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May 11, 2006

アメリカ企業が人材教育への投資に苦悩している?

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 アメリカ企業は従業員の教育や育成に多額の投資をすることで有名です。この事実を裏付けるデータも存在します。The 2002 ASTD International Comparisons Report(※注1)によると、企業が従業員一人当たりに投じる1年間の研修費用は、日本の場合は450ドルであるのに対し、アメリカでは706ドルにも昇っています(数値はいずれも1998年から2000年の平均。ちなみに、ヨーロッパは703ドル)。

 他方で、興味深い調査結果もあります。WEF(※注2)のExecutive Opinion Survey 2005を見ると、アメリカ企業が人材教育に悩んでいる実態が垣間見えるのです。この調査には、次の14の項目

 ・融資の難易度(Access to financing)
 ・制約の多い労働関連法(Restrictive labour regulations)
 ・外貨規制(Foreign currency regulations)
 ・インフラの未整備(Inadequate supply of infrastructure)
 ・政府の官僚主義(Inefficient government bureaucracy)
 ・不適切な人材教育(Inadequately educated workforce)
 ・自国労働者の勤労意欲の低さ(Poor work ethic in national labour force)
 ・政策の不安定(Policy instability)
 ・政権の不安定(Government instability/coups)
 ・犯罪および窃盗(Crime and theft)
 ・汚職(Corruption)
 ・税法(Tax regulations)
 ・税率(Tax rates)
 ・インフレ(Inflation)

 の中から、自国でビジネスを行う際に最も問題となる要素(most problematic factors)を5つ選択し、それを5段階評価するという設問があります。回答結果を見ると、「政府の官僚主義」や「税法」などに関しては日米の結果が拮抗しているものの、「不適切な人材教育」については、アメリカのポイントが日本の5倍(すなわち、ビジネス上問題となると思っている回答者がそれだけ多い)になっています。2つの調査結果を合わせると、アメリカ企業は多額の研修費用を投資しているもにもかかわらず、人材育成の結果には満足していないと言えます。

 これだけの調査結果をもって、アメリカ企業の人材教育は効率が悪いとか、方法が間違っているとか、まして日本企業が効果的な従業員の能力開発に成功しているなどと結論づけることはもちろんできません。それは暴論です。

 日本企業の場合、研修費用は少ないものの、OJTなど非金銭的なトレーニングによって多くの時間を投資しているため、満足する人材育成が行われているという意見はあるかもしれません。しかし、アメリカ企業がOJTをしていないというのはおよそ考えられないことです(OJTが始まったのは第1次世界大戦中のアメリカであり、以降アメリカ企業における主要な職業訓練手法として位置づけられていた)。OJTだけでは、日本企業が不適切な人材教育をアメリカほどに問題視しない理由にはなりません。

 WEFの調査は、回答者の主観に左右されるものです。もし、アメリカ企業が日本企業に比べ、従業員の能力に対して厳しい目を持っており、非常に高い能力の人材を要求しているならば、現状に満足しない回答者が不適切な人材教育を非常に問題視するということは十分に考えられます。

 なぜこのような結果になっているのか、原因を深く追究すると非常に面白そうです。

(※注1)ASTD American Society for Training and Development(全米訓練開発協会)
(※注2)WEF World Economic Forum(世界経済フォーラム)同フォーラムが毎年発表する世界競争力報告(Global Competitiveness Report)はニュースでしばしば取り上げられる。
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