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June 30, 2011

会社を退職しました

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 突然の話で恐縮だが、本日6月30日をもって、会社を退職した。

 入社が2006年3月だったので、5年半近く在籍したわけだが、振り返るといろいろあった。コンサルティングや研修でお世話になったお客様や、マーケティング関連で一緒に仕事をした取引先の方々からは、本当にたくさんのことを勉強させてもらった。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

 翻って社内の方を思い返してみると、やっぱりベンチャーというのは難しいとしみじみ感じる。私は前職もベンチャーだったが(アビームコンサルティングの元子会社。現在はアビームコンサルティング本体に吸収されている)、親会社がしっかりしていたこともあって、創業時から事業内容や社内制度がある程度確立されていた。それに対して、今回の会社は本当に何もないところからスタートした純粋なベンチャーであった。

 社内の人たちから何かプラスの意味で学んだことがあるかと問われれば、正直なところ「ほとんどない」と答えざるを得ない。逆に、反面教師的に学んだことならば、最低でも50個は挙げられる自信がある。今はそれらの教訓について詳しく書けないけれども、いつか書ける日が来ることだろう。

 1つだけ重要な教訓を挙げると、「ベンチャーでは、適切な人材の採用が最重要だ」ということである。『ビジョナリー・カンパニー』の著者であるジェームズ・コリンズは、事業の方向性を決めてから人材を採用するのではなく、「まずバスに適切な人材を乗せてから、方向性を決めることが大切だ」と力説していたが、この言葉の意味がもう本当に痛いほどよく解った。

 ベンチャー企業にとって、人材の採用は、製品開発や営業活動と同じくらい、あるいはそれ以上の重みがある。大企業であれば、数百人〜数千人単位で採用した中に数人から数十人ぐらい変な人材が混じっていても、リスク分散が可能である。これに対し、ベンチャーは人数が少ない分、1人の採用の失敗が命取りになりかねない。
 こう考える読者もいるだろう。「経営の常識ではないか、適切な人材を集めるというのは。どこが新しいというのか」と。ある意味ではたしかにそうだ。昔から説かれている経営の鉄則のひとつだ。しかし、良好から偉大に飛躍した企業には2つの際立った特徴があり、常識とは異なっている。(中略)

 まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに行くかを決めること、これが要点である。もうひとつ、第二の要点として、偉大な企業への飛躍には、人事の決定に極端なまでの厳格さが必要なことがあげられる。
 売上高の伸び率がつねに適切な人材の伸び率より高ければ、偉大な企業を築くことはできない。偉大な企業を築いてきた人たちは皆、企業が成長していくときに最大のボトルネックになるのが、市場でも技術でも競争でも製品でもないことを理解している。どの要因よりも重要な点がある。それは適切な人びとを採用し維持する能力である。
 個人的には、事業の方向性が本当に全くの白紙状態というのはあまり望ましくないと考える。コリンズがこの鉄則を導いたのは、ヒューレット・パッカードの創業者が、操業当初は売れるものなら何でもなりふり構わず売っていた、という事実があったからだと思われる。

 現実的な話をすれば、「向こう3年ぐらい、最低でも直近の1年間は、何を武器に市場で戦うのか?」を大まかに構想した上で人材を採用するのが普通だろう。しかし、採用自体はコリンズの言う通り、慎重に行わなければならない。ベンチャーは慢性的に人手不足であり、対外的な知名度もないに等しい。したがって、求人への応募があったらすぐにでも採用したいという誘惑にかられる。だが、そこをぐっと我慢して、目の前にいる応募者が本当に自社にフィットする人材かどうかを見極める必要がある。

 では、何を基準に採用の可否を決めるのか?それは、

(1)自社(あるいは創業者)の仕事に対する価値観に合致しているかどうか?
(2)(多少弱みがあるとしても、それを補って余りあるほどの)傑出したスキルがあるかどうか?

という2つに尽きる。逆に、「ビジョンに共感しているかどうか?」や「やる気があるかどうか?」は基準にならない。まして、「面接でたまたま意気投合したから」とか、「自分と馬が合いそうだから」という理由は論外だ。ベンチャーが欲しい人材は、「明日からすぐにでも仕事を任せられる人材」である。ビジョンに共感しているかどうかは、応募者本人の主観的な問題であり、人材の質を見極める材料にならない。また、「やる気」は本人を取り巻く環境や時期によって変動するし、会社側もやる気を(いい意味で)操作できるから、これもまた決定打にはならないのである。

 菅総理が自民党の浜田和幸参院議員を総務政務官に起用した「一本釣り」が物議を醸しているが、総理が「浜田議員の復興に対する強い意気込みを買った」と発言していたのをTVで見た。要するに、総理は浜田議員の「やる気」を起用の基準にしたわけだ。しかし、ベンチャーではこの手の採用はたいてい失敗する。そして、今回の一本釣りも、浜田議員が与野党の期待に十分に応えられずに終わる可能性が高いだろう。

 価値観と能力が判断基準になるのは、この2つは変動しにくいからである。さらに、能力の高さよりも価値観の合致の方が大切だと言える。能力の高さが採用の基準になる理由は自明であるにしても、価値観の合致の方が優先されるのはなぜか?それは、価値観は社内の様々な意思決定に対してダイレクトに影響を及ぼすからだ。

 例えば、「商談で敗れたら、敗因をきちんと分析して反省する必要がある」という価値観を持った人と、「ベンチャーのうちは結果オーライで成果が出ればOK」という価値観を持った人が一緒に仕事をすれば、営業会議は破綻するに違いない。価値観が違いすぎると、2人の能力がどれだけ高くても、2人の人間関係はギクシャクしてしまうのである。

 ベンチャーは、社内の制度やルールの整備がどうしても後回しになりがちだ。しかしながら、採用については前述の2つの基準に沿って人材を見極めるプロセスを早い段階で作るべきである。そのプロセスの構築には、製品開発や営業活動と同じくらいの時間を費やすだけの価値があると断言できる。

 まだまだ書きたいことはたくさんあるのだが、それは「書ける時期が来たら」ということにしておこう。なお、7月からの私の活動については、明日このブログで発表する予定である。

ジェームズ・C. コリンズ
日経BP社
1995-09
ジェームズ・C. コリンズ
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2001-12-18
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