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June 28, 2012

競合ばかり見ているとクジャクの「性淘汰」のように自滅する―『小売業は復活できるか(DHBR2012年7月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 07月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 07月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2012-06-08

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 論文の中で面白かったものを1つ挙げるとすれば、クリストファー・マイヤー他著「資本主義:進化の罠」という、特集外の論文だ。著者は、資本主義の暴走を招いた原因として、「ROE」と「競争」に対する誤解を挙げている。ROEの話は割愛させていただくが、競争に対する誤解が破滅を招く一例は、クジャクに見られるという。雄のクジャクは、ライバルの雄を退けて雌に好かれるために、進化の過程で美しく大きな羽を獲得した。ところが、この羽を維持するには大量の栄養が欠かせないため、コストがかさむ。しかも、羽が重いので動きが鈍くなり、天敵の餌食になりやすい。実際、クジャクの減少を報告している研究も存在するようだ。

 著者によれば、クジャクの話は、「自然淘汰(自然環境に適した者が成長し繁殖する)」と「性淘汰(ライバルを押しのけて異性に好まれる)」の基準が食い違った事例であるという。これを企業経営に置き換えてみると、競合他社ばかりを見ていて市場や顧客を見失うと自滅する、ということになるだろう。実際、競合他社の動きばかりを気にして、肝心の顧客価値を忘れた企業に対して、大前研一氏も警鐘を鳴らしている(「競争は戦略の目的ではない」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2007年2月号)。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2007年 02月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2007年 02月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2007-01-10

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 競合他社ばかりを見ている企業は、「あの会社がAという機能をつけたのなら、わが社の製品にはBという機能をつけよう」とか、「あの会社の性能がXレベルならば、わが社はその上のYレベルを目指そう」といった具合に、機能の多さや性能の高さを競い合うようになる。しかし、そういう競争は得てして顧客にはどうでもいいものであり、顧客は不要な機能ばかりで異常にスペックが高い製品を買わされるハメになる。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2006年6月号の論文「機能の数と使い勝手をバランスさせよ 便利で不愉快な機能過多を排す」(ローランド・T・ラスト他著)では、こうした機能過多の罠から脱する方法が論じられている。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2006年 06月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2006-05-10
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 ソニーがmp3プレイヤーを市場に投入した際には、競合よりも音質がいい製品を目指していた。だから、アップルがiPodを出した時、iPodの音質はソニーより劣るとして、iPodを相手にしようとしなかった。ところが、顧客が飛びついたのはiPodであった。顧客は音質がいいプレイヤーを求めていたのではなく、自分の好きな音楽を自分で取捨選択し、いつでもどこでも購入し聞くことができるという音楽体験だったのである。最近のソニーも、顧客ではなく競合を強く意識するあまりに、市場を奪われた一例というのは言い過ぎだろうか?

 思い返してみれば、かつてソニーがトランジスタラジオを開発した時には、音質にはこだわっていなかった。むしろ、音質は既存のラジオよりも悪かった(※)。ソニーがトランジスタラジオで提供したのは、中高生がポケットにラジオを入れて、親の目を盗んでラジオをこっそり聴くという生活経験だったのである。


(※)クレイトン・クリステンセン著『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』(翔泳社、2001年)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
クレイトン・クリステンセン 玉田 俊平太

翔泳社 2001-07

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