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October 05, 2011

主要なリーダーシップ論の個人的整理―D・E・メイヤーソン、P・センゲ編

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ジョセフ S ナイ
日本経済新聞出版社
2008-12-17
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 リーダーシップ論の整理はこれで最後。

主要なリーダーシップ論の整理図(仮)

D・E・メイヤーソンの『静かなる改革者』
 メイヤーソンの『静かなる改革者』は、過去のレビュー記事(下部を参照)のタイトルにもしたように、管理職などのポストについていない人々に対して、リーダーシップの可能性を提示している。メイヤーソンもまた、他のリーダーシップ論者と同じように、リーダーの個人的な価値観を重視する。そして、組織の旧態依然とした体質が自己の価値観を脅かす時が、リーダーシップを発揮するチャンスとなる。

 ただし、マネジメント層のリーダーシップと決定的に異なるのは、役職を持たないメンバーは、目的を完遂するための組織資源が制限されているという点である。マネジメント層であれば、役職に付随する権限を利用して、必要な資源を調達することができる。さらに、マネジャーは自らの公的な権限の延長線上で非公式のパワーを発揮し、通常とは異なるルートで資源を獲得する場合もある。

 例えば、各部門のマネジャーがそれぞれ人事権を持っており、部門内の社員の異動や配置転換を行う権限を有するケースを想定してみる(外資系企業だとこのパターンが多い。外資系の人事部は、各部門が要求するスキル水準を満たす候補者を集める役割にとどまっており、日本企業の人事部に比べ役割が狭い)。あるマネジャーが、自部門で前例のない新製品開発プロジェクトを立ち上げることになったとしよう。

 しかし、その部門には、プロジェクト・マネジャーにふさわしい人材や、技術的見地からアドバイスを与えてくれる人間がいない。そこで、このマネジャーは、通常の人事権の範囲を超えて、別の部門から適材を即座に引き抜こうと考えた。当然のことながら、人材を引き抜かれる部門のマネジャーにとっては、自らの人事権が侵食される形になる。そこで、両部門のマネジャー間では、水面下の交渉が行われる。

 この交渉は、引き抜こうとするマネジャーに人事権があるからこそ成り立つものである。人事権を持たないマネジャーでは、「お前がうちの部門の人事に口を出すな」と突っぱねられ、「越権行為も甚だしい」と非難される可能性が大きいだろう。要するに、新規プロジェクトを立ち上げたマネジャーは、公式な人事権の延長として、非公式な人事権を発動しようとしているわけだ。

 前置きが長くなってしまったが、役職を持たないメンバーは、活用できる資源が限られている。そこで、リーダーの価値観に共感するメンバーを、リアルとバーチャル両方のネットワークを駆使して、組織中からかき集めなければならない。この集団こそが、役職を持たないメンバーにとって決定的な組織資源になる。もちろん、どの階層のリーダーシップであっても、リーダーがフォロワーを必要とするという点では人的資源を活用しているわけだが、その重要度はマネジャーと役職がないメンバーとでは全く異なる。メイヤーソンの『静かなる改革者』でも、リーダーが形成する集団の重要性が強調されている。

 ただし、集団は強力な資源になる反面、取り扱いに厳重な注意が必要な資源でもある。活用可能な資源が限定されている集団は、往々にして暴力、威嚇、過激なプロパガンダといった破壊的な言動によって、自らの資源不足を補い、目的を達成しようとする(福島原発事故の直後から反原発活動に身を投じた俳優・山本太郎氏が、佐賀県庁への建造物侵入などの罪で刑事告発されたのは、まさにこの一例)。こうした行為が本当に功を奏するのかどうかは、事前によく検討しなければならないだろう。

 《『静かなる改革者』のレビュー記事》
 地位パワーがなくてもリーダーシップは発揮できる(1)―『静かなる改革者』
 地位パワーがなくてもリーダーシップは発揮できる(2)―『静かなる改革者』


デブラ・E・メイヤーソン
ダイヤモンド社
2009-07-03
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巷によくあるリーダー入門書/自己啓発本
 これまで紹介してきたリーダーシップ論の中にも、リーダー自身に求められるスキルを考察範囲に含めているものはある。ただ、リーダーの「スキルのみ」に焦点を当てるのは、以前の記事で言及した「性格論」と同じで、範囲が狭いと言わざるを得ない。新任管理職向けのリーダーシップ入門書や、若手社員向けの自己啓発本は、往々にしてこの傾向に陥っていると思う。

 敢えてどの本とは言わないが、「リーダーに必要なスキルは、『コミュニケーション』、『チームビルディング』、『構想力』、『迅速な意思決定能力』・・・というX個のスキルである」と並べ立たところで、性格論と同様にあまりにも抽象的すぎる。加えて、それぞれのスキルがどのように作用し合い、望ましい成果を創出するのか、そのプロセスが見えづらい。リーダーシップをリーダー個人のスキルに分解すると、一見すっきりと整理できたように感じてしまうけれども、実際にはリーダーシップの全体像をかえって解りにくくしていると思うのである。

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ピーター・センゲらのU理論
 集団全体のリーダーシップに焦点を当てているのは、私が知る限りでは、「学習する組織」で知られるピーター・センゲらの「U理論」ぐらいだろう。ジョン・コッターが語るリーダーシップ論は、トップ・マネジメント層の強力なリーダーシップに牽引されるようにして組織全体が動いていくイメージであるが、U理論では、集団内部にリーダーシップが充満しており、集団そのものが自ら望ましい未来へと動き出す印象がある(私がU理論を解釈しきれていないため、感覚的な説明が多くなる点はご容赦ください)。

 U理論は、Sensing(ひたすら見る)⇒Presensing(後ろに下がって内省する)⇒Realizing(流れるように自然に素早く動く)という3ステップから構成される。各ステップの詳細は過去の記事に譲るとして、変化を求めている集団は、「対話(ダイアローグ)」を通じ、集団を取り巻く環境と集団そのもの、さらに集団を構成する個々のメンバーを深く理解して、集団の内部から変革のエネルギーを創出する。

 U理論は客観的な視点に縛られることなく、集団の主観を重視する。そして、我々の見方次第で、環境や集団自身、さらには自分自身を変えることが可能であることを教えてくれる。すなわち、外部の制約要因を集団にとって有利に働くようなものにし、今まであまり着目してこなかった集団内の資源のプラス面に着目して、その資源の新たな使い道を発見することもできるのである(この点は、企業の戦略立案とも共通する。有名なSWOT分析を例にとると、同一の出来事でも、ある人にとっては機会と映り、別の人にとっては脅威と映る。強みと弱みに関しても同じことが言える)。

 U理論では、リーダーに必要なスキルについて、特筆すべきものは指摘されていない。敢えて言うならば、「我慢強く対話(ダイアローグ)を続ける力」が必要なスキルとなるであろう。

 《「U理論」に関する過去の記事》
 ピーター・センゲのU理論を再解釈してみた(1)―『出現する未来』
 ピーター・センゲのU理論を再解釈してみた(2)―『出現する未来』
 ピーター・センゲのU理論に残された問題(補足)−『出現する未来』


P. センゲ
講談社
2006-05-30
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 《「U理論」の基礎となった、物理学者デイビッド・ボームの「ダイアローグ」に関する過去の記事》
 これは宗教なのか?科学なのか?―『ダイアローグ−対立から共生へ、議論から対話へ』
 「思考」によって分断された世界を「対話」を通じて調和する−『ダイアローグ−対立から共生へ、議論から対話へ』


デヴィッド・ボーム
英治出版
2007-10-02
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 (次から、ジョセフ・ナイの『リーダー・パワー』のレビューに入ります)

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