※2012年12月1日より新ブログに移行しました。自分で言うのもおこがましいですが、20代の頃に書いた本ブログよりも、30代に入ってから書いている現行ブログの方がはるかに中身が濃く、内容が多岐にわたり、面白いと思いますので、是非ご覧いただけるとありがたいです!
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April 12, 2006

イノベーションの全容解明へ(2)−シーズ開発というブラックボックス

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理論は「予測可能性を高める」
 クリステンセンが紹介した例の多くは、まだイノベーションが何たるかがほとんど明らかにされていない時期のものです。後にイノベーションを完成させた企業も、最初はマーケティングの理論に従って市場のニーズを把握し、一応それに応えるように製品を作っていました。しかし、既存企業が製造している製品には性能面でかなわないため、マーケットシェアを奪うことができません。「仕方なく」別の顧客を探していたところ、(「運よく」かどうかは解りませんが)潜在的な市場を発見し、その市場を足がかりとして破壊的イノベーションを実現させていきました。こうした背景もあって、況燭離ぅ離戞璽轡腑鵑蓮屬泙困論宿覆△蠅」という変則的なプロセスをたどっています。

 儀燭鉢況燭罵渋可能性が高いのは、もちろん儀燭離廛蹈札垢任后「理論は予測可能性を高める」と著書の中で何度も主張するクリステンセンならば、況燭ら儀燭離ぅ離戞璽轡腑鵑悗肇轡侫箸気擦燭い塙佑┐襪里賄然の成り行きと言えるでしょう。実際、『明日は誰のものか』の後半において、いくつかの業界の将来を破壊的イノベーションの理論で予測していますが、まずどのような「変化のシグナル」が存在するかを観察し、その次にどのような製品・サービスが生まれる可能性があるかを論じるというアプローチを取っています。これは紛れもなく儀燭離ぅ離戞璽轡腑鵑鯒案に置いたものです。

 とはいえ、全てのイノベーションを儀燭農睫世垢襪海箸鷲垈椎修任后なぜならば、イノベーション理論の中に、イノベーションの機会の一つとして「予期せぬ出来事の生起」を含んでいるからです。クリステンセンも、予期せぬ出来事がイノベーションの契機となるというドラッカーの主張には賛同しています(『イノベーションのジレンマ』)。

 予期せぬ出来事が起こりうる限り、況燭離ぅ離戞璽轡腑鵑和減澆径海韻泙后イノベーションの機会を発見し、その機会にあった製品を生み出したが、思うように収益が上がらない。しかも当初の目論見とは違う顧客がその製品を購入している。よくよく分析してみたら、その顧客が属する潜在的かつ大きな市場があった―こうした紆余曲折の末のサクセスストーリーはこれからも生まれることでしょう。クリステンセンも、理論によってイノベーションが「完全に予測可能になる」とは述べていません。「予測可能性が高まる」という表現をしています。

もう一つのブラックボックス
 イノベーションプロセスの3要素のうち、「(2)イノベーションの卵を生み出す」は実はブラックボックスです。イノベーションの機会を発見する優れた千里眼を持っていても、イノベーションのマネジメントが得意であっても、肝心の製品・サービスを生み出すことができなければ話になりません。

 特に況燭里茲Δ福崟宿覆△蠅」のイノベーションの場合、なぜその製品を作ろうと考えたのかという当初の意図を探ることは重要です。「なぜIBMはそもそも科学計算用のコンピュータを作ろうと思ったのか」「なぜベル研究所はそもそも電話を作ろうと思ったのか」。ビジネスモデルが教えるところによれば、売れる見込みがない製品は作ってはいけないということになります。しかし、況燭離ぅ離戞璽轡腑鵑寮宿覆蓮当初は売れる保証など全くなかった製品です。

 加えて重要な問いであるのが、「なぜIBMは科学計算用のコンピュータを作ることができたのか」「なぜベル研究所は電話を作ることができたのか」「他の企業ではなぜそれができなかったのか」という問いです。こういった問いは実は放置されたままです。しかし、こうした問題提起に答えていくことで、(2)のブラックボックスが少しずつホワイトボックスに近づいていくかもしれません。その時、イノベーションはさらに体系的な理論へと発展するような気がします。
April 11, 2006

イノベーションの全容解明へ(1)−イノベーションの3ステップ

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 これまでイノベーションといえば、何が成功して何が失敗するか全く解らないもの、山間部の天候のように気紛れなもの、突然訪れる天変地異のようにコントロール不能なものといった印象が強いものでした。しかし、最近ではイノベーションに関する著書や論文も増えて、ブラックボックスであったイノベーションの実態が徐々に明らかにされつつあるように思えます。

 イノベーションの過程は、(1)イノベーションの機会を発見する(2)イノベーションの卵を生み出す(3)市場を創出する、という3つの要素によって成り立っています。

 (1)は、ドラッカーが『イノベーションと起業家精神』の中で挙げた「7つの機会」や、クリステンセンが『明日は誰のものか』の中で「変化のシグナル」と呼んだものに該当します。「7つの機会」については、こちらの記事にまとめました。「変化のシグナル」は、マーケットにおいて「非消費者(ある製品を、自分の持てる技量や財政事情のままでは、購入あるいは利用できない人たち)」や「満足度過剰の顧客(かつてプレミアム価格の立派な理由になっていた性能面での進歩に対して金を支払わなくなった消費者)」が存在する場合に見られるもので、破壊的イノベーションの発生を示唆するものです。

明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press)明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press)
クレイトン・M・クリステンセン スコット・D・アンソニー エリック・A・ロス 宮本 喜一

ランダムハウス講談社 2005-09-16

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 (2)はイノベーションを起こすための製品やサービスを開発することです。そして(3)は、(1)の機会と(2)の製品・サービスとを適切に結びつけ、イノベーションのためのマネジメントによって新市場を生み出すことを意味します。この3つの要素の順番によって、イノベーションのプロセスは次の2つに分かれます。

儀拭 1)→(2)→(3)の順番で実現するイノベーション
 フィリップ・コトラーのマーケティング・マネジメントを簡単にまとめると、「顧客ニーズの把握」→「ニーズを満たす製品・サービスの開発」→「製品・サービスの市場への浸透」という順番になります。儀燭呂海離廛蹈札垢販犹しています。マーケティング理論に親しんでいる人には、儀燭離廛蹈札垢詫解しやすくもあり、逆にマーケティングとイノベーションの線引きを難しくする原因ともなるものです。

 ドラッカーのイノベーション理論は儀燭鯊燭扱っています。「7つの機会」のうち、一つ目の機会である「予期せぬことの生起」以外の機会から生じるイノベーションは、儀燭紡阿垢襪噺世┐泙后N磴┐弌高齢社会の到来と高齢者の巨大な市場の存在を見越して、早々から高齢者向けの医療サービスや、パッケージツアーなど余暇を楽しむためのサービスの提供を開始することは、第5の機会である「人口構造の変化」を利用してサービスを開発し、市場を創出するという儀燭離ぅ離戞璽轡腑鵑砲覆蠅泙后

況拭 2)→(1)→(3)の順番で実現するイノベーション
 況燭魯ぅ譽ュラーなパターンです。市場の機会を見つけるよりも先に製品ができあがっているという点で、一般的なマーケティング理論とは全く異なるアプローチをとります。

 クリステンセンの破壊的イノベーション理論には、況燭離ぅ離戞璽轡腑鵑多く登場します。クリステンセンの著書では、小型ディスク・ドライブ、油圧式掘削機、ミニミル(広く普及している技術と設備を使い、鉄くずを電路で融解し、それをビレットに鋳造してから、各種の鉄鋼製品に圧延する製鉄所)、電話といった「イノベーションの卵」が既存市場のプレーヤーを駆逐して、真の「イノベーション」となる様子が描かれています。これらのイノベーションに共通するのは、「まずは製品ありき」であるということです。製品を先に開発し、その後で市場を探しています。この点が儀燭箸和腓く異なることです。
February 27, 2006

【ミニ書評】クレイトン・クリステンセン著『明日は誰のものか イノベーションの最終解』

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明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press)明日は誰のものか イノベーションの最終解 (Harvard business school press)
クレイトン・M・クリステンセン スコット・D・アンソニー エリック・A・ロス 宮本 喜一

ランダムハウス講談社 2005-09-16

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 クレイトン・クリステンセン他著、宮本喜一訳。クリステンセンが10年以上に渡り手がけている「破壊的イノベーション」研究の最新作。『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』で展開した理論を用いて、教育、航空、ヘルスケア、半導体、通信という5つの業界について、今後破壊的イノベーションが起こる余地があるのか、起こるとしたらどのようなものかといった観点から分析している。

 本書では従来の理論に対して、2つの新たな論点が加わっている。第一に、政府の規制強化・緩和といった非マーケット要因がイノベーションに対していかなる影響を与えるかという議論である。独占と政府の規制との関係に関する研究は従来から数多くなされてきたが、イノベーションと政府の規制との関係について論じたものはまだ少ないと思われる。第二に、マクロ経済レベルでは破壊的イノベーションはいかなる影響力を持つかという議論である。これは、マイケル・ポーターが戦略論の後半において、マクロ経済における競争優位に関して論じていることとパラレルに捉えることができる。いずれの論点も、今後のイノベーション理論に新たな方向性を付与するものとなりそうである。