※2012年12月1日より新ブログに移行しました。自分で言うのもおこがましいですが、20代の頃に書いた本ブログよりも、30代に入ってから書いている現行ブログの方がはるかに中身が濃く、内容が多岐にわたり、面白いと思いますので、是非ご覧いただけるとありがたいです!
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
June 20, 2011

【第18回】プロセスを分解して特定プロセスを独占する(1)―ビジネスモデル変革のパターン

拍手してくれたら嬉しいな⇒
【パターンの概要と適用できるケース】
 今回のパターンは、以前の「【第13回】プロセスを分解して特定プロセスに特化する―ビジネスモデル変革のパターン」とも関連している。業界全体が成熟してくると、バリューチェーンを構成する各プロセスに特化した専門プレイヤーが現れやすくなるのだが、自社は最終顧客との接点に特化し、他のプロセスは外部企業との提携でカバーするのが【第13回】のパターンであった(デル、ヴァージン航空など)。

 最終顧客との接点に特化する企業がいるということは、バリューチェーンのもっと上流のプロセスを専門とする企業も存在することを意味する。それが今回のパターンである。そして【第13回】と今回の大きな違いは、川上のプロセスではしばしば寡占や独占に近い状態が見られるということである。

 岡山のメーカーで、地元大学から多くの学生を研究職として採用していた「林原」は、経営陣が滅茶苦茶な不動産投資をやったせいで倒産してしまったが、本来は甘味料などに使われる糖質「トレハロース」や抗がん剤「インターフェロン」を量産する世界的なメーカーであり、トレハロースの世界生産をほぼ独占している。トレハロースの取引先は全国で約7000社、製品は約2万品目にのぼる。だから、林原が倒産した時には、全国の菓子メーカーが生産不能に陥るのではないかと危惧されたぐらいである(※1)。

 バリューチェーンの上流で寡占が進んでいることは、最近のタブレットPCの急速な広まりからも見て取れる。アップルがiPadを発表してから、世界中のメーカーがこぞってタブレットPC市場に参入した。各社が迅速に製品を開発できたのは、タッチパネルの製造に長けたメーカーが限られているからとも考えられる。要するに、メーカー各社は製品企画こそ自社でするものの、重要なパーツはそれらのタッチパネルメーカーに頼っているのである(その結果、どのメーカーのタブレットPCも、外観は似たようなものになってしまうわけだが)。

 バリューチェーンの上流で寡占が進んでいることを示すもう1つの象徴的な出来事が、実は東日本大震災の直後にあった。部品供給元が被災した自動車メーカー各社は、一時的に生産ラインをストップせざるを得なかった。しかし、復旧は時間の問題と考えられていた。

 一般的に、自動車業界は、最終組立メーカーを頂点として、川上(1次サプライヤ、2次サプライヤ、3次サプライヤ・・・)に行けば行くほどプレイヤーの数が多くなる「ピラミッド構造」になっている(※2)。これは、供給面ではリスク分散のメリットがある。つまり、2次、3次あたりのサプライヤで一時的に供給が途絶えても、他のサプライヤから部品を調達することが可能になるからだ。

 ところが、生産ラインの復旧には予想以上の時間がかかった。なぜならば、一般的な理解とは異なり、電子部品やゴムや樹脂といった材料は、むしろ供給企業数が集約されており、1社の被災が大きく影響することが解ったからである。言い換えれば、ピラミッド構造ではなく、「ひょうたん型の構造」になっていたというわけだ。

 電子部品の代表例であるマイコンを例に挙げてみよう。デンソーや日立オートモティブシステムズ、ケーヒンなどECU(電子制御ユニット)を供給する部品メーカーは多くありますが、その内部に使われているマイコンは、ルネサスエレクトロニクスや富士通セミコンダクターなど何社かに絞られている(※3)。だから、ルネサスの工場が被災すれば、デンソーの工場はストップし、デンソーから部品供給を受けているトヨタも身動きが取れなくなってしまうのである。

【パターンが当てはまる事例】
《インテル、マイクロソフト》
 PC業界では、インテルがCPUを、マイクロソフトがOSをほぼ独占している。ここで重要なのは、インテルの新しいチップやMSの新しいOSが、どのメーカーの機器に搭載されても問題なく動作するかどうかである。しかしながら、PCの周辺機器の数は非常に多く、動作保証が容易ではない。また、半導体の技術革新のスピードは非常に速い(「ムーアの法則」)。よって、インテルが新しいチップを開発してから、それに合わせて顧客企業が新しい周辺機器を開発したとしても、周辺機器ができあがる頃にはインテルが次世代チップの開発を終えているかもしれない。

 そこでインテルは、複数の顧客企業をネットワーク化し、インテルのチップと周辺機器とをつなぐインターフェースを細かく調整しながら、互換性のある製品をセットで同時に市場へ投入できる体制を作り上げている(※4)。おそらくMSも、同じようなネットワークを形成しているものと思われる。

 ちょっと話が逸れるけれども、携帯電話のOSは、今のところアップルのiOSとグーグルのAndroidの一騎打ちのような構図になっている。iOSはMSのWindowsと同じように完全にブラックボックス化されているのに対し、Androidは携帯メーカーによるカスタマイズが可能だ。

 だが、ここにはセキュリティの問題が潜んでいる。MSはWindows Updateを通じて、セキュリティパッチをあらゆるPCに一斉に配布する仕組みを既に10年以上続けている。しかし、Android搭載の携帯電話にセキュリティ上の欠陥が生じた場合、果たしてグーグルはどこまで対策を講じることができるのだろうか?

 逆に言うと、MSのWindows Phone 7は、現時点ではアップルとグーグルに押されて注目度が低いけれども、セキュリティ面に関してはPCのOSで培った能力を活用することで、最もセキュリティの高い携帯電話に化ける可能性がある。さらに言えば、アップルが基本的に自前主義であり、製造のアウトソーシング先が限定的であるのに比べると、MSはメーカーとの広いネットワークを有している。だから、MSが本気を出せば、ハイセキュアでかつバリエーションに富んだスマートフォンを次々と市場に投入し、市場の構造をがらりと変えてしまうことだってできるかもしれないのである。

 (続く)

>>【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターンの一覧へ

(※1)「トレハロース生産危機、大企業「林原」が会社更生法申請」(総合ビジネスニュースSpotlight、2011年2月11日)
(※2)「Part4 自動車メーカー編(1)――CTO販売が特徴,新車開発プロセスをPLM/SCMシステムが支える」(ITPro、2007年12月13日)
(※3)「ピラミッド型でなかった部品サプライチェーン」(日経Automotive Technology、2011年6月7日)
(※4)リチャード・K・レスター著『イノベーション―「曖昧さ」との対話による企業革新』(生産性出版、2006年)

リチャード・K. レスター
生産性出版
2006-03
posted by Amazon360

おススメの書籍

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする