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June 21, 2011

【第18回】プロセスを分解して特定プロセスを独占する(2)―ビジネスモデル変革のパターン

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 (前回からの続き)

《日本の部品メーカー》
 日本の最終製品メーカーは、中国や台湾などの安価な製品に押されて世界での影響力を失いつつあるけれども、部品メーカーの中には、世界市場で高いシェアを保っている企業がまだまだ多い。半導体業界のキーエンスやロームはその一例である。とりわけ、半導体業界では後発組であったロームは、ユニークな仕組みで競合他社を凌駕した。

 ロームは、顧客にあたる最終製品メーカーのニーズをより深く理解するために、顧客企業の”業種別”に組織を構成した。つまり、家電メーカー担当部門、自動車メーカー担当部門、PCメーカー担当部門・・・といった具合だ。設計、製造、営業の担当者はみな、顧客企業の工場に張りついて顧客の製造プロセスをじっくりと観察し、顧客ですら気づいていなかった潜在ニーズを掘り出して製品を提案していったそうだ。

 アップルのiPodは、日本の部品メーカーに大きく依存していることで有名だ。2005年時点では、iPodの製造原価のうち、約70%を日本企業が占めていた(ハードディスク=50%[東芝]、液晶ディスプレイ=16%[東芝、松下]、電池=2%[TDK])。iPodは、日本企業の力なしには成り立たなかった製品と言えるだろう。

 ところが、iPadになると状況が一変し、iPadの製造原価に占める日本企業の割合は大きく落ち込む。携帯電話高周波装置に村田製作所が、液晶ディスプレイにセイコーエプソンが、水晶振動子にエプソントヨコムが採用されているだけで、残りはほとんどが中台韓のメーカーになってしまっている(※5)。

 これにはいろいろな要因が考えられるが、日本のメーカーが安易に製造工程を海外にアウトソーシングしてしまったために、肝心の技術までが海外メーカーに持っていかれてしまったのではないだろうか?川下(=最終製品の市場)で勝ち目がない場合に、川上に上って生き残りを賭けるというのは戦略的にアリだ。うまくいけば、寡占によって大きなパイをもぎ取ることもできる。

 しかし、一度川上に上ってしまうと、もうそれ以上は川上に上れない。戦略的には、もう一度川下のプロセスに手を伸ばすという選択肢もあるけれども、川下にいるのは自社の顧客である。安直に川下のプロセスを取り込もうとすれば、既存顧客との関係を悪化させてしまうかもしれない。

 だから、一旦川上に上った企業は、川上を死守するための方策を打たなければならない。具体的には、自社のコア技術が外部に漏れないように、十分なナレッジマネジメントを行う必要がある。インテルやMSはこの辺りがうまいから、未だに市場の覇者として君臨している。しかし、日本の部品メーカーはこの点で手痛い失敗をしているように感じる。

《ミスミ》
 ミスミは、表向きは中小製造業向けの金型を専門に扱う商社であるが、実際には「金型の製造に特化しており、さらに製品企画の一部を顧客企業に任せ、生産は金型メーカーに委託している企業」と捉えることができる。今回のパターンと、「【第15回】特定プロセスを顧客にやらせる―ビジネスモデル変革のパターン」を組み合わせたビジネスモデルになっているというわけだ。

 ミスミが顧客である中小製造業に向けて送付する製品カタログの中には、マス目入りの用紙が入っている。製品カタログに載っていない金型がほしい場合、顧客企業は同封されている用紙に金型の設計図を描いてミスミに送り返す。ミスミは、送られてきた設計図から顧客ニーズの最大公約数を抽出し、新たな金型を企画するのである。

 中小製造業は、大手製造業が手がけないような、規模の経済が働きにくい特殊な部品を製造しているところが多い。その製造に使われる金型も、当然のことながら特殊なものになる。だからといって、中小製造業を1社1社訪問してニーズを聞き出していては非常に手間がかかるし、さらに特殊な金型をいちいちメーカーに依頼すると製品ラインナップが膨れ上がり、製品単価も上がってしまう。そこで、顧客自身に製品企画をやらせて、ニーズが多い金型のみを製品化するという手法をとっているのである。

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?

 ・自社技術のブラックボックス化
 (インテルやMSの成功例と、日本の部品メーカーの失敗例より)

 ・顧客の業種を問わず、顧客のニーズを幅広く把握する仕組み
 (川上に特化した場合、自社製品の顧客が複数の業種にまたがることがある。よって、業種横断的に顧客のニーズを深く理解する仕組みが求められれる。インテルやMSは周辺製品メーカーとのネットワークを形成し、ロームは顧客企業の業種別組織を構築し、ミスミは顧客企業に製品設計の一部を任せることで、この問題を解決している)

 ・顧客の多様なニーズを集約して標準化する設計・製造スキル
 (ミスミの事例より)

>>【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターンの一覧へ

(※5)「iPadから見えるエレクトロニクス・IT産業の国際競争力と対応の方向性」(ITmedia オルタナティブ・ブログ、2010年4月29日)

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