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January 28, 2012

上手に怒れない3タイプの人たちへの処方箋(2/2)―『キレないための上手な「怒り方」』

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キレないための上手な「怒り方」―怒りたいのに怒れない、怒ると人を傷つけてしまうあなたにキレないための上手な「怒り方」―怒りたいのに怒れない、怒ると人を傷つけてしまうあなたに
クリスティン デンテマロ レイチェル クランツ Christine Dentemaro

花風社 2000-12

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 (前回からの続き)

タイプ3:すぐに何でも怒る人(神経症などの精神疾患を抱えた人を除く)
シーオの例(1)
 シーオがバイト先の食料品店に行くと、店長に、今週の土曜日は丸一日出勤してもらうよと言われました。その日はみんなと湖に行くことになっていたのに・・・。(中略)当の土曜日、湖へ行くはずだったのにあきらめて出勤するとまた腹が立ち、帰ってきた友人たちから楽しかった話を聞かされると、なおさら腹が立つのでした。

 そこでシーオは勇気をふるい起こして店長の部屋へ行き、言いました。「店長、先週の土曜日、むりやり出勤させられて、あれはあんまりだと思います」ところが店長は、「ううむ。きみがそう思うのは気の毒だが、これは商売なんだ。わたしは、そのときにこうだと思ったことをやるしかないんだよ」と言うと、どこかへ電話をかけはじめるではありませんか。いまや、かえってこれまで以上に怒りがひどくなってしまいました。

(※本書では、シーオが「すぐに何でも怒る人」に分類されているが、店長からシフト変更を指示された時点で怒らなかった点では、さほどすぐに怒る人ではないようにも感じる。また、時間が経ってから店長に文句を言うのではなく、もっと早く言えば結果が違ったのでは?とも思うものの、その点については一応不問とする)
シーオの例(2)
 「母さん、(生まれたばかりの妹の)キーシャの世話だけど、週に3回はあんまりだよ。なにか他の方法はないの?放課後を好きに過ごせる日が1日もないんじゃ、いやになってしまうよ。バイトか、家の子守りか、どっちかなんだもん」
 「シーオ、つらい思いをさせてほんとうにすまないね。でもいまは、これしかないのよ。母さんだって考えてみたんだけど、これ以上ベビーシッターに払うお金はないし、父さんも母さんも、勤務時間を減らしたらやっていけないの」
 「ほんとになんとかする気があるなら、やっていけるはずだよ!ぼくがピアノをやめるってのはどう?レッスン料が浮くじゃない」
 「年度の途中でやめるなんていけないわ。自分で習いたいって言ったんでしょう?それに、先生に対しても責任ってものがあるのよ。もうしばらくがまんしてちょうだい」(※この後、2人のやり取りがまだ続くけれども、そこは省略)

 シーオはこうして話をしたあとは、ひどく腹が立ち、がっかりしてしまうのでした。問題が解決しなかったばかりでなく、まともにとり合ってもらえなかったという気がするし、自分の無力さをひしひしと感じてしまうのです。「どうしてだれもぼくのことなんか気にかけてくれないんだろう。ぼくの気持ちや都合なんて、だれも考えてくれないじゃないか」
 シーオは「すぐに何でも怒る人」の中ではまだ”おとなしい”方で、本書にはもっと怒りっぽいティナという人物が登場する。だが、ティナのケースは読むに堪えない悪口が並んでいたため省略することにした(汗)。タイプ3の人は、「自分の気持ちは、正直でありさえすれば、どんな表現をしようと構わない」、「怒りを表現すれば、他の人たちは自分の要求を聞き入れてくれる」と信じている。

 しかし言うまでもなく、現実には他人が怒っていても気にしない人やもっと別のことを優先している人、あるいは人の気持ちを大切にしているにもかかわらず言われた通りにしない人が存在するものだ。シーオの例で言えば、店長は前者に、母親は後者に該当する。こういう人たちには、怒りをストレートにぶつけても、状況が改善する見込みは低い。そこで、タイプ3の人に対して著者は、怒りの目的は自分の要求を貫き通すことだけではないことを知るべきだとアドバイスする。

 まず店長に対しては、自分の本当のニーズを再整理してみる。休みを手にすることが大事なのか?それとも、もっと敬意をもって接してもらうことの方が優先なのか?また、この件についてはどのくらい許せないと思っているのか?もっとしつこく食い下がったら、クビになるだろうか?その場合、他のバイトを探す気はあるのか?自分はそのリスクを負う気があるのか?といった具合だ。

 こうしてよく考えた結果、「もっとましな扱いを受けるためなら、クビになる危険を冒してもよい」と思うかもしれないし、「バイトを辞める気はないから、時々無茶な予定変更があるくらいは我慢しよう(その代わり、自分の方からもシフトに関する条件交渉を持ちかけてみよう)」と思うかもしれない。一旦冷静になって自分のニーズを整理することで、土曜日の出勤を命じられたことに対し反射的に怒りをぶつけるのではなく、手持ちのカードを増やすことができるというわけだ。

 また、母親に関しては、母親側のニーズや優先順位を聞き出すことが重要だ、というのが著者の見解である。母親は、幼いキーシャの世話、もっと遊びたいというシーオの気持ち、(おそらくそれほど稼ぎがない)父親との関係、ピアノの先生との関係、シーオにとってのピアノレッスンの重要性などについて、どのような優先順位をつけているのか?あるいは、他に重視していることがあるのか?この点を探っていけば、お互いの優先順位を擦り合わせ、条件交渉の余地が生じると著者は言う。

 引用文の会話では、シーオは母親の懸念事項を聞き出すことには一応成功しているものの、その全てが同列に扱われ、結局母親にとって全部が重要であるかのような流れになっている。そのため、シーオは母親の考えを変えることはムリだとあきらめてしまうのである。

 3つのタイプをまとめると、まず何よりも重要なのは、怒りという感情は決して悪ではなく、現状を好転させるよいきっかけになることを理解し、怒りを素直に自覚することである(特にタイプ2の人)(※1)。怒りを認識できるようになったら、状況から一歩身を引いて、自分が何に対して怒っているのか、怒りの原因を明らかにする。

 怒りの原因が解っても、「怒ったら相手を傷つけるのではないか?」という恐れから、怒りをあらわにすることが憚られることもある(特にタイプ2の人)。しかし、相手を傷つけるのは怒りの感情そのものではなく、怒りの表現の仕方である。奇を衒ったりせず、「何が起きたのか?(事実)」、「それに対して自分はどう感じたのか?(感情)」、「今後、自分はどうしてほしいのか?(要求)」という3点を、素直にかつできるだけ早めに伝えることが肝要である(※2)。

 こうして適切な怒りの表現方法が身につき、以前よりも自分の要求を随分と正直に表現できるようになったとしても、その要求がいつも相手に通用するとは限らない。相手も同じように、相手なりのニーズや要求を持っているからだ。ここで、自分の言い分が通らないことにいちいち腹を立てるのではなく(いちいち腹を立てていると、タイプ3になってしまう)、相手の要求を理解する心の余裕を持たなければならない(同時に、自分のニーズももう一度よく整理してみる)。そうすれば、一方が他方を犠牲にして自分のニーズを充足させるようなゼロサムゲームを回避し、双方のニーズを可能な限り満たす方法をお互いに検討することができるようになるのだろう。(※3)


(※1)以前の記事「感情は問題提起のサインである」を参照(至る所でこの記事を使い回しているが、汗)。
(※2)皮肉が行き過ぎて上司に殺されてしまった一例がこちら。「部下にだって「上司に物申す時の流儀」ってものがある
(※3)ここまで来ると、合意形成のフェーズに入る。合意形成のプロセスに関しては、以前の記事「合意形成の実践的手引書だね−『コンセンサス・ビルディング入門』」を参照。

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