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March 06, 2012

【ドラッカー書評(再)】『経営者の条件』―「強みに集中せよ」と言っても、エグゼクティブに求められる能力は広く深い(1)

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ドラッカー名著集1 経営者の条件ドラッカー名著集1 経営者の条件
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 前回の続き。やや長くなるが、エグゼクティブが成果を上げるために必要な5つの能力を引用しておこう。
(1)何に自分の時間がとられているかを知ることである。そして、残されたわずかな時間を体系的に管理することである。

(2)外部の世界に対する貢献に焦点を当てることである。仕事の過程ではなく、成果にその精力を向けることである。仕事からスタートしてはならない。もちろん、仕事に関する方法や意見などからスタートしてはならない。「期待されている成果は何か」を自問することからスタートしなければならない。

(3)強みを基準に据えることである。そして上司、同僚、部下についても、彼らの強みを中心に据えなければならない。それぞれの状況下における強み、すなわちできることを中心に据えなければならない。弱みを基盤にしてはならない。すなわち、できないことからスタートしてはならない。

(4)優れた仕事が際だった成果をあげる領域に、力を集中することである。優先順位を決定し、その決定を守れるように自らを強制しなければならない。最初に行うべきことを行うことである。二番目に回すべきようなことは、まったく行ってはならない。さもなければ、何事も成し遂げられない。

(5)最後に、成果をあげるよう意思決定を行うことである。意思決定とは、つまるところ、手順の問題である。成果をあげる意思決定は、過去の事実についての合意ではなく、未来についての異なる意見に基づいて行わなければならない。
 このうち、3番目にある「『強み』に集中せよ」というのも、数多あるドラッカーの金言の中で有名な部類に入ると思うけれど、この言葉は解釈が結構厄介だと私は思っている。確かにドラッカーは、「弱みからスタートしてはならない」とは述べている。つまり、ある仕事に就ける人材を決める際に、一部の欠点に着目して、減点主義で候補者を外していくような人材配置は行ってはならない、と主張している。

 しかし、「弱みを直す必要はない」とは一言も言っていない、と私は認識している。強みと弱みをめぐっては、以前の記事「自分の『強み』を活かすのか?『弱み』を克服するのか?」でも私見を述べた。とりわけ若手の場合は、どんなに「自分はこれが強みです」と叫んだところで、所詮は自己評価によるものであって、周囲が期待するレベルからすればまだまだ未熟である。だから自己鍛錬が欠かせない。継続的な訓練を通じて初めて、弱みが克服されると同時に、もともと持っていた”強みらしきもの”にも磨きがかかり、自他ともに文句のつけようがない強みが生まれるというものである。

 だが、中堅・ベテランになると、期待される成果の量も質も広がるから、当然のことながら要求される能力の幅もレベルも上がる。それらの能力を、もともと持っている強みだけで全てカバーすることは到底不可能だ。足りない能力は、中堅・ベテランであっても学習しなければならない(※1)。もっとも、先ほどの記事の中でも書いたことだが、私の経験則からすると、年齢が上がるにつれて弱みを克服するのは難しくなるから、できるだけ既存の強みでカバーできる仕事に就けるのが最善であるのは間違いない。これがドラッカーの言う「『強み』からスタートせよ」ということであろう。

 本書には、強みを活かした人材配置に関するこんなくだりがある。
 個人営業の税理士は、いかに有能であっても、対人関係の能力を欠くことは、重大な障害となる。しかしそのような人も、組織の中にいるならば、自分の机を与えられ、外の人間と直接接触しなくともすむ。組織のおかげで、強みだけを生かし、弱みを意味のないものにすることができる。
 では、この経理担当者(税理士)は、果たしてエグゼクティブと言えるだろうか?ドラッカーによるエグゼクティブの定義は、「地位やその知識ゆえに、日常業務において、組織全体の活動や業績に対して、重要な影響をもつ意思決定を行う経営管理者や専門家などの知識労働者」である。ところが、彼は組織に影響を与える意思決定を何ら下していない。おそらく、現場から上がってくる帳票を処理して、数字の帳尻合わせをしているにすぎないだろう。そんな仕事が通用するのは、せいぜい新卒入社後1年程度であって、あとはITに取って代わられるか、アウトソーシングされるのがオチである。

 彼がエグゼクティブであるならば、たとえ若手であっても適正なコスト水準を導き出して各部門にその水準の遵守を迫り、一定以上の支出に対してはその効果を厳しく検証する役割が期待されることだろう。もう少し上位のエグゼクティブとなれば、戦略・戦術とリンクした効果的な予算配分や、社内の不正を防ぐガバナンスの仕組みの構築を任されるかもしれない。単なる経理の知識に加えて、投資対効果や内部統制、さらには戦略などに関する知識も持っていなければならない。このように、強みに集中せよといっても、高い成果を要求されるエグゼクティブには、幅広い専門知識が必要とされるのである。

 狭い強みしか持たない人間ばかりをたくさん集めても、組織の人数が無駄に膨れ上がるだけだ。しかも、ドラッカーも指摘している通り、エグゼクティブの仕事は1人では完結せず、他のエグゼクティブにも依存しているという性質がある。よって、専門分野が限定されたエグゼクティブが集まると、彼らの間で細かい調整作業が頻繁に発生することになる。そうすると、コミュニケーションが異常に膨れ上がり、一橋大学の沼上幹教授が言う<重い>組織になってしまう(※2)。

 アダム・スミスが提唱した分業は、求められる成果が固定的な肉体労働では効果を発揮するものの、成果が流動する知識労働には通用しない。そして、ドラッカー自身も、先ほどの税理士の例とは裏腹に、エグゼクティブの職務は広く設計すべきだと提言しているのである。
 職務はすべて、多くを要求する大きなものに設計しなければならない。職務は、一人一人の人間に対し、自分の強みを出すよう挑戦させるものでなければならない。(中略)

 最も単純な職務でさえ、要求されるものは必ず変化していく運命にある。しかも、突然変化していく。そのため職務と人間の完全な適合は、急速に不適合へと変わる。したがって、職務は、そもそもの初めから、大きく、かつ多くを要求するものとして設計した場合においてのみ、変化した状況の新しい要求にこ応えていくことができる。
 今日の記事は何だか当たり前のことを書いて終わってしまった感じだけど(汗)、本当に私が言いたかったことはまだ書いていないので、それは次回ということで。


(※1)求められる成果から能力要件を導き出し、人材育成計画へと落とし込んでいく一連のプロセスについては、以下の過去記事を参照。今読み返すと、架空の事例がややイマイチなのだが、ご参考までに。

 戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(1)
 戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(2)
 人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(1)
 人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(2)

(※2)沼上幹他著『組織の“重さ”―日本的企業組織の再点検』(日本経済新聞出版社、2007年)

組織の“重さ”―日本的企業組織の再点検組織の“重さ”―日本的企業組織の再点検
沼上 幹 加藤 俊彦 田中 一弘 島本 実 軽部 大

日本経済新聞出版社 2007-08

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February 15, 2012

大学・企業の協業による学生の能力開発で、かえって学生の雇用情勢は悪化するかもしれない

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 03月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 03月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2012-02-10

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 DHBR2012年3月号の論文のレビューに入る前に1つ記事を。巻頭に「若年者雇用の未来」というコラムがあって、若者の厳しい雇用情勢を改善する案が2つ提示されている。1つは「大学と企業の協業による学生の人材開発」であり、もう1つは「『準社員』という制度の創設」である。前者は、新卒社員の育成にかかるコストが企業にとって重荷となっていることから、大学と企業でコストシェアさせるという発想であり、後者は雇用が守られている正社員と、雇用の調整弁として何かと不利な立場に置かれる非正規社員の二極化を避けるための措置であるという。

 私見だが、後者に関しては、「準社員」の理想的な法的地位がコラム内には書かれていないし(「準社員」というカテゴリを実際に設けている企業はあるものの、その実態はまちまちである)、単に雇用形態を多様化したところで、結局は非正規社員と同じ道をたどるだけなのではないか?という疑問が消えない。

 前者に関しては、肯定的・否定的両面の見方ができそうだ。肯定的に捉えるならば、新卒社員のトレーニングのうち、業界を問わず共通のもの(それこそマナーやPCの基本操作など)は、各社が個別でやるよりもまとめて実施した方が効率的であるから、アウトソーシングした方がよいという考え方が成り立つ。ただし、アウトソーシング先が大学でいいのか?という論点は残る。大学の目的は新卒社員の育成ではないし、仮に国公立大学にアウトソーシングされれば、新卒社員の訓練に税金が投入されることになる。それが果たして税金の使い道として適切なのか?という議論は必ず生じるだろう。

 否定的に捉えると、人材育成のアウトソーシングは、人材育成を投資ではなくコストとみなす風潮に拍車をかける危険性があるように思える(今でもその風潮はあって、研修業界に身を投じているとよく解るものだ。不景気になり業績が悪化すると、研修費用は真っ先にカットの候補に挙がる)。人材育成に投じる金額は、確かに会計上はコストとして処理されるけれども、実際には将来的なリターンを期待した投資である。しかも、社員の経験が浅ければ浅いほど、投資がペイするまでに時間がかかるのは自明である。

 新卒社員のトレーニングには時間もお金もかかる。しばしば、入社後3年間はその社員から利益を期待することはできないとも言われる。だからこそ、その3年間に投じた金額を4年目以降に稼ぎ出してもらうために、現場は人事部の後押しを受けながらOJTを徹底的に行い、本人の能力を飛躍的に伸ばす仕事の機会を探り、簡単に離職しないように心理的なケアを欠かさないでおこうとするのではないだろうか?

 逆に、人材育成がコストとみなされ、さらにそのコストがアウトソーシングなどによって抑制されてしまうと、現場や人事部は先に述べたような人材育成のインセンティブを失い、たとえ離職者が相次いでも、「あいつにはそれほど金がかかっていないから、辞めても大した痛手にはならない」と考え始めるかもしれない。

 新卒社員の育成に対する熱意が冷めてしまった企業は、とどのつまり他企業などで既に十分なトレーニングを受けた経験者の採用に走るに違いない(中途採用も、本来は自社でやるべきトレーニングを他社でやってもらったわけであるから、一種のアウトソーシングと見ることもできる)。こうなってしまうと、「大学と企業の協業による学生の人材開発」という構想は、全くの逆効果である。個人的には、この負のシナリオの方が実現しそうで非常に怖いのだが、皆さんはどう思われるだろうか?
September 02, 2011

最後の論文「Cスイートの新たな役割」は管理職にこそお奨め―『偉大なるリーダーシップ(DHBR2011年9月号)』

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 (これで9月号は終了です)

過去10年の調査が明らかにする Cスイートの新たな役割(ボリス・グロイスバーグ他)
 「Cスイート」とは、「CXO(CなんとかO)」という肩書を持つ経営幹部のこと。日本企業であれば、「X分野担当常務」とか、「Y分野担当取締役」とかが、Cスイートに該当する。この論文は、将来のCスイートに求められると予測される役割や能力をまとめたものである。

 調査方法を読むと、かなり手の込んだやり方をとっている。まず、企業の人材募集要項がまとめられた文書を10年分分析している。例えば、CIOについては、募集企業が作成した100以上の職務記述書を分析している。調査の過程で著者が特に重視したのは、各記述書のテーマと、そこに列記されている能力が「必須」から「あれば望ましい」まで、どのようにランクづけされているかという、能力の優先順位である。

 こうして、過去10年間におけるCスイートの人材要件の変化を踏まえた上で、次に、各ポストの能力要件が今後どのように変化していくかを、それぞれの職能を専門とする人材コンサルタントに予測してもらっている。例えば、CIOについては、サーチ会社でIT人材の案件を担当しているコンサルタントを集め、技術革新の動向から見て、人材に対するニーズがどのような変化するかを話し合ったという。

 このような調査を経て、7つのCスイートについて、あるべき将来像を明らかにしたものが以下の一覧である。もっとも、著者が論文の内容を一覧化したサマリなので、かなり簡素化されている点は留意していただきたい(補足が必要な箇所には、青字斜体で追記した)。

 なお、この論文は「Cスイートに求められる役割」に焦点が当たっているけれども、個人的には、(1)30代〜40代の管理職と、(2)彼らの人材育成を担っている人事・人材育成担当者にこそ読んでもらいたいと思っている。言うまでもなく、誰もがある日突然Cスイートになれるわけではなく、何十年もかけて知識とスキル、経験とノウハウを積んでCスイートへと昇進するものだ。だから、以下に列記した役割は、それぞれの職能で現在管理職のポジションにいる人たちが、中長期的に開発目標とすべき能力なのである。

 人事部は、以下の一覧を参考にしつつ、自社を取り巻く事業環境の変化と戦略の方向性を踏まえて、自社のCスイートにはどのような役割や能力が求められるのかを具体化する。そして、現在の管理職全員を対象に、それぞれのスキルが現在どのレベルにあるのかを評価する。

 評価内容は人事部が管理職本人と共有し、会社の重要な戦力として今後どのような価値を発揮してほしいのか?今はまだ十分でない能力や経験は何か?といった点についての人事部の考えを共有する。一方で、管理職本人にもキャリアの展望やニーズがあるはずだから、本人がどのようなキャリアを望んでいるのか?本人が自覚しているキャリア上の課題は何か?を聞き出す。

 その両者を擦り合わせて、管理職本人のキャリア開発の目標と、能力開発の計画を、人事部と管理職本人が共同で策定する。こうした一連のサイクルを定期的に回すことができれば、いざCスイートを任命しなければならないという局面に直しても、潤沢なCスイート候補者のプールから、適材を配置することが可能になるに違いない。
CIO(最高IT責任者)
 ・機能、部門、地域の違いを超えて、ビジネスを包括的にとらえられる。
 ・プロセス志向で、組織設計になじんでいる。
 ・情報分析の知識があり、会社が情報を整理し活用するのを支援できる。
 ・投資配分の専門知識があり、ROIに基づいて将来のIT支出に関する決断を下せる。

CMSO(最高マーケティング・営業責任者)
 ・その分野内での経験が豊富にある。
 ・新しいチャネルがもたらしたマーケティング関連の課題や機会に取り組んだ経験がある(例えば、Web販売チャネルの構築や、フランチャイズ網の強化など)
 ・CEOのために、マーケティング、営業、eコマースを一括して扱う窓口になれる。
 ・チャネルにとらわれない流通が増えているので、高度な技術に関するノウハウがある。営業部門と技術部門の経営幹部との関係をうまく管理できる(「チャネルにとらわれない流通」というのが解りにくいが、同じ製品が営業担当者による直販、コールセンター経由、Web通販チャネル経由、代理店経由など、様々なチャネルで販売されるため、それぞれのチャネルでどのような顧客価値・経験価値を訴求し、どのようなプロモーションを実施し、顧客とどのように対話するのかについて、部門横断的に検討することが要求される、という意味だと考えられる)
 ・リスク・マネジメントとレピュテーション(評判)管理のスキルがある(ここでのリスク・マネジメントとは、この後のCFOで出てくるリスク・マネジメントとはやや異なり、顧客からのクレームや製品・サービスの不備に対して適切な対応を行うことを指す。また、自社の製品価値やブランドを損ないかねない、不当なネガティブメッセージが市場に蔓延しないようにすることも含まれる[レピュテーション・マネジメントに近い])
 ・透明性を高め、顧客コミュニティーや一般消費者との対話を管理できる。

CFO(最高財務責任者)
 ・会社の現在のニーズに合った経験を持っている(成長期の企業ならM&Aの経験、財務諸表の修正や収支報告の違反経験がある企業なら強力な統制手腕など)。
 ・会計スキルは以前ほど重視されず、むしろ戦略的思考に重点が置かれる。
 ・会計と新しいビジネスモデルや戦略との関連性を見つけられる。
 ・リスクと、それを業績とバランスさせる方法を理解している。
 ・特にIR(投資家向け広報)面で社外をはっきりと認識している(ただし、会計面ではCFOは今後も優秀な監督者でなければならない)。
 ・自国のことだけを考えるのではなく、グローバルな視点で財務に取り組んでいる。

GC(最高法務責任者)
 ・ビジネス感覚がある(こう書くと「そりゃ当たり前だろ?」という気もするけれども、要するに単なる契約書等のリーガルチェック機能を超えて、契約段階で自社に有利な条件やスキームを形成する能力が重要になるということ)
 ・取締役会と対話ができる(これもこの項目だけ読むと意味不明だが、取締役の役員報酬に関する規定や、報酬額の算出方法の妥当性について、取締役会で議論することが求められる、ということ)
 ・企業の法務部門を率いた経験がある。
 ・規制当局や監視機関と交渉できる。
 ・強力な社外ネットワークを持っている。
 ・適切かつ費用効率のよいかたちで法務をアウトソースするために必要な判断力を備えている(最初の2つの箇条書きとも関連するが、法務部門がより高度な業務に集中できるよう、それこそ契約書のリーガルチェックといった、それほど専門知識を要しない定型業務をアウトソーシングすることになるだろうと著者は予測している)
 ・新しい環境規制や環境配慮に詳しい。
 ・CMSOと連携したリスク・マネジメント、レピュテーション・マネジメントの実施(CMSOは顧客の声に真摯に耳を傾け、顧客に適切な情報を提供し、迅速な対策を打つことで自社の信頼を回復することに集中するが、GCは製品・サービスの不備による被害者が出た場合に、法的観点から損害賠償のスキームを構築し、企業、顧客双方の合意を早期に形成する役割を担うことになる)。

CSMO(最高サプライチェーン・マネジメント責任者)
 ・サプライチェーンをすみずみまで熟知している。
 ・業務をアウトソースするか社内で行うかを、コストを意識しながら検討できる。
 ・CIOと協力して、顧客やサプライヤーとの交流を改善できる。技術に精通している。
 ・事業部門の運営、損益管理、顧客対応の経験がある。
 ・あらゆる事業部門、グローバル機能、サポート部門と連携できる。
 ・グローバルレベルに及ぶ長距離・大規模のサプライチェーン全体を管理し、各国で発生する政治・経済的リスクに素早く対応する。
 ・自社の戦略の変化に伴い、サプライチェーン全体を迅速に再構築し、社内外の組織との関係や連携のあり方をデザインし直す。
http://www.syncr.com/

CHRO(最高人事責任者)
 ・商業的なセンスがある(これは、《A》自社のビジネスの方向性をよく理解し、そのビジネスを実現するのに必要なスキル・ノウハウを持った人材を、どのように採用・育成するか?という点について、中長期的に考えることをCHROに要求しているとも読めるし、《B》最後の「最高人事責任者という立場を組織全体に売り込むことができる」と関連して、自分自身を組織全体に売り込む商業的センスを指しているとも解釈できる。ただ、どちらもCHROにとって重要なタスクであるのは間違いない)
 ・文化の違いや人口統計の変化を理解している。
 ・チェンジ・マネジメントのスキルがある。企業文化を変える取り組みを円滑に進められる。
 ・CEOや取締役会で社内アドバイザーの役割を果たせるという信頼を得ている(自社の戦略とリンクさせて、次世代リーダーの育成プランを作成し、CEOや取締役と共有する必要が出てくるという意味。プランの進捗具合と次世代リーダーの候補者数、育成をめぐって新たに発生した課題などについて、定期的にボードと議論しなければならない)
 ・取締役会と連携しながら、サクセッション・プラン(=経営幹部の後継者育成計画のこと)を推進できる。
 ・技術に推進している。
 ・ガバナンス構造に報酬と業績を組み込める専門知識がある。
 ・最高人事責任者という立場を組織全体に売り込むことができる(「なぜCHROだけこんな売込みが必要なのか?」と思われるかもしれないが、日本企業では人事部が聖域と呼ばれるほど強い権限を持つのに対し、アメリカ企業はライン部門でも採用や育成を行い、人事部は基本的な採用ステップの整備と基礎的なトレーニングの提供ぐらいしかできないことも多い。必然的にCHROの立場が弱くなるため、こういう売り込みが必要になるというわけ)
CEO(最高経営責任者)
 CEOに関しては、著者も「どういうCEOが望ましいかは、もう皆さんも十分に知っていることだろう」といった感じで、一切言及していない。代わりに、P&GのCEOアラン・ラフリーがDHBR2009年9月号に「CEOにしかできない仕事」という論文を寄せているので、そちらを参照するとよいかも。

 ちなみに、ラフリーの論文を含むDHBR2009年9月号についてのレビュー記事はこちら。
 何でもコラボすりゃいいってもんじゃないんだよ(前半)−『信頼学(DHBR2009年9月号)』

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