを自分に課しています。途中できょうは体調が悪いな、早く帰りたいなと思っても、決して例外をつくらず、課した球数を蹴るまでは絶対に家に帰りません。なぜなら、そこで球数を減らしたら最後、どんどん自分に甘くなるからだと言います。
(村山昇著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』クロスメディア・パブリッシング、2009年)

村山 昇
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2009-05-14
おすすめ平均:
30歳前後の方(=私と同世代の方)に勧めたい本です
ヒントがたくさん詰まった本
滋味
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菅野寛(ボストンコンサルティンググループ ヴァイス・プレジデント アンド ディレクター)
 BCGに入社して3年目の頃、菅野氏は上司や同僚から、「ロジカルに物事を考えてクライアントに物申すことはできても、クライアントの気持ちを理解する力に欠けている」という評価を受けた。このままではコンサルタントとしての成長が止まってしまう。そこで、クライアントが心の底から納得し、厚い信頼を勝ち取れるよう、次のようなトレーニングを考えたそうだ。
クライアントとのミーティング前:
 私は自然体で、「今度のミーティングでどのようなロジカル・メッセージを伝えようか」と考えることはできていたので、それに加えて、「今度のミーティングでどのような”エモーショナル”・メッセージを伝えようか」と考えて、ノートに書き留めることを習慣にすることにした。もし筆が止まって、伝えるべきエモーショナル・メッセージを書くことができなければ、相当まずい、と思うことにした。

クライアントとのミーティング後:
 今日のミーティングでクライアントが伝えようとしていたエモーショナル・メッセージは何かを考え、必ずノートに書き留める習慣をつけた。もし筆が止まって、書き留めることができなければ、これは相当まずい。クライアントの伝えてきたロジカル・メッセージがわからなければ、経営コンサルタントとして、次の調査・分析プランが立てられないではないか。エモーショナル次元でもまったく同じであると考えることにした。
(菅野寛著『経営者になる 経営者を育てる』ダイヤモンド社、2005年)
 要するに、お互いの「言外の意味」を汲み取り、ノートにまとめることを習慣化したというわけだ。

菅野 寛
ダイヤモンド社
2005-06-10
おすすめ平均:
経営スキルは“天賦の才”ではない?
経営者人材の育成に重要なのは右脳型スキル
中途半端
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ピーター・ドラッカー
 ドラッカーの「準備ルーチン」は比較的中期スパンでサイクルが回っている。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューのインタビューで「あなた流の自己分析法などはありますか?」と尋ねられて次のように答えている。
 記録をつけることです。私が自分の記録をつけ始めたのは30年ほど前です。

 何かを始める時や意思決定を下す時は、どんな結果を期待するのかをかならず書き留めておくことです。これに封をして、しまっておき、数ヶ月は触れないようにします。その後しばらくしてから何が書いてあったかを確かめるのです。すると、3つのことが見えてきます。

 (1)私は何が得意なのか。
 (2)新しいことを学ぶ必要があるのはどの分野か。あるいは私のナレッジ・プール(知識の集積)はどの分野にあるのか。
 (3)不得手な分野は何か。

 私はいまでも年に2回、1月と8月にこれを実施しています。いまでも必ず驚くのですよ。自分の行動や考えのなかで「これこそ最善である」と思ったものは、まずうまくいきません。逆にあまり注意を払わなかったものが素晴らしい成果につながる。これこそ私が得意とするところなのです。
(ピーター・ドラッカー「明日への指針(上)」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2003年11月号)
 私自身も、読書やこのブログを完全に習慣化したいのだが、なかなかできていないなぁ・・・
December 06, 2009

リーダーは私心から入って私心を離れる

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 リーダーは常に私心を捨て、組織や社会全体の利益のことを考えなければならないという崇高なリーダー像が理想とされることがあるが、やや短絡的な見方のように思える。リーダーの個人的な動機は実のところ非常に大切だ。なぜなら、未来の見通しが立たない状況では、個人の欲求や願いがありたい将来像の輪郭を描き出す重要なトリガーとなるからだ。

 だが、単に個人的な動機を押し通すだけではリーダーにはなれない。それはただのわがままである。周りにいる人たちにも同じように個人的な動機や欲求があるわけで、彼らの思いとは相反することもある。リーダーは個人的な動機を発端としつつも、ステークホルダーの利益を尊重し、それらをできるだけ包摂する未来像を導き出す必要がある。その意味では、リーダーには「私心から入って私心を離れる」態度が求められる。

 松下幸之助『決断の経営』にあったエピソードが、この「私心から入って私心を離れる」リーダー像を表していると思うので紹介したい。

松下 幸之助
PHP研究所
2007-03-17
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 パナソニックの前身・松下電器は昭和11年に電球の製造・販売を開始した。当時の電球には4ランクあり、一流はT社のMランプ(36銭)、二流は25〜26銭、三流は15〜16銭、四流は10銭。一番売れていたのは最も高いMランプであり、市場シェアの7割を占めていたという。

 松下は新製品の電球の値段をどうするか悩んだ結果、Mランプに対抗して36銭で販売することに決めた。そこで取引先である販売店を回ったが、実績のない松下電器の製品に対する販売店の反応は冷ややかだった。二流か三流の値段でないと売れないと言うのである。

 松下としても、会社の利益のことを考えれば何としても36銭で売りたい。社員が汗水たらして新製品の発売にこぎつけた姿も思い浮かんだだろう。だが、「うちの利益が出なくなるので36銭で売ってください」などいう私心は口に出すことができない。そこで松下はこう言ったのである。
 「これは私個人とか、松下電器だけの問題ではないのです。みなさんにとっても、わが国にもう一軒、一流のメーカーをつくるかつくらないかは重大な問題です。相撲でも、つよい横綱が一人だけでは、土俵がおもしろくないでしょう。二人いて、互いに張りあい、競争しあってこそ土俵が盛り上がってきます。これは電器業界でも同じではないでしょうか。

 電器業界の場合でも、二人の横綱がいてこそ、業界がさらに向上発展していくのです。そういう意味から、松下電器を横綱に育てるためにもこの電球を三十六銭で売ってください。商売というものは現実のものだけれども、しかし現実の商売とあわせて将来の理想も必要だと思います。みなさんは、この電球についての将来の理想をどうか考えてください」
 松下は単に自社が儲けたいという次元の話を超えて、業界全体の利益のことを販売店に訴えたのである。実は、Mランプを販売していたT社はGEと提携しており、いつまでも外国の技術に押されていてはいけないという個人的な思いもあったのかもしれない(これはあくまでも私の推測だが)。36銭という価格は確かに高い。だが、松下電器がその価格に見合った品質の製品を作ることができれば、それは業界全体にとっても、消費者にとっても、そしてもちろん、松下電器と直接取引をする販売店にとっても利益になる、ということを松下は主張したのである。
October 10, 2009

「タスクは簡潔に、コミュニケーションは密に」がリーダーシップの重要な原則

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 リーダーシップとは何かについて、ドラッカーはマネジメントと対比させながら「マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しい物事を行うことである」と語っている。リーダーの重要な役割は、「何が正しいことか」を決定し、実行に移すことである。だが、リーダーが自ら正しいことをすべて決められるかというとそうとは限らない。以前、東京大学の中原淳先生にインタビューした時に、中原先生はこんなことをおっしゃっていた。
 僕が知る限り、リーダーシップ論の要諦は2つかな、と思います。行動派の理論にしても、変革派の理論にしても、要するに、1)課題(アジェンダ)をどのように設定し、タスクをどのように切り分けるかということと、2)設定したタスクに対して、いかに人を巻き込むのか、ということがリーダーシップの要諦ではないでしょうか。ジョン・コッター教授風にいうならば、アジェンダ設定と、ネットワーク構築ということになると思います。

 ただ、これまでのリーダーシップ論の多くで想定されている「リーダー」とは、どこかで「強いリーダー」でした。設定されるアジェンダは常に正しいものであり、それを設定しさえすれば、フォロワーが当然従ってくるという前提に立っているところがあります。設定したアジェンダがそもそも正しいのかどうかに関する吟味 - すなわち、その課題が本当に解決すべきことなのかどうかということを、みんなで確認し合うプロセス - つまりは「対話」という視点が抜けてしまっているようにも思います。アジェンダ設定で設定される、そのアジェンダは、本当に正しいのでしょうか。いいえ、正確にいうならば、「正しいとみんなに思われている」のでしょうか。
(「ダイアローグが切り拓く組織の未来」)
 「正しい」とは価値であり、価値は他人に認められてこそ価値となる。いくらリーダー1人が「正しい」と思っていても、周りのメンバーが正しいと思っていなければ、本当の意味で「正しい」とはいえない。当然のことながら、リーダー自身が「正しいこと」について最も熱心に考えていなければならないのだが、部下を始めとするステークホルダーの考えを十分に斟酌し、「組織全体にとってこれは正しいことだ」という評価をステークホルダーとの間に形成するプロセスがリーダーには必要なのだろう。

 これは至極最もなことだが、「組織の階層」という存在が、リーダーがこうした考え方を受け入れるのを阻害しているような気がする。リーダーは他のメンバーよりも高い役職にいることが多い。上の役職にいることによって、「リーダーは部下よりも十分な経験と幅広い情報を持っており、常に部下よりも自分の方が優れた意思決定ができる」と思い込んでしまうということだ。だが、「情報を有する者と意思決定を行う者」という記事で書いたように、現代においてこの前提は崩れている。「正しいこと」を決めるための重要な情報は、リーダーの独占支配下にはもはやない。実際に顧客と接し、競合他社からの攻撃に晒されている現場の方が重要な情報を持っていることも少なくない。リーダーはこうした情報を吸い上げるためにも、「聴く」姿勢を持つことが求められるだろう。

 松下幸之助の『指導者の条件』を読んでいたら、「堀秀政」という人物に関する興味深いエピソードがあった。堀秀政とは、信長、秀吉に仕え、世間から"名人左衛門"と呼ばれた武将である。
松下 幸之助
PHP研究所
2006-02
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さすがに素晴らしいです
歴史を通した含蓄ある言葉の数々
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 秀政の城下に、ある時、秀政の治政の悪い点を三十二、三ヵ条書き並べた大札を立てた者があった。そこで重臣たちが相談の上、秀政にそれを見せ、「こんなことをした者は必ず召し捕って、仕置きしましょう」といった。

 すると秀政は、その内容をつくづく見ていたが、何を思ったか、立って袴をはいて正装し、手と口をすすぎ、その大札をおしいただいた。そして、「こんな諌言をしてくれる者はめったにいない。だからこれを天が与えたもうたものと考え、当家の家宝としよう」といって、立派な袋に入れ、箱におさめた。そしてそれとともに役人たちを集め、その一条一条を検討し、藩政について改めるべきところは全部改めたという。
 これは極端な話かもしれないが、リーダーには他人の意見を「聴く」辛抱が必要なことを感じさせる話のように思えた。

 ここで最大の難関は、リーダーも現場も忙しく、お互いとてもコミュニケーションに時間を費やすことはできない、ということだろう。この難題を解決するためには、業務を効率化して、コミュニケーションの時間を無理やりにでも確保することでしかない。GEのジャック・ウェルチは新入社員から経営幹部に至るまで、社員との対話にかなりの時間を割いたというが、「ワークアウト」のような徹底した業務効率化の取り組みが、こうした対話の実現に大きく貢献しているのではないだろうか。ワークアウトによって真に重要な仕事のみを残し、残りは捨てる。節約できた時間をコミュニケーションに費やし、経営陣は戦略の見直しを、現場は仕事の見直しを行う。このサイクルをひたすら回し続けることによって、GEは強くなったのかもしれない。「タスクは簡潔に、コミュニケーションは密に」がリーダーシップの重要な原則なのだろう。