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March 25, 2011

クラウド導入を見送る本当の理由はセキュリティ面の不安じゃないと思うね

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 何気なく情報通信総合研究所の『情報通信データブック2011』を読んでいたら、クラウドに対するITベンダーとユーザ企業の温度差がかなりあって興味深かった。IT業界では数年前からクラウドという言葉が出てきて、「次はクラウドだ」、「来年”こそ”はクラウドだ」なんてもてはやされているけれど、ユーザ企業にはまだほとんどそんな気がないみたい。

情報通信総合研究所
エヌティティ出版
2010-12-09
posted by Amazon360

 情報通信総合研究所にはおそらく事情があって、「クラウドが来るのは先かもしれない」なんて書けないものだから、「クラウドが徐々にユーザ企業に浸透しつつある」なんて書き方をしているが、「どう見たって強がりだろ?」っていうぐらい、ユーザ企業の導入意欲が低かった・・・。

 同書が言及しているJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2010」から、関連グラフを引用。他のトレンドテクノロジと比べてみても、クラウドに対する関心の低さが際立つんだなぁ。JUASはまだ冷静な立場を保っている方で、p22で「クラウド・コンピューティングは話題先行の感」と正直に書いてしまっている(まぁ、この調査自体が2010年4月に発表されたものだから、来月まで待って「企業IT動向調査2011」を見れば、多少は違う結果が出ているのかもしれないけど)。

新規テクノロジの導入状況(クラウドなど)

 クラウドを、一般的なインターネットを通じて提供される「パブリック・クラウド」と、企業内・業界内に閉じた環境で提供される「プライベート・クラウド」に分けて、ユーザ企業の規模別・業種別に導入状況を尋ねたのが下のグラフ。いずれも大企業ほど導入が進んでおり、かつ大企業ではパブリック・クラウドよりもプライベート・クラウドの方が好まれていることが解る。

パブリック・クラウドの導入状況(企業規模別・業種別)

プライベート・クラウドの導入状況(企業規模別・業種別)

 パブリック・クラウドに関して言えば、導入が従来のシステムに比べてはるかに容易であることから、中小企業の導入が一気に進むと予測されていた。だが、実際はそうなっていない。同レポートのp33を読むと、パブリック・クラウドを導入しない理由として、「セキュリティ面の不安」を挙げるユーザ企業が圧倒的に多いことが解る(ただし、この設問については、ユーザ企業の規模別に見たクロス集計がないので、中小企業特有の理由は不明)。

 思うに、中小企業がパブリック・クラウドを見送る理由は、セキュリティ面の不安などではない。中小企業は大企業ほどセキュリティが厳しくないから、会社のPCを自由に社外に持ち出して仕事をしたり、個人のスマホで会社のメールを見たりといったことが普通に行われている。中小企業にとってパブリック・クラウド導入のカギを握るのは、(1)その企業のITリテラシーと、(2)ITに業務を合わせられる柔軟性の2つであろう。

 パブリック・クラウドは、自社の業務に合わせて入力項目や入力手順、レポート形式や集計ロジック、メール配信スケジュール、権限付与など、ほとんど全ての設定をユーザ企業側で実施しなければならない。この点でそれなりのITリテラシーが要求される。しかも、大企業に比べてアドホックで属人的な業務が多いカオスな中小企業は、業務とクラウドの機能を結びつける作業が非常に煩雑だ。

 さらに、いくらパブリック・クラウドが柔軟なカスタマイズを売りにしていると言っても、基本的にはITベンダー側が想定する標準業務プロセスに沿って設計されているので、ユーザ企業の思い通りにいかない部分も決して少なくない。その場合、カスタマイズを諦めて「ITに業務を合わせる」という、システム導入の定石からは外れた選択肢を選ばないといけない。そういう決断に自信がない中小企業は、パブリック・クラウドの使い勝手の悪さ(厳密に言えば、ユーザ企業が勝手に「使い勝手が悪い」と思っているだけなのだが)を敬遠して、導入を見送るだろう。

 本来であれば、ITベンダーが中小企業のITリテラシー向上や利用サポートを行うべきなのだろうけれども、パブリック・クラウドそのものが単価の低いサービスである上に、多種多様な中小企業の支援には莫大なコストがかかる。よって、ITベンダーはそこまで手を出そうとしない。

 NRI(野村総合研究所)は、JUASとは別にクラウドについて独自の調査を行っており、やはり同じように中小企業の導入意欲が低いことを指摘している。NRIはその理由を次のように述べている。

野村総合研究所技術調査部
東洋経済新報社
2010-12-24
posted by Amazon360
 一般的には、パブリック・クラウドの場合・・・大規模なIT投資を行うことが困難で、専任のサーバー管理者を配置することができない中小企業から利用が進むと考えられていた。しかし、本アンケート結果を見るかぎりは、まったく逆の傾向であることがわかった。これは、クラウド・コンピューティングという新たなトレンドに対し、メリットもデメリットも十分理解した上で採用に踏み切った大企業に比べ、中小企業の場合、「どこから利用すべきか判断ができない」、あるいは、そもそも「クラウド・コンピューティングとは何なのか」がきちんと理解できていない可能性が高いと考えられる。
 この手の話は、実はASPが登場した時もあった。私の知り合いで、ASP黎明期に中小企業向けのASPサービスを立ち上げたという人がいる。その人曰く、「中小企業はニーズがばらばらだし、手間はかかるし、全然お金にならなかった」と振り返っている。ASPと同じことが、パブリック・クラウドで再び繰り返されようとしているのかもねぇ・・・。

 じゃあ、中小企業のパブリック・クラウド導入は、誰がサポートすればいいんだろう?こういう時こそ中小企業診断士の出番なのかい?ただね、中小企業診断士って人によって得意分野がテンでバラバラだし、ITリテラシーにかなりバラツキがあるから、中小企業診断士を組織的に動かすのは難しいかもなぁ。中小企業庁や中小企業診断協会に何か策はあるんかな?
September 20, 2008

社長川柳研究会

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 中小企業診断士の研究会というと、業界の最新動向を勉強するものや、生産、マーケティング、物流などの領域ごとにコンサルティング手法を学ぶもの、あるいはロジカル・シンキングやプレゼンテーション力といったビジネススキルの習得を目指すものが多い。ところが最近、ちょっと変わった研究会が私の属する城北支会に誕生した。

 テーマは何と「川柳」。診断士たるもの、社長の気持ちが解らなければ経営支援はできない。ならば、その社長の気持ちを川柳で表現して経営の苦労を共感しよう、という強引な(?)展開で新しい研究会が立ち上げられた。名づけて「社長川柳研究会」。

 この研究会の発起人が、実務補習(中小企業診断士の試験に合格した後に行われる研修)でお世話になった先生という縁もあって、私も参加させていただいた。

 研究会といっても、参加者はほぼ全員「サラリーマン川柳」ぐらいしか知らないので、まずは「川柳とは何ぞや?」というお勉強から開始。NHK学園で川柳を教えている講師から手ほどきを受ける。

そもそも川柳とは?
 川柳とは、「人間の喜怒哀楽を五七五で表現したもの」だ。同じく五七五で表現する俳句とは、次のような違いがある。

 嵜祐屐廚魃咾爐里川柳。俳句は主に自然(花鳥風月)を詠む。
俳句には季語が必要だが、川柳には必要ない。
G亢腓亙幻貘里主だが、川柳は口語体で表現する。
だ醋では、俳句の切れ字(や・けり・かな)を使わない。

 人間の喜怒哀楽がテーマなので、日常生活で起こるさまざまな出来事を川柳で表現することができる。ただし、「川柳は人を嘲笑したり、相手の弱点・欠点をあげつらったり、揶揄・侮辱するものではない」と講師から注意点。「風刺や皮肉を込めた句でも、人に対する思いやり・あたたかさ・ほのぼの感がなければ血の通った作品とは言えない。」なるほど、なかなか奥が深い。講師がおっしゃるには、「一般の人が川柳と聞いて真っ先に思い浮かべるサラリーマン川柳の多くは川柳ではなく、狂句にすぎない」そうだ。狂句とは、本来の人間味あふれる句ではなく、ただの語呂合わせに過ぎないような句や他人を誹謗中傷するような攻撃性の強い句などのことを指す。江戸時代に一大ブームとなった川柳だが、江戸末期から明治にかけてはこの狂句が多くなってしまったという。

 一通り川柳の基礎を学んだところで、参加者が実際に川柳を詠むことに。講師から与えられたテーマは社長川柳研究会にふさわしく(?)「ワンマン」。サラリーマン川柳にならないように気をつけながら・・・と思いつつも、いざ作るとなると難しいものだ。実際に私が作り、講師に一部添削してもらった句がこれ。

 「ワンマンの 指が左遷を 選り分ける」

 これがサラリーマン川柳ではなく、ちゃんと人情の機微を詠んだものかというと若干微妙だが(汗)、初めて作った句ということで勘弁願いたい・・・他にも何句か作ったのだが、さすがに恥ずかしいのでここでは省略。

川柳による町おこし
 この日の講師は観光アドバイザでもあり、「川柳による町おこし」というユニークな取り組みを行っている。具体的には、土地の名産物や名勝などをテーマにした川柳の大会を企画するというものだ。応募者は川柳を詠む前に、まずはインターネットや雑誌でその土地のことを知ろうとする。そうするとこの土地の知名度が上がり、結果的に観光客が増加するのだという。

 調べてみると、全国には川柳大会を実施している(実施していた)観光地が確かにある。

○四万十川短歌川柳大会(これは有名か)
http://hatashin-tanka.com/

○千葉県銚子市「いわし川柳」
http://www.sukikuru.net/blog/staff/2008/07/04100225.html
http://choshi.blog4.fc2.com/blog-entry-240.html

○静岡県西伊豆町「夕陽川柳」
http://www.town.nishiizu.shizuoka.jp/hp/page000000500/hpg000000426.htm

○宮城県気仙沼市「さんま川柳」(2003年で終了)
http://miyagi-kankou.or.jp/wom/ser.php?sf=2&cid=2093&cfg=2&kwa=1&kkwa=1&o=1&pl=2&ds=1&pc=0&PHPSESSID=3368c70f9b54b913d5b4059bde6fe90c
http://www.47news.jp/CN/200309/CN2003092701000052.html

 何かいろいろ勉強になった社長川柳研究会だった。
April 21, 2008

フェルミ推定(≒地頭力?)の有用性

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診断士でもフェルミ推定を嫌う人がいる!?
 フェルミ推定−いや、今や「地頭力」という言葉の方がなじみがあるだろう−は、コンサルティングの現場ではよく使われる。フェルミ推定の説明は巷にあふれているので、拝借…

 「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」「日本全国に電柱は何本あるか?」「世界中で1日に食べられるピザは何枚か?」……。こうした荒唐無稽とも思える問いへの解答を導き出す考え方のプロセスを問うのが、「フェルミ推定」だ。「フェルミ推定」と呼ばれるのは、「原子力の父」として知られ、ノーベル物理学賞受賞者でもある、エンリコ・フェルミ(1901〜1954)に由来する。

 「フェルミ推定」では、つかみどころのない数量、物理量について、何らかの推定ロジックを用いて短時間で概算すること、すなわち短時間で「あたり」をつけることができるかどうかがポイントとなる。

 コンサルティング会社や外資系企業の面接試験では、この「フェルミ推定」問題がよく出される。それは、採用側に、応募者の「地頭のよさ」をテストしたいニーズがあるからに他ならない。
http://www.toyokeizai.co.jp/pub/recommend/555986/index.html 2008年4月21日アクセス確認済み)

 さすがに現場では「シカゴのピアノ調律師の数」を計算することはないが、マーケティング戦略を立てるときにある市場の規模を概算したり、事業シミュレーションでざっくりとした売上・コスト推移を把握したりする際にフェルミ推定を使う。

 だが、中にはこうした考え方を嫌う人たちもいるようだ。少なくとも、コンサルタント嫌いな人たち(確かに、コンサルティングが嫌われやすい職種であることは私も感じている)からはフェルミ推定が敬遠されている気がする。ただ、驚いたのは、(一応)コンサルタントである中小企業診断士の中にも、真正面からフェルミ推定を否定する人がいるということである。

フェルミ推定の有用性 〜診断士向け
 はっきり言って、売上や利益に関するパラメータが少ない中小企業を相手にする診断士の方が、フェルミ推定の使い道は多いと思う。「過当競争でシェアが伸ばしにくいのか、単に努力が足りなくてシェアが低いのか」、「どの商品を毎月どのくらい売ればいいのか」、「営業は毎月いくら売上を上げなければならないのか」、「売掛金の回収サイトはどのくらいでないと資金がショートするのか」、「パートやアルバイトは何人まで使っていいのか」、「○○万円の売上増を達成するためには、広告をどのくらい打てばよいのか」…こういった問いはフェルミ推定を使えば当たりはつけられる。もちろん、中小企業の方が1円単位で金額にシビアであるため、ざっくりした計算では足らない、という意見はあるだろう。だが、私が知る限りでは、診断士の間ではそもそも数字を用いた議論があまりにも少ないように思える。

 私が学生だったころに、コンサル業界を志望する学生の間で流行った「遊び」がある。それは、飲食店でご飯を食べながら、「その店の店長が乗っている車を当てる」というもの。メニュー、席数、営業時間、店員数、店舗の広さといったいくつかのパラメータを用いて、その店のおおよその利益をフェルミ推定で算出する。すると、そこから店長のだいたいの収入が解り、乗っている車の検討もつく。ナプキンの裏に計算式を書きながら、ポルシェだのフェラーリだのと各自予想を立てた後で、帰りがけに駐車場を覗いて正解を確認する。

 飲食店の場合は学生でも容易に計算できるほどパラメータが少ない。一般に、中小企業の方が考えるべきパラメータの数は少なくて済むはずだから、診断士にはぜひフェルミ推計を活用して、どうすれば儲かるのかを現実感をもって考えてほしいものである。

「無茶な数字」を見破る
 このブログを見ているのは診断士だけではない(むしろ、診断士以外の方が多いはず)だろうから、もう1つ違う使い方を挙げておく。「うちの会社では数字を使った議論ぐらいしているよ」という場合は、「無茶な数字」を見破るためにフェルミ推計を使う。

 会社にはいろんな目標数値が飛び交っている。だが、全部が全部何らかの根拠をもって策定されたものではない。中には誰かの「えいやっ!」で決められたものもあるだろう。それが達成可能かどうなのか、フェルミ推定を使ってシミュレーションしてみるといい。「どうやっても無理!」という目標が混じっているかもしれない。そんな目標が知らず知らずのうちに一人歩きするのは、社員にとっても会社にとっても不幸である。高いチャレンジングな目標はモチベーションを高めるが、高すぎる目標は逆にやる気をそぐ。

もちろん、フェルミ推定がすべてではない
 最後に付け加えておきたいのだが、人の頭の良さはフェルミ推定ができるか否かだけで判断できるものではない。むしろ、非常に限られた一部分でしかないと思う。さらには、頭の良さだけが人間の価値を決めるのではないことも指摘しておきたい。