※2012年12月1日より新ブログに移行しました。よろしければこちらもご覧ください。
free to write WHATEVER I like
Top > 社会系:経済 アーカイブ
<<前の3件 次の3件>>
August 24, 2007

「危ない中国製『割り箸』」より危ないのは日本人の思考か?

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 中国製の割り箸について書かれた日経ビジネスオンラインの記事を読んでいてふと思ったことをつらつらと。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070823/132912/

[1] 漂白:薬剤を加えた水で洗浄した後に硫黄で薫蒸するが、化学薬品の残留量を一定限度内に抑えることがポイント。防カビ効果期間を延長させるべく、一部の生産者は防カビ剤として大量の農薬を使うケースがある。

[2] 乾燥:滑石粉(タルク・パウダー)を加えて水気を除去して乾燥させるが、滑石粉は胆のう結石を誘発しやすいだけでなく、滑石粉に含まれる重金属が人体の血液や神経系統を損傷する可能性がある。<使用前に洗浄すれば、表面に付着している滑石粉を減らすことが可能である由>

[3] 艶出し:一部の生産者はガンの誘発物質である「多環芳香炭化水素」の工業用パラフィンを使用している。

 この文章から、中国産の割り箸が「薬品漬け」の製品であることが伺える。それならば、非常識な中国を一方的に責め立てればいいかというと、そういう話ではない。

 中国メーカーからすれば、日本人が「白くてきれいな箸」を好むから大量の薬品を使っている、というのが言い分でもあったりする。さらに、木製よりも竹製の方が白くするのが大変なので、竹製の割り箸にはもっと大量の漂白剤が使用されており、きちんと洗浄されないまま日本に輸出されている、という話もある。

 もちろん、無節操な中国メーカーも非難されるべきである。しかしながら、中国メーカーを「薬品漬け」の道に走らせたのは日本であり日本の消費者であることは無視できない。

 中国では木製の割り箸を生産しすぎたために、森林の減少が問題視されている。そして、とうとう伐採の制限がかけられてしまった。あの広大な中国の森林が、日本人の割り箸が一因となって伐採を制限される−つまりそれは、割り箸問題に関して、日本と中国を切り離して考えることができないことを意味している。

 中国だけを一方的に責められないのは、割り箸問題に限った話ではない。

 「中国の環境問題はやがて日本にも深刻な影響を与える。例えば中国の大気が汚染されれば、いずれその大気は気流に乗って日本に流れてくる」などと、もっともらしいことをのたまって、中国の環境問題を非難する「一言コメンテータ」が増えているようだ。しかし、これだって中国一国の問題ではない。日本のメーカーが大小問わずこぞって中国に工場を建てて大量生産をしているために、大気や土壌の汚染が(さらには労働問題も?)起こっていることは十分考えられる。自分に都合の悪いことなので、大抵の人は積極的に調査しようとはしないだろうが、ちょっと考えれば日本も問題の一部に加担していることは容易に想像できる。

 これだけ経済がグローバル化していると騒がれているのに、ある国の問題の原因がその国のみに帰せられることはほとんど無い。こうした注意は各方面から喚起されているにも関わらず、ちょっと気を緩めるとすぐに忘れ去られてしまう。そして、他国を槍玉に挙げて愛しき我が身は守るという、都合のいい国粋主義のようなものがまかり通る。もちろん、問題の種類にもよるだろうが(本当に「その国だけが悪い」といった問題が無いとは言い切れない)、やはり問題を短絡的に捉えてしまわないよう、タフな思考は持ちたいものだ。
April 30, 2006

〔訃報〕ジョン・ケネス・ガルブレイス教授、逝去

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 また一人、偉大な学者が亡くなられました。ガルブレイス教授は文才にも恵まれた稀有な経済学者でした。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

  http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/us_economy/?1146384397

NoImageゆたかな社会

 公共投資の必要性、マネタリズムの批判、軍事支出の削減などを説いたガルブレイスの代表作です。通説にとらわれない大胆な理論を展開するという点(その代わり、論理の飛躍が激しいという批判も多い)、そして他の経済学者とは違って非常に読みやすい文章を書く(その代わり、実証的でないという批判も多い)という点において、まさに「異端の経済学者」でした。
April 03, 2006

【ミニ書評】レスター・サロー著『資本主義の未来』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
資本主義の未来資本主義の未来
レスター・C. サロー Lester C. Thurow

阪急コミュニケーションズ 1996-10

Amazonで詳しく見るby G-Tools

 レスター・C・サロー著、山岡 洋一・仁平 和夫 訳。現代の資本主義に大きな影響を与えている変化としてサローは(1)共産主義の崩壊、(2)人間主体の頭脳産業へのシフト、(3)人口の増加、移民の増加、高齢化などによる人口構造の変容、(4)グローバル経済の到来、(5)主権国家の不在・覇権なき世界、という5つの要因を挙げている(ドラッカーの『見えざる革命』『新しい現実』の内容と共通する部分も多いことに気づかされる)。

 資本主義は競争のイデオロギーであり、資本主義自体も社会主義や共産主義と戦いながら今日まで生きながらえてきた。だが、その社会主義と共産主義がこの世から去った今、競争相手なき環境で資本主義は一体どうなってしまうのか、という問題意識がサローにはある。しかし、かといって資本主義以外に選択肢はなく、現在の資本主義をよい方向に持っていくしか方法はないと断言する。とりわけ現代の資本主義は、グローバル経済に適応しうるだけの知識や巨大なインフラに対するますます長期的な投資と、知識労働者が働くためのチームワークを必要としており、個人主義、短期的な利益拡大に走りがちな資本主義が最も苦手とすることを行わなければならない。これが現代経済の直面しているジレンマである。