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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
December 20, 2011
高木・権藤の70代コンビは、きっと”第2次落合長期政権”の布石―『采配』
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【989本目】1,000エントリーまであと11。
昨日の続き。中日の新監督として就任したのは、中日OBであり86年と92〜95年に監督を務めた高木守道氏だが、この人事を不可解に感じた人は少なくないはずだ。球団側は、落合氏では球団の人気が失われる一方だと判断し、人気回復のために高木氏に白羽の矢を立てたと言うが、どう見ても人気を回復させるための人事とは思えない。
監督としての高木氏の成績は、過去5年で306勝335敗11分の勝率.477であり、勝率5割を切っている。92年〜95年は私がまだ岐阜に住んでいた時期であり、中日と地元の様子をよく見ていたけれども、高木氏の下で地元が盛り上がった記憶がない(中日の監督は、誰が務めても星野氏と比べられて、人気面でどうしてもマイナスに見られるのは致し方ない面もあるが)。
それよりも、今回の球団人事のポイントは、高木氏に加えて同じく70代の権藤氏をヘッドに据えた点にあるだろう(70代の監督は、過去に仰木彬氏[オリックス・バファローズ]、野村克也氏[東北楽天イーグルス]の2人がいるが、ヘッドも70代というのは今回が初)。プロ野球はここ10年ぐらいで選手の寿命が延び、今では40代の選手も珍しくはない。これに対して、コーチや監督の寿命はそれほど延びていないから、引退後の選手が”再就職”するポストがどの球団でも不足している。中日は、監督とヘッドをともに70代にすることで、70代でも指導者として生きる道があることを明確にしたかったのではないかとも思う。
もちろん、引退した選手の生活の面倒を見る義務など球団にはない。中日OBで固められた今回の人事に関しては、外様を中心に組閣した落合氏に対する中日OBの反発に球団側が配慮したという図式では捉えたくない。そうではなく、現場をよく知る好奇心と、自分の持つ野球理論を常に更新し続ける努力があれば、高齢の監督やコーチだって十分にやっていけることを中日は示したいのではないだろうか?そして、この球団側の”采配”は実のところ、何年か経って60代中盤に差し掛かった落合氏が監督に復帰し、第2次長期政権を敷くための布石なのではないかと考えるのは行き過ぎか?
自分のためにならない欠点や悪癖があれば、直してやるのが指導者の役割だ。しかし、打者出身の私は、シュート回転する投手と出会った時、こんなふうに考えたりする。「このシュート回転するストレートを武器にする手はないだろうか」
フォームを微調整すればシュート回転しなくなる。だったら、そう仕向けてやるのが選手のためかもしれない。ただ、指の長さや太さが原因でシュート回転するのなら直しようがない。指を長くするわけにはいかないのだから。それに、どこかひとつの欠点を直すということは、肝心の長所まで消してしまう恐れがあるということを、私は現役時代から何度も見てきている。
私も評論家活動をしていた1999年からの5年間は、12球団すべてのキャンプ地に足を運んだ。キャンプも見ずにあれこれ書くのは失礼だと思っていたし、何よりも自分の目で情報を収集しなければメディアで話すことも書くこともできない。そして、実際に現場に足を運べば勉強になることがいくつもあった。「プロだから見なくてもわかる」という人もいるようだが、私自身は「プロだからこそ見なければわからない」ものだと実感した。プロだから見なくてもわかると言う人は、自分が経験した野球で時間が止まっている。
守備の名手をあえてコンバートした大きな理由のひとつは、井端と荒木の守備に対する意識を高め、より高い目標を持ってもらうためだ。若い選手はプロ野球という世界に”慣れる”ことが肝心なのだが、数年にわたって実績を残しているレギュラークラスの選手からは、”慣れによる停滞”を取り除かなければいけない。
「チームリーダー」という”亡霊”が、選手個々の自立心を奪うことがある。最近の若い選手は、巷でチームリーダーと言われている選手に敬意を表し、「あの人についていけば」とか「あの人を中心に」といった発言をするが、それが勝負のかかった場面での依存心になってしまうケースが多い。「僕はあの人のようにはなれません」などと謙遜しているのを見ると、厳しい勝負の世界で生きていけるのだろうかと老婆心が覗いてしまう。
「毎シーズンAクラス(3位以上)に入れるチームを作ることができた要因は何ですか?」そう問われた時、私が唯一はっきりと答えられるのは「選手時代に下積みを経験し、なおかつトップに立ったこともあるから」である。
今の時代の若い選手に教えておかなければならないのは、「自分を大成してくれるのは自分しかいない」ということだ。「100回バットを振ったヤツに勝ちたければ、101回バットを振る以外に道はない」という大原則と、自己成長力の大切さを認識すること。まずは、そこがスタートラインになる。
2003年10月8日に監督に就任後すぐに視察した秋季キャンプ。私は、全選手に対してメッセージを送った。「来年2月1日のキャンプ初日には紅白戦を行います」 私としてみれば、「新監督の謎めいたメッセージ」によって、選手たちが12月から1月の2ヶ月間、常に野球のことを考え、自分なりの準備に取り組んでくれればよかった。何を隠そう、それが誰からも押しつけられたものではなく、自分自身で自分の野球(仕事)を考える第一歩だからだ。
果たして、2004年2月1日に紅白戦を実施すると、選手たちはすぐにペナントレースが開幕しても戦える状態に仕上げてきた。そして、「いつでも本番で戦える」状態でキャンプを始めれば、実際の開幕までには、さまざまな練習に取り組むことができると気づいたはずである。
プロ野球選手なら、ましてや自分がその先輩の残した記録に迫っているのなら、たとえ同じ時期にプレーしていなくても、すでに鬼籍に入られた方であっても、どんな選手だったのかぐらいは知っておくべきではないか。大袈裟かもしれないが、歴史を学ばないということは、その世界や組織の衰退につながるとさえ思う。
どんな世界でも、その中で仕事をするのなら、その世界や組織の成り立ちから謙虚に学び、先輩たちが残した財産を継承していく姿勢が大切なのではないか。歴史を学べば、それを築いてきた先輩たちが何を考え、どんな業績を残したのかもわかる。成功例だけではなく、失敗例もいくつもあるはずだから、歴史を学ぶことは、同じような失敗を繰り返さないことにもつながるはずだ。
控えに甘んじ、いつまでも年俸の上がらない選手が「監督を慕っている」という話は聞いたことがない。同じように、100人の社員が100人とも「ここはいいな」と感じている職場などあり得ないのではないか。組織の中には、いい思いをしている人とそうでない人が必ず混在している。ならば、職場に「居心地のよさ」など求めず、コツコツと自分の仕事に打ち込んでチャンスをつかむことに注力したほうがいい。運やチャンスをつかめる人は、このことをよくわかっている。
技術、仕事の進め方というものには「絶対的な基本」がある。しかし、「絶対的な方法論」はない。より正確に書けば、野球の世界で、勝つため、技術を高めるための絶対的な方法論はまだ見つかっていない。だから、新人にアドバイスする場合に気をつけなければいけないのは、どこまで基本を理解しているかを感じ取り、足りない知識があれば伝えてやること。つまり、あくまで基本の部分に関してコミュニケートすることなのだ。
ところが、有望な新人が自分と似たタイプだと思い込んだコーチや先輩は、早く一人前になってほしいという親心で、その先の方法論の部分にまで言及してしまう。まだプロの水にも慣れておらず、一方で「言われたことはしっかりやらなければ」と思っている新人にそれをやってしまうと、大概は自分の形、すなわちドラフト1位に選ばれた最高の要素を崩してしまう。
現在は、色々な意味で「我慢の時代」だと感じている。新たな事業に多額の投資をしていくよりも、これまでの時代の流れを振り返りながら現状を維持する努力を続け、チャンスが訪れたと感じた時に攻める姿勢で前に進めるか。力を蓄えておく時期ともいえる。そしてチャンスが訪れたその際に、即座に陣頭指揮を執れるリーダーを育てておくことも必要だろう。そこで理解しておかなければならないのは、どんなに強いリーダーにも、試行錯誤した時期があったということだ。次代のリーダーになろうとしている人たちを、昔の人と比較してばかりいたらリーダーは育たなくなってしまう。
これからは、どんな世界でもリーダー候補者に対してもっと温かい目で見てもいいのではないか。いやせめて、「お手並みを拝見してみようか」という視線を向けるべきではないか。少なくとも、何もしていないうちから「彼にはできない」と見るのだけはやめたほうがいい。
December 19, 2011
「落合嫌い」のミドルマネジャーでも1度は読んでほしい1冊―『采配』
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采配 落合博満 ダイヤモンド社 2011-11-17 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
【988本目】1,000エントリーまであと12。
年末まで毎日更新すると、ちょうど大晦日に1,000エントリーに到達するペースか。いよいよ後がなくなった(汗)。中日の落合博満前監督が日本シリーズでソフトバンクに敗れ、8年間の長期政権にピリオドを打った直後、私の自宅近くの書店は、テリー伊藤氏の『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』という本を平積みにしているところが多かった。
なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21) テリー 伊藤 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-05-10 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
さすがにこれは釣りだろ?ということで手を出さなかった。その後しばらくしたら、facebook上でいろんな人が落合氏の『采配』を読んで絶賛を寄せていたので、そっちには手を出してみた。結論から言えば、「これは読んだ方がいい」。特に、自分の下にマネジャークラスの部下と現場社員クラスの部下の両方を持つミドルマネジャーにはお勧めだ。
『采配』というタイトルであるけれども、個々の試合で落合氏が下した采配について振り返っている本ではない(この辺りが野村克也氏の書籍とは異なる)。それは、采配に関する落合氏の
責任ある立場の人間が下す決断―采配の是非は、それがもたらした結果とともに、歴史が評価してくれるのではないか。ならばその場面に立ち会った者は、この瞬間に最善と思える決断をするしかない。そこがブレてはいけないのだと思う。「こんな判断をしたら、周りから何と言われるだろう」そうした邪念を振り払い、今、この一瞬に最善を尽くす。監督の采配とは、ひと言で言えば、そういうものだと思う。という考え方が影響していることだろう(本書に登場する具体的な采配の場面と言えば、2007年の日本シリーズで完全試合目前の先発・山井を9回に交代させた場面ぐらいである)。本書で言う采配とは、試合以外でも下される幅広い意思決定の局面を指しており、ビジネスパーソンが直面するものと共通点が多い。
具体的には、チームの目標にどうやってフォーカスするか?現場社員(野球で言えば選手)にどのように接するか?部下であるマネジャー(同じく野球で言えばコーチ)にはどう接するか?一流、さらに「超」一流の人材になるにはどうすればよいのか?そして、一流、「超」一流を育てるにはどうすればよいか?などをめぐる決断である。その意味で、本書は立派なビジネス書である。今日は、落合氏が本書の中で提示している含蓄に富んだ言葉の数々から、私のお気に入りを並べてみたいと思う。
ちなみにこの2冊、Amazonのランキングを見てみると、12月19日時点で落合氏が6位、テリー伊藤氏は2,296位だった。テリー伊藤氏の書籍が出版されたのは昨年のことだから単純には比較できないものの、売上、レビューともに落合氏がテリー伊藤氏を圧倒している。これでもテリー伊藤氏は、日本人は落合が嫌いと言い張るのだろうか?
(※1人で過ごしたい若者が増えていることに触れて、)自分の時間は1人で過ごしたいのに、グラウンド(仕事)では「どうすればいいですか」「何か指示を出してください」「これで間違っていませんか」という頼りなげな視線を向けてくる。それでは困る。自分1人で決めねばならないのだ。
野球は9人対9人で戦うチームスポーツだが、実際は投手と打者による1対1の勝負である。しかも、投手の指先をボールが離れると、コンマ何秒で勝負がついてしまう。そんな一瞬の勝負に、長々とアドバイスしている時間はない。孤独に勝たなければ、勝負に勝てないのだ。
私が(現役時代の)半強制的なポスト・シーズンの練習で学んだのは、「不安だから練習する」という原則である。試合開始まで横になって寛ぎ、プレイボールがかかってグラウンドに出れば活躍する。そんな選手になれたら練習は必要ない。私もそういう選手になりたかった。だが、どんなに練習してもそれほどの選手になることは不可能であり、誰もが何らかの不安を抱えてプレーしているからこそ、少しでも不安を払拭しようと練習するのだ。
3割を超えられない選手の傾向を分析すると、3割を目標にしているケースがほとんどである。一方、3割の壁を突破していく選手は、一度も3割をマークしていないにもかかわらず、3割3分あたりを目指している。毎試合3打数1安打なら、打率は3割3分3厘になるというのが目標になる根拠だが、そうやって「達成するのは不可能じゃないか」と自分でも思えるような目標を設定して初めて、現実的に到達可能な目標をクリアできるのだ。
レギュラーになれるチャンスが目の前に転がっている時は、他のすべてのことを忘れてつかみ取りに行かなければ、絶対に手にすることはできない。ビジネスマンでも同じような境遇に置かれることがあるはずだ。そこで自分の仕事に没頭できるか。それとも普段と変わらぬ取り組みでチャンスを逃すか。あるいはチャンスだということさえ見逃すか。自分の目標を達成したり、充実した生活を送るためには、必ず一兎だけを追い続けなければならないタイミングがある。
「一流の領域までは自分一人の力でいける。でも、超一流になろうとしたら、、周りに協力者が必要になる」(※信子夫人が知人から聞いた言葉。この話を聞いた現役時代の落合氏は、スランプに陥ると裏方のスタッフにまでどこが悪いか助言を求めたという)
監督になったつもりで考えてほしい。0対1の悔しい敗戦が3試合も続いた。恐らく多くの方は、打撃コーチやスコアラーの分析結果も踏まえて、3試合で1点も取れない野手陣に効果的なアドバイスをしようと考えるだろう。つまり、「0対1」の「0」を改善するという考え方だ。
私は違う。投手陣を集め、こう言うだろう。「打線が援護できないのに、なぜ点を取られるんだ。おまえたちが0点に抑えてくれれば、打てなくても0対0の引き分けになる。勝てないときは負けない努力をするんだ」
先発投手から浅尾、岩瀬という継投を、私は勝利に近づくための最善策としかとらえていない。ゆえに、試合の流れや岩瀬の状態を考慮して、9回に浅尾を使うこともあれば、この二人が出てくるだろうという場面で他の投手を使うこともある。岩瀬や浅尾という投手への信頼感とは別の次元で、私は「岩瀬を出せば勝てる」と思ったことは一度もない。岩瀬に対して「抑えてくれよ」と思っているが、一方で頭の中は岩瀬が打たれた場合の戦い方も、シミュレーションしている。
勝負に絶対はない。しかし、「勝敗の方程式」(※勝負を少しでも有利に進めるための原則論。「勝利の方程式」ではない)を駆使して最善の策を講じていけば、仮に負けても次に勝つ道筋が見える。そう考え、戦ってきたのだ。
私が選手を叱るのはどういう場面か。それは「手抜き」によるミスをした、つまり、自分のできることをやらなかった時である。打者が打てなかった、投手が打たれてしまったということではない。投手が走者の動きをケアせずに盗塁された。捕手が意図の感じられないリードをした。野手がカバーリングを怠った。試合の勝敗とは直接関係なくても、できることをやらなかった時は、コーチや他の選手もいる前で叱責する。注意しなければ気づかないような小さなものでも、「手抜き」を放置するとチームには致命的な穴が開く。まだまだ紹介したい文章があるので、もう1回記事を書くことにします。
(続く)
August 08, 2011
GEの「9Blocks」というユニークな人事制度
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ジャック・ウェルチがGEのCEOを務めていた期間は、アメリカを、そして世界を代表する優良企業と言えば、ほぼ例外なくGEの名前が挙がり、GEが実行した様々な施策(ベンチマーキング、シックスシグマ、セッションC、ワークアウトなど)は、世界中のビジネスパーソンや研究者の関心を引いたものだ。今日は、私が知っている範囲で、GEの特徴的な人事評価制度について書いてみたい(ただ、現在のGEがどのような人事制度をとっているかは、申し訳ないが情報がなくて解らない。あくまでも、ウェルチの在任期間中のものとして捉えていただければと思う)。
GEはまず、厳格な成果主義を取っている。ここで1点注意しておきたいのは、「結果主義(業績主義)」と「成果主義」の違いである。「結果主義」とは、あくまでも最終的な業績のみを評価するやり方である。営業担当者であれば売上高や粗利率、製造責任者であれば在庫回転率や出荷額など、財務上の結果に結び付きやすい指標に基づいて評価を行う。
他方、本当の意味での「成果主義」では、業績のみを評価するのではなく、そこに至るまでの「中間指標(プロセス指標)」や、最終的な結果に結びつきやすい「行動」も評価対象とする。先ほどの営業担当者の例で言えば、売上高や粗利率に加えて、「中間指標」として、営業活動に対する顧客の満足度や、見込み顧客の商談化率、商談の進捗率などといった指標を用いる。また、「成果に結びつきやすい行動」とは、いわゆるコンピテンシーのことだ(※1)。最終的な結果、中間指標、コンピテンシーの3つをバランスよく評価するのが、本来の意味での成果主義である。
「成果主義」というと、成果が大きければ大きいほど高く評価されるような感じにも聞こえるが、GEは「成果の大きさ」ではなく、「成果を上げる生産性の高さ」で評価を行っている。なぜならば、成果の大きさで評価してしまうと、育児のために時短勤務制度を利用している女性社員がどうしても不利になるからだ。こうした弊害をなくすためにも、成果の大きさではなく、生産性に基づいて評価を行っている。こうした評価方法は、GEがダイバーシティマネジメント、とりわけ優秀な女性社員をGEにつなぎとめ、その能力を最大限に活用するために、重要な役割を果たしている。
以上の前提を踏まえて、GEの「9Blocks」という考え方について説明したいと思う。これは、「直近のパフォーマンス(成果)」と「将来的なポテンシャル」という2軸で社員をカテゴライズする方法である。直近のパフォーマンスの軸は、「上位20%」、「中位70%」、「下位10%」に分けられる。一方、将来のポテンシャルの軸は、「今すぐにでも上位職務の担当が可能」、「2〜3年以内に上位職務の担当が可能」、「今の職務が限界」に分けられる。
これによって、下図のような9つのボックスからなるマトリックスができあがる。このマトリックスが面白いのは、単にパフォーマンスがよいからといって高い評価が得られるわけではなく、またパフォーマンスが低くても幾何の猶予期間が与えられるということである。
営業担当者であれば、市場に追い風が吹いていた、上司や同僚の強力なサポートがあった、競合他社の担当者がボーンヘッドをやらかして、偶然にも自分のところに案件が転がり込んできた、などといった様々な運が作用していた場合、一番右上のボックスではなく、その左隣のボックスに移されてしまう。
これとは逆に、十分な能力もあり、これまでもそれなりのパフォーマンスを上げてきた人が、今期はたまたま不運が重なって思うような成果が出なかったとしても、一番左下のボックスではなく、その右隣のボックスにプロットされる可能性がある。
すでにお解りのように、一番右上のボックスの社員は最も優秀な社員であり、逆に一番左下のボックスの社員はC級社員ということになる。そして、GEでは、このC級社員は問答無用で解雇される(日本では直接解雇することが難しいので、「肩たたき」みたいな形で退職を促すのだと思われる)。毎期とも、一番左下のボックスにプロットされる社員が出てくるから、定期的に一定の社員が解雇されるわけだ。こうして、GEはC級社員が社内にとどまり続けることを防ぎ、組織の新陳代謝を促しているのである(※2)。
(※1)「コンピテンシー|Wikipedia」や「コンピテンシー|@IT情報マネジメント」を参照。
(※2)余談になるが、グーグルは世界中から優秀な人材を集めるべく、一般の企業とは比べ物にならないほど複雑で長期間にわたる採用ステップを踏んでいることで知られる。グーグルがそこまで血眼になって採用活動を行っているのは、「バカを入社させてしまうと、そのバカが周囲にも伝染してしまうから」であるという。
GEはまず、厳格な成果主義を取っている。ここで1点注意しておきたいのは、「結果主義(業績主義)」と「成果主義」の違いである。「結果主義」とは、あくまでも最終的な業績のみを評価するやり方である。営業担当者であれば売上高や粗利率、製造責任者であれば在庫回転率や出荷額など、財務上の結果に結び付きやすい指標に基づいて評価を行う。
他方、本当の意味での「成果主義」では、業績のみを評価するのではなく、そこに至るまでの「中間指標(プロセス指標)」や、最終的な結果に結びつきやすい「行動」も評価対象とする。先ほどの営業担当者の例で言えば、売上高や粗利率に加えて、「中間指標」として、営業活動に対する顧客の満足度や、見込み顧客の商談化率、商談の進捗率などといった指標を用いる。また、「成果に結びつきやすい行動」とは、いわゆるコンピテンシーのことだ(※1)。最終的な結果、中間指標、コンピテンシーの3つをバランスよく評価するのが、本来の意味での成果主義である。
「成果主義」というと、成果が大きければ大きいほど高く評価されるような感じにも聞こえるが、GEは「成果の大きさ」ではなく、「成果を上げる生産性の高さ」で評価を行っている。なぜならば、成果の大きさで評価してしまうと、育児のために時短勤務制度を利用している女性社員がどうしても不利になるからだ。こうした弊害をなくすためにも、成果の大きさではなく、生産性に基づいて評価を行っている。こうした評価方法は、GEがダイバーシティマネジメント、とりわけ優秀な女性社員をGEにつなぎとめ、その能力を最大限に活用するために、重要な役割を果たしている。
以上の前提を踏まえて、GEの「9Blocks」という考え方について説明したいと思う。これは、「直近のパフォーマンス(成果)」と「将来的なポテンシャル」という2軸で社員をカテゴライズする方法である。直近のパフォーマンスの軸は、「上位20%」、「中位70%」、「下位10%」に分けられる。一方、将来のポテンシャルの軸は、「今すぐにでも上位職務の担当が可能」、「2〜3年以内に上位職務の担当が可能」、「今の職務が限界」に分けられる。
これによって、下図のような9つのボックスからなるマトリックスができあがる。このマトリックスが面白いのは、単にパフォーマンスがよいからといって高い評価が得られるわけではなく、またパフォーマンスが低くても幾何の猶予期間が与えられるということである。
営業担当者であれば、市場に追い風が吹いていた、上司や同僚の強力なサポートがあった、競合他社の担当者がボーンヘッドをやらかして、偶然にも自分のところに案件が転がり込んできた、などといった様々な運が作用していた場合、一番右上のボックスではなく、その左隣のボックスに移されてしまう。
これとは逆に、十分な能力もあり、これまでもそれなりのパフォーマンスを上げてきた人が、今期はたまたま不運が重なって思うような成果が出なかったとしても、一番左下のボックスではなく、その右隣のボックスにプロットされる可能性がある。
すでにお解りのように、一番右上のボックスの社員は最も優秀な社員であり、逆に一番左下のボックスの社員はC級社員ということになる。そして、GEでは、このC級社員は問答無用で解雇される(日本では直接解雇することが難しいので、「肩たたき」みたいな形で退職を促すのだと思われる)。毎期とも、一番左下のボックスにプロットされる社員が出てくるから、定期的に一定の社員が解雇されるわけだ。こうして、GEはC級社員が社内にとどまり続けることを防ぎ、組織の新陳代謝を促しているのである(※2)。
(※1)「コンピテンシー|Wikipedia」や「コンピテンシー|@IT情報マネジメント」を参照。
(※2)余談になるが、グーグルは世界中から優秀な人材を集めるべく、一般の企業とは比べ物にならないほど複雑で長期間にわたる採用ステップを踏んでいることで知られる。グーグルがそこまで血眼になって採用活動を行っているのは、「バカを入社させてしまうと、そのバカが周囲にも伝染してしまうから」であるという。