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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
June 02, 2011

【第16回】顧客の特定プロセスを代行する(2)―ビジネスモデル変革のパターン

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 (前回からの続き)

(D)(重要度、頻度、業務負荷)=(高、高、低)
 この分野の例としては、まずITの運用・保守が挙げられる。基幹システムが停止したら一大事なので、企業としては常に実施していなければならない重要な業務である。しかし、運用業務の中身は、サーバなどに問題が起きていないかどうかをモニタリングするだけなので、業務負荷はそれほど高くない。そうすると、よほど巨大なシステムを自社で抱えていない限り、その業務の専任担当者を置こうとは思わないものだ。したがって、この分野はアウトソーシングの対象となる。

 具体的なアウトソーシングビジネスとしては、ITベンダーが自社で巨大なデータセンターを設立して、顧客企業に導入したシステムの運用・保守を一括で行う、というものがある。また、もっと踏み込んだ形態としては、以前IBMやアクセンチュアなどがさかんにやっていた「戦略的アウトソーシング」というのがある。これは、ITベンダーが顧客企業と共同でシステムの運用・保守会社を設立して、ITベンダーの社員と顧客企業の情報システム部門の社員を、その会社に異動させるというものである。

 もっとも、「戦略的」という名前が意味するように、単に運用・保守業務を効率的に実施することだけを目的としているのではなく、運用・保守業務の中からシステムの課題を発見し、新システムの企画・構築を親会社である顧客企業に提案していく役割も担っている。

 上記以外にも、収納代行ビジネスや、コールセンターのアウトソーシングビジネスなどは、この分野の業務を担当していると言える。顧客から代金回収ができなければ企業は潰れてしまうけれども、電気、電話、水道、ガス事業などのように顧客数が多いと、代金回収の回数が非常に多くなる。こういう場合には、収納代行ビジネスの出番となる。

 収納代行企業は、自ら決済インフラを構築し、コンビニなどの支払窓口と決済インフラをつないでいる。例えばコンビニで電話代が支払われると、一部は事務手数料としてコンビニに流れ、さらに残りの金額の一部が決済インフラ利用料として収納代行企業に流れる。事務手数料と決済インフラ利用料を抜いた金額が、収納代行企業からNTTに支払われる、という流れになる。手数料は抜かれるけれども、NTTがわざわざ顧客の家に社員を派遣して代金を回収したり、督促状を送り続けたりするよりはずっと安上がりである。

(E)(重要度、頻度、業務負荷)=(高、低、高)
 この分野には、まず第一に、新卒採用、上場企業の決算発表など、一定の時期に仕事が集中する重要な業務が該当する。この分野には、新卒採用コンサルティングやIRコンサルティングなどのプレイヤーが参入している。

 もう1つは、内部統制対応やIFRS対応など法規制への対応に関する業務、あるいは新規事業戦略の立案など、仕事の時期は読めないが、仕事をしなければならないと決まったら、一定期間の間に高い負荷が発生する分野である。この分野を担っているのは、会計コンサルティングや戦略コンサルティングなどのプレイヤーである。

 これらの分野はそれなりに高度なノウハウが必要とされるが、頻度が少ないために自社内にノウハウを蓄積する機会に恵まれず、外部からノウハウを調達した方が早いという判断になりやすい。そのため、アウトソーシングの対象となる。

(F)(重要度、頻度、業務負荷)=(高、低、低)
 「企業にとっては重要だけれども、頻度も業務負荷もそれほどない仕事」というのはあまりないのだが、例えば会社設立の手続や、重要な契約書類のチェックなどはこの分野に該当するだろう。これらの業務は、行政書士や弁護士にアウトソーシングされている。

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?

 ・受託対象業務の標準化・効率化
 ・標準化・効率化した業務を社員に浸透させるトレーニング
 (これはアウトソーシングビジネスをやる上での大前提。顧客企業よりも効率的に業務ができなければ、お話にならない。なお、重要度が高い業務になると、非定型的な業務が増え、標準化が難しくなるけれども、この場合でも標準化・効率化の努力を怠ることはできない。例えば、大手のコンサルティングファームは、過去のプロジェクトの成果物をデータベース化し、他の類似プロジェクトで活用できるようにしていることが多い。)

 ・顧客に対するコストメリットを明確にした提案・営業活動
 (アウトソーシングによって、どのくらいコストが削減できるのかを顧客に対し定量的に示すことは重要である。また、コストはそれほど変わらないが、従来よりも短時間で業務が遂行できるならば、それも顧客にとって価値がある。

 手前味噌な話で恐縮だけれども、コンサルティング業界は実はあまりこの点が上手ではない気がする。だから、顧客企業からは「価格が高い」と思われてしまう。コンサルティングの場合、顧客企業がコンサル会社に依頼しようとしていた業務を自社でやった場合にかかる人件費と、コンサルティングフィーを天秤にかけて、コンサルを依頼すべきか否かを判断するのが本来の姿なのだろうが、コンサル会社は顧客企業がそういう意思決定を下せるようにうまく働きかけることができていないように感じる。

 また、コンサルフィーが高いとしても、短期間で高い成果が得られれば、その後のビジネスでは競合に先んじてチャンスをモノにできるから、高いコンサルフィーでも割に合うのだけれども、この点を訴求するのもあまり上手ではない。まぁ、あまりこの辺を露骨に示すと、顧客企業に嫌がられるという理由もあるけれどね。)

 ・自社社員の稼働率を一定に保つための仕組み
 (ファウンドリやデータセンターなどを除けば、アウトソーシングビジネスの大半は労働集約的なビジネスである。よって、社員の稼働率をいかにして一定水準に保つかがポイントになる。特に、頻度が低い業務を受託する場合はこの点が重要だ。

 最もオーソドックスな対策は、正社員以外に契約社員やアルバイトを活用して、需要の変動に応じて社員の数を増減できるようにすることである。ただ、この場合は、社員のモラルやサービス品質をどのように維持するかが別の問題として発生する。)

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