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June 12, 2012

スタッフ⇔ライン間のシナジーを発揮するためのBSCが中心と理解しているが…―『BSCによるシナジー戦略』

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BSCによるシナジー戦略 組織のアラインメントに向けて (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)BSCによるシナジー戦略 組織のアラインメントに向けて (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
ロバート S キャプラン デビッド P ノートン 櫻井 通晴

武田ランダムハウスジャパン 2007-10-12

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 バランス・スコア・カード(BSC)で有名なロバート・キャプラン&デイビッド・ノートンの著書。この本で言うシナジーとは、

 (1)スタッフ部門⇔ライン部門間のシナジー
 (2)事業部間のシナジー
 (3)外部のパートナー企業とのシナジー
 (4)取締役会と経営陣のシナジー

の4つであり、その中でも(1)がメインであると理解しているが、何とも読みにくい。というか、キャプラン&ノートンの本はなぜかどれも読みにくい。何年か前に『バランススコアカード−新しい経営指標による企業変革』を読んだ時も結構苦労したし、もう1冊の邦訳書『キャプラン&ノートンの戦略バランスト・スコアカード』も一応手元にあるけれども、つまみ読みしただけで終わっている(汗)。

バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革
ロバート・S. キャプラン デビッド・P. ノートン Robert S. Kaplan

生産性出版 1997-12

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キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカードキャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード
ロバート・S・キャプラン デビッド・P・ノートン 櫻井 通晴

東洋経済新報社 2001-08-30

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 この2人の著書は、どれも事例が豊富なのは嬉しいものの、守秘義務の関係により、BSCの中身やBSC作成プロジェクトの全てを公開しているわけではないのだろう。その一部の非公開情報のせいで、途中のロジックが不自然になっているのではないか?それから、BSCの各階層には、「定量的に測定可能な指標」、いわゆるKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)を記入すべきなのに(そうでなければ、BSCの達成度合いをモニタリングできない)、時に定性的な目標が混在しており、全体の構造を理解しづらくしている。いっそのこと、完全に情報を公開してもOKという企業を1、2社厳選して、そのBSCを詳細に解説する、というスタンスの方がいいのではないか?という気もする。

 なお、(3)外部のパートナー企業とのシナジーに関しては、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2010年11月号に所収されている2人の論文「戦略的提携を実現するバランス・スコアカード」の方がおそらく解りやすい。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2010年 11月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2010年 11月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2010-10-09

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 通常のBSCでは、最上位に「財務の視点」がくるが、パートナー企業とのBSCでは「両社への価値」が位置づけられる。また、第3の視点である「業務プロセスの視点」では、「コラボレーション」を意識した業務プロセス上の目標が設定され、最下層の「学習と成長の視点」では、「アライアンスを活かす環境づくり」(例えば、アライアンス活動を促進・評価する人事制度の構築など)を検討することになる。

 論文では、神経科学、心血管代謝、インフルエンザ、膵酵素補充療法などに関する医薬品を開発しているソルベイ社と、臨床試験など生物医学関連の各種サービスを提供するクインタイルズ社によるBSCの事例が紹介されている。

 話が逸れたけれども、ここからは、同書を読んで個人的に疑問に感じたことを列記したいと思う(といっても、(1)に該当する部分を読んで、残りを読む気が失せてしまったため、途中までの内容に関する疑問にとどまるが・・・)。ただ、かなり重箱の隅をつつくような細かい指摘もあるので、この本を読んでいない方にはさっぱり伝わらない内容になるかもしれない点はご容赦ください。

(p45)男性用作業靴の製造・販売からスタートしたアパレルメーカーであるスポーツマン社(仮名)のBSCの事例について。p45には、事業ラインと調達部門それぞれのBSCのリンクを示した図が掲載されている。このうち、調達部門のBSCに関して、「内部プロセスの視点」にある「注文履行の数」や「注文拒否数」といった指標は、調達部門の本来業務と密接に関連しているから理解できる一方、同じく「内部プロセスの視点」にある「製品イノベーションの数」や、「顧客の視点」にある「主要カテゴリーの浸透」(※)、「財務の視点」にある「海外成長」(※)などは、果たして調達部門が責任を負うべき指標なのだろうか?

 スタッフ部門(本書では「サポート・ユニット」という言葉で表現されている)とライン部門のBSCを関連づけるBSCのことを、キャプランとノートンは「リンケージ・スコアカード」と呼んでいる。著者によると、このスコアカードには、スタッフ部門が直接コントロールできない指標も含まれるという。人事部門の例に関する記述ではあるが、該当箇所を引用する。
 リンケージ・スコアカードの尺度は、人事部門が直接コントロールして影響を及ぼすことができない。たとえば、企業戦略として買収による成長戦略をとる場合、人事部門のリンケージ・スコアカードでは、「重要な従業員の流出防止」、「クロスセルによる売上の増大」、「買収メリットの享受」について測定する。(p183)
 「重要な従業員の流出防止」(本来は、「重要な従業員の”離職率”」といった指標で表現するのが適切)は、PMI(Post Merger Integration)プログラムなどによって、まだ人事部門がある程度影響を及ぼす余地もあるだろう。しかし、「クロスセルによる売上の増大」にまで、人事部門は責任を負うべきなのだろうか?コントロールが困難な指標にまで責任を持たせるのは、逆に無責任であるし、仮にその指標が目標値に届かなかった場合、責任の所在が曖昧になる可能性があるように思える。

 (続く)


(※)これが、文中で述べたように定性的な目標になっているため、定量的に測定可能な指標に変えるべきである。例えば、「主要カテゴリーの認知度」(定期的な市場調査、顧客アンケートによって測定)や「主要カテゴリの販売数」(店舗POSシステムから情報を取得)、「海外成長率」や「全社売上に占める海外売上の比率」(ともに財務データより算出)などといった指標にする必要がある。
February 03, 2012

《補足》「ワーストプラクティスのベンチマーキング」という考え方―『日経情報ストラテジー(2012年3月号)』

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日経 情報ストラテジー 2012年 03月号 [雑誌]日経 情報ストラテジー 2012年 03月号 [雑誌]
日経情報ストラテジー

日経BP社 2012-01-28

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 昨日の記事「再現性の低い失敗の分析に意味はあるか?という問い―『日経情報ストラテジー(2012年3月号)』」が、個人的にあまりにイマイチだったので、結局何が言いたかったのかをもう一度整理してみた。要するに、東京大学・中尾教授のコラムにあった「人のふり見て我がふり直せ」ではないけども、他社の失敗事例を真剣に検討して自社の仕組みを改善している企業が一体どのくらいあるのか?ということが言いたかったわけ。失敗の再現性があろうとなかろうと、あるいは自社の事業内容とは遠い企業や団体・組織の事例であっても、冷静に分析すれば何らかの教訓は必ず得られる(「歴史から学ぶ」というのは、まさにその一例)。

 多くの企業は、ベストプラクティスのベンチマーキングには力を入れる。日本企業は特に他社事例に敏感なようで(例えば、取引先から新しい技術を採用した製品やサービスを提案されると、「競合が導入しているなら、うちも入れよう」という理由で導入が決まるケースが多いと聞く)、競合はもちろんのこと、異業種も含めて成功要因を深く探ろうとする。ところが、「ワーストプラクティス(=失敗)」のベンチマーキングとなると、どうしてもトーンが下がる気がする。これには2つの要因があるだろう。

 1つは物理的な要因であり、失敗事例はなかなか表に出ないという情報面の制約がある(それでも最近は、失敗事例を集めた書籍が幾ばくか出版されるようになったと思う)。もう1つは、こちらの方が重要だと思うのだが、人間には基本的に楽観志向が埋め込まれているという心理的な要因である。心理学の研究が示すところによると、我々は「自分にはいいことが起こるはずだ」、あるいは「自分は他人のように失敗するはずがない」と考える性向があるという。前者を「非現実的な楽観主義(unrealistic optimism)」、後者を「不死身の錯覚(illusion of personal invulnerability)」と呼ぶ。

 「非現実的な楽観主義」にとらわれた人は、幸せな結婚、出世、長生きなど、よいことが自分に起こる可能性をしばしば過大評価する。また、「不死身の錯誤」に陥ると、人生には災厄のリスクが存在することを客観的に承知しているにもかかわらず、わが身には降りかかってこないと考えてしまう(※)。

 こうした心理的傾向があるために、ベストプラクティスに関しては、「あの会社が成功したのなら、わが社にだってできるに違いない」と確信して必死に勉強するものの、ワーストプラクティスについては、「うちの会社はあそこのように失敗するはずがない」、「わが社だけは危険を回避できる」と考えて、真剣にとり合わないと推測される。

 本号によると、キヤノン電子には他の事業部で発生した失敗事例を分析・共有する「他部門勉強会」が存在するという。だが、他社の失敗事例を分析・共有する仕組みを備えている企業というのは、(私の狭い見聞の範囲内での話だが)今まで聞いたことがない。将来的に今の自分の個人事業を法人化したら、ワーストプラクティスをベンチマーキングする仕組みを検討してみようかなぁ?と思った。


(※)ロデリック・M・クラマー「「過度な信頼」に関する7つのルール 信頼の科学」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2009年9月号)

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 09月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 09月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2009-08-10

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February 02, 2012

再現性の低い失敗の分析に意味はあるか?という問い―『日経情報ストラテジー(2012年3月号)』

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日経 情報ストラテジー 2012年 03月号 [雑誌]日経 情報ストラテジー 2012年 03月号 [雑誌]
日経情報ストラテジー

日経BP社 2012-01-28

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 (前回の続き)

(2)再現性の低い失敗を分析することに果たして意味はあるか?
 本号には、過去の失敗事例を組織的に分析・共有する仕組みを構築している事例がいくつか紹介されている(ノジマ、ライオン、キヤノン電子など)。詳細は割愛させていただくが、事例を読んでいく中で1点気になったのは、『失敗百選』シリーズの著者である東京大学・中尾政之教授のコラムにあった次の記述である。
 「失敗を生かす」というテーマですぐに思いつくのは、再発防止策を作ることだろう。このような意味でとらえた場合、失敗を生かしやすいのは過去の失敗事例から引き出せる教訓の”賞味期限”が長い会社だ。鉄道などの公共インフラ系の企業が当てはあまる。こうした企業は「人のふり見て我がふり直せ」の要領で失敗事例を研究することで、悪い失敗の再発を防止できる。

 一方、ソフトウエア開発をはじめとするIT系など、事業環境の変化や技術進歩が激しい企業の場合は話が異なる。最新技術を次々と採用するために、従来とは違うタイプの失敗が起こりやすい。失敗から得た教訓を生かせる賞味期限も比較的短く、失敗事例をじっくり学んで再発を防ぐといった姿勢を取りにくい。
 中尾教授によれば、ソフトウェア開発以外の民生品でも、失敗の賞味期限が短くなっているという(※)。そうなると、環境も技術もいずれ変化するし、将来的に役に立ちそうにない失敗を分析することに、果たしてどれだけの意味があるのか?という疑問が湧いてくる。

 賞味期限が短いどころか、失敗そのものが特殊すぎる(=失敗を引き起こした環境や技術が特殊すぎる)場合もある。1000年に1度の大津波によって引き起こされたとされる東京電力の福島原発事故は、その一例だろう。もちろん、まだM8〜9規模の余震が東北沖で発生する可能性があるし、他の原発が稼働している地域の沖合で大地震が起きるケースも想定されるわけだが、今回の原発事故は地震の周期を踏まえると特殊な部類に入るに違いない。

 中尾教授が言及しているソフトウェア開発での失敗や東京電力の原発事故などは、まとめると「再現性の低い失敗」と言える。ここで論点となるのは、繰り返しになるけども、そのような再現性の低い失敗を分析することに意義があるのか?ということである。

 とはいえ、少なくとも福島原発事故に関しては、原因分析など不要だと主張する人はさすがにいない。国民を震撼させた大事故に対する説明責任を東京電力が果たさなければならないという意味で、原因分析は必須である。だが、それ以上に、東京電力は今回の原発事故を分析することで、原発以外の全ての事業・業務についても、

 ・想定しているリスクの種類や水準は適切か?(全てにおいて今回の大津波ほどの特殊ケースを想定するのは難しいが、リスクの想定が甘くなっている領域はないか?)
 ・それぞれのリスクに対する対応策は明確化されているか?
 ・重大な問題が起きた際の現場における対応手順が、問題のカテゴリ別に標準化されているか?また、その標準手順は社員に浸透しているか?
 ・重大な問題が起きた際の現場―マネジメント層間における情報収集プロセス、意思決定プロセス、情報伝達プロセスが、問題のカテゴリ別に定義されているか?
 ・いわゆるヒヤリハット(重大な事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例)を現場から吸い上げる仕組みは整っているか?
 ・ヒヤリハットの原因分析を行い、改善策を現場にフィードバックするループが整備されているか?

などの視点から総ざらいする機会を得たことになる(実際、東電の中でこれらの議論がどの程度進んでいるのかはよく解らないけども)。さらに言えば、東京電力以外の企業も、上記の論点を自社の業務に当てはめることで、自社のこれまでのリスクマネジメントを見直すことができるはずだ。

 震災後、自社のBCP(事業継続計画)を見直した企業は非常に多いと聞く。しかし、その大部分は、例えば電気の供給が途絶えた場合にどうするのか?部品の供給が滞った場合にどうするのか?自社の社員が通勤できなくなった場合にどうするのか?など、自社が”実際に直面した問題”に対する対策である。しかも、これらのリスクは停電や交通網の乱れ、異常気象などによっても顕在化するから、再現性が高い。前述のように、自社とは無関係な東京電力の「再現性の低い失敗」を参考にして、自社のリスクマネジメント全般を再点検した企業は、一体どのくらいあるだろうか?

 原発事故の話を拡張させると、一般的に「再現性の低い失敗」からも、見方を変えれば学びを引き出すことは十分に可能だと思う。その際にポイントとなるのは、環境や技術のレベルのみを掘り下げるのではなく、マネジメント面に注目することであろう

 「こういう環境に直面したらこうする」とか、「こういう技術を使う時はこのような点に注意する」といった、環境や技術と紐付いた改善策は、おそらく再利用が難しい(例えば、[原発技術のことはよく解らないが、]「冷却装置の強度を上げる」、「冷却装置が落ちた時のバックアップ機能を強化する」といった技術的な対策は、原発の範囲でしか使えない)。だが、環境変化を察知できなかった、あるいは技術的な不備を放置してしまったマネジメントに原因を求めれば、そこから教訓を導き出せることは、東京電力の例からも明らかである。

 と、今日の記事は前回に比べると何となくもやっとした内容になってしまった(汗)。埒が明かないのでこの辺で終了・・・。本当は、再現性の低い失敗を分析し続けることで、社員の「失敗に対する感度」が上がり(言い換えれば、失敗につながりそうな事態に対して敏感になり)、それが緊急事態に役立つ、といったことも書きたかったのだが、うまく表現できなかったため省略。


(※)本論から外れるけれども、失敗の賞味期限が短くなっているというのは個人的にちょっと困った話で、私が以前書いた「「イノベーションに失敗した人」の評価方法に関する素案」の内容をもう一回考え直さなければいけないよなぁと感じた。というのも、この素案では、失敗から得られる教訓が広く横展開できることを前提に、失敗の金額的価値を試算しようとしているからだ。