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September 27, 2011

旧ソ連の共産主義が敗れたのは大衆文化を輸出しなかったせい?(2/2)―『ソフト・パワー』

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ジョセフ・S・ナイ
日本経済新聞社
2004-09-14
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 (前回「旧ソ連の共産主義が敗れたのは大衆文化を輸出しなかったせい?(1/2)―『ソフト・パワー』」の続き)

 一般的には、旧ソ連の共産主義の敗因は、「計画経済」という考え方そのものに限界があったと説明される(ピーター・ドラッカーも、数多くの著書の中で頻繁に指摘している)。つまり、共産主義というイデオロギーを信じる力が弱かったのか、共産主義というイデオロギー自体が間違っていたのか?という問いに対しては、後者の立場をとっているわけだ。

 しかし、ここに興味深い心理学の研究がある。経済学や社会学からはやや離れた、スポーツに関する研究ではあるけれども、アメリカでバスケットボールの「使える選手」がどのような信念を持っているかを研究した心理学者がいる。

 バスケットボールの選手やコーチ、ファンは、選手に「ホットな乗り(hot streaks)」と「冷めた乗り(cold streaks)」があると信じている。シュートが連続して決まる時は「今の自分には神がついている。ホットハンドを授かっている」と思ってさらに熱くなるのに対し、シュートの失敗が続くと「今は神から見放されている。スランプなのだ」と考えて意気消沈する傾向がある。

 この研究では、こうした「ホットハンド」と呼ばれるような現象が、実際のところ確率論的に存在するのかを、2チームの選手を対象に2年間に渡って調査した。その結果、ホットハンドやスランプといった現象は、確率論的には存在せず、連続でシュートを決められるかどうかは、ほとんど偶然の範囲でしかないことが判明した。

 この研究が面白いのはここからである。心理学者が研究結果を選手に説明すると、一部の選手は「だから何?経験的にホットハンドは絶対に存在するし、俺はこれまでそういう信念で戦ってきたんだ」と反論した。そして、そのような反応をする選手は、「使える選手」、言い換えれば得点力がどんどん伸びている選手だったというのである。つまり、客観的なデータや戦術の定石がどうであろうと、自分が強く信じる価値観に従った方が、よい結果につながるケースもあるわけだ(※4)(※5)。

 もちろん、これはスポーツに限られた研究結果なので、今ここで議論している資本主義VS共産主義の構図にもすんなりと当てはめられる話ではないだろう。ただし、「価値観自体がそもそも誤りなのか?」、それとも「価値観を信じる力が弱いから誤るのか?」、旧ソ連の例で言えば、共産主義というイデオロギー自体が破綻していたのか、それとも共産主義を信じる力が弱かったから資本主義に敗れたのか?この2つの問いの微妙な違いに留意することは、特定の価値観やイデオロギーが経済・社会システムに対してどのように影響を及ぼすのか?あるいは、価値観が国家を牽引するリーダーシップの中でどのような役割を果たすのか?という問いに答える際の重要なポイントになるように思える。

(※4)植木理恵著『人を見る目がない人』(講談社、2008年)

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(※5)バスケットボールの研究と似たような話が野球にもある。最近の野球では「セイバーメトリクス」と呼ばれる統計的手法が発達しており、各打者の打率に注目するのではなく、出塁率と長打率が高い打者を並べた方が、試合に勝つ確率が上がると言われる。さらに、別の分析結果に目を向けると、無死1塁で送りバントをしても、そのまま打者に打たせても、得点できる確率は変わらないという話や、先頭打者に四死球を与えても、先頭打者にヒットを打たれた場合と比較すると、実は失点する確率にほとんど差がないという話もある。

 ところが、高い実績を上げている監督は、そういった客観的なデータに固執せず、自分なりのやり方が正しいと信じているものだ。例えば、中日の落合監督はバントを多用するし、日本ハムの梨田監督は4番バッターにもバントをさせる。また、楽天の星野監督は先頭打者に四死球を与えることをひどく嫌う。それでも中日や日本ハムは毎年のように優勝争いをしているし、星野監督は18年間優勝から遠ざかっていた阪神を優勝へと導き、常勝軍団の礎を築いた(まぁ、その基盤が真弓監督によっていささか脆弱化している気もするが・・・)。

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