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May 01, 2011

【第13回】プロセスを分解して特定プロセスに特化する―ビジネスモデル変革のパターン

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【パターンの概要と適用できるケース】
 この連載の更新がまたしても1ヶ月ほど滞ってしまった・・・。何だかんだで残り8回なので、何とか6月中には終わらせるぞ!

 今回の「プロセスを分解して特定プロセスに特化する」と、次回の「プロセスを垂直統合する」はセットで捉えた方がよい。たいていの産業に当てはまることだが、ある特定の時期でスパッと切って産業の構図を描いてみると、

 (A)川上から川下までのバリューチェーンのほぼ全てを自社でまかなっているプレイヤーが多いか、
 (B)バリューチェーンを構成するそれぞれのプロセスに特化したプレイヤーが多いか、

のどちらかになる。例えば自動車業界は前者に、食品業界は後者に該当する。自動車業界ではメーカーを中心とした系列が形成されているのに対し、食品業界には農家、卸、仲卸、食品加工、小売といった多様なプレイヤーが存在する。

 (A)(B)いずれのケースであっても、時の流れとともに業界全体が非効率になることがある。(A)の場合、各プレイヤーがバリューチェーンの全てのプロセスに強くなるというのは稀であって、プレイヤーによって強いプロセスと弱いプロセスが分かれていく。各プレイヤーの弱いプロセスが業界内に散在することで、業界全体の非効率につながる。

 また、(B)の場合、プレイヤー間の連携が複雑になるにつれて、業界全体が非効率になる。食品業界の流通プロセスにいろんな問題があるのはよく知られた話だ(以前、「現在のフードシステムでは誰も得をしていないんじゃないか?」という記事で少し触れた)。

 業界全体の非効率が深刻になると、ビジネスモデルを変革するプレイヤーが登場する。(A)の業界では今回取り上げる「プロセスを分解して特定プロセスに特化する」プレイヤーが、(B)の業界では次回紹介する「プロセスを垂直統合する」プレイヤーが現れるのである。

【パターンが当てはまる事例】
《デル》
 「プロセスを分解して特定プロセスに特化する」というのは、いわゆる「アンバンドリング」、「デコンストラクション」のことであり、デルはその代表例。もう図を描くのも面倒になってきたので省略(汗)。きっとネット上で他の誰かが描いてくれているよ。

 1980年代、IBMなどの大手PCメーカーは、CPU、メモリ、OS、ハードウェア、ソフトウェアを全て自社開発し、部品製造から最終組立まで一貫して自社で行っていた。これに対してマイケル・デルは、1984年に「最終組立と販売のみに特化したプレイヤー」としてPC市場に参入した(創業時の会社名は「PC's Limited」、創業時のマイケル・デルは何と19歳)。デルは、取引先に組立が容易になるよう部品の改良を求めるとともに、様々な部品を自社工場内で素早く組立てるための特許を多数取得している。

《シティバンク[日本参入時]》(※1)
 シティバンクは日本でいろいろとやらかして金融庁から何度も制裁を食らっているので、あまりいい事例とは言えないかもしれないが、シティバンクが規制緩和後の日本市場に参入した際に採用したビジネスモデルも、一種のアンバンドリング(デコンストラクション)である。

 規制緩和前の日本の金融機関は、金融サービスや支店・営業所、営業担当者など、事業に必要な要素を全て自前で揃え、顧客に対して均一なサービスを提供していた。ところが、シティバンクは極力店舗を持たず、基本的には電話やパソコンで取引が完結できるようにした。さらに、提携先の都銀や郵貯のATMを活用することで、ATMに対する投資も抑制した。

 販売チャネルを電話やパソコンに限定したからといって、シティバンクが顧客サービスの質を落としたわけではない。むしろ、何かと要望の多い富裕層をターゲットに定め、懇切丁寧にサービスを提供していたのである。オペレータのトレーニングにはコストがかかるけれども、富裕層は利幅の大きい金融サービスを買ってくれるし、全体で見れば販売チャネルやシステムにそれほど投資をしていないので、十分すぎるほどにペイできるというわけだ。

《ヴァージン航空》(※1)
 航空業界も典型的な垂直統合型の業界である。第1回で紹介したサウスウェスト航空は、低価格路線に特化することでビジネスモデルを変革したが、サウスウェスト航空自体はバリューチェーンの全てのプロセスを自前で取り揃えているので、今回のパターンとは異なる(最近、サウスウェスト航空の保有機材に穴が開くというトラブルが頻発し、同社の安全神話がダメージを受けたことは記憶に新しい)。

 これに対してヴァージン航空は、機材はリースで調達し、整備なども自社要員は最小限にして、大半はアウトソーシングに頼っている。ヴァージン航空は「フライトサービス」というプロセスのみに特化して、残りは外部のリソースを活用したのである(ただ、最近では自社で機材を購入するようになってきているようだ(※2))。

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?

 ・全方位戦略をとらずに、ターゲット顧客を絞る
 (3社に共通するのは、ターゲット顧客を絞っているという点である。垂直統合型のビジネスは、日本の金融機関や自動車メーカーを見れば解るように、基本的にあらゆる顧客層をターゲットにしている。

 一方、当初のデルは法人顧客のみを相手にしていた。法人顧客は個人顧客よりもPCの知識があるから、注文時に自力で仕様を決められるし、多少のトラブルなら独力で解決できる。すると、デルが販売やアフターサービスに割くリソースを節約することが可能になる。

 また、シティバンクは富裕層にターゲットを絞っている。それが明確に解るのは、シティバンクが口座維持料として月額2,000円を請求したからである。口座を持つだけで年間24,000円も支払わなければいけないとなると、少額の預金や引き出しのために口座を使っている一般人はシティバンクを相手にしなくなる。下世話な言い方をすれば、シティバンクは「たくさんお金を持っていない人は、うちに来てもムダですよ〜」という暗黙のメッセージを発しているのである。

 ヴァージン航空のターゲットはビジネス客と若い観光客である。ヴァージン航空はロンドン―ニューヨーク、ロンドン―東京といった大都市間の路線に限定し、ファーストクラスも撤廃した。その代わりに機内設備を充実させることで、ビジネスクラスの料金でファーストクラス並みのサービスが受けられるようになっている。ビジネス客は喜んでヴァージン航空のビジネスクラスに飛びついたというわけだ。

 この3社がターゲットを絞っているのはなぜか?確かに、マーケティングの定石として、ターゲットを絞ることで垂直統合型の他社と差別化を図っているという側面はある。ただそれよりも重要なのは、この3社は少ない経営資源で事業をスタートさせているから、ターゲット顧客を絞り込んでも十分に事業として成り立つという点の方が大きいように思える。逆に、既存の垂直統合型のプレイヤーは、たくさんの経営資源を抱えた高コスト体質になっているから、思い切ったターゲット顧客の絞り込みがしにくい。)

 ・自社が特化したプロセスにおける圧倒的な優位性の確保
 (デルが製品組立のリードタイム短縮に、シティバンクが富裕層へのきめ細かいサービスに、ヴァージン航空がファーストクラス並みのサービスに力を入れていることがその例。業界全体の非効率を突いて参入してくるプレイヤーは、自社の製品・サービスが既存のものよりもはるかに効率的で利便性が高く、コストパフォーマンスに優れていることを顧客に訴求する。)

 ・アウトソーシング先との良好な関係構築の能力・ノウハウの獲得
 (これは、自社の経営資源とアウトソーシング先の経営資源を効率的に結合させるという”技術的な能力”と、アウトソーシング先にもメリットがあるようにうまく利害調整を行うという”ソフトな能力”の両方を指している。デルは自社工場での組立が容易になるよう取引先に対して部品の技術的な改良を求めるが、同時にデルの要求通り改良してもらえれば、その取引先にまとまった量の発注ができるというメリットを示している。)

(※1)シティバンク、ヴァージン航空の事例は、元BCGの内田和成氏の書籍を参考にしている。

内田 和成
日本能率協会マネジメントセンター
1998-11
おすすめ平均:
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変化に備える心の準備、新しい一歩。
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(※2)「ヴァージン・アトランティック航空|Wikipedia」を参照。

>>【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターンの一覧へ

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