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February 16, 2012

「顧客コミュニティの活用」というビジネスモデル変革―『「チェンジ・ザ・ワールド」の経営論(DHBR2012年3月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 03月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 03月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2012-02-10

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 今回から本格的に論文のレビュー開始。

顧客と企業のつながりをいかに強化するか 成功するSNS戦略(ミコワイ・ジャン・ピスコルスキ)
 (ソーシャル・プラットフォームに参入している60社超を調査した結果、)うまくいっていない企業に共通していたのは、ソーシャル・プラットフォームに「デジタル戦略」を導入し、売らんがためのメッセージを発信し、顧客の反応を求めるというやり方であった。顧客はこのような提案は拒否する。なぜなら、ソーシャル・プラットフォームを利用する主たる目的は、だれか―それは企業ではない―とつながることだからである。

 それに引き換え、大きな利益を得ている企業は、新たな出会いを生み出し、人間関係をより良好なものにする「ソーシャル・ネットワーキング・システム(SNS)戦略」を打ち出していた。夕食の例えで言えば、SNS戦略を採用している企業は、席に着くと、こう言ってくる。「どなたかご紹介いたしましょうか。それとも、いまのお友だちとの仲が深まるようなお手伝いをいたしましょうか」
 著者によると、成功するSNS戦略は、「戦略上の効果」と「人間関係上の効果」という2軸で構成されるマトリクスを用いることで、次の4つに分類できるという(事例は、論文の内容を基に私がまとめたもの)。
(戦略上の効果, 人間関係上の効果)=
(1)(コスト削減, 人間関係の強化)
 《ジンガ》(※facebookで「ファームビル」や「シティビル」などのソーシャルゲームを提供する企業)
 初期状態のユーザが所有する土地や運営できる事業数には限りがあり、これを引き上げるにはバーチャルの製品やサービスを購入する必要があるが(アイテムの購入金額が主たる収益源という、よくあるソーシャルゲームのビジネスモデル)、それ以外に友人の力を借りることで機能制限を取り払うことも可能である。プレイヤーは自分の友人を新たなプレイヤーとして勧誘し、ゲームを通じて交流を続ける。これはジンガ側から見ると、新規プレイヤーの獲得コストを削減したことになる。

(2)(コスト削減, 人間関係の創出)
 《イェルプ》(※レビューサイト)
 「イェルパー」と呼ばれるレビュアー(多くは教育水準の高い30代〜40代)の中でも特に熱心なレビュアーには、特別な出会いの場が提供される。具体的には「エリート・スクワッド」への招待状が届き、美術館でのカクテルパーティーや、サンフランシスコのバブル・ラウンジでの大宴会などのイベントに参加できる。参加者はここで新しい交友関係を築くと同時にイェルプへのロイヤルティを強め、今後もレビューを投稿する気になる。これはイェルプ側にとっては、イベントへの支出だけで、良質なレビューの継続的な獲得に成功したことになる。

(3)(購買意欲の増進, 人間関係の強化)
 《イーベイ》
 2010年末から始まったサービス「グループ・ギフト」では、何人かでお金を出し合って友人へのプレゼントを購入することができる。仕組みは簡単で、プレゼントを贈りたい人は、イーベイのページで贈り物を選択し、facebookの友人にカンパを呼び掛けるというものだ。このサービスによって、贈り主と受取人の人間関係だけでなく、カンパした贈り主同士の人間関係も深まる。また、イーベイ側から見ると、1人ではなかなか買えない高価な贈り物をイーベイで買ってもらえる機会が増えたことになる。さらにイーベイによると、グループ・ギフトの利用者の3分の1がペイパルの口座を開き、3分の1が1か月以内にイーベイでまた別の製品を購入しているという。

(4)(購買意欲の増進, 人間関係の創出)
 《アメリカン・エキスプレス》
 同社の会員制サイト「コネクトデックス」は、カード会員の継続を前提に加入することができるSNSである。同SNSは1万5,000人以上の小規模事業者が利用している。年商10万ドル以上の小規模事業者の半数近くは、他の事業者から何かを学びたいと思っているという調査結果もあり、「コネクトデックス」はまさしくこのニーズに応えるネットワークとなっている。また、アメックス側から見ると、このSNSはユーザのカード離反率を下げるとともに、カードの利用率を上げる効果もある。
 個人的には、「コスト削減⇔購買意欲の促進」、「(既存の)人間関係の強化⇔(新しい)人間関係の創出」という区別は、それほど境界線が明確ではないような気がする。《ジンガ》の例で言えば、新規ユーザを勧誘したことで競争心に火が付き、お互いにバーチャルアイテムを購入し始めたとすれば、これは購買意欲の促進に該当するだろう。また、《イーベイ》の例も、「グループ・ギフト」の利用者の3分の1がペイパルユーザに加わったという点では、顧客獲得コストを節約したと言える。《アメックス》の例では、何もSNSに参加している小規模事業者が全て赤の他人とは限らない。以前から親交のあった小規模事業者同士が、同じアメックスユーザであることを知って、さらに交流を深めるというケースも十分にありうる。

 SNS戦略のポイントは、既存のビジネスモデルによって提供されている顧客価値が、顧客同士のコミュニティによって強化されるか否か?であると思う。SNS戦略で成功している企業は、顧客コミュニティの活用を通じて、顧客価値を強化することに成功した企業と言い換えることができる。これは新しいビジネスモデル変革のパターンだと思った。だから、昨年書いた連載モノ「【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターン(全20回)」に、21個目の変革パターンとして「顧客コミュニティを活用する」というのを追加した方がいいのかもしれない。

 《アメックス》のクレジットカードがもたらす顧客価値は、基本的には「小規模事業者の資金調達ニーズを満たす」ことである。だが、小規模事業者の資金調達ニーズとは、もっと深く掘り下げていくと、単なる資金獲得にとどまらない。現在の事業収入でどこまでクレジットを使っても大丈夫なのか?返済計画はどのように練ればよいのか?他の資金調達方法はないのか?といったことも彼らの関心事である。

 そして何より重要なのは、小規模事業者は小規模であるがゆえに孤独であり、そういう悩みを気軽に相談できる人が周囲に少ないということである。「コネクトデックス」はまさに、小規模事業者の孤独を解消するソリューションであり、「小規模事業者の資金調達ニーズを満たす」という本来の顧客価値を強化するのに役立っていると言えるだろう。

 このビジネスモデル変革のもう1つのポイントは、顧客コミュニティの活用によって本来の顧客価値が強化されるのであれば、そのネットワークがバーチャルかリアルかは関係ないということである。バーチャルとリアルのどちらが顧客価値の強化に効果的なのかは、ケースバイケースである。顧客コミュニティの活用と言うと、どうしても流行のソーシャル・メディアばかりに目が向きがちであるけれども、敢えてリアルのコミュニティを選択した方がよいケースもあるはずだ(※)。

 事実、引用文で紹介した《イェルプ》の事例は、バーチャルではなくリアルのコミュニティである。また、「ビジネスモデル変革のパターン」シリーズの「【第2回】高級志向の顧客を狙う」で取り上げたハーレー・ダビッドソンも、リアルのコミュニティを重視している。バイク好きの人には、バイクメーカーに忠誠を誓うだけでなく、同じバイクを乗り回している人たちとも密接につながっていたいという心理があるようだ。同社のライダーコミュニティは、そうした心理的欲求を満たすのに一役買っている。

 (毎度のようにレビューは続きますよ)


(※)ラリー・クレイマー著「フランス企業に学ぶ優良顧客との関係構築法 ネットワークよりリレーション」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2011年3月号)によると、フランス企業は安易にバーチャルのソーシャル・メディアに飛びつかず、古典的なリアルのコミュニティを重視する傾向があるという。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 04月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 04月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2011-03-10

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