※2012年12月1日より新ブログに移行しました。よろしければこちらもご覧ください。
free to write WHATEVER I like
Top > マネジメント:組織学習 アーカイブ
次の3件>>
April 11, 2012

効率一辺倒ではなく「冗長性」を取り込んだBPR(業務改革)の必要性

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 以前の記事「BPR(Business Process Re-engineering:業務改革)の火付け役=マイケル・ハマーの誤算」への補足。同記事では、マイケル・ハマーが後年の著書"Beyond Reengineering: How the Process-Centered Organization Is Changing Our Work and Our Lives"(『リエンジニアリングを超えて』)の中で、自身の行き過ぎた手法を反省していることを述べたが、たまたま野中郁次郎教授の同じタイトルの論文を見つけたので読んでみた。

Beyond Reengineering: How the Process-Centered Organization Is Changing Our Work and Our LivesBeyond Reengineering: How the Process-Centered Organization Is Changing Our Work and Our Lives
Michael Hammer

HarperBusiness 1996-07-04

Amazonで詳しく見るby G-Tools

リエンジニアリングを超えて(野中郁次郎)リエンジニアリングを超えて
野中郁次郎

白桃書房 1994-09-20

booknestで詳しく見るby G-Tools

 野中氏によると、「官僚制の『逆機能』を排除し、階層・分業・専門化の縦型組織から、境界横断的な横型組織の運営を開発する試み」であるリエンジニアリングは、実は日本的経営と共通点が多いという。
 日本企業の組織図は表層的には、階層・分業・専門化されていて、それなりの職務分掌規定もあるが、実際には組織性インはそのような原理に則って仕事をしているというよりは、職務の幅を柔軟に変化させながら自在なプロセスで仕事を行なっている。さらに(リエンジニアリングの特徴の1つである)コンカレント・エンジニアリングは、日本企業では、とりわけ新製品開発においてほとんどの企業が行なっているのである。
 しかし一方で、リエンジニアリングと日本的経営の決定的な違いの1つが「冗長性の有無」である。冗長性とは、異なる成員が似たような仕事をしていたり、当面は必要のない情報を持っていたりすることを意味する。野中氏は、こうした冗長性を許容しないリエンジニアリングの下では、新しい知識の創造を通じたイノベーションが生まれないのではないか?と指摘している。
 リエンジニアリングは顧客をリサーチし、他社をベンチマークしながら、最短のプロセスを情報技術を最大限に活用して設計するため、論理的にはきわめて効率的であるといえる。これに対し日本型のビジネス・プロセスは、いかにも冗長性が高い。しかし一方で、市場は分析的に把握できるという前提から、一切の冗長性を切り捨てたリエンジニアリングでは、市場に適応できてもより主体的な市場創造ができるかどうかは疑問である。
 私もコンサルタントとして多少なりとも戦略策定プロジェクトや業務改革プロジェクトに携わってきたけれども、極限まで合理化された戦略策定プロセスやBPRは、様々な冗長性を排除してしまう。イノベーションに向けた現場レベルでのアイデアの創出や実験、(特に若手社員の)人材育成、戦略の前提となるビジョンや組織文化の共有などは、真っ先に排除されるタスクの代表例である。しかし、中長期的な視点で見ればこういう仕事が重要であることを、多くの人は頭の中で理解しているものである。

 だから、敢えてこういった冗長性を最初から組み込んだ戦略策定プロセスやビジネスプロセスデザイン、組織デザインの方法を考え出す必要があると思う。あくまでもアイデアベースだが、1つには戦略策定の段階で、コアとなるターゲット顧客層に加えて、サブとなる小規模の顧客セグメントをいくつか定め、そのセグメントに対するマーケティングや製品開発・販売などを通じて若手社員や新人マネジャーの育成を狙う、というアプローチがあり得るだろう。

 また、ドラッカーはイノベーションを起こすためには「非顧客を観察せよ」と繰り返し説いていることから、例えば営業担当者に本来の担当顧客とは全く異なる属性を持つ顧客をわざと訪問させ、自社の製品を見せたらどういう反応を見せるのか?彼らはどういう潜在ニーズを持っているのか?などを探ってもらうタスクを追加する、というのも1つの手かもしれない。
August 02, 2010

29歳の誕生日に「自分がやりたいこと」を再整理してみる(2)

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 (昨日の続き)

(2)組織学習の実態の解明と組織学習の方法論の精緻化
 (1)は個人の学習に関する目標であるのに対し、(2)は組織の学習にフォーカスを当てている。マネジメントやリーダーシップを必要とするビジネスパーソンのニーズを全て満たすには、個人向けの学習機会だけではどうしても限界がある。学習機会を提供すると同時に、彼らが習得した内容を組織に広め、彼らと同じようなスキルやマインドを有するビジネスパーソンが組織内に量産される仕組みが重要になる。この仕組みを構築するためには、組織学習のメカニズムを明らかにすることが有益だろう。

 ビジネスパーソンは学習を終えると現場に戻る。そして、学習で学んだ事柄を現場の業務に適用する。彼らの知識や行動が他の社員を刺激し、他の社員にも学習を促す。社員間の相互作用を通じて学習は密度を増し、社員のさらなる行動変容をもたらす。これが組織学習である。

 とりわけ私が注目しているのは、

 ・ボトムアップによる戦略が生まれる現場
 ・現場起点のイノベーションが生まれる現場
 ・業務プロセス改革が起こる現場
 ・組織やチームを変革へと導くリーダーが育つ現場
 ・競争力のあるナレッジ・ノウハウが形成、伝播、蓄積される現場
 ・倫理、善、道徳、社会的責任を追求する現場
 ・外部組織とのコラボレーション、ネットワーク形成を推進する現場
 ・上記の現場学習における、現場とトップマネジメントの関係

といった事象である。組織学習の実態を明らかにし、組織学習を効果的に進める方法を整理することは、マネジメントやリーダーシップを学習したビジネスパーソンが現場で他の社員を巻き込んで学習を推進する上で必ず役に立つと思うのである。

(3)グローバル人材を育成する仕組みの追求
 私自身グローバルで仕事をしているわけではないため、この目標は現時点では全くもって現実味がないものの、やはりこれからの時代にグローバル人材の育成は欠かせないテーマになることは間違いない。

 個人的には、欧米のような先進国や成長著しい中国よりも、同じく急成長を遂げているが中国に比べるとあまり日本人に馴染みのないインドや、日本と同等かそれ以上の人口を有し、将来的には魅力ある市場になると予測される東南アジア諸国(インドネシア、ベトナムなど)、さらに親日国であるブラジルを始め今後成長が見込まれる南米、そしてもっと長期的な視点に立てば、いつか必ず世界的に注目される市場になるであろうアフリカに着目したいと思っている。

 多くの日本人がこれらの国々の人々と仕事をするようになる日はそう遠くないだろう。異文化の人たちの文化や価値観を理解、尊重、受容し、彼らと円滑に仕事を進められる人材の育成が急務になるはずだ。私自身もこの分野で貢献できればと思う。これが3番目の私の願いである。

(4)効果的なBtoBマーケティングの実践
 これは(1)〜(3)とはちょっと毛色が異なるのだが、私自身が現在担当しているマーケティング業務をもっと高度化したいということである。私の会社の事業はBtoBビジネスであり、BtoCビジネスのマーケティングの成功事例をそのまま持ち込むことができないことがここ数年の経験で解ってきた。

 とはいえ、これといったBtoBのマーケティング方法が確立されているようには思えない。BtoBビジネスは未だに営業が強い世界であり、マーケティングはオマケ的な扱いを受けることもある。

 しかしながら、ブログ、SNS、twitter、Youtube、Ustreamといったソーシャルメディアを始め、マーケターが使えるツールは爆発的に増えている。今後何が出てくるかは予測できないが、何かしらの新しいツールがいろいろと出てくることだけは予測できる。これらのツールをうまく活用し、BtoBのマーケティングで成果を上げたいというのも私の願いである。

 ドラッカーは、「マーケティングの究極の目的は、販売活動をなくすことである」と述べた。営業が販売活動をしなくとも、自動的に顧客の方から製品やサービスを購入してくれる状態を作ることがマーケティングの理想であるというわけだ。

 もっとも、これは究極の理想像であって、とりわけBtoBビジネスで扱うような複雑な製品・サービスの場合は、どうしても営業という人的リソースを使わなければならない場面が出てくる。だが、人海戦術のようなマンパワーに頼った非効率なやり方はもうそろそろ脱却したい。顧客企業にとっても、購入する気もないのにいちいち営業担当者を相手にしなければならないのは苦痛である。

 顧客企業が本当に望む情報(映像のような知覚的要素も含む)を提供すると同時に、営業担当者がスマートに商談を進められるような仕組みを作ること、これがマーケターとしての私が目指している姿である。
July 08, 2010

研修をガリガリと作るだけの人材開発部は時代遅れかもしれない(2)

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 (前回の続き)

 これからの時代の人材開発部には、新たに次の4つの役割が加わると私は考える。

(1)基本パターンをうまく応用する人材の育成
 高い成果を上げることができる社員は、研修で学習した基本的なナレッジを状況に応じてうまくカスタマイズし、ありとあらゆるパターンの業務を遂行している。既に述べた通り、経験パターンの中央部分から外れた部分のナレッジまで研修で教えるのは、莫大な時間とコストがかかるので非現実的だ。

 だが、ハイパフォーマーが持っているような「基本パターンの応用力」ならば、教えることは可能である。"What to Learn"(学ぶべきこと)ではなく、"How to Learn"(学ぶ方法)を教えるのである。それを教える手段を研修にするべきか否かは大いに議論の余地があるが、"How to Learn"(学ぶ方法)を学習する場では、社員は以下のような行動を習得する。

 ・現在直面している業務のつぶさな観察
 ・過去の経験の参照
 ・過去の経験と現在の業務の相違点の洗い出し
 ・過去の経験のカスタマイズ
 ・カスタマイズした方法の適用
 ・適用した結果のモニタリング
 ・うまくいった点、反省すべき点の洗い出し
 ・上記の反省点に基づき、カスタマイズした方法にさらに改善を施す
 ・新たなナレッジの確立

(2)環境変化に適応、あるいは変化を先取りして変革を遂げる人材の育成
 これからは、環境変化によって陳腐化しつつあるナレッジに代わる新しいナレッジを形成したり、変化を先読みして全く新しいナレッジを創造したりする社員が企業の成長のカギを握る。別の言葉で表現すれば、「クリエイティビティを持ち、それを具現化できる人材」である。こうした人材に欠ける組織は、成熟期を過ぎたらそのまま衰退して機能不全にになったり、競合他社や予期せぬ異業種からの参入に対して的確な施策を打てなくなったりする。

 新たなナレッジを創造できる社員は、既存のパラダイムに疑いの目を向け、多種多様な知識や情報、アイデアや人をアクティブに結びつける力に長けている。以下、かなり雑だが、新たなナレッジの創造と具現化に必要な行動を列記してみる。

 <新たなナレッジの創造>
 ・批判的思考(従来の前提や価値観を疑う姿勢)
 ・非公式なネットワーキングの形成(多様な人を結びつける)
 ・ネットワークを活用した情報収集(多様な情報やアイデアを集める)
 ・アナロジー思考(全く異なる業界のトレンドや方法論を自分の業界に当てはめてみる)
 ・アブダクション(枚挙的な帰納法ではなく、飛躍的な帰納法によって、創造的な仮説を作り出す)
 ・組織の価値観にとらわれない、個人の価値観に基づく思考
 ・他者の価値観との調和による新しい未来像の構築
 ・コンセプト・シンキング(《参考》ダニエル・ピンク)

 <新たなナレッジの具現化>
 ・社内のパワーポリティクスの把握
 ・反対派、中間派の巻き込み
 ・対話を通じた合意形成
 ・エンゲージメントを高め、動機づける
 ・コンセプトから実行プランへの落とし込み
 ・実行プランのモニタリングと修正

 これもまた、研修で教えるべきかどうかは検討が必要だが、先進的な企業ではこうした人材の育成に既に注力している。例えば「課題解決力研修」のような名前で、現在の事業や業務に潜む構造的で深層的な課題を設定し、その解決策と実行プランを作成させる研修を行っている。さらに進んだ企業では、研修で作成したプランを本当に現場で実行させ、その経過を定期的にモニタリングするフォロー研修まで行っている(いわゆる「アクションラーニング」である)。

(3)(1)(2)のような人材を現場で育成できる人材の育成
 これは非常にハードルが高いが、現場のマネジャーは従来の部下育成に加えて、(1)(2)のような人材育成も担うようになる。これができるようになると、人材開発部のいわば分身が現場にもたくさん生まれることになり、学習のレバレッジ効果が生じる。

 ただ、そういうマネジャーをどうやって育成するかは、非常に申し訳ないがノーアイデアである。(1)はこれまでもある程度OJTによって実施されてきたが、最近はマネジャーの業務量が増えたために、OJT自体が機能不全に陥っているケースも多い。そこに(2)の人材育成も加えようというのだから、マネジャーの仕事のあり方を抜本的に変えなければならないだろう。ただ、現時点で言えるのは、「変える必要がある」ということまでだ。実際にどうやってマネジャーの仕事を再定義すればよいかは、引き続き検討を続けていきたい。

(4)ナレッジを組織内に流通させるインフラの整備
 (1)(2)によって社員がナレッジを形成し、(3)によって部分的ではあるが組織的なナレッジが創造される。人材開発部はこれらのナレッジを全社で自由に流通させる仕組みにも積極的に関わるようになる。

 「ナレッジを流通させるインフラ」というと、ぱっと思いつくのは「ナレッジマネジメントシステム(KMS)」である。だが、往々にしてKMSの主導権は情報システム部が握っており、システム上の様々な制約に引っ掛かって重要なナレッジの流通が妨げられているケースが少なくない。

 情報システム部はデータ構造や処理速度の観点からシステムを眺める。一方、人材開発部は「ITを活用した効果的な学習」の観点からシステムを眺める必要がある。学習効果の高いKMSを構築するために、両部門の緊密な協業がますます求められるに違いない。

 「ナレッジを流通させるインフラ」はITだけとは限らない。企業によっては、現場が自発的に勉強会を実施しているところもある。ここに人材開発部がもっと介入する余地はある。KMSは「IT」を活用した学習だが、勉強会はリアルコミュニケーションという「場」を通じた学習である。そのような「場のデザイン」について、人材開発部が専門的な知識と方法論を使って積極的に支援することは、非常に意義のあることだと思う。

 さらに、「ナレッジの流通を目的としたジョブローテーション」も考えうる。通常のジョブローテーションは、本人のキャリア開発やスキルアップを目的としている。これに対して、ナレッジの流通を目的としたジョブローテーションでは、特定の社員が持っている貴重なナレッジを社内で横展開したり、ブレイクスルーをもたらしてくれそうな人材を組み合わせたりするために行われる。この点については、人事異動の担当者と連携する必要があるだろう。

 こんなことを言うと関係者から怒られるかもしれないが、かつては人事部門の中でも「人事考課>採用>教育研修」という明確な序列があったと聞いている。教育研修の位置づけは低かったのである。しかし、今後は人材開発部の責任がぐっと重くなる。人材開発部の存在意義が飛躍的に上がる日は限りなく近い。