※2012年12月1日より新ブログに移行しました。よろしければこちらもご覧ください。
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January 10, 2011

年明けということで、改めて自分の価値観を棚卸ししてみた

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 リーダーシップ開発における「自分自身の価値観」の重要性については昨年も何度かブログで取り上げたが、「そういえば、私自身の仕事における価値観をちゃんとブログで書いたことがないなぁ?」と思い、改めて整理してみることにした。カテゴリ別に「Do's(すべきこと)」と「Don'ts(すべきでないこと)」を並べている。組織文化の研究では、「価値観(暗黙の前提)」と「行動規範(価値観を体現する言動)」を厳密に区別するようだが、今回はそこまでの正確さは追求せずに、思いつくままに書いてみた。

顧客ターゲティングの考え方(取引をしたい顧客)
 《Do's》
 ・「太く長く続く顧客(=我々の主たる顧客は人事部・人材開発部)」を作る。
 (⇒顧客企業を深く理解し、顧客企業のビジネスに合ったコンテンツを提供する上ではこれが重要)
 ・研修だけでは本当はダメだと内心では思っている問題意識の強い顧客。
 ・事業戦略と人材育成のリンクを真剣に考えている顧客。
 ・研修実施にあたって、現場(=受講者の直属のマネジャーなど)を積極的に巻き込みたいと考えている顧客
 ・現場部門とのリレーションが深い顧客。
 (⇒そのような顧客は、研修内容を現場で実践してもらうために現場を巻き込んでくれるし、巻き込みに成功すると、受講者が研修内容を現場で実施するのをマネジャーがサポートしてくれる)

 《Dont's》
 ・研修の運営方法ばかりにいちいちこだわる顧客とは付き合わない。
 (私は別に、研修オペレーションのプロフェッショナルになりたいわけではない)
 ・「とりあえず上層部から研修をやれと言われたから」とか、「予算が余っているから」という理由で研修を実施しようとする顧客とは付き合わない。
 (⇒そういう顧客に対して研修をしても、受講者にとっては有益な研修にならないことが多い)

顧客への提供価値
 《Do's》
 ・顧客企業の事業戦略と密接にリンクした研修コンテンツを提供する。
 ・場合によっては、顧客企業の人材戦略の構築から支援をする。
 (⇒その方が、内容の濃い研修ができあがるし、現場で研修を活用してもらえる可能性が高まる)
 ・現場で使える実践的な知を提供する。
 ・一方的な知の提供だけではなく、顧客の事業発展に貢献するナレッジを顧客とともに協創する。
 (⇒講師が顧客より偉いわけでは決してない。顧客の知と我々の知を融合させると新しい知が生まれる)

 《Dont's》
 ・書籍で学習できるレベルの内容は絶対に提供しない。
 (⇒それなら、本を社員の人数分買うことをお勧めする。その方が研修を実施するより安上がりだから)
 ・新人研修など、汎用スキル系は重視しない。
 (⇒競合が多すぎるので、差別化が難しいし、価格競争になりやすい)

製品開発の進め方
 《Do's》
 ・「自分がほしい」、「こういう研修を受けたい」、「自分が社長だったら自社の社員に学習させたい」と思えるサービスを開発する。
 (⇒自分がほしいと思わないものを顧客に提供するのはほとんど詐欺)
 ・講義の時間を極力減らし、演習の時間を長く確保する。
 (⇒研修の目的は、講師の話を聞いてもらうことではなく、受講者自身に考えてもらうことである)
 ・投資回収点を意識した開発・販売スケジュールを組む。
 (⇒昔、これをおろそかにして痛い目に遇ったことがあるので)

 《Dont's》
 ・顧客の声を聞きすぎない。顧客の言いなりにはならない。
 (⇒顧客が全ての解を知っているのならば、我々の存在意義はどこにもない)
 ・「自分がやりたいこと」に固執しすぎない。
 (⇒「自分がほしい」と思うサービスに偏りすぎないよう、ある程度のブレーキは必要)

プロモーションの展開
 《Do's》
 ・「誠実なプロフェッショナルであること」を示す情報を発信する。
 ・研修は目に見えないサービスであるがゆえに、サービスの内容はできるだけ広く公開し、顧客の研修導入の意思決定をサポートする。
 ・プロモーションに対する投資回収点を明確にし、回収具合をモニタリングする。
 (⇒「そんなの当たり前だろう?」と思われるかもしれないが、意外と忘れやすいんだな…)

 《Dont's》
 ・カウントの仕方によっては確かに事実だと言える実績であっても、一見すると極端に思える数的実績は表示しない。
 (⇒一気に胡散臭くなるため)
 ・雑誌広告など、成果を測定しにくい広告投資は控える。

競合他社に対する姿勢
 《Do's》
 ・競合他社に対しても、できるだけ自社サービスの内容をオープンにする。
 (⇒研修業界は何かと閉鎖的なので、いつまでもコンテンツの質が安定しないと個人的には思っている。過去の記事「研修業界はまだまだ未熟な業界かもしれない」も参照)

 《Dont's》
 ・競合他社のベンチマーキングはほどほどにする。
 (⇒最低限のクオリティをクリアするためのベンチマークはするが、やりすぎると差別化できなくなる)
 ・競合他社との価格競争はしない。
 (⇒安くしなければ売れないような自社サービスの方に問題がある)

仕事の進め方
 《Do's》
 ・どのタスクでも、「目標作業時間」を常に意識する。
 (⇒最近のビジネスパーソンの多くがそうであるように、我々の仕事も即興的なものが多く、1つとして同じ仕事はない。しかし、ある程度のカテゴライズは可能なので、カテゴリ別に目標作業時間を設定することで、仕事の生産性を意識することができる)
 ・品質を落とさずに目標作業時間を短縮できるような改善策を常に検討する。
 ・時には1人きりになる時間を確保する。
 (顧客全体や、サービス体系全体のことを冷静になって考えるには、1人になることが必要)
 ・仕事が速く終わったら、自己研鑽やネットワーキングに時間を使う。
 (⇒将来に役立つ知や人脈を獲得しておかなければ、ビジネスが長続きしない)

 《Dont's》
 ・スケジュールをぎちぎちに組まない。
 (⇒バッファがないと、精神的にも肉体的にもゆとりがなくなる。ゆとりがなくなると、結局はクオリティに悪影響を及ぼす)
 ・半期ごとの目標は片手に収まる程度に抑える。
 (⇒たくさんの目標を一度に追いかけても、達成できたためしがない)
 ・だらだらと残業しない。
 (⇒必要以上に会社にいても、いいことなんて何一つない)

意思決定(会議の進め方)
 《Do's》
 ・会議では必ず目的と議題、論点を明示する。
 (⇒特に社内会議の場合は、気が緩んでついつい忘れがち)
 ・会議での決定事項に関わりのある利害関係者は、会議のメンバーに忘れずに入れる。
 (⇒彼らに対して、会議終了後に決定事項を説明しようとしてはいけない。たいてい、「何で勝手にそんなことを決めたんだ?」となって、話をひっくり返される)
 ・建設的な対立が見られない会議は失敗とみなす。
 ・確実に実施される決定事項については、会議の参加者以外にも迅速に公開する。
 ・リアルコミュニケーションによる意思決定を重視する。

 《Dont's》
 ・下準備のない会議はやらない。
 (⇒議題や論点、討議用資料がない会議で、何かいいことが決まったためしがない)
 ・感情的な対立は避ける。
 ・社内にあらぬ憶測や噂が流れないよう、秘密会議をしない。
 ・不確実性を含む決定事項は性急にオープンにしない。
 (⇒事業計画や予算など、将来に関する事項でまだ正式に決まっていないものは、議論の経過に関する情報であっても性急にオープンにしない。なぜならば、聞く人によって解釈の違いが生まれ、あらぬ誤解が発生するリスクがあるから)
 ・メールでは議論しない。
 (⇒読むのがうっとうしいし、言外の意味をつかみ損ねることが多い)

チームワーク
 《Do's》
 ・それぞれのメンバーのパフォーマンスを見える化する。
 (⇒ピア・プレッシャーを生み出すと同時に、相互の健全な社内競争を刺激する)
 ・他のメンバーの仕事内容に関心を持つ。
 ・他のメンバーに仕事を依頼する場合は、その人がその仕事をやりたいと思っているかどうかを確認する。
 (⇒やりたくないことを無理にやらせても、たいした成果は出ない。ただ、その人がやりたくないと思っていても、会社にとってどうしても必要な仕事である場合は説得する)
 ・誰かが自分の元に相談に来た場合は、作業の手を止めてすぐに相談に乗る。
 ・事業の発展に役立つ新しい情報やナレッジはすぐにメンバー間で共有する。

 《Dont's》
 ・「他のメンバーがどんな仕事をやっているのか解らない」という状況を作らない。
 (⇒組織全体が重くなる。過去の記事「組織が<重い>主たる要因は仕事の属人化だと思う」も参照)
 ・努力しない人には手を差し伸べない。
 ・間違った努力を続ける人にも手を差し伸べない。
 (⇒私はそこまでお人よしではない)

 私と一緒に仕事をしている皆さんの中には、「お前、そんなのできてねーじゃねぇか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、今年は言行一致を目指します!
December 28, 2010

今年読んだリーダーシップの本の中で最もしっくりきたよ(2)―『最前線のリーダーシップ』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
マーティ・リンスキー
ファーストプレス
2007-11-08
おすすめ平均:
組織を動かすための業(わざ)と心を伝える素晴らしい本
【座右】リーダーシップ、問題解決、そしていかにして生き残っていくかについての処方箋
リーダーシップを発揮するということは、危険な生き方をするということである
posted by Amazon360

 前回からの続き。この本を読んで印象に残ったことを3点ほどまとめておきたいと思う。

(1)「変革によって失うもの」に対する共感力
 適応の作業には時間がかかる。尊重している価値観と実際の行動のギャップ、つまりわれわれの生活やコミュニティのなかにある内部矛盾に立ち向かうには、喪失を受け入れる必要がある。適応の仕事はしばしば、われわれに自らのルーツへの忠誠を裏切ることを求める。
 人々が長年、あるいは何世代にもわたって抱いてきたものを捨てるように求めるのは、実際にはその人にあなた自身を追い払うように促しているのと同じことだ。リーダーはときに、人々に求める犠牲の大きさを正しく認識していないことが理由になって排除される。そうしたリーダーは、変化が非常に大きな犠牲を伴うものであることに気づいていないため、他人にとってそれがどういうことなのかを想像できないのだ。
 企業を構成するあらゆる要素には、その企業特有の価値観が反映されている。例えば、ターゲットとする顧客層、提供する製品やサービス、顧客対応のあり方、株主との関係、仕入先との取引、品質改善への取り組み、研究開発、組織構造、各部門の業務プロセスや権限・責任の範囲、活用している情報システム、意思決定の構造、予算配分のメカニズム、採用や人員配置のシステム、人材育成のプログラム、評価・報酬制度などをじっくりと観察すれば、根底には何らかの価値観が横たわっていることが解る。

 さらに、企業に価値観があるのと同様に、企業で働く社員も多種多様な価値観を持っている。もちろん、同じ組織で働く以上、企業の価値観と社員の価値観はある程度一致しているものの、微妙に異なる部分があるのも確かである(企業と個人の価値観の微妙なズレに着目して、「ビジネスパーソンのキャリア開発」という新たな研究分野を切り開いたのが、組織心理学者のエドガー・シャインだ)。

 リーダーが新しい現実に組織や個人を適応させるために、組織の構成要素や個人の働き方、活動の仕方を変える場合、それは表面的な変化を要求するだけでなく、組織や個人がもともと備えている価値観の変更を迫ることになる。

 リーダーは、複雑で多岐に渡る価値観の取捨選択と調整を通じて、組織全体のパフォーマンスが従来よりも飛躍的に増大するように導く。しかしその一方で、副作用として「組織や個人が大事にしてきた価値観の喪失」という多大な苦痛が生まれる。

 「リーダーは未来の青写真を明確に示し、ビジョンが実現されれば、今よりもずっとよい状態になれることを周囲のメンバーに訴えることが重要だ」という話をよく聞くが(私も過去にこのブログで書いたかもしれない)、これはまだ話の半分に過ぎないんだね。メンバーが比較しているのは「現状維持」と「変革後の未来」なのではなく、「変革によって失われるもの」と「変革によって得られるもの」なのである。

(※この点で、今回の民主党政権は、政治家にとっても国民にとっても大きな教訓だ。民主党は、マニフェストの実行によって、自民党政権が長期に渡って築き上げてきた日米関係などの遺産が壊されることに無頓着だったし、国民も民主党政権になることで何かが変わることばかりを期待し、何が失われるかまで考えをめぐらせることができなかった)

 だから、リーダーは変革によるメリットを示すと同時に、変革がもたらす犠牲も明示しなければならない。何かを新たに始めるということは、同時に何かを失うことでもある。そうした「喪失」に敏感になり、共感を寄せること。当たり前といえば当たり前なのだが、改めてその重要性を認識させられたなぁ。

(2)「その問題は誰の問題か?」を見極める冷静さ
 適応が求められる問題を(リーダー自身が)引き受けてしまうことは危険を伴う。そのような問題を引き受けると、あなたがその問題になる。そうなってしまうと、問題を取り除く方法は、あなたを取り除くことになってしまうのだ。
 人々は、あなたにその問題の真ん中に入って立て直すこと、立ち上がって問題を解決することを期待する。そういった期待を満たしたとき、勇気に満ちた立派な人間だと言われるだろう。しかしそれはお世辞にすぎない。彼らの自分に対する期待や依存心に挑むことのほうが、よっぽど勇気が必要なのだ。
 リーダーはあらゆる問題を解決したいという欲求に駆られるし、周囲もリーダーが最後は問題を解決してくれることを期待するものだ。しかし、そうした欲求や期待に素直に従ってしまうと、墓穴を掘る危険性があると著者は警告している。

 同書では一例として、リンドン・ジョンソン大統領の名が挙がっている。ジョンソンは、ベトナム戦争の責任を自分で全て背負い込もうとした。しかし真の問題は、敗北を認めてベトナムから撤退するのか、勝利を収めるために莫大な財務的・人的な犠牲を負い続けるのかについて、議会や世論に投げかけることであった。それをしなかったジョンソンは、反戦活動家から集中的に非難を浴びる結果になったと著者は分析している。

(※私はベトナム戦争の背景に詳しいわけではないので、この事例をうまく解釈しきれていない部分があることは正直に認めるよ。戦争を開始する意思決定は大統領が下すはずだから、戦争の続行or終結を決める責任も大統領にあるんじゃないか?という気もする。

 ただ一方で、著者が言いたいのは、戦争に伴う財政支出の規模や財源の捻出方法、さらには犠牲者の数を最小限にとどめる方策といった個別具体的な事案については、議会や軍が責任を負うべきであり、大統領がそこまで首を深く突っ込むべきではなかった、ということだったようにも思える。著者は大統領に対して、「東側諸国との関係をどうするのか?」という大局的な視点で問題を提起することを望んでいたのかもしれない)

 ジョンソンの事例はやや極端かもしれないけれど、企業の世界でも似たようなことは頻繁に起きる。リーダーに対する周囲の依存度が高いと、本来はリーダーがやらなくてもいいような些細な問題までリーダーのもとに持ち込まれる。リーダーはよかれと思って彼らの問題を肩代わりするが、それは同時にメンバーの成長機会を奪うことにもなる。

 さらに、リーダーも万能な人間ではないから、小さな問題であっても時にうまく解決できないこともあるだろう。すると周囲は、「リーダーのくせに、あんな小さな問題で失敗した」と冷淡な視線を向けるようになる。リーダーに対する期待の大きさと、リーダーが取り組んでいた問題のレベルの低さのギャップが大きければ大きいほど、こうした批判は強くなる。そして、リーダーは周囲の支持を失い、失脚するのである。

 リーダーは、「全ての問題を解決できる英雄になりたい」という欲求とおさらばしなければならない。リーダーは全ての問題を自分で解決する必要はない。「その問題の『所有者』は誰なのか?」を冷静に考え、自分が出る幕でないと感じたら、問題の当事者に作業を投げ返すぐらいでちょうどいいんだね。

(3)個人攻撃による「問題のすり替え」に騙されない用心深さ
 個人攻撃もまた、人の変化に向けた取り組みを葬り去るために長年使われてきた方法である。どんな形の攻撃であれ、もし攻撃を加えられた人間の会話の内容が、いま取り組んでいる問題から性格や仕事のやり方、あるいは攻撃の内容そのものに変わったのならば、その問題を議題から消し去ることに成功したといえる。
 人は、自分が間違った形で論じられたり、だれか別の人間の問題を体現する立場としてのレッテルを貼られたりすれば、議論に飛び込んでいきたくなる。しかし、自分自身について説明しようと奮闘すると、他人の問題を自分自身の問題に変えてしまうことになる。
 これは政治の世界では常套手段だもんね。同書では、ジョージ・W・ブッシュ大統領がたまたま漏らした偏見的な発言がマスコミに伝わって、大統領としての資質を問われる事態になった事例などが紹介されている。

 つい先日の記事「他人からのアドバイスにはどのくらい耳を傾ければいいんだろうか?―『リーダーへの旅路』」で、「リーダー個人の資質や性格、行動に関するフィードバックには真摯に耳を傾けた方がいい」と書いたけれど、これはまだ内容としては不十分だったなぁ(汗)。

 もちろん、ここで私自身の主張を撤回するつもりはない。「あなたは部下とのコミュニケーションが足りていない」、「あなたは部下に対する要求水準が高すぎる」、「あなたの方針が頻繁に変わるから、社員が疲弊している」などといった直接的なフィードバックには、十分すぎるほどの意味がある。実際、同書にも外部コンサルタントからのフィードバックによって自らの行動規範を変えたCEOの例が紹介されている。

 先日の私の記事に欠けていたのは、こうした直接的なフィードバックの重みは、リーダーとフィードバックをする人の間の「リレーションの深さ」によってかなり変わってくるという点だ。リレーションが深い場合は、2人のこれまでの関係をリスクにさらした上で敢えて批判しているわけだから、その内容には相当の重みがある(配偶者からの批判は、誰からのフィードバックよりも心に突き刺さるものだ)。

 これに対して双方の関係が浅い場合、フィードバックする人が批判によって失うものは少ないから、好き勝手にリーダーを批判することもできる。その典型例が、政治家とマスコミ(世論)の関係である。本来的には、マスコミは政治家の活動を監視・牽制する役割を担っているはずなのだが、最近はどうも「紙面や放送時間の枠を簡単に埋められる、そんなに難しくない話題」ばかりを探している気がしてならない。その結果、どうでもいい失態を大げさに取り上げて政治家を批判する傾向が強くなっている。政治家の方も、マスコミのどうでもいい批判に過剰反応するものだから、政治がちっとも進展しない。

 「尖閣諸島」と「政治とカネ」を同列に並べ立てて、「どちらもうまく対処できない菅首相は、意思決定能力が欠けている」などとマスコミが批判するのは、お門違いもはなはだしい話だ。「政治とカネ」の問題は小沢氏個人の問題であり、それを民主党全体の問題のように拡大解釈しててんやわんやになっているようでは、菅首相はマスコミの策略に完全にはまっているとしか言いようがない。この2つに限って言えば、「尖閣諸島」の方が国益に関わる点でよっぽど重要である。その問題に取り組むための貴重な時間を、マスコミの謀略によってそぎ落とされているのである。

 首相の役割は、マスコミが問題だと騒ぎ立てるもの(=それが真の意味で問題であるとは限らない)にいちいち回答することではなく、日本の将来を考えた場合に優先的に取り組むべき課題の順番を明示することであろう。そしてそれらの課題を着実に実行する時間を確保するには、リーダー本来の役割とは関係のない、的外れな個人攻撃を華麗にスルーする術を身につけることも大事なんだね。
December 27, 2010

今年読んだリーダーシップの本の中で最もしっくりきたよ(1)―『最前線のリーダーシップ』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
マーティ・リンスキー
ファーストプレス
2007-11-08
おすすめ平均:
組織を動かすための業(わざ)と心を伝える素晴らしい本
【座右】リーダーシップ、問題解決、そしていかにして生き残っていくかについての処方箋
リーダーシップを発揮するということは、危険な生き方をするということである
posted by Amazon360

 今年はリーダーシップ関連の本のレビュー記事を結構たくさん書いたんだよね~

 優れたリーダーは最短距離を走らない(前半)-『人と組織を動かすリーダーシップ(DHBR2010年5月号)』
 優れたリーダーは最短距離を走らない(後半)-『人と組織を動かすリーダーシップ(DHBR2010年5月号)』
 リーダーは「アジェンダ設定」と「ネットワーキング」を行ったり来たり-『ビジネス・リーダー論』
 これは宗教なのか?科学なのか?-『ダイアローグ-対立から共生へ、議論から対話へ』
 「思考」によって分断された世界を「対話」を通じて調和する-『ダイアローグ-対立から共生へ、議論から対話へ』
 ダイアローグの4プロセスを整理してみた-『ダイアローグ-対立から共生へ、議論から対話へ』
 民主型リーダーシップの本としての『シンクロニシティ-未来をつくるリーダーシップ』
 ピーター・センゲのU理論を再解釈してみた(1)-『出現する未来』
 ピーター・センゲのU理論を再解釈してみた(2)-『出現する未来』
 大事なのはリーダーシップのスタイルじゃないということ-『静かなリーダーシップ』
 地位パワーがなくてもリーダーシップは発揮できる(1)-『静かなる改革者』
 地位パワーがなくてもリーダーシップは発揮できる(2)-『静かなる改革者』
 優れた古典は深遠な議論への入り口である-『リーダーになる』
 「やりたいこと」と「得意なこと」のどちらを優先すればいいんだろう?―『リーダーへの旅路』
 他人からのアドバイスにはどのくらい耳を傾ければいいんだろうか?―『リーダーへの旅路』

 ウォーレン・ベニスの『リーダーになる』はリーダーシップの古典であり、「リーダー自身の価値観」がリーダーシップの成果を左右することを指摘している。「リーダーの価値観の重要性」は他の多くのリーダーシップ研究でも言及されており、最近紹介した『リーダーへの旅路』もその1冊である。

 ジョン・コッターの『ビジネス・リーダー論』は、トップマネジメントのリーダーシップを研究したものだ。同書では、コッターが定義したリーダーシップの2つの役割=「アジェンダ(課題)設定」と「ネットワーキング」に従って、「リーダーが取り組むべき課題」と「リーダーが形成すべきネットワーク(人脈)」が明らかにされている。

 これに対して、ジョセフ・バダラッコの『静かなリーダーシップ』と デブラ・メイヤーソンの『静かなる改革者』は、ミドルマネジャーあるいは役職・権限を持たない人々によるボトムアップのリーダーシップを題材としている。「リーダーシップは、カリスマ性のあるトップの人間が発揮するものだ」という固定概念に一石を投じる内容になっているのが特徴だ。

 デイビッド・ボームの『ダイアローグ-対立から共生へ、議論から対話へ』、ジョセフ・ジャウォースキーの『シンクロニシティ』、ピーター・センゲの『出現する未来』の3冊はちょっと毛色が異なる。いわゆる「ニューサイエンス」の知見を取り込んだ、新しいリーダーシップ論である。

 この3冊がベースとしているのは、ボームの「内臓秩序」というコンセプトである。ボームらの言いたいことを簡単にまとめると、人間はお互いのことを正しく理解し合うことはできないが、根底の意識レベルはつながった存在であり、深層レベルでの連帯を感じることができれば、自ずと正しい方向へと人々は導かれる、といった感じになる。

 私自身はニューサイエンスのことなど全然勉強していないし、ピーター・センゲらのU理論に対する理解も不十分であるから、この新しいタイプのリーダーシップについてとやかく論じる資格はないのだろうけど、他のリーダーシップの書籍に比べると、どうしても抽象的な印象がある。

 「人間同士が意識レベルでつながれば、自ずと事態が好転する」というのは、「頑張れば何とかなる」と言っているのと大差ないようにも思える(そういうのは、しがないロックバンドの歌詞に任せておけばいい)。さらに、「内臓秩序」という、宇宙全体のシステムを規定する存在を想定することは、乱暴な言い方をすれば"形を変えた全体主義"のような気がしてならないんだな。

 具体性という意味では、今日紹介する『最前線のリーダーシップ』が今年一番だった。帯に竹中平蔵氏の推奨文が載っていたので、てっきり政治の世界におけるリーダーシップに特化したものだと思っていたけれど、とんだ勘違いだった(こういう早合点は私の悪い癖だな…)。

 もちろん、著者の専門分野が政治・行政であるため、大統領(クリントン、ブッシュ、ニクソン、ジョンソン、F・ルーズベルトなど)や州政治のリーダーシップに関する事例が多いのは確かだが、それ以外にも国際機関(WTOなど)、企業(IBM、ゼロックス、DECなど)、非営利組織といった、様々な組織におけるリーダーシップが考察の対象となっている。さらに、組織の最上位から最下層にいたるまで、あらゆる階層のリーダーシップを取り上げており、全体として非常に包括的である。事例の豊富さという意味では、この本が今年読んだ本の中で断トツだった。

 この本のテーマは、「リーダーシップを発揮する際に、どうやって最後までやり遂げるか?」ということである。リーダーシップのプロセスには数多くの危険が潜んでいる。変革に反対する周囲の人々は、ありとあらゆる方法でリーダーを攻撃する。

 ただし、リーダーを陥れる危険はこれだけではない。リーダー自身の「本能」の中にも危険は潜んでいるのだ。それは、「権力への渇望」や「自分が万能であるといううぬぼれ」、「多くの人から支持されたいという親和欲求」、さらには「自分こそが世界を救える英雄だと思い込む自尊心」などである。

 リーダーは、そのようなリスクをかいくぐりながら、自分自身の身も守りつつ、「正しいこと」を実現させなければならない。そのための技術や考え方を存分に教えてくれる良書である。

 (続く)