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July 31, 2012

東京都の中小企業振興施策は”浅く狭く”になっているのでは?という疑問

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 1ヶ月以上前に受講した中小企業診断士の研修の感想を今さら書こうかと(汗)。東京都産業労働局の方から、東京都が予算を出している約50の中小企業振興施策についてお話を伺った。国が実施している中小企業向けの施策に関しては中小企業白書などで知ることができるものの、都が実施している施策は情報が散在している印象があり、こうやって研修という形で概要をまとめて聞けるのは非常にありがたい。

 一方で、施策の内容を見ていくうちに、都の施策は”浅く広く”ではなく、どうも”浅く狭く”になっているのではないか?という疑問が湧いてきた。もちろん、数十億円〜数百億円単位の大きな予算がついている施策もちゃんと存在する。商店街に対する各種支援事業には40億円以上の予算がついているし、イノベーションを通じて地域活性化に貢献する取組みを総合的に支援する「東京都地域中小企業応援ファンド」は、約200億円もの規模を有する。しかしながら、「この規模で実施しても、さしたる効果が見込めないのでは?」と思うような施策があるのもまた事実である。例えば、

 (1)産業技術研究センター、東京都中小企業振興公社がコーディネート役となって推進する産学公連携などにおいて、中小企業が開発初期段階で社外の知見・技術などを活用する際に必要な経費を助成する「オープンイノベーション促進助成事業」は、予算が約1,200万円、1件あたりの助成額が100万円以内となっている(助成率2分の1以内)。ということは、最小で12件しか支援できない。1件あたりの平均助成額を50万円としても、24件にしかならない。都内には約60万社の製造業が存在する。全ての製造業がオープンイノベーションによって新製品開発をするわけではないが、それにしてもこの規模では小さすぎるのではないだろうか?

 (2)単独の企業ではなく、企業グループを支援する事業もある。「ものづくり産業基盤強化グループ支援事業」では、3社以上の中小企業で構成されるグループを対象とし、共同事業にかかる経費(共同設備の購入・システム化、マーケティング、知財管理、教育などの経費)を助成する。生産拠点の海外移転と新製品開発の国内集約化の進行をにらんだ事業であり、対象企業グループは年間5,000万円を限度に(助成率2分の1)、最長3年間の助成金が受けられる。ところが、この事業全体の予算は8,800万円しかなく、せいぜい2グループしか支援できない計算になる。先日の記事「中小企業白書(2012年)に対する疑問―中小企業の強み「短納期・小ロット」は海外展開では弱み」でも書いたように、とりわけ新興国に販路を求める中小企業は、現地の「大ロット・短納期」の要望に応えるため、今後企業グループを形成するケースが増えると予想される。その予想からすると、この事業もまた、規模が小さいような気がしてならない。

 (3)東日本大震災の影響を受けて今年度から新設された「製造業防災対策事業」では、事業所や工場などの建物の耐震診断、耐震設計、および耐震補強にかかる経費に対し補助金が出るが、予算が約1億円、1案件あたりの補助限度額が1,000万円(補助率3分の2以内)、年間の支援目標は10件となっている。首都圏を大震災が襲って中小製造業が壊滅状態になると、東日本大震災の時に起きたサプライチェーンの断絶とは比べ物にならないほど深刻な問題が発生するだろう。にもかかわらず、10件のみ支援しても、焼け石に水にしかならないのではないか?と心配である。

 (4)製造業以外を対象とした事業の中には、「ファッション・ビジネス育成支援事業」というものもある。ファッション産業は高い付加価値を生み出し、今後の成長が見込まれる情報発信型・クリエイティブ産業の1つとして、都が戦略的かつ重点的に振興すべき産業であるとの認識に立ち、国内外で活躍できる若手デザイナーの育成を目的とした事業である。この事業には3,400万円の予算がついているものの、審査によって選抜する若手デザイナーは年間10名(ブランド)に限られている。東京都を世界に開けた文化の発信地とし、ファッションを文化の一要素と位置づけるならば(確か石原知事には昔からこの構想があったはず)、もう少し規模が大きくてもいいのではないか?と感じるわけである。

 随分前に書いた記事「飽きっぽい社長には気をつけろ―『バカ社長論』」では、事業投資には「クリティカルマス」が存在すると書いた。つまり、事業への投資に対するリターンは常に一定のパーセンテージというわけではなく、事業への投資額を徐々に増やしていくと、ある時突然リターンが跳ね上がるのである。リターンが跳ね上がるポイントにおける投資額を「クリティカルマス」と呼ぶ。経営においては、このクリティカルマスを見極めることが肝要だ。クリティカルマスに満たない投資をちびちびと続けても、成果は一向に現れない。行政においても同じことが言えるのではないだろうか?

 もっとも、単純に何でもかんでも予算を増やせばよいという話でもない。あまり補助金や助成金を増やすと、言葉は悪いが中小企業を甘やかすだけになる。ある中小企業の関係者は、社員が所定の研修を受講することが助成要件となっている助成金を受けるため、社長が製造ラインを止めてまで社員を無理やり研修に参加させようとするのに辟易しているとこぼしていた。こうなると本末転倒である。また、(1)や(4)はリスクが高い新規事業に対する投資であり、やみくもに予算を増やすと税金の無駄遣いという批判にもなりかねない。

 一方で、民間ではなかなかお金が出せないところにお金を出すのも行政の役割である。(3)などはまさに、中小企業がその必要性を解っていながらも投資をためらう分野であり、行政の出番となるだろう。こうしていろいろ考えると、どの程度の予算にするのが望ましいのか、バランスが非常に難しいところである。それぞれの事業の予算額や成果目標が、どのような考え方の下に設定されているのか、行政の担当者の話も詳しく聞いてみたいものである。
June 18, 2012

中小企業白書(2012年)に対する疑問―中小企業の強み「短納期・小ロット」は海外展開では弱み

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 先週、中小企業診断士の理論政策更新研修に行ってきた。中小企業診断士は5年ごとに更新が必要で、更新要件の1つに「理論政策更新研修を5年間で5日受講する」というものがあるのだけれども、私は最初の3年間サボっていたツケが回ってきて、去年からの2年で5回も受けるハメに(先週で4回目)。診断士の皆様、ちゃんと1年に1回ずつコンスタントに受講しましょう。私みたいにえらいことになりますから・・・。

 研修では、今年度の「中小企業白書」の概要と中小企業関連施策に関する講義があった。まだ製本されておらず、中小企業庁のHPでPDFが公開されているだけなので、中小企業庁HPへのリンクを貼っておく(出版されたらリンクを貼り直す予定)。 6月末に出版されました。 ちなみに、昨年度は東日本大震災の影響で白書の書き換え作業が発生したため、白書の発表が7月にずれ込んでしまったが、今年度は例年とほぼ同じ時期の発表となった。

 中小企業白書(2012年版)の発表について(中小企業庁、2012年4月27日)

中小企業白書 2012年版中小企業白書 2012年版
中小企業庁

日経印刷 2012-06

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図解要説 中小企業白書を読む 2012年度対応版図解要説 中小企業白書を読む 2012年度対応版
安田武彦

同友館 2012-07-03

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 1点、第2部の冒頭の記述で気になった箇所があったので、その点について述べておきたい。
 中小企業が持つ潜在力とは、変化する社会環境において、何らかの障害があって利用されていない経営資源である。小ロット・短納期への対応、技術力、マーケティング力、充実したアフターサービス、高い社会意識等の潜在力を持つ中小企業が、東日本大震災からの復興に大きな役割を果たしていく姿を明らかにするとともに、国内外の成長機会を取り込むことで潜在力を発揮している、海外展開企業及び女性の事業活動について取り上げる。
 この文章を読むと、(私の邪推ではないと思うが、)「小ロット・短納期の対応」という中小企業の強みが、海外展開にも活かせるかのような印象を受ける。しかし、実際には、「短納期の対応」はいいとしても、「小ロット」は逆に弱みになるような気がするのである。つまり、海外展開をするためには、「大ロット、短納期」を実現しなければならない。

 理由は非常に簡単で、海外、特に新興国の市場は、日本とは比べ物にならないほど規模が大きい上に、成長スピードも速いからである。小ロットでしか納品できないメーカーは、海外企業から相手にされないだろう(相手にされたとしても、富裕層向けのニッチな市場に限定される)。

 以前、(普段は滅多に見ない)テレビ番組で見たのだが、ある竹の産地が生き残りをかけて海外市場に挑むという特集があった。この産地に集積している中小メーカーは、竹の弾力性と肌触りを活かして、通常の椅子とは座り心地が全く違う椅子を開発した。メーカーがこの椅子を海外の家具販売会社に提案したところ、製品のコンセプトやデザインはメーカーの思惑通りに受け入れられた。

 ここまでは順調だった。ところが、取引条件として、「いついつまでに、同じ椅子を△△個、同じ品質で納品してほしい」(詳しい時期と数は忘れてしまった(汗))という、非常に厳しいものを突きつけられてしまったのである。この条件は、どのメーカーの製造能力をもはるかに上回っていた。それでも、何とか地域の中小企業が力を合わせて納品にこぎつけたので、その販売会社で竹の椅子を取り扱ってもらえることになり、めでたしめでたし、というエンディングであった。

 しかもこの販売会社は、新興国ではなく、欧州の企業だったと記憶している。ヨーロッパ(EU)も、1つ1つの国は小さいものの、全体を合わせれば約5億人という、アメリカを上回る巨大市場である。しかも、EU加盟国は地理的にも近いため、EUの複数の国でビジネスを展開する企業も多い。その企業を相手にするならば、小ロット生産ではお話にならないのである。これが、人口10億を超える中国やインドが相手となれば、そこまで行かなくとも1億前後の人口を抱える国々が相手ならば、やはり大ロット・短納期を実現しない限り、持続的なビジネスにはならないと思うわけである。

 あと、同じ引用文に関して、ものすごく細かいことを言うと、中小企業の強みの1つに「マーケティング力」が挙げられている一方で、「第2章 中小企業の経営を支える取組」では、中小企業の経営課題として「営業力・販売力の強化」が第1位になっている。これが、若干解せないんだけどね・・・。マーケティングは強いのに営業力は弱いってどういう状態なんだ??
December 14, 2011

特許庁が「知的財産権活用企業事例集2011」を発表

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 昨日、中小企業診断士向けの研修に参加したら、急遽30分だけだったが特許庁の産業財産権専門官の方から、中小企業向けの知財関連支援策の話を聞けることになった。この「産業財産権専門官」、どういう仕事をしているのかと言うと、特許・商標などに関する制度や各種支援策を全国の中小企業に広く知ってもらい、事業に効果的に使ってもらえるよう、セミナーや勉強会を開催したり、企業を個別訪問したりしている。

 産業財産権専門官は、言わば啓蒙的な役割に特化しているわけだが、中小企業に対してより踏み込んだ支援を行うために今年度から始まったのが、47都道府県に設置された「知財総合支援窓口」。窓口には弁護士、弁理士、中小企業診断士、知財部門出身の企業OBなど、知財の専門家が揃っている。従来も相談窓口はあったものの、弁理士の紹介や出願プロセスの説明などにとどまっており、中小企業にとって敷居が高かった。

 これに対し、知財総合支援窓口は、企業の経営状態を捉えた上で(そのために窓口に診断士がいる)、「知財を活用すると、その企業の経営課題は解決するか?」という視点からアドバイスを行う。この点で、より包括的かつ敷居の低い窓口を目指しているという。

知的財産権活用企業事例集2011(特許庁) ちょうど昨日、特許庁のHPに「がんばろう日本!知的財産権活用企業事例集2011」という冊子が公開されたそうなので、リンクを貼っておく。この冊子には、特許庁が毎年行う知財功労賞の受賞企業を中心に、知恵と知財を武器に事業を展開している全国の中小企業などの取組事例50社が紹介されている。事例には、知財を戦略的に活用し、下請企業から脱却した事例、新たなビジネスモデルを構築した事例、大企業と対等に取引できるようになった事例などが含まれる。今回の冊子は第1弾であり、来年以降、第2弾、第3弾を企画しているそうだ。
 一通り読んでみた感想を一言だけ。今回の冊子に限らず、中小企業の事例を集めた冊子やデータベースに共通して言えることなのだが、どうも情報量が中途半端な印象が否めない。今回も、1企業に割かれているのは2ページのみ。しかも、1ページは企業概要の説明と製品の写真が入っているから、実質的には1企業1ページである。

 個人的には、たくさんの事例をつらつらと掲載するよりは、

・大学との共同開発の進め方
・外部企業との共同開発の進め方
・共同開発チームのマネジメント
・知的財産権取得を織り込んだ製品開発プロセス
(初めから知的財産権を申請・取得することが決まっている製品開発プロセスをどのように設計すべきか?)
・知的財産を活用した新製品のマーケティング
(シーズ・ドリブンで生まれた製品に対する需要・ニーズをどのように喚起するか?)
・知的財産の基となる技術面・事業面のアイデアの創出
・アイデアや知的財産に秀でた人材の獲得・育成
・製品開発・知的財産権取得に必要な資金の確保
・社内での知的財産・ライセンス管理
・海外における知的財産権の取得・管理
・知的財産権の侵害に対する措置

など、中小企業が知的財産を活用する際に直面する代表的な課題ごとに、事例から見えてくるポイントをまとめてくれた方がいいと思うんだけどな・・・。あるいは、掲載企業を10社ぐらいに絞り、1社10ページぐらいの情報を載せて、ケーススタディブックみたいにするとか。

《掲載企業一覧(※URLをクリックすると、特許庁HP内の各社事例ページ[PDF]にジャンプします)》
【北海道・東北地域】
 株式会社アミノアップ化学(北海道)
 株式会社テスク(北海道)
 テフコ青森株式会社(青森県)
 株式会社アイカムス・ラボ(岩手県)
 株式会社東亜電化(岩手県)
 アイリスオーヤマ株式会社(宮城県)
 株式会社鈴木製作所(山形県)
 株式会社アサカ理研(福島県)
 株式会社福島エコロジカル(福島県)

【関東地域】
 有限会社水戸菜園(茨城県)
 有限会社佐藤化成工業所(栃木県)
 村田発條株式会社(栃木県)
 サーパス工業株式会社(埼玉県)
 株式会社ヒガノ(埼玉県)
 株式会社市川ソフトラボラトリー(千葉県)
 アッシュコンセプト株式会社(東京都)
 FSテクニカル株式会社(東京都)
 株式会社タニタ(東京都)
 株式会社NRLファーマ(神奈川県)
 株式会社レーベン販売(神奈川県)
 朝日酒造株式会社(新潟県)
 株式会社ニッセー(山梨県);
 オリオン機械株式会社(長野県)
 株式会社ケーイーコーポレーション(静岡県)

【中部地域】
 株式会社小矢部精機(富山県)
 株式会社ハシモト(富山県)
 愛知株式会社(愛知県)
 とこなめ焼協同組合(愛知県)
 三惠工業株式会社(三重県)
 辻製油株式会社(三重県)

【近畿地域】
 株式会社タケダレース(福井県)
 長岡産業株式会社(滋賀県)
 アークレイ株式会社(京都府)
 オリヱント化学工業株式会社(大阪府)
 株式会社日本スペリア社(大阪府)
 前田金属工業株式会社(大阪府)
 アスカカンパニー株式会社(兵庫県)
 株式会社ヤマシタワークス(兵庫県)

【中国・四国地域】
 株式会社やつか(島根県)
 オージー技研株式会社(岡山県)
 海洋建設株式会社(岡山県)
 広島化成株式会社(広島県)
 富田製薬株式会社(徳島県)
 協和化学工業株式会社(香川県)
 株式会社日本キャリア工業(愛媛県)

【九州・沖縄地域】
 上野精機株式会社(福岡県)
 株式会社パラマ・テック(福岡県)
 金剛株式会社(熊本県)
 大分県漁業協同組合(大分県)
 三州産業株式会社(鹿児島県)