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February 24, 2012

ビジョナリー・カンパニーのリーマンショック後の株価推移

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 先日の記事「戦略による競争優位からビジョンによる競争優位へ?―『「チェンジ・ザ・ワールド」の経営論(DHBR2012年3月号)』」では、戦略よりもビジョンの方が持続的な成長に貢献するのではないか?ということを書いたわけだが、そこでふと気になったのが、ジェームズ・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』に登場する企業の”その後”である。『ビジョナリー・カンパニー』は、1990年代前半までの分析で終わっている。仮に、ビジョナリー・カンパニーがビジョン(コリンズは「基本理念」と呼ぶ)を守り、ぶれない経営を続けていれば、2008年9月15日に起きたあの忌まわしいリーマンショックの後でも、株価が市場平均を上回る伸び率を見せているのではないだろうか?

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
ジェームズ・C. コリンズ ジェリー・I. ポラス James C. Collins

日経BP社 1995-09

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 そこで、リーマンショック直後の株価と、現在の株価を実際に比べてみることにした。より具体的な比較対象期間は、2008年9月19日から2012年2月17日とした(google financeで調べられる期間に合わせたので、ややキリが悪い日付になっている点はご容赦ください)。カッコ内は、2008年9月19日の株価に対する2012年2月17日の株価の増減率である。なお、参考までに同期間におけるDow JonesとS&P 500の増減率も調べてみたが、Dow Jonesは+13.38%、S&P+8.75%であった。

《ビジョナリー・カンパニー》
(1)3M(+24.82%)
(2)アメリカン・エキスプレス(+35.71%)
(3)ボーイング(+19.03%)
(4)トラベラーズ(旧シティコープ)(+32.85%)(※シティバンクの持株会社であったシティコープは、1998年にトラベラーズに買収されたため、トラベラーズの株価推移を調べた)
(5)フォード(+159.66%)
(6)GE(-27.92%)
(7)ヒューレット・パッカード(-37.00%)
(8)IBM(+62.57%)
(9)ジョンソン&ジョンソン(-7.92%)
(10)マリオット(+21.19%)
(11)メルク(+14.01%)
(12)モトローラ・ソリューションズ(旧モトローラ)(+52.06%)(※モトローラは、2011年1月4日付でモトローラ・モビリティとモトローラ・ソリューションズに分割された[ともに公開企業])
(13)ノードストローム(+50.10%)
(14)フィリップ・モリス(+52.27%)
(15)プロクター&ギャンブル(-11.25%)
(16)ソニー(-40.96%)
(17)ウォルマート(+0.11%)
(18)ウォルト・ディズニー(+25.53%)

《ビジョナリー・カンパニーの比較対象企業》
(1)ノートン・アブレイシブス(※1990年、フランスの非公開企業Saint-Gobain Abrasivesにより買収された)
(2)ウェルズ・ファーゴ(-9.33%)
(3)マクドネル・ダグラス(※1997年、ボーイングにより買収された)
(4)JPモルガン・チェース(旧チェース・マンハッタン)(-6.55%)(※チェース・マンハッタンは1996年にケミカルに買収された。ただし、買収後も社名はチェース・マンハッタンのままで事業継続。さらに2000年、チェース・マンハッタンがJPモルガンと経営統合してJPモルガン・チェースとなった。よって、JPモルガン・チェースの株価推移を調べた)
(5)GM(-20.19%)(※一度経営破綻しているため、再上場後の2010年11月26日から2012年2月17日の期間で調べた)
(6)ウエスティングハウス・コーポレーション(WEC)(※1999年にバイアコムによって買収され消滅。現在は、Westinghouse Electric Company[2006年より東芝グループ]が旧WECの原子力事業を、Westinghouse Electric Corporation[旧社名と同じ]が旧WECの家電事業を引き継いでいる。なお、2社とも非公開企業)
(7)テキサス・インスツルメンツ(+51.64%)
(8)バローズ(-48.34%)(※1986年に電子機器メーカーのスペリーを買収し、ユニシスとなったため、ユニシスの株価推移を調べた)
(9)ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(+48.92%)
(10)ハワード・ジョンソン(※非公開企業。ホテルやレストランをチェーン展開しているが、最大で1,000を超えていたレストランは、現在では3店舗しか存在しない)
(11)ファイザー(+13.80%)
(12)ゼニス・エレクトロニクス(※1995年、韓国のLG電子により買収された。非公開企業)
(13)CVS(旧メルビル)(+17.60%)(※メルビルは1996年8月に社名を「CVS」に変更。CVSは1998年2月にアーバードラッグを買収し、薬局小売業界でトップに。リンク先は、CVSの親会社であるCVS Caremark Corporationの株価推移)
(14)R・J・レイノルズ・タバコ・カンパニー(+65.01%)(※同社の親会社であるReynolds Americanの株価推移を調べた。R・J・レイノルズ・タバコ・カンパニー自身は現在、アメリカ以外での製造・販売を全て日本たばこ産業(JT)に委託している)
(15)コルゲート(+16.57%)
(16)ケンウッド(※日本ビクターなどとの合併を経て、現在はJVCケンウッドの製品ブランドとして存続。参考までに、JVCケンウッドの株価推移はこちら。JVCケンウッドの上場が2008年10月であるため、2008年10月10日から2012年2月17日までの株価推移を調べた。この間、同社の株価は-44.92%下落。なお、同期間の日経225を見ると、+6.67%の増加となっている)
(17)エームズ・デパートメント・ストアーズ(※2002年に消滅)
(18)コロンビア・ピクチャーズ(※1989年にソニーが48億ドルで買収。1991年に社名を「ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント」へと変更した。ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントはソニーの完全子会社であり、非公開企業)

 以下、調べてみた感想。

・確かに、ビジョナリー・カンパニーの多くはDow Jones、S&P 500を上回る株価の伸び率を見せている。

・比較対象企業は、リーマンショック云々かんぬん以前の問題として、事業を大幅に縮小させたり、他社に買収されたりしたところが多く、ビジョナリー・カンパニーとの比較にならなかった(どうでもいいが、買収先企業を調べるのが非常に面倒くさかった・・・)。逆に、ビジョナリー・カンパニーの中で買収されたのはシティーコープ1社だけである。

・ヒューレット・パッカード、メルク、モトローラ・ソリューションズ(旧モトローラ)は、一応ビジョナリー・カンパニーということになっているものの、2010年に発表された『ビジョナリー・カンパニー3―衰退の五段階』では、実は衰退企業として扱われている。

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階
ジェームズ・C・コリンズ(James C. Collins) 山岡 洋一

日経BP社 2010-07-22

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・GEのパフォーマンスが悪いのは意外だった。前CEOであるジャック・ウェルチがあまりに偉大だったために、ジェフリー・イメルト現CEOが市場からは評価されていないのだろうか?いや、ウェルチだけが偉大だったのではなく、ウェルチより前のCEOもみな偉大だったのだから、何か別の理由があるに違いない。

・また、比較対象企業の中で、テキサス・インスツルメンツやブリストル・マイヤーズ・スクイブのパフォーマンスが高いのも目を引く。90年代後半から何か特別な施策を打ち続けているのだろうか?(時間があったら、GE不振の理由とともに調べてみたい)

・P&GとJ&Jのパフォーマンスが低いのも、ちょっと困った話である。なぜならば、この2社は『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2010年7月号で、これまでの「株主資本主義」に代わる「顧客資本主義」を代表する企業として取り上げられているからだ。

 同号の論文「株主価値から顧客満足への転換 顧客資本主義の時代」(ロジャー・マーティン)によれば、ウェルチ就任後の期間でGE、P&G、J&J3社の「連結利益成長率」を見てみると、GEが年12.3%であったのに対し、P&Gは年15.2%、J&Jは年14.5%とGEを上回っていたという。ところが、P&GとJ&Jの株価の上昇率は、上記のようにどうも芳しくない。株価には将来の利益への期待が含まれているのであれば、この2社の株価はもっと上がっていてもおかしくないのでは?と感じる。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2010年 07月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2010年 07月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2010-06-10

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・『ビジョナリー・カンパニー』の最後には、ちょうど同じ時期に出たトム・ピーターズ&ロバート・ウォーターマンの『エクセレント・カンパニー』との相違点について言及している箇所がある。
 『エクセレント・カンパニー』の8つの基本的特質のうちいくつかは、わたしたちの調査でもその正しさが裏付けられている。(中略)しかし、基本的特質のいくつかには、疑問が出てきた。とくに、「機軸から離れない」と「顧客に密着する」がそうだ。「機軸」を基本理念と定義するなら、確かに、ビジョナリー・カンパニーは機軸から離れない。しかし、基本理念に触れないかぎりは、どんな方向に進んでもよく、たとえばモトローラや3Mでは、出発点になった分野から大きく離れた事業を展開するようになった。「顧客に密着する」については、ビジョナリー・カンパニーのいくつかが顧客重視型というよりも、技術重視型であることがわかった。ソニー、ヒューレット・パッカード、メルクがそういう企業の例として、すぐに頭に浮かんでくる。
 しかし同時に、前述の通り、ヒューレット・パッカードやメルクが後に「衰退企業」として扱われるようになったことも忘れてはならないだろう。そして、今やアップルの後塵を拝する存在になってしまったソニーのパフォーマンスも、やはり散々たるものである(しかも、ソニーの株価はここ1年で急激に下落している)。

 「顧客に密着する」という基本的特質が、「顧客の顕在ニーズをキャッチして、それにモレなく応える」ということを意味するのであれば、それが実は非常に危険なマーケティングであることは、クレイトン・クリステンセンの『破壊的イノベーション』などによって示されている。しかし、だからといって、顧客密着の反対として技術重視に走るのは、ソニー、ヒューレット・パッカード、メルクの例からして、やはりよろしくないのではないだろうか?重要なのは、自分のニーズがよく解らなくなっている顧客に対して、「皆さんの生活はこうあるべきだ」というコンセプトを提示することなのではないか?そういう意味で「顧客密着」と言うのであれば、ピーターズらの主張も納得できる気がする。

エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)
トム・ピーターズ ロバート・ウォーターマン 大前 研一

英治出版 2003-07-26

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