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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
June 01, 2011

【第16回】顧客の特定プロセスを代行する(1)―ビジネスモデル変革のパターン

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【パターンの概要と適用できるケース】
 今回はいわゆるアウトソーシングのビジネスモデルである。極論すれば、世の中のあらゆる製品やサービスは、顧客が自分自身ではできないことを企業に依頼することで生まれているという意味では、ビジネスというのは基本的に全てアウトソーシングとも考えられる。

 「顧客はドリルを欲しがっているのではない。4分の1インチの穴を欲しがっているのだ」というマーケティングの格言があるけれども、ドリルメーカーは、日曜大工に励むお父さんたちの「穴を開ける」という仕事を代行しているのである。「破壊的イノベーション」の理論を提唱したクレイトン・クリステンセンは、「顧客の”ジョブ”を解決することが重要である」と常々主張しているが、これをドリルの例に当てはめれば、ジョブ=「穴を開ける」ということになる。

 今回取り上げるパターンはそこまで極端なものではなく、BtoBビジネスにおけるオーソドックスなアウトソーシングビジネスが中心になるが、それらをいくつかに分類しながら説明してみたい。

【パターンが当てはまる事例】
《アウトソーシング》
 企業には様々な業務があるけれども、「重要度」、「頻度」、「1回あたりの業務負荷」という3つの切り口で分類すると、どういう領域でどのようなアウトソーシングビジネスが成り立つのかが解りやすくなると思う。まず、(重要度、頻度、業務負荷)=(低、低、低)という業務は、そもそも企業内にほとんどないので、アウトソーシングの対象にならない。逆に、(重要度、頻度、業務負荷)=(高、高、高)という業務は、企業のコア業務であるから、これもまたアウトソーシングされることはない。アウトソーシングビジネスが成立するのは、残りの6つの分野である。

(A)(重要度、頻度、業務負荷)=(低、高、低)
 オフィスの清掃業務などはこの領域の典型である。今や、清掃担当の社員を雇っている企業はほとんどないだろう。ほぼ毎日必要な業務ではあるが、重要度も業務負荷も低い場合は、外部の企業にやらせてしまいたいと考えるのは自然な発想である。

 個人的に「あったら面白いかもな?」と思うビジネスは、「共同社宅」、「共同社員食堂」かなぁ(完全にアイデアベースだけれども)。中堅・中小企業だと、自社で社宅を持つことは難しい。だが、とりわけ都市圏で働く新入社員や若手社員にとっては、家賃の負担がバカにならない。そこで、複数の企業が共同で利用する社宅を作るわけである。

 社宅の運営会社は、それぞれの企業から一定の料金をもらうことで、入居者の家賃を周辺の賃貸物件よりも安く抑えることができる。しかも、各企業の採用計画がある程度解るわけだから、毎年何人ぐらいの入居希望者が出そうか予測しやすい。これは、社宅の稼働率を一定に保つ上では有利である。もちろん、異なる企業の社員が同じ建物に入居し、互いに知り合いになるので、社宅の運営会社は重要な情報の漏洩や社員同士のトラブルに注意する必要がある。

 「共同社員食堂」も似たような発想である。企業が密集する地域に、広い店舗面積を有する食堂をオープンし、周辺の企業に社員食堂として指定してもらう。社員食堂に指定してくれた企業の社員には、会員証などを配布する。食堂で会員証を使うと、周辺のレストランよりも安い価格で食事を取ることができる、という仕組みである。

 同時に、社員食堂に指定した企業からも一定の料金をもらう。安直な考えかもしれないが、社員が毎日安い料金で食事ができることになると、職場環境に対する満足度が上がり、総合的な社員満足度の向上につながる可能性がある(よって、人材の流出防止にもつながる)。その対価として、企業側から料金をいただくのである。

 「共同社員食堂」の場合、競合のレストランなどもそれなりに低価格でバリエーションのある料理を提供しているので、それに負けない価格とバリエーションを実現しないと勝てない点がややネックである。バリエーションの問題はクリアできるとしても、価格を下げるためには規模の経済を働かせなければならない。そうすると、相当大規模な食堂をいくつもオープンさせる必要がある。都市圏でそれだけの土地が果たして確保可能かどうかは、議論の余地があるけどね。

(B)(重要度、頻度、業務負荷)=(低、低、高)
 月次の会計処理、給与計算など、特定の時期に定型的な事務作業が集中する分野である。業務負荷が高くなる特定の時期だけ社員を増やすわけにもいかないので、アウトソーシングの対象になりやすい。中堅・中小企業だと、これらの業務は税理士にアウトソーシングされている。大企業の場合は、「シェアードサービス」のような形で、グループ会社の事務作業を集約するケースが見られる。

(C)(重要度、頻度、業務負荷)=(低、高、高)
 この分野には、ノンコアの製造工程などが該当する。製造工程の一部を、賃金の安い海外工場にアウトソーシングするというのは、今では全く珍しくない話だ。極端なケースになると、製造工程をまるまるアウトソーシングすることもある。PCや半導体のように、アンバンドリングが進んでいる業界では、自社工場を一切持たず、製品の企画・デザインのみを行う「ファブレス」という形態の企業と、ファブレス企業から製造工程をごっそりと受託する「ファウンドリ」という形態の企業が存在する。PC業界では、台湾のファウンドリ企業が有名である。

 (長くなりそうなので、ここで記事を分割します、汗)

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