※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
August 09, 2011

「できるヤツでも組織の価値観に合わなければクビ」のGE流

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 先日の「GEの「9Blocks」というユニークな人事制度」の続きとして、もう1つGEの人事制度の特徴を紹介したいと思う。

 GEは次世代のリーダーを育成するにあたり、「リーダーシップ・ブランド」なるものを構築しようとした。リーダーシップ・ブランドとは、リーダーが何を達成すべきか(成果)、そしてそれをどのように達成すべきか(行動様式)を表すイメージ像である。言い換えれば、GEはリーダーに対して、単に高い成果を出すだけではなく、GEの価値観に沿った形で成果を上げることを要求している。ジャック・ウェルチは、GEのリーダーに期待することとして、非常にシンプルな単語を並べた。つまり、「スピード、シンプル、自信」―この3つだけである。

 だが、これではあまりに抽象的であるため、それぞれの要素が具体的にはどのような考え方や思考パターン、行動様式や価値規範を意味するのか、社内で議論が重ねられた。その結果でき上がったのが、次のような「360度評価シート」である。
要素:スピード
 1.決断は素早く柔軟である
 2.経営状況や職場環境を変えることに積極的である
 3.顧客第一を熱心に追求している
 4.顧客志向の目的を明確にしている
 5.明確なビジョンを示し、それを遂行している

要素:シンプルさ
 1.情報はオープンかつ完全に共有する
 2.「いつものやり方」に固執しない
 3.創造的な問題解決、改革を奨励している
 4.やるべきことをやる、という基本に忠実である
 5.スリム化した組織を運営している

要素:自信
 1.困難に前向きに立ち向かい、挑戦するように励ましてくれる
 2.私に対し尊敬の念をもって接し、私の能力を評価してくれる
 3.私が変化に対応できると信じている
 4.個人として職業人としてのインテグリティーを尊重している
 5.健全な商業倫理を自らが示している
 6.自分や同僚が成長できるような刺激を与えてくれる
 7.厄介な事態は直接扱ってくれる
 8.1つの状況について、要素を直視できる
 9.業績を報奨に正確に結びつけている
 10.ポジティブ・フィードバック、認識、課題を活用する
 この360度評価シートは、手始めにGEキャピタルで運用されることなった。GEキャピタルは、経営幹部を対象とした「リーダーシップ・チャレンジ・ワークショップ」を開催した。ワークショップの事前課題として、それぞれの経営幹部は、自分の同僚や部下、さらには上司にこのシートを記入してもらい、同時に本人による自己評価も行った。

 同僚や部下たちのスコアの平均は、ワークショップ当日に明らかにされる。そして、その平均スコアと、自分の回答結果を比較する。ワークショップの参加者たちは、周囲の評価結果から見えてくる自分の強みと弱みを認識する。加えて、自己評価と他者評価がなぜズレているのかを考察する。ワークショップの最後には、長所をさらに伸ばし、短所を改善するための行動計画を作成する。

 最初はGEキャピタルの経営幹部を対象にスタートした「リーダーシップ・チャレンジ・ワークショップ」は、やがてGEのあらゆる事業部門でも開催されるようになり、数百人のマネジャーがGEの「リーダーシップ・ブランド」を理解するようになった。

 この手のワークショップであれば、GE以外の会社でもやっているところは多い。手前味噌で恐縮だが、私自身もこうした自己評価と他者評価を組み合わせたマネジャー向けの研修をやったことがある。ただ、ここで終わらないのがGEであり、ウェルチである。ウェルチは、先ほどの360度評価で表現されているリーダー像を進化させ、新たに「GEバリュー」というものを発表した。
GE幹部は・・・常にゆるぎないインテグリティーと共に
・優秀さに対する情熱を持ち、官僚主義を嫌う
・誰からのアイデアにもオープンであり・・・そしてワークアウト(※)に積極的に関与する
・品質に生き・・・競争優位の形成のためにコストパフォーマンスとスピードを促進する
・あらゆる人を巻き込むだけの自信を持ち、境界のない振る舞いをする
・鮮明で現実に根差したビジョンを創出し・・・そしてそれを全構成員に伝達する
・自らが活力に溢れ、他者にもエネルギーを与える能力を有している
・ストレッチ・・・つまり積極的なゴールを定め・・・進歩に報い・・・さらに責任とコミットメントについて理解している
・変化を脅威ではなく・・・機会と見る
・グローバルなブレーンを持つ・・・そして多様化したグローバルなチームを構築する
(※以上は全て原文ママ)
 そして、ウェルチは「成果」と「バリュー」という2軸を用いて4つのボックスからなるマトリクスを作成し、各事業部門の経営幹部をを4つのタイプに分類した。

 ・タイプ1=成果を出し、GEバリューを体現している
 ・タイプ2=成果を出さず、GEバリューも体現していない
 ・タイプ3=成果を出していないが、GEバリューを体現している
 ・タイプ4=成果を出しているが、GEバリューを体現していない

 その上で、驚くべきことに、年次の役員会議で「タイプ4」に該当するマネジャーを解雇したのである。つまり、どんなにハイパフォーマーであっても、GEが目指しているリーダー像や、GEが大切にしている価値観に合わなければクビになる、という人事制度を導入したわけだ。

 タイプ4のマネジャーを”追放”するという判断を下すには、並々ならぬ勇気がいる。なぜならば、その人は短期的には成果を上げてくれているわけであり、何かとうるさい株主が要求する高い業績水準を達成するには不可欠な人物だからだ。それでもクビを切ったのは、旧来的なGEのリーダーは官僚主義的であり、時には強権を発動し、部下を搾取してでも成果を上げようとする傾向があったためである。こうしたリーダーを野放しにしておくと、長期的に見れば組織は疲弊し、業績の悪化につながる危険性がある。

 役員クラスの人事異動というのは、その企業が何を重視しているのかを暗示する重要な情報である。特定の部門から多くの役員が登用されれば、会社はその部門を成長エンジンとみなしていることが解る。女性社員から定期的に役員が誕生すれば、その会社はダイバーシティ・マネジメントに本気で取り組んでいることが伝わる。あるいは、あまりいい例ではないけれども、社内に派閥抗争があって、ある派閥のトップが役員から外された場合は、その人と同じ派閥に属するマネジャーが全員干されたことになる。

 ウェルチの人事異動も、これと同じように重要なメッセージをGE全体に発信する結果になった。もはやGEは、最終的な業績だけ上げていればOKという会社ではない。”GEバリューを体現しながら”成果を創出することが必須となったのである。

(※)「ワークアウト|@IT情報マネジメント用語事典」を参照。

《参考》今回の記事は、デーブ・ウルリヒ著『GE式ワークアウト』(日経BP社、2003年)を参考にしている。本文中の引用も、本書からのものである。

デーブ・ウルリヒ
日経BP社
おすすめ平均:
高度な体系書
組織変革の具体的エッセンスが読み取れる良書
不確実性に対応するスピーディな意思決定への解のひとつがここに。しかして、そのまま移植
powerd by Amazon360
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする