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December 08, 2011

【論点】事業後継者の資質に優先順位をつけるとしたら?他―『リーダーの役割と使命(DHBR2011年12月号)』

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 (続き)12月号のレビューを書いているうちに、2011年1月号が届いてしまった(汗)。

成長拡大期の後継者選び リーダーの要件は発展段階で変わる(ジェフリー・ホレンダー セブンス・ジェネレーション共同創業者、ビル・ブリーン 元セブンス・ジェネレーション編集ディレクター)
【論点】事業後継者の資質に優先順位をつけるとしたら、どのようになるか?
 セブンズ・ジェネレーションは、1988年に創業した家庭用品メーカーであり、環境に配慮した洗剤などを製造している。2000年の売上高は1,500万ドルに過ぎなかったが、2008年には1億4,000万ドルまで急成長を遂げた。ところが2007年、同社の共同創業者でCEOであったジェフリー・ホレンダーは、セブンズ・ジェネレーションが”売上高10億ドル・営業利益数千万ドル”を生み出す企業となり、巨大な消費財メーカーとグローバルの舞台で戦うには、自分では力量不足なのではないか?と感じるようになった。

 ホレンダーは、自らのマイクロマネジメントのおかげで、会社が1億ドルを超えるまでに成長できたと思っていた。しかしある日、パソコンに向かっている社員や会議室に向かう社員たちを見た時、彼らが一体何に取り組んでいるのか皆目解らなくてショックを受けたという。セブンズ・ジェネレーションは、ホレンダーのマイクロマネジメントが行き届かないほどに大きくなっていたのである。この出来事が、CEO交代を決意させる大きな引き金となった。ホレンダーは、自社が創業以来最も高い業績を上げた時期に、自らの後継者を探すことにしたわけである(もちろん、役員や社員の中には反対意見も多かったそうだ)。

 ホレンダーは、「大企業を運営したことがあり、消費財ブランドの構築の方法を心得ている人物」を外部から採用することに決めた。だが、それだけを後継者の要件とはしなかった。ホレンダーは、後継者に求める資質を多角的な視点から洗い出し、それらに優先順位をつけた。以下の12項目は、その要件を羅列したものである。では、ホレンダーはこの12項目に、どのような優先順位をつけたのか、ちょっと考えてもらいたい。

 ・ビジョンがある。
 ・リーダーとしての力量がある。
 ・当社の市場と目標について、明確に理解している。
 ・ミッションに肩入れしている。
 ・当社の価値観に共鳴している。
 ・戦略企画力に実績がある。
 ・組織を成長させた経験がある。
 ・CSR(企業の社会的責任)への貢献意欲がある。
 ・異なるビジネスモデルやアイデアを積極的に受け入れる姿勢がある。
 ・高いレベルの好奇心がある。
 ・自省する能力がある。
 ・慢心していない。

 ホレンダーは、12の要件を「必須」、「重要」、「あれば望ましい」の3つのカテゴリーに分け、以下のようなリストを作成した。論文中には明確に書かれていないけれども、各カテゴリー内では、上から順番に重要な人材要件が並んでいると捉えてよいだろう。大企業、とりわけ消費財メーカーでのマネジメント経験のある人物を探していたにもかかわらず、実は最も優先された資質は、「ミッションへの肩入れ」と「自社の価値観への共鳴」だったのである。
必須
 ・ミッションに肩入れしている。
 ・当社の価値観に共鳴している。
 ・組織を成長させた経験がある。
 ・戦略企画力に実績がある。
 ・ビジョンがある。
 ・自省する能力がある。
 ・リーダーとしての力量がある。
 ・慢心していない。

重要
 ・CSR(企業の社会的責任)への貢献意欲がある。
 ・当社の市場と目標について、明確に理解している。

あれば好ましい
 ・高いレベルの好奇心がある。
 ・異なるビジネスモデルやアイデアを積極的に受け入れる姿勢がある。
 「ミッションに肩入れしている」とは、企業のミッションと個人のミッションが深く重なり合う状態を指していると解釈できる。以前の記事「「キャリア発達」と「動機づけ要因」の関係を整理してみた−『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』」で書いたように、個人のミッションが固まるのは、キャリアの後半に差し掛かってからである上に、ミッションがきちんと定まる人はそれほど多くないと思われる(たいていは、その1つ前の外的報酬を欲するフェーズにとどまるだろう)。

 また、「自社の価値観への共鳴」も同様に、企業の価値観と個人の価値観が深く重なる状態を指すが、企業における価値観は、建築で言うところの「設計思想」のようなものである。価値観は、顧客や技術などの外部市場の捉え方、製品・サービスのコンセプトに始まり、そのコンセプトを具現化する業務プロセス、業務プロセスをグルーピングする組織構造、業務を担当する社員のマネジメント、業務を円滑に遂行するための意思決定のあり方、部門を超えた経営資源の配分方法など、企業活動のありとあらゆる局面に入りこんでいる。設計思想がしっかりしていないと建築物が崩れてしまうように、価値観に矛盾があると企業は潰れてしまう。

 要するに、自社のミッションに肩入れしている人材は初めから相当希少であり、かつ自社の価値観に反する人材を雇ってしまうと、一発で会社をダメにしてしまう。そのくらいこの2つはナイーブな要件なのである。これに比べて、「組織を成長させた経験」や「戦略企画力」といったスキル的な要因は、多少不足していても後から学習できるし、そのような能力に長けた別の社員を組み合わせれば、能力を補完することも可能である。よって、「組織を成長させた経験」や「戦略企画力」よりも、「ミッションへの肩入れ」や「自社の価値観への共鳴」の方が上位に来るのであろう。私もこの考え方には大いに賛同できる。

 細かい優先順位にまで話を広げれば、私なら「高いレベルの好奇心がある」はもっと上位に持ってくるだろうなぁとか(好奇心が高くなければ、重要顧客のニーズの変質や新しい顧客層の登場、あるいは競合の戦略・戦術の変化や予期せぬ異業種からの参入、さらに自社内部の危機やリスクに気づかないし、状況の変化への対応から学習したことも、すぐに頭から抜けてしまうに違いない)、「異なるビジネスモデルやアイデアを積極的に受け入れる姿勢がある」ももう少し上位に入れるけれど、「異なるビジネスモデルやアイデアを積極的に『聞いて対話する』姿勢がある」という要件に書き変えるなぁ(何でも受け入れればいいというわけではないから。時には、明確な理由の下にアイデアを突っぱねることも必要であろう。ただし、その際にはアイデアを十分に傾聴し、アイデアと関係がありそうな周囲の人たちを巻き込んで、十分なコミュニケーションをとらないといけない)とかいろいろあるわけだが、枝葉末節な話になってしまうので、この辺りでやめておく。

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コスト削減ではなく、成長を目指した変革 1年半で再建を成し遂げる(グレゴリー S. ベイブ バイエル・コーポレーション社長兼CEO)
【論点】そもそも、このCEOの変革リーダーシップは評価に値するのか?
 ドイツのバイエルの子会社バイエル・マテリアルサイエンス(BMS)のアメリカ法人・BMSノースアメリカの社長兼CEOを務めるグレゴリー・ベイブは、業績が比較的好調だったにもかかわらず、ドイツ本社からピッツバーグの本社部門の閉鎖を告げられる。化学業界は、業績が景気変動にに左右されるいわゆる構造不況業種なのだが、この米国法人は、不景気になると小手先のコスト削減で乗り切り、一段落すると元に戻るという悪循環を繰り返し、そのせいで間接費が膨らんでいた。

 北米本社の閉鎖を告げられたベイブは、通告を受け入れるどころか、逆に7,000万ドルの予算を引き出し、ジョン・コッターの「変革の8ステップ」に従って、米国法人の改革に着手した。具体的には、レイオフ、営業やマーケティング部門のスタッフを中心とする1,000人以上の再教育、数多くの業務のアウトソーシング、新しいITシステムの導入、製品ラインナップの見直しを1年半以内にやり遂げるという厳しいものであった。にもかかわらず、改革は予定通り1年半で完了し、さらに予算を1,000万ドル節約して、支出を6,000万ドルに押さえることができたという。

 この事例は、「強いリーダーシップ」、「危機的状況におけるリーダーシップ」を好む人々がいかにも進んで称賛しそうな英雄型リーダーシップに見える。しかし、ちょっと待ってほしい。これは、以前の記事「「たくさん働けば、その分報われる」という価値観が組織を壊すことも―『リーダーシップ 真実の瞬間(DHBR2011年5月号)』」で紹介した「その場しのぎ症候群」の典型例ではないだろうか?

 ベイブは、ドイツ本社から部門閉鎖を言い渡されるぐらい酷い状態になるまで、一体何をしていたのであろうか?小手先のコストカットを行っては、知らぬ間に削減分が元に戻るという振り子現象を繰り返して、結局は間接費を膨らませていたというのに、ベイブは手を打たなかったのだろうか?極端な言い方をすれば、ベイブは自分で蒔いた種を自分で回収しただけである。そう考えると、本当にベイブの変革リーダーシップを評価してよいのだろうか?

 「ベイブは自分で蒔いた種を自分で回収しただけ」というのは、この論文に掲載されているBMSの株価の推移を見るとよく解る。ベイブが2004年にBMSノースアメリカのCEOに就任した時のBMSの株価は2ドル71セントであった。そして、ベイブが改革を完了し危機を脱した2010年の株価は2ドル67セントである。つまり、株価は変わっていないのである。

 もちろん、ベイブはBMSノースアメリカのCEOであって、BMS本体の経営陣ではないから、株価に対する影響力は限定的かもしれない。しかし、ベイブ自身が述べているように、北米事業は全世界の売上の4分の1をたたき出す重要な部門である。この点を踏まえると、BMSノースアメリカの業績が株価に与える影響は限定的とも言えないのではないだろうか?

 コカ・コーラのムーター・ケントCEOは、本号の別の論文で、「CEOの在任中の業績を評価するには、就任時と退任時の企業価値を比較すべきだ」と主張している。2008年7月に就任したケントCEOは、2010年8月時点で約26%の企業価値増を達成している。仮にコカ・コーラの評価基準でベイブを評価したら、「普通」という結果にしかならないのではないだろうか?(もっとも、企業価値だけが経営者の評価を決める要因ではないことは、昨日の記事「【論点】経営者の報酬を規定する評価指標とは何か?―『リーダーの役割と使命(DHBR2011年12月号)』」で述べたばかりだが・・・)

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