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July 08, 2012

「日本らしい経営」を探求する必要性〜創業1周年に寄せて(2)

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 (前回の続き)

 私は、世の中には5タイプの人間がいると考えている。すなわち、「革新者」、「媒介者」、「追随者」、「批判者」、「抵抗者」である。革新者は読んで字のごとくであり、「媒介者」は革新者のアイデアに補足や調整を施しながら、アイデアの推進力となる。「追随者」は、おそらくそのアイデアがよいだろうという理由で付き従う人々である。「批判者」は新しいアイデアが出るとまずは懐疑的な態度から入る。革新者たちのアイデアを必ずしも否定するわけではないが、いたずらに変化を求めることには難色を示す。「抵抗者」は一も二もなく変革に反対し、現状に固執する人たちを指す。ただし、特定の人が5つのカテゴリーのいずれかにぴったりと当てはまるというよりも、実際には5タイプの要素を少しずつ持ち合わせていると言った方が正確である。

 私自身はずっと、「革新者」になれたらいいなと思っていた。ところが、前回の記事で述べたように「新しいことが本当によいことなのか?」という問題意識が芽生えたことに加え、自分の性格が元来革新者に向いていないことを薄々自覚するようになった。7年間このブログを書く間に私自身が生み出した新しいコンセプトと言えば、おそらく「価値観連鎖(Values Chain)」の1個だけである。しかも、まだコンセプトレベルであり、中身は綺麗に整理されていない。ひょっとしたら、私が知らないところで、既に誰かが「価値観連鎖」に関して精緻な議論を展開しているかもしれない。

 【水曜どうでしょう論(3/6)】外部のパートナーを巻き込んで「価値観連鎖(バリューズ・チェーン)」を形成する
 自社のビジョンに利害関係者も巻き込む「価値観連鎖(Values Chain)」の再発見―『絆の経営(DHBR2012年4月号)』

 それよりも、「温故知新」ということわざに従うわけではないが、十分に消化されていないまま、流行に押されて人々の記憶から遠ざかってしまった知識や情報を深耕し、その中に価値を見出していく作業が必要なのではないか?と思うのである。先ほどの分類を使うと、「批判者」的な立場を取りながら「媒介者」となることが、私にフィットした役割なのかもしれない。とはいえ、単純にこれまでの経営技法を振り返り、修正し、再構築するだけでは不十分である。

 正直に告白すると、ブログを書きながら、記事の内容が何となく表面的な技法に終始しており、全体的に“上滑りしている感じ”を覚えることがある。自分がこれまで書いてきた経営技術には、思想的な肉付けが欠けていると思うのである。本田宗一郎は「技術はあくまでも末端のことであり、思想こそが技術を生む母体だ。技術は思想の結晶であり、哲学こそが大事だ」と述べた。これは、製造業の技術に限らず、経営技術を含む技術一般に言えることだと思う。経営技術にも思想、特に社会の思想が反映される必要がある。

名言物語 人生の極意、経営の勘どころ名言物語 人生の極意、経営の勘どころ
青野 豊作

講談社 1996-12

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 ピーター・ドラッカーの経営学は、著書のあちこちが切り取られて名言として紹介されることが多いけれども、根底を貫くいくつかの思想的源流があることを忘れてはならない。ドラッカー思想の出発点は、政治における自由主義である。ドラッカーは、第2次世界大戦を「アメリカが全体主義から自由を守るための戦い」と位置づけた(『新しい現実』)。ドラッカーが自由を強く信奉していたことには、第2次世界大戦時に、ナチスの迫害を逃れてオーストリアからアメリカに移ったという、ドラッカー本人の経験も強く影響していると思われる。

[新訳]新しい現実 政治、経済、ビジネス、社会、世界観はどう変わるか (ドラッカー選書)[新訳]新しい現実 政治、経済、ビジネス、社会、世界観はどう変わるか (ドラッカー選書)
P.F.ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2004-01-08

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 そのナチスから発禁処分を受け、迫害のきっかけとなった1933年の処女作『フリードリヒ・ユリウス・シュタール 保守的国家論と歴史的発展』(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2009年12月号で読むことができる)は、政治における保守主義の有用性をキリスト教の視点から説いたものである。したがって、ドラッカー経営学と宗教との間に連関を探ることも可能であろう(具体的にどこに関連性があるのか、まだ見いだせていないのだが・・・)。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 12月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 12月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2009-11-10

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 また、ドラッカー経営学には、ハーバート・スペンサーの社会進化論も影響していると考えられる。ドラッカーは、人間の能力は無限に伸びると考え、「マネジメントは、経済的資源の組織化によって、人類の生活を向上させられるという信念の具現である」(『現代の経営(上)』)といった前提の下にマネジメントを論じている。これらはまさに、スペンサーの思想を反映するものであろう。加えて、ドラッカーが学生時代にキルケゴールを読んでいたと回想していることから、ドラッカーの経営学には、実存主義の影響も見て取れるはずである(私の怠慢ゆえに、まだキルケゴールを勉強していないため、宗教とドラッカーの関係と同様に、キルケゴールとドラッカーの関連性もつかめていないのだが・・・)。

ドラッカー名著集2 現代の経営[上]ドラッカー名著集2 現代の経営[上]
P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-11-10

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 ドラッカーがアメリカ社会の思想や宗教に基づいて経営を論じたのであれば、日本人である私は、日本社会の思想に基づいて経営を論じる必要があるのではないか?また、日本の政治・経済思想は、日本人の国民性・民族性や文化と結びついているから、その辺りも視野に入れなければならない。こうして日本の思想の源流を手繰ることは、必然的に日本の歴史を手繰ることを意味する。よって、日本の歴史とは切っても切り離せないアジアとの関係を考慮しないわけにはいかない。

 キルケゴールは「人生は前向きに進むしかないが、後ろ向きにしか理解できない」という言葉を残したが、私が経営技法に磨きをかけて前に進むためには、後ろを振り返るべき時期に来ていると思うのである。

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