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July 25, 2011

【第20回(終)】自社を介して3種類以上の顧客を持つ―ビジネスモデル変革のパターン

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【パターンの概要と適用できるケース】
 足かけ約8か月でようやく最終回にたどり着きました。今回のパターンは、前回の「自社を介して2種類の顧客を持つ」の発展形である。この手のビジネスモデルは、広告ビジネスにもう1つの顧客層を追加しているケースがほとんどである。

【パターンが当てはまる事例】
《mixi》
 初期のmixiは、バナー広告が主たる収益源である典型的な広告ビジネスだった。ところが、「サンシャイン牧場」などのソーシャルアプリが登場してからは、ユーザ、広告主という2種類の既存顧客に、「アプリ開発ベンダー」という顧客も加わったことになる。

mixiのビジネスモデル(ソーシャルアプリを含む)

 ソーシャルアプリは基本的に無料であるけれども、一部のアイテムやキャンペーンにはお金がかかる。こうしたアイテムなどの購入金額がアプリ開発ベンダーの収益源になるわけだが、その一部は”mixiのプラットフォーム利用料”という形でmixiに流れる。

 上図には描ききれなかったが、約500万人もの莫大なユーザを抱えるサンシャイン牧場は、自らも外部の企業と様々なタイアップ企画を行っている。例えば、サンシャイン牧場が提携している外部サイトに会員登録をすると、サンシャイン牧場内で使用可能なポイントが(わずかではあるけれども)蓄積される。あるいは、提携先のWeb通販サイトで買い物をすると、購入金額の数パーセントがポイントになり、単なる会員登録よりもより効率的にポイントを貯めることができる。

 このポイントの仕組みについては、以前紹介した「Tカードのビジネスモデル」に近いと考えられる。サンシャイン牧場のユーザが、提携先企業のWebサイトで会員登録や製品購入をすると、ユーザにポイントが付与されるが、それと同時に、提携先企業は発行ポイントに応じた手数料をサンシャイン牧場に支払う。提携先企業から見ると、ポイントに応じた手数料は、新規顧客を獲得するためのマーケティング投資という位置づけになる(もっとも、ユーザは「単にポイントがほしい」という理由だけで、それほど興味がない提携先サイトの会員になることも多いと思われるから、投資に見合ったリターンが得られるかどうかは難しいところだが)。

 こうして見てみると、アプリ開発ベンダー自身も、ユーザと提携先企業という2種類の顧客を持っており、「自社を介して2種類の顧客を持つ」というビジネスモデルを実現していることになる。SNSをめぐっては、実に多様なネットワークが形成されているわけである。

《ファッション雑誌》
 ファッション雑誌も典型的な広告ビジネスであるが、最近は異業種企業とタイアップ企画やコラボ企画を行う雑誌が増えている。ファッション雑誌社から見ると、タイアップ企画を行う外部企業は、雑誌購読者、広告主に続く第3の顧客と言える。タイアップ先の企業は、雑誌が有する膨大な顧客基盤へのアプローチを通じて、自社顧客の拡大を狙っている。タイアップ先の企業は、その見返りとして、雑誌社に一定の手数料を支払うことになる(ある意味、既存の広告とは違った形態の広告とも言える)。

ファッション雑誌のビジネスモデル(広告+タイアップ企画)

 ネットでいくつかタイアップ企画関連の記事を拾ってみた。

 <Web通販サイトとのタイアップ企画>
 DeNAとぶんか社、人気女性ファッション誌「JELLY」と連動したモバイルショッピングストアを開設|DeNA
 <オンラインゲームとのタイアップ企画>
 ハンゲームと人気ファッション誌「men's egg」がタイアップ企画を実施|THE SECOND TIMES
 <携帯電話メーカー、携帯電話キャリアとのタイアップ企画>
 雑誌「Seventeen」とコラボレーションした折りたたみ型のFOMA端末「SH-05B」

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 今回のビジネスモデルのCSFは、基本的に前回のパターンと同じである。ただし、ネットワークが複雑になる分だけ、より複雑な仕組みが求められることになる。

 ・膨大な顧客基盤を有すること
 (広告ビジネスを展開する上で、これは必須)

 ・3種類の顧客ニーズのマッチング精度を向上させる仕組み
 (顧客が2種類の場合よりもマッチングのパターンが増え、仕組みが複雑になる)

 ・ネットワーク拡大のカギを握るプレイヤーを押さえること
 (3つのネットワークそれぞれについて、キーとなるプレイヤーを把握する必要がある)

【終わりに】
 せっかくなので、もう一度全20回の変革パターンを再掲しておこう。1点、注意しなければならないのは、これまで紹介してきた変革パターンは、あくまでも思考の幅を広げるヒントに過ぎないのであって、ビジネスモデルを変えること自体を目的としてはいけない。DHBR2011年8月号の特集「ビジネスモデル 構想と決断」をよく読むと解るが、ビジネスモデルは戦略に従う。

 つまり、戦略の再構築なくして、ビジネスモデルの変革はありえないのである。ターゲットとなる顧客層が変化し、それに伴って顧客に提供する価値が変質する場合、あるいは競合との差別化要因をより明確なものにしたい時こそが、ビジネスモデルを変革するべきタイミングなのである。

<ビジネスモデル変革の20パターン>
 顧客を変える
  1.低価格志向の顧客を狙う(サウスウェスト航空、サイゼリア)
  2.高級志向の顧客を狙う(ハーレー・ダビッドソン、アンテノール)
  3.水平展開で事業エリアを拡大する(マクドナルド、自動車メーカー、ウォルマート)
  4.全く異なる属性の顧客を狙う(グラミン銀行、任天堂[Wii])
 製品を変える
  5.顧客の隣接する消費行動を押さえる(TSUTAYA[Tカード]、外食チェーン、工務店[リフォーム事業])
  6.顧客のライフステージを押さえる(自動車メーカー、銀行)
  7.製品を増殖させる(出版社、日能研、SHOICHI[アパレル])
  8.製品をまとめてパッケージ化する(旅行代理店、大手SIer)
  9.製品を分解する(アップル[iTunes]、はなまるうどん、葬儀業者)
  10.製品を売るのではなく貸す(エアビーアンドビー[CtoCの賃貸]、ビクシー[自転車レンタル]、テックショップ[作業場・作業用具レンタル])
 チャネルを変える
  11.販売チャネルを拡大する(コカ・コーラ)
  12.販売チャネルを絞り込む(トヨタ自動車[レクサス]、カゴメ[キャロット]、QBハウス[1,000円カット])
 プロセスを変える
  13.プロセスを分解して特定プロセスに特化する(デル、シティバンク、ヴァージン航空)
  14.プロセスを垂直統合する(ユニクロ、GAP、しまむら)
  15.特定プロセスを顧客にやらせる(イケア、Salesforce.com)
  16.顧客の特定プロセスを代行する(各種アウトソーシング業)
  17.プロセスの時間を大幅に短縮する(本田技研工業、オフショア開発)
  18.プロセスを分解して特定プロセスを独占する(マイクロソフト、インテル、日本の部品メーカー)
 顧客の種類を増やす
  19.自社を介して2種類の顧客を持つ(広告ビジネス、サービス共同購入サイト[GROUPON、ポンパレなど]、ショッピングセンター)
  20.自社を介して3種類以上の顧客を持つ(mixi、ファッション雑誌)

>>【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターンの一覧へ

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