※2012年12月1日より新ブログに移行しました。自分で言うのもおこがましいですが、20代の頃に書いた本ブログよりも、30代に入ってから書いている現行ブログの方がはるかに中身が濃く、内容が多岐にわたり、面白いと思いますので、是非ご覧いただけるとありがたいです!
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February 11, 2010

提案書は「顧客企業内の稟議書」を作成する気持ちで

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 BtoBビジネスの営業活動で欠かせないのが提案書。私自身は研修事業に携わっているので、人事部向けに自社サービスの提案書を書くし、マーケティング業務を兼務していることもあって、様々なWebマーケティング会社や出版社の提案書を見る機会がある。さらに、僭越ながら研修講師として受講者が作成した提案書を添削する、などという仕事もやっている。

 そんな日常業務の中で感じるのは、「いい提案書」というのは「クライアント企業がそのまま社内で稟議書として使えるような提案書」だということである。まぁ、当たり前と言えば当たり前のことだが、せっかくなので記事にまとめてみようと思う。

 営業担当者はバイヤーである部門の担当者レベルの人に対して営業活動を行い、自社製品やサービスを購入してくれるよう提案書を作成する。営業担当者は、製品やサービスがどのようなものなのか(=What)を一生懸命伝えようとするので、「What」に関する説明が長くなりがちだ。

 提案書を受け取ったクライアント企業の担当者は、その提案書に基づいて稟議書を作成し、製品導入のために予算を使っていいかどうか上司にお伺いを立てる。だが、上司は「What」の細かい話にはそれほど関心がない。それよりも上司が注意を払っているのは「Why」の方である。

 ・なぜ、その製品を導入する必要があるのか?
 ・なぜ、その製品がわが社に適していると言えるのか?
 ・なぜ、他社の製品ではなく、その会社の製品でなければならないのか?
 ・なぜ、この価格でないとダメなのか?価格を上回るメリットはあるのか?

 こうしたことを上司は気にするのである。言ってしまえば、クライアント企業内は提案書よりも稟議書を重視する。だから、営業担当者は「クライアント企業の担当者が稟議書を起こしやすいような提案書」を作成しなければならないのである。それはつまり、「What」ではなく「Why」について十分な説明がなされている提案書だ。

 ・クライアント企業の現状をどのように捉えており、どこに課題があると考えているのか?
 ・その課題はクライアント企業にとってどのくらい重要度が高いのか?
 ・その課題を解決するために、自社製品はどのように貢献するのか?
 ・他社製品より、自社製品の方が課題解決に適していると言えるのはどういう点か?
 ・自社製品を導入するとどのような効果が得られるのか?
 ・自社製品に対する投資を、クライアント企業は回収することができるのか?

 これらの点について、クライアント企業の事情に配慮し、クライアント企業の言葉を使いながら丁寧に記述された提案書は、読み手に対して訴求力を持つ。一般的な課題だけをとりあえず並べておいて、後は自社製品の長い説明が続く提案書(もはやそれは提案書というよりも製品カタログなのだが)では、勝機は薄いと感じている。
February 24, 2009

IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(後半)

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 本当は1つの記事で3冊を紹介するつもりだったのが、何だかんだで1つの記事ごとに1冊を紹介しているというこの無計画さ…

 前回の記事「IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(中盤)」で、ブリニョルフソンの著書では組織のデジタル度を定量的に測定する方法が述べられていないと書いたが、組織の情報活用度を定量的に調査した別の研究がある。それが「組織IQ(組織の知能指数)」論である。もともとは組織の情報活用度と業績との関係を調べたものであるが(※1)、組織IQが高い企業は、IT投資と企業の業績の相関が強くなるという調査もある(※2)。

情報を使いこなす能力=組織IQ
鈴木 勘一郎
角川書店
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著者に問いたい。少しでも検証や推敲をしましたか?
日本企業と日本軍
managerの方々へ
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 組織IQとは「戦略を効果的に実行するための、組織の働き度の指標」であり、「組織における情報と資源という2つの側面が、いかに効率的に機能するかという度合い」だとされている。ブリニョルフソンの「デジタル組織」の7原則の中でも似たようなことは述べられているが、組織IQでは組織内の「情報の流通経路」や「情報を使いこなす力」によりフォーカスが当たっている。

 組織IQは、「外部情報認識」、「内部知識発信」、「効果的な意思決定」、「組織フォーカス」、「目標化された知識創造」という5つの指標から構成される。
1.外部情報認識
 市場で起きている変化を、いかに「的確に」「すばやく」認識するかが、市場対応・顧客対応のための第一歩です。そのためには、自分の仕事に影響を与えるような環境や市場の動きに対して関心を持ち、情報に対して高い感度(アンテナ)を維持しなければなりません。具体的には、日頃から問題意識を持って外部変化を観察・収集し、それをもとに戦略を修正したり、新たな仮説を構築したりすることが必要です。

2.内部知識発信
 感度の高いアンテナで受け止めた知識も、組織の内部で体系化され、共有され、分析されなければただのノイズにすぎません。組織では、知識や経験を共有化すればするほど経営資源の利用効率は高まります。また、環境変化や顧客に関する事実と戦略が共有化されることにより、組織スピードを高めることが可能になります。そして、共有知識の中に、現在および過去に組織が学んだ知識を含めることで、継続的に学習する組織DNAを組み込むことができるのです。

3.効果的な意思決定
 経営スピードを高めるためには、問題をすばやく感知し、知識や情報を共有するだけでは不十分です。可能な限り的確な判断ができる下層レベルに権限を委譲しなければなりません。権限を委譲された人には、アカウンタビリティ(説明責任)が課せられるので、その結果、ビジネス・オーナーシップが生まれることになります。

4.組織フォーカス
 組織フォーカスとは、組織効率を向上させて、限られた経営資源を効果的に利用していくために、本来バラバラに動いている各部門を、明確なビジョンや目標に沿ってベクトルを合わせ、有限な経営資源を集中させる戦略をとることです。

5.目標化された知識創造
 大企業であれ中小企業であれ、常に創造に対し飽くなき探究心を持って、新製品・新事業の開発や業務改善を継続しない限り、永続的な成長は実現できません。その条件は、創造性を生み出す企業文化になっていることです。そしてそのために、知識創造がなされなければなりませんが、知識創造の目標は明確でなければなりません。これは別の言い方をすれば、革新(イノベーション)が目標化され継続していくことが必要になります。
 端的に言えば、明確な戦略や目標の下に社員の意識が統一されており、個々の社員が外部変化を敏感に捉え、それを内部ですばやく共有化し、問題解決のための意思決定をスピーディーに行い、継続的に改善がなされている組織が組織IQの高い組織だということだ。同書には、日米のハイテク企業の組織IQを比較調査した興味深い結果が載っている。

社員の情報感度と情報活用力を高める
 ITは業務をサポートするツールに過ぎないため、ITに依存するのではなく、まずはどういう業務を実現したいのかを明確にすべきだと前回の記事で述べた。さらに突っ込んで考えると、ITは業務の中でも特に「情報の流通」の部分を効率化するだけである。そもそもどういう情報を入手し、誰とその情報をやり取りし、その情報を使って何をするかは社員次第であり、社員が情報の有用性や活用方法に対して高い意識を持っていなければ、将来の業務プロセス像など絵に描いた餅に過ぎないのである。

 ちょっと前に、社内のコミュニケーションを活性化させるツールとして、社内SNSや社内ブログが話題になった時期があった。だが、コミュニティが立ち上がらない、運営者しか書き込みをしていないなどといった失敗ばかりで、社内の活性化につながった例は非常に少ないと聞く。ある時、この点に関して社内SNSや社内ブログに詳しい方に話を伺ったところ、「リアルでコミュニケーションを取ろうとしていない会社が社内SNSを入れたところで無駄だ」と一刀両断された。

 その方がおっしゃるには、社内SNSなどは、普段から社員間のコミュニケーションが活発だが、地理的な制約や人数の問題があってコミュニケーションを取りづらいケースが増えてきた時に、リアルのコミュニケーションを補完する役割を果たすに過ぎないということだった。ツールが社員の意識を変えるという逆のパターンはないのか?という疑問も沸くが、そういうケースもあることは否定しないものの、ITにそこまでの強制力はないというのがこの方の見解であった。これは、組織IQでいうところの「内部知識発信」がITの効果を左右する例と言えるだろう。

 社内SNSは企業における情報システムの主流ではないという声も聞こえてきそうなので、本業と関連の深い情報システムを例にとってもう少し考えてみよう。例えば、営業活動を効率化し、顧客ごとの収益を改善するためにSFA(Sales Force Automation)を導入したとする。もちろん、SFA導入に際して、営業活動の標準プロセスも定義した。が、それだけでは十分ではない。

 各営業担当者が個別の案件について、顧客のニーズを深く理解し、競合の動向を鋭くチェックする目を持つ必要がある(外部情報認識)。そして、営業活動で得られた情報を社内に持ち帰り、上司や他部門の関係者と顧客攻略のための作戦を練り、提案内容を迅速に最適化しなければならない(内部知識発信)。また、商談を進めるに当たって何か問題が起これば、これまでの情報を持ち寄ってチーム内ですばやく対応策を決定し、実行に移すことも求められる(効果的な意思決定)。さらに、定期的に商談の成功例・失敗例を分析し、商談ストーリを改善したり、場合によっては顧客ニーズを反映した製品バージョンアップや新製品の開発を他部門に働きかけたりしなければならない(目標化された知識創造)。これらの活動の大前提として、組織としてどういう顧客にターゲットを絞っていくのかという営業戦略が明確であり、現場がそれをきちんと理解していることも重要だ(組織フォーカス)。業務プロセスが明確であることに加え、個々の社員が情報に対する高い感度を持ち、情報を積極的に活用する姿勢が、業務プロセスの機能を左右するのである。マネジャーの立場からすれば、IT導入を推進するとともに、メンバーの情報感度と情報活用力を高める施策も打つ必要がある。

 以上、3回にわたってIT投資のポイントについてまとめてみた。簡単におさらいすると、
ITには様々な種類があり、企業戦略とリンクさせながらバランスよく投資することが重要である。
ITは所詮業務をサポートするツールに過ぎないから、ITを過信してはならない。まずITを使って実現したい業務プロセスを定義し、現行プロセスからの移行手順を現場に浸透させなければならない。
どんなに業務プロセスをきちんと定め、道具であるITを揃えたところで、情報を使って業務を実行するのは結局のところ生身の人間であるから、社員の情報感度と情報活用能力も同時に高めなければならない。
ということである。まあ、目新しいことなど何もないのだが、混乱の時代であるからこそ原則に立ち戻り、当たり前のことを当たり前にやる姿勢を大切にしたいものだ。

(※1)ヘイム・メンデルソン、ヨハネス・ジーグラー著、校條浩訳『スマート・カンパニー−eビジネス時代の覇者の条件』(ダイヤモンド社、2000年)
(※2)平野雅章「組織IQ論」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2008年9月号)
February 23, 2009

IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(中盤)

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 書いているうちに思った以上に長くなってしまったので記事を分割…したところまではよかったが、続きを書くのを1週間も放置してしまった。前回の記事はこちら→「IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(前半)」

ITは所詮ツール、それを使いこなすだけの組織能力を磨くことも忘れずに
 ITは魔法ではない。所詮は情報を蓄積、検索、加工するだけのツールに過ぎないのだから、ITを導入すれば効果が出ると考えるのは安直である。卑近な例だが、スピード社のレーザーレーサー(もうこの例えは古いか?)を着てもタイムが縮まるとは限らないのと同じ理屈である。水着は道具であり、それを人間の方がうまく使いこなせなければ何の意味もない。しかも、レーザーレーサーのような高度な水着にチャレンジしていいのは一部のスーパーアスリートだけであって、多くの人にとっては水着を選ぶよりも己の水泳能力を上げる方が、タイム短縮には近道なのである。

 ところが、ビジネス界の一部には、ITを使えば業績が改善すると思い込み、最新の技術であればあるほど効果は大きくなると信じている人が未だに存在する。この間もあるSIerの人と話をしていたら、「ITを導入すれば効果が出るのは当たり前」などと、何の迷いもなく豪語するものだから思わず笑いそうになってしまった。どれほど自社製品に自信を持っているのか知らないが、こういうSIerから何千万もするシステムを購入するのは躊躇われる。

 道具は人間の活動をサポートするためのものであって、人間の活動に取って代わるのではない。レーザーレーサーの例は極端だったが、RSSリーダーなんかを考えてみればよく解る。有益な最新情報を広く入手し、日常の仕事に活かすという目的は、RSSリーダーを使っただけで達成されるものではない。RSSリーダーはあくまでも情報を集めてくるだけであり、それを活かすも殺すも自分次第である。数ある情報の中から本当に重要な情報を見つけ出す嗅覚が必要だし、抜き出した情報をあれこれと組み合わせ、仮説を作り、意味を見出しながら新たなアイデアを生み出す能力も必要である。もっと基本的なことを言えば、毎日RSSリーダーが集めてくる情報に目を通す時間を業務内外で確保しないことには何も始まらない。つまり、ITを本当に使いこなそうと思ったら、仕事のやり方を変え、自分自身のスキルも高めなければならないのである。これは組織におけるIT投資にも当てはまる話だ。

IT投資と生産性を紐付ける「第3の変数」
 企業におけるIT投資と生産性の関係は長らく謎であった。IT投資額の増加にもかかわらず、生産性が向上していないと言われた時期もあった(ロバート・ソローの「生産性パラドクス」)。その後研究が進みにつれ、IT投資と生産性の間に直接の因果関係があるのではなく、第3の変数が介在していると考えられるようになった。その第3の変数の1つとして挙げられるのが、エリック・ブリニョルフソンが名づけた「インタンジブル・アセット」(見えざる資産)である。
エリック ブリニョルフソン
ダイヤモンド社
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内容は繰り返しだが重要な指摘
日本ではどうだろうか
うーん、難しい
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 ブリニョルフソンが目をつけたのは、ERPプロジェクトの総額に占めるハードウェア・ソフトウェアコストの割合の低さであった。現在ではよく知られていることだが、プロジェクトの金額の大半は、業務プロセスの再構築やユーザーの教育費に充てられる。大抵この手のプロジェクトでは外部のコンサルタントが起用されるため、その分のコストがここには含まれる。だが、プロジェクトに費やした金額は、全て同じように会計処理されるわけではない。それゆえ、重要な要素を見過ごしているとブリニョルフソンは指摘する。
 「(効果が出るまでに何年もかかることを考えると、)ERPプロジェクトに投入される20億円の初期費用は投資であって、その会計年度でかかった費用だとはいえない。この投資は、その後数年間にわたって得られるメリットのために支払われている。そういった意味では、この総額20億円は、そっくり固定資産になったと考えることもできる。これは成果をもたらす固定資産であり、貸借対照表に記載される他の固定資産と同じものではない。ハードウェアは貸借対照表で資産として扱い、会計制度によってはソフトウェアも資産として扱う。しかし、業務プロセスの再設計やユーザー教育などの支出は通常、その会計年度の費用として扱われ、資産に投資したことにはならない。つまり、この情報システムの全体的な価値が、その会社の貸借対照表には現れることはない。そのほんの一部だけが、記載されているだけなのだ。

 この例は、極めて大きなインタンジブル・アセットが、企業の中でいかに貸借対照表に記載されることなく創り出されるかを示している。…幸か不幸か、人は測定しないものを管理することはできない。」
 それでは、インタンジブル・アセットの割合とはどのくらいなのだろうか?ブリニョルフソンによると、「ハードウェアの投資額:インタンジブル・アセットの投資額」は「1:9」であるという。
 「さまざまな異なる種類のプロジェクトを調べた結果、コンピュータのハードウェアの投資額1ドルに対し、インタンジブル・アセットの平均投資額が9ドルになることが分かった。このインタンジブル・アセットとは、業務プロセス、社員教育、取引先との関係、顧客満足度、社員の忠誠心、企業に対する評価などである。つまりコンピュータは投資総額のごく一部にすぎず、インタンジブル・アセットが実質的に生産性の向上を支えているのだ。」
 さらに、企業の短期的な収益率はIT投資と関係が深いが、長期的な収益率はインタンジブル・アセットへの投資と関係が深いとも述べている。

 もっとも、ここまではインタンジブル・アセットの金額的な話である。良質のインタンジブル・アセットを持つ組織とはどういう組織なのか?ブリニョルフソンは、ITのメリットを最大限に引き出すための7つの原則を挙げており、これらの特徴を持つ組織を「デジタル組織」と呼んでいる。そして、組織のデジタル度とIT投資がうまくかみ合うことで、生産性は向上すると結論づけている。
<デジタル組織の7原則>
1.デジタルの業務プロセスへの移行
2.意思決定権の分散
3.オープンな情報アクセスとコミュニケーション
4.業績に基づく給与と報酬制度
5.絞り込まれた事業目的と目標の共有
6.最高の人材の採用
7.人的資本への投資
 残念ながらブリニョルフソンの著書では、インタンジブル・アセットの重要性は指摘されいるものの、引用文を読むと解るようにそこにはいろんな要素が混じっており、中身がきちんと整理されているとは言い難い。また、デジタル組織の7原則にしても、これらを定量的に測定する方法については述べられていない。とはいえ、IT導入に当たっては、そのITを使って実現する業務プロセスを定義し、現状のプロセスから新しいプロセスに移行する手順を明確に定め、それを現場に誤解なく浸透させることが重要であることは、実務上の経験からも異論はないはずだ。繰り返しになるが、ITは所詮ツールでしかなく、人間の使い方次第で薬にも毒にもなるのだ。