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June 03, 2012

《要約》『戦略サファリ』―ミンツバーグによる戦略の10学派(2.プランニング・スクール)

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ヘンリー ミンツバーグ ジョセフ ランペル ブルース アルストランド Henry Mintzberg

東洋経済新報社 1999-10

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 プランニング・スクールは、「戦略論の父」と呼ばれるイゴール・アンゾフに代表される学派である。「戦略論の父」と称されているにもかかわらず、ミンツバーグによって手厳しい批判が浴びせられているため、アンゾフがちょっとかわいそうに思えてしまった(もっとも、この後で紹介する第3学派「ポジショニング・スクール」の権威マイケル・ポーターは、もっとひどくこき下ろされているのだが・・・)。そこで、何か擁護できる点はないかと、手元にあった『最新・戦略経営―戦略作成・実行の展開とプロセス』を読み返してみた。

最新・戦略経営―戦略作成・実行の展開とプロセス最新・戦略経営―戦略作成・実行の展開とプロセス
H.イゴール アンゾフ 中村 元一

産能大学出版部 1990-05

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 確かに、ミンツバーグが指摘する通り、チャートやチェックリストは非常に多い。同書では、戦略形成のプロセス図に始まり、競争分析の意思決定フロー、ポートフォリオ分析の意思決定フロー、多角化/国際化戦略選択の意思決定フロー、そして戦略計画の作成手順など多種多様な図が使われている。チェックリストや診断も豊富であり、新製品・市場へ進出する際のシナジーの評価ポイント、自社の組織能力を評価する視点、市場の潜在力を分析するためのアウトライン、外部環境の乱気流度合いを測定する診断(短期/中長期の両方)などが提示されている。

 個人的には、アンゾフが戦略の形成に”先立って”「自社目的」を明らかにすべきであるとし、自社目的の設定方法に多くのページを割いている点を肯定的に捉えたいと思う。さらに、目的形成プロセスは、その企業の「基本的な理念の選択」から出発している点を踏まえると、アンゾフは戦略の上位概念として、いわゆる「ビジョン」をある程度意識していたと言えるのではないだろうか?

 以前の記事「競争優位が戦略からビジョンへ移行しつつあることの再発見―『絆の経営(DHBR2012年4月号』」でも書いたが、経営の構成要素を説明する際に、ビジョンを頂点として、その下に戦略、戦術、組織・・・と続くピラミッド図がしばしば使われる。これは、各要素間の一貫性が重要であることを意味している。ところが、いざ戦略を策定する段階になると、ビジョンと戦略の整合性が忘れ去られ、大きな経済的価値が見込めそうな戦略オプションに安易に飛びついてしまうことが往々にしてある。

 (こう書いておきながら、別の記事「【ドラッカー再訪】ドラッカーの「戦略」を紐解く(3)〜一般的な戦略策定プロセスに沿って整理―『創造する経営者』」で示した戦略策定プロセスの図は、ビジョンとの関係性に触れておらず、不完全なものだったと反省しているところである。この図は修正しなければ・・・)。

 アンゾフの戦略論は、ビジョンと戦略のリンクに言及しているわけで、この点は評価できると思う。ただ、アンゾフは、企業の目的として利潤極大仮説や市場価値極大化説、利益制約下の成長の極大化説といった財務的な目的を否定し、ドラッカーの有名な「顧客の創造」説を紹介しておきながら、結局のところ「長期の収益性が自社の中心目的でなければならないという前提からスタート」している点にはやや矛盾を感じる。

 また、長期的な収益性から出発した自社目的は、企業を取り巻く様々なステークホルダーのニーズや目的とバランスを取っていくと、最終的には「自社目的リスト」と呼ばれる複合的な目的になる、という説明も何となく腑に落ちない(「自社目的リスト」の構成要素を説明するだけで、アンゾフは2ページ近く使っている)。利害関係者は決して無視できない存在であるものの、彼らの利害をパラレルに扱って自社目的に入れ込むと、結局のところ企業は何を追求すればよいのかよく解らなくなってしまう。自社目的は(財務以外の)特定のものに絞り込み、利害関係者の要求は、目的を達成するための制約条件として捉えるべきではないだろうか?

 この違いは非常に微妙であるけれども、もう少し説明を続けると、利害関係者のニーズを並列に扱って自社目的のリストに入れることは、いわば八方美人状態であり、あらゆる目的を同時に達成しなければならないというプレッシャーによって、企業の資源や集中力が発散するリスクがある。

 これに対して、利害関係者のニーズを制約条件として扱うと、それぞれの制約条件には強弱が生じ、強い制約条件を弱めるためにはどうすればよいか?という交渉の余地が生まれる。さらに、制約条件同士にも依存関係があり、そのシステマティックな関係に対する理解を深めることは、制約条件をクリアしながら目的を達成するための骨太な戦略ストーリーを構築することにもつながるだろう。

【第2学派:プランニング・スクール】
<代表的な論者・理論>
(1)イゴール・アンゾフ『企業戦略論』
(2)ピエール・ワックの「シナリオ・プランニング」
(3)マイケル・グールド&アンドリュー・キャンベルの「戦略コントロール」(多角化企業における戦略コントロール。特に、本社による各事業部のコントロールを扱う)
(※(2)(3)は、初期のプランニング・スクールに対する批判を受けて、より応用的な理論として開発された)

企業戦略論企業戦略論
H.I.アンゾフ 広田寿亮

産業能率大学出版部 1985

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<特徴>
(1)「戦略計画」を作成する。そのモデルは何百とあるが、基本的なプロセスは、SWOT分析に始まり、時間軸と組織のヒエラルキーに沿って、目標・予算・プログラムに関する運用プランへと落とし込んでいく。目標設定と予算、および実施プランの作成には最新の注意を払う。
(2)形式的な手続き、形式的なトレーニング、形式的な分析に特徴がある。また、数量データを重視し、様々なチェックリストと分析技法を駆使する。
(3)原則として、プロセス全体に対する責任は、CEOにある。しかし、実際の責任は戦略プランナーにある。

<功績>
(1)「戦略プランナー」の役割を重視し、戦略形成というブラックボックスの前後で果たすべき役割を与えた。
 −ブラックボックスの前=マネジャーが見落としがちなデータをインプットする。
 −ブラックボックスの後=ブラックボックスから出てきた戦略を吟味し、実行可能性を評価する。
(2)戦略プランナーは、単なる形式的なプランニングを推進する責任者としてではなく、戦略実行の触媒として、組織に対し戦略的行動を促すことができる。

<問題点>
 プランニング・スクールは、デザイン・スクールとほぼ同じ前提条件に立っているため、デザイン・スクールに対する批判の多くはそのままプランニング・スクールにも当てはまる。それ以外の主な問題点は以下の通り。

(1)戦略計画を策定するためには、環境がどう推移するかを予測し、環境をコントロールしなければならない。しかし、それは不確実性の高い時代には困難である(アンゾフは『企業戦略論』の中で、「自社がたとえば、プラス・マイナス20%前後の精度で予測を立てられる期間を、自社の<計画作成対象期間>という」と述べているが、一体どうすればその予測精度を予測できるのだろうか?)
(2)戦略家は「ハード・データ」(環境と組織に関する詳細な「事実」を定量的に集計し、すぐ使えるようにまとめたもの)を分析して戦略を作成する。だが、ハード・データはタイミングが遅く、内容が浅く、過度に集約されすぎている。力のある戦略家は、日常業務から自分を切り離すのではなく、逆にその中に没頭し、そこから戦略的なメッセージを抽出するものである。
(3)戦略形成プロセスでは、考察、創造力、統合化が求められる。これらは、プランニング・スクールが前提とする形式化とは相容れないものである。プランニング・スクールは、戦略策定プロセスを、ボックスを用いたチャートで表現するけれども、優れた戦略はボックスを超越し、新たな見解や組合せを生み出す創造力によって創出される。
(4)戦略計画は、実際にはおざなりな「数字の打ち込み」や、その場限りの意思決定による予算編成に終わっていることが多い。言い換えれば、「数字のゲーム」になりやすい。その意味で、ストラテジック・プランニング(戦略計画)ではなく、ストラテジック・プログラミングと呼ぶべきである。
(5)CEOが戦略形成プロセスに責任を負うことになっているものの、実際には戦略プランナーが力を持ちすぎて、CEOは彼らの戦略を承認するだけの役割に成り下がっている。

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 《10学派一覧》
 第1学派:デザイン・スクール
 第2学派:プランニング・スクール
 第3学派:ポジショニング・スクール
 第4学派:アントレプレナー・スクール
 第5学派:コグニティブ・スクール
 第6学派:ラーニング・スクール
 第7学派:パワー・スクール
 第8学派:カルチャー・スクール
 第9学派:エンバイロメント・スクール
 第10学派:コンフィギュレーション・スクール
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