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April 23, 2012

【ドラッカー書評(再)】『創造する経営者』―ドラッカーの「戦略」を紐解く(1)〜事業の「暫定的な診断」の概要

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創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)創造する経営者 (ドラッカー名著集 6)
ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2007-05-18

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 DHBR2012年5月号のレビュー記事(「「幸福感」と「モチベーション」の違いがよく解らない印象を受けた―『幸福の戦略(DHBR2012年5月号)』」など)を挟んだので約1週間ぶりの【ドラッカー再訪】記事となったが、前回の「「戦略」以外にも「コア・コンピタンス」「ABC(活動基準原価)」などの先駆けとなった著作―『創造する経営者』」に続いて今回は、ドラッカーが唱える「戦略」の中身を紐解いていきたいと思う。

 ただし、ドラッカーが本書を「事業戦略と呼ばれているものについての世界で最初の本」と呼ぶ割には、実は戦略の明確な定義はなされておらず、またM・ポーターの競争戦略論に出てくる「5 Forces Model」や、資源ベース論で知られるJ・B・バーニーの「VRIOフレームワーク」のように、解りやすい戦略の枠組みも存在しない(安易な単純化を嫌うドラッカーらしいところではあるが)。そういう意味で、改めて読み返してみても内容を理解するのに結構苦労したわけなのだが、私なりに次のように整理してみた。なお、目次と絡めながら説明を進めたいので、目次を掲載しておく。

第1部◆ 事業の何たるかを理解する
 第1章 企業の現実
 第2章 業績をもたらす領域
 第3章 利益と資源、その見通し
 第4章 製品とライフサイクル
 第5章 コストセンターとコスト構造
 第6章 顧客が事業である
 第7章 知識が事業である
 第8章 これがわが社の事業である

第2部◆ 機会に焦点を合わせる
 第9章 強みを基礎とする
 第10章 事業機会の発見
 第11章 未来を今日築く

第3部◆ 事業の業績をあげる
 第12章 意思決定
 第13章 事業戦略と経営計画
 第14章 業績をあげる
 終章 コミットメント

 ドラッカーは本書の中で、自社の事業を理解し、方向性を決定するための分析手法として、(1)業績をもたらす領域、利益、資源についての分析、(2)コストセンターとコスト構造についての分析、(3)マーケティング分析、(4)知識分析という4つの方法を提案している。(1)は第2〜4章、(2)は第5章、(3)は第6章、(4)は第7章で解説されている。このうち、(1)と(2)は事業そのものに関するミクロな視点での「暫定的な診断」であり、その診断結果は、よりマクロな視点からの外部環境分析である(3)と、内部環境分析に相当する(4)によって再点検する必要がある。こうした一連の作業を通じて、「これがわが社の事業である」(第8章)と自信を持って言えるもの、つまり戦略が固められていくというわけである。

 「(1)業績をもたらす領域、利益、資源についての分析」は、簡単に言えば製品別の利益分析と製品のカテゴライズである。ドラッカーの著書としては極めて珍しく、本書にはユニバーサル・プロダクツ社(※実在する企業を基にドラッカーが作成したケース。もちろん、ファッションブランドのユニバーサル・プロダクツとは別物)の分析結果が詳細な表とともに登場する。そして、どうでもいい小ネタだが、ドラッカーの著書に表が登場するのはおそらくこの本だけである。というのも、図や表を書いてそれをさらに文章で説明するのはバカバカしい、というのがドラッカーの信条だからだ。ただ、本書に限っては、その表がなければさすがに分析手法の説明ができないと考えたのか、信条に反する形で(?)表が掲載されている。

 製品別の利益を計算する際には、従来のコスト会計の欠点を指摘し、後のABC会計(Activity Based Costing:活動基準原価計算)につながる考え方でコストを計算している(前回の記事「「戦略」以外にも「コア・コンピタンス」「ABC(活動基準原価)」などの先駆けとなった著作―『創造する経営者』」を参照)。ABC会計に従うと、営業・販売活動やバックヤード業務に要する人件費のような間接費を各製品の売上比率に応じて按分する従来のコスト会計では解らなかった事実が判明する。つまり、ある製品は一見稼ぎ頭のようだけれども、実は社員の手間ばかりがかかるため、実質的には利益を食いつぶしていたとか、逆にそれほど利幅が大きいとは思っていなかった製品が、実は回転率がよく社員の作業量も少ないから、非常に高い利益率を上げていた、といった具合である。

 製品のカテゴライズに関しては、製品の優先順位に応じて製品を11に分類することをドラッカーは勧めている。しかしながら、個人的に11はちょっと多すぎる気もする。ドラッカーの意図するところを汲み取れば、「今日の主力製品」、「昨日の主力製品」、「明日の主力製品」の3つで十分だろう。残りの類型は、「今日の主力製品/昨日の主力製品/明日の主力製品に”なりかけている”製品」と解釈することができる。ドラッカーは、「明日の主力製品」に、自社で最高の人材と知識を投入しなければならないと繰り返し強調する。

 多くの企業は、「今日の主力製品」に最高の人材と知識をあてがい、「明日の主力製品」を真の主力製品に育て上げる努力を自ら放棄している、とドラッカーは警告する。もっとひどい企業だと、既に市場での役目を終えつつある「昨日の主力製品」の問題解決に最高級の資源を投入してしまっているという。これは例えば、市場に残っているごく少数の特殊な顧客のニーズやクレームへの対応、あるいはもうほとんど向上の余地がない昨日の主力製品の売上や利益を上げるための方策の検討と実施などに貴重なリソースを突っ込んでいる、ということだろう。

 「(1)業績をもたらす領域、利益、資源についての分析」では製品別のコストを計算したが、「(2)コストセンターとコスト構造についての分析」では、改めて別の視点からコスト分析が行われている。このコスト分析の目的は、許容できるコストと削減すべきコストを明らかにすることである。ユニバーサル・プロダクツ社の事例では、コスト構造を別の視点から分析した結果、輸送費と小規模チャネルの維持費にコストがかかっていることが判明したという。この結果を踏まえて、倉庫の構成を再構築するとともに、小規模チャネルへの営業活動や売掛金管理業務を変更したそうだ。

 以上が事業の「暫定的な診断」の概要である。ただ、この診断には個人的に疑問に感じるところがいくつかある。次回はそれについて述べてみたい。

 (続く)

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