※2012年12月1日より新ブログに移行しました。よろしければこちらもご覧ください。
free to write WHATEVER I like
June 26, 2012

オムニチャネル化に伴い”買い物経験”を再構築すべき、という凡庸な結論・・・―『小売業は復活できるか(DHBR2012年7月号)』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 07月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 07月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2012-06-08

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 今月号の特集「小売業は復活できるか」は何とも不思議な特集だった。というのも、「米国経済指標(直近12ヶ月のデータ、60ヶ月のグラフ)」を見ると、2011年6月〜2012年5月の1年で「小売売上高(%)」の数値が前年同月比を下回ったのは2回(4月と5月)だけであり、「個人所得(%)」、「個人支出(%)」に関してはわずかに1回ずつ(個人所得は2011年11月、個人支出は2011年6月)にすぎない。また、「ミシガン大学消費者信頼感指数(Index)」も、リーマン・ショック後、一時的に落ち込んだ時期はあるものの、総じて回復傾向にあると見ていいように思える。

 それにもかかわらず、「アメリカの小売業は危機に瀕している」とでも言いたげな今月号のDHBRは、アメリカ小売業の一体何を問題視しているのだろうか?統計の数値はあくまでも前年比の数値であって、未だにリーマン・ショック以前の水準に戻っていないことを問題と捉えているのだろうか?

 確かに、統計上は問題なさそうに見えるアメリカの消費も(最近の欧州危機で消費冷え込みのリスクが高まったが・・・)、実際には消費が落ち込んでいるというのはニュースで見聞きするところであり、アメリカ政府がどんなに紙幣を刷ってもインフレが起こらず(※1)、FRBが政府から直接国債を買い取って市場に資金を供給する「ヘリコプターマネー」という”禁じ手”を使っても経済が立ち直らない(※2)ことから、アメリカには「消費者が買いたいと思うものがない」ということなのかもしれない。

 と、いろいろ考えながら今月号を読んだのだけれども、そこまで突っ込んだ議論は展開されていなくて、やや期待外れだった・・・。本号が問題としているのは、Webサイト、リアル店舗、キオスク、DMやカタログ、コール・センター、ソーシャル・メディア、携帯端末、ゲーム機、テレビ、ネットワーク家電、在宅サービスなど、マルチチャネルならぬオムニチャネル(omni-channel)化しているにもかかわらず、多くの小売業はそれに対応できていないということであり(ダレル・リグビー著「デジタルを取り込む リアル店舗の未来」より)、未だに「Webサイトで売れたか?店舗で売れたか?」という二分法に頼っている、という点のようだ(トーマス・ダベンポート著「ITが可能にした高度なカスタマイズ化 データが導く顧客への最適提案」では、店舗を訪れた顧客が、製品を持って帰るのが面倒だという理由で、その場で店舗のWebサイトを開き、サイト上で注文をした場合、この製品の売上は店舗のものなのか、Webサイトのものなのか?といった問いを提起しているが、これはまさにその通りだと感じた)。

 この問題に対する答えは、顧客は複数のチャネルを通って製品を購入することを前提に、顧客が複数チャネルを通過する際の”買い物体験”を再構築しなければならない、というものである。チャネルの通過パターンは顧客セグメントによって変わるから、小売業は顧客セグメントごとに異なる買い物体験を用意する必要がある。あるいは、チャネルの通過パターンを分析すると、既存の顧客セグメントを見直す必要性が出てくるかもしれない。

 とまぁ、このくらいならそれほど目新しい話ではないなぁ、という印象だった。昨年の「ビジネスモデル変革のパターン」のシリーズで、コカコーラの事例を取り上げたことがあったが(「【第11回】販売チャネルを拡大する―ビジネスモデル変革のパターン」)、「顧客に提供する価値をチャネルによって変化させる」という原則が、チャネル構成の多様化に伴ってもう少し複雑になる、といった感じか?

 今月号は、特集以外の記事の方が面白かったので、その辺りは次回の記事で。


(※1)例えば以下のリンクを参照。
 「量的金融緩和≠ハイパーインフレ≠米ドル崩壊」(アメリカ経済ニュースBlog、2011年10月26日)
 「中央銀行がお金ジャブジャブに刷ってもハイパーインフレにならない理由」(アメリカ経済ニュースBlog、2012年4月15日)
 あるいは、米中の関係からアメリカがインフレにならない理由として、
 「紙幣をガンガン刷るとインフレになると言われていますが、現在のアメリカはなぜインフレにならないのでしょうか?」(Yahoo! 知恵袋)

(※2)中谷巌著『資本主義以後の世界―日本は「文明の転換」を主導できるか』(徳間書店、2012年)

資本主義以後の世界―日本は「文明の転換」を主導できるか資本主義以後の世界―日本は「文明の転換」を主導できるか
中谷 巌

徳間書店 2012-01

Amazonで詳しく見る by G-Tools

おススメの書籍

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする