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April 16, 2012

「幸福感」と「モチベーション」の違いがよく解らない印象を受けた―『幸福の戦略(DHBR2012年5月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 05月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 05月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2012-04-10

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 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2012年5月号の書評。定期購読を始めてかれこれ7年近くになるのだが、「幸福」をテーマにした特集は初めてじゃないかな??

社員のパフォーマンスを高める 幸福のマネジメント(グレッチェン・スプレイツァー、クリスティーン・ポラス)
 我々が安定的に高業績を上げている組織の秘訣について調査したところ、「幸福感を抱く社員は、そうでない人と比べて長期にわたって高いパフォーマンスを上げる」ということが明らかとなった。欠勤が少なく、離職率が低く、求められた以上の働きをし、自分たちと同様に意欲の高い人材を引き寄せるのだ。しかも、短距離走よりもマラソン向きだといえ、すぐに息切れするようなことがない。
 この論文に限らず、今月号の特集に共通して言えることだけれども、「幸福感」と「モチベーション」、さらには「社員満足度」との違いがいまいちよく解らなかった。引用文の「幸福感を抱く社員」の部分を、「モチベーションが高い社員」とか、「社員満足度が高い社員」に置き換えても文章として十分成立するし、実際そのような結果を示す研究もある。

 社員の幸福感をマネジメントの新しい課題に据えるのであれば、類似概念であるモチベーションや社員満足度との関係をもう少し厳密に整理する必要があると思う。少なくとも幸福感、社員満足度とモチベーションの間には大きな違いがある。それは、幸福感や社員満足度がもっぱら「現在から過去を振り返ってどう感じるか?」を測定している点で”過去志向”であるのに対し、モチベーションは「次の仕事に対するやる気があるか否か?」を問うている点で”未来志向”であるということである。

 したがって、幸福や満足は感じていないけれどもモチベーションは高いケース(例:職場での現在の処遇は不満だが、もっといい待遇が受けられるように、今の仕事で高い成果を上げて上司に認めてもらおうとする)もあるし、逆に現状で十分な幸福や満足を覚えてしまったがためにモチベーションが湧かないというケース(例:何年にも渡る困難なプロジェクトをやり切った充足感で今は一杯だから、しばらくは楽な仕事を続けたい)も考え得る。

 とはいえ、3つの概念には重なる部分があり、「今日も幸福で満足な一日だったから、明日からまた頑張ろうという気持ちになる」ことも事実である。よって、3つの概念の関係を整理した上で、幸福感や満足感とモチベーションを連続させるにはどうすればよいのか?逆に、どういう状況で人は、幸福感や満足感とモチベーションの連続性が切れてしまうのか?を問うことが重要になるように思える。

 幸福感と社員満足度も、似ているようで微妙に異なる概念である。社員満足度は職場に限定されている一方で、幸福感は人生そのものに対する包括的な満足度を指している。だから、厳密にタイプ分けをすれば、幸福ではあるが社員満足度は低い社員(例:もともとプライベート重視志向が強く、現在の私生活は充実している反面、職場には不満がある社員)や、幸福感は低いが社員満足度は高い社員(例:プライベートで問題を抱えており、その問題から逃れるように仕事に没頭する社員)にグルーピングされる人も出てくるはずだ。

 一般的に、「幸福感が高い社員はパフォーマンスが高い」、「社員満足度が高い社員はパフォーマンスが高い」とされるが、こういういわば”ねじれた”幸福感や満足感を抱えている社員のパフォーマンスは、果たしてどういうものになるのだろうか?そして結局のところ、企業は幸福感と社員満足度のどちらを重視すればよいのだろうか?(仮に幸福感の方を重視すべきだという見解に立つならば、企業は社員のプライベートにも一定の責任を有することになるわけだが、それは果たして妥当かつ可能なのであろうか?)
 放っておいても順調に歩み続ける人材ばかりなら、どれほどよいだろう。しかし、仕事への熱意を引き出し続ける方法はいくつもある。我々の調査からは、そのための環境づくりには、(1)判断の裁量を与える、(2)(業績や重要な意思決定に関する)情報を共有する、(3)ぞんざいな扱いを極力なくす、(4)成果についてフィードバックを行う、という4つの方法が有効であることが明らかになった。
 この論文では、社員の幸福度を高めるための4つの方法が提案されている。ただ、引用文に「仕事への『熱意』を引き出し続ける方法」とあるように、これらの方法は幸福感を高める方法というよりも、モチベーションを高める方法のような気がする。以前の記事「《メモ書き》モチベーションと業績の関係モデル―『熱狂する社員』より」で、モチベーションを規定する要素は公平感、達成感、連帯感の3つであると書いた。これに従うと、引用文の(1)は達成感、(2)(4)は公平感、(3)は連帯感と公平感につながると考えられる。もちろん、幸福感を高める方法と、モチベーションを高める方法には共通項も多いだろう。しかし、この論文を読む限り、幸福感とモチベーションがごちゃ混ぜにされてしまっている印象が否めない。

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幸せな気持ちになると、何事もうまくいく PQ:ポジティブ思考の知能指数(ショーン・エイカー)
 パフォーマンスを向上させる要因として誤解されている最たるものが、おそらく「幸福」であろう。その誤解の1つは、ほとんどの人が「成功すると幸福になれる」と信じていることである。たとえば「昇進すれば、幸福な気持ちになる」とか、「営業目標を達成できれば最高である」と考える。

 しかし、成功はたえず変化していく。ある目標を達成したとたん、さらに高い目標が生まれる。成功によって生まれる幸福感はうたかたにすぎない。実際には、「まず成功ありき」ではない。ポジティブ思考を養ってきた人は、困難に直面したときこそ、通常以上の結果を出す。これを、私は「幸福優位」(happiness advantage)と呼んでいるが、脳が活性化している時には、ビジネス関連の成果がもれなく改善されることが示されている。
 論文の著者によれば、「幸福優位」とは「幸福を感じていると成功確率が高まる」ことである。しかも、幸福を感じるのに大げさな出来事は必要ではなく、「1日1回前向きな行動を3週間続けると、その影響がずっと続く」のだという。ここで問題になるのはやはり、幸福優位の原則に従っている社員の高い幸福感をモチベーションに転換するためには、企業はどうすればよいのか?反対に、企業はどのようなことをすると、幸福優位の原則に従っている社員のモチベーションをくじいてしまうのか?(=つまり、成功確率を下げてしまうのか?)ということではないだろうか?

《2012年7月15日追記》
 ”過去志向”の社員満足度と”未来志向”のモチベーションを区別することが重要ではないか?という話は、「顧客満足度」にも当てはまる。社員満足度は高いがモチベーションは高くない社員がいるのと同様、顧客満足度は高いが「再購買意向」は高くない顧客がいる可能性がある。言い換えれば、顧客はある企業の製品やサービスに”今回は”満足したけれども、”次回も”同じ企業から購入するとは限らないのである。

 そして、実際にそのような顧客層の存在を裏づけるデータがある。「『顧客満足度』再考〜『顧客満足度』は業績と連動するか〜」によると、業界によっては顧客満足度が高くても、他社にスイッチする顧客が多い。自動車や生命保険、テレビのように、買い替えサイクルが長く、同じ企業の製品・サービスを継続するメリットが少ない業界では、こうした傾向が見られるという。したがって、企業が継続的に収益を上げようとするならば、単に「顧客満足度を高めるにはどうすればよいか?」と問うのではなく、「顧客に『次もわが社から買いたい』と思ってもらうためにはどうすればよいか?」と問う必要がある。
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