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April 02, 2011

【第11回】販売チャネルを拡大する―ビジネスモデル変革のパターン

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【パターンの概要と適用できるケース】
 販売チャネルを拡大するといっても、単純に新規店舗を増やすとか、営業組織を新設するといった話ではない。そうではなくて、表面上の機能や性質は同じ製品を、複数の異なるチャネルで販売してビジネスを拡大する、というのが今回のパターンである。

 この点で、以前紹介した「【第7回】製品を増殖させる」とも近いところがある。例えば日能研は、「中学入試の学習コンテンツ」という製品を、小学生向けには学習塾というチャネルで、大人向けにはゲームショップというチャネルで販売している(NintendoDSの『シカクいアタマをマルくする』シリーズなど)と言える。

 敢えて「製品を増殖させる」パターンと今回のパターンの違いを挙げるとすれば、前者がどちらかというと製品のコピーありきのプロダクトアウト的な発想であるのに対し、後者は同一の製品に複数の異なるタイプの顧客が反応することを発見し、セグメント別に多様な販売チャネルを用意するというマーケットインの発想が強い、という点である。

【パターンが当てはまる事例】
《コカ・コーラ》
 コカ・コーラを購入できる場所は非常にたくさんある。スーパー、自動販売機、コンビニエンスストアはもちろんのこと、マクドナルドやドミノ・ピザのドリンクメニューにもコカ・コーラは入っているし、映画館や野球場といった娯楽施設でも販売されている。そういう意味では、マクドナルドや映画館などもコカ・コーラの重要な販売チャネルである。

 どこで買ってもコーラがコーラであることに違いはないのだけれども、販売チャネルによってコーラが顧客に訴求する”価値”は微妙に変わってくる。思いつくままに書いてみると、

 ・スーパー(2Lペットボトル)=自宅ですぐに飲めるジュースのストックを用意しておく。
 ・自動販売機=夏場に道を歩いていて暑さに耐えられなくなった時に、すぐに爽快感を味わえる。
 ・コンビニ(500mlペットボトル)=仕事帰りに買って、家で飲みながら1日の疲れを癒す。
 ・飲食チェーン=脂っこいものを食べた後の口の中をすっきりさせる。
 ・映画館=大画面のスクリーンをリラックスした気持ちで観られるようにする。
 ・野球場=贔屓のチームをより熱心に応援するために、アドレナリンを放出させる(本当にコーラにそんな効果があるのかどうかは知らないけどね・・・)。

 こんな感じかな。コカ・コーラが単にビン入りのコーラだけを小売店で販売していたら、世界的な企業にはならなかっただろう。コーラが日常生活のありとあらゆる場面で飲まれることを認識し、それぞれのケースにマッチした販売チャネルを構築していることが、同社の成長を支える要因の1つであるように思える(※1)。

 2008年、コカ・コーラは1年がかりで大型のキャンペーンに取り組んだ。同社は大規模なモニター調査から得られた膨大な購買データを分析して、購買行動を「日々の買い足し」、「外食時の食事やスナック」、「急ぎの買い物」、「今晩の食事」、「まとめ買い」、「スペシャルオケージョン」、「ノングロッサリー」という7つに分類した。そして、各グループの購買者特性に合わせて、販売チャネルや販売施策を改善している。この一連の取り組みは「SBL」(Shopper Behavioral Landscape:ショッパー・ビヘイビアル・ランドスケープ)と呼ばれる。

 SBLの枠組みから明らかになったのは、「外食時の食事やスナック」、「今晩の食事」という食事関連のカテゴリで全体の4割を占めていることだ。「外食時の食事やスナック」が多いのは、先ほども述べたようにマクドナルドなどでコーラが販売されていることからも理解できるが、「今晩の食事」というのは、具体的には「主婦がスーパーでコーラを買って、家族に夕食と一緒にコーラを出す」といったケースを指している。

 こうした”家庭内の消費”が重要であることを発見したコカ・コーラは、スーパーで主婦をターゲットとした施策を展開した。2008年2月は「子供の受験」をテーマに掲げ、「あったかメニューとコカ・コーラの刺激で受験生を応援」というメッセージを込めて、1.5ℓペットボトルのコカ・コーラに日清食品の「チキンラーメン」の小型版を添付。同年5月は「スタミナ料理とコカ・コーラの刺激で5月病を吹き飛ばせ」として、キッコーマンの焼肉のたれ「わが家は焼肉屋さん」を付けたそうだ。スーパーという販売チャネルを通じて提供されるコカ・コーラが、「誰にとって、どのような価値を持つのか?」を深く理解しているからこそ、こういう面白い企画ができるんだな。(※2)

《航空会社が自動車を販売??》
 これは今回のパターンにあてはまる事例というよりも、個人的に「はぁ?」と思った話(もう、ずいぶん前のことだけど・・・)。航空会社は本業のフライトサービスに加えて、マイレージ会員向けに物販サービスをやっているが、あるコンサル会社の人が「マイレージ会員は通常の顧客に加えて高収入で高級品を消費する傾向があるから、単価が大きい住宅や自動車も売ったらいいのではないか?」と言っていた(直感で言っていたのではなく、それなりの分析根拠を持って言っていた)。

 そりゃあんた、住宅や自動車は単価が高いし市場規模も大きいから、既存の物販で提供しているラグジュアリーよに比べればはるかに魅力的な市場なのかもしれないけれど、航空会社が自動車を販売しても、顧客の目には不可解にしか映らないんじゃない??

 顧客が通常のディーラーからではなく、航空会社から自動車を購入するには、顧客側にそれなりの理由が必要だ。別の言い方をすると、メーカー系の販社では味わえない購買体験を、航空会社が提供できなければいけない。しかも、その購買体験は、航空会社のブランドイメージとリンクさせることが肝要である。

 私はその辺りがどうもピンとこなかったのだけれども、仮に航空会社が新しい購買経験を提供できるとしても、その購買経験に共感する一定の顧客層が存在することを示さなければならないし、さらにその顧客層は自動車メーカーの既存ターゲットと重複しない新規のセグメントであることも求められる(そうでなければ、メーカーは販社から反発を食らうし、販社と航空会社でカニバリゼーションを起こすだけ)。その辺りの検討をすっ飛ばして、市場規模と会員属性の数的分析だけからそういう結論を導いちゃいけないよね・・・。

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?

 ・単一の製品が持つ複数の顧客価値を再発見する洞察力
 ・それぞれの顧客価値に反応するセグメントの特定
 ・各セグメントに的確にリーチできる販売チャネルの構築
 ・顧客価値と整合性の取れたチャネルのトータルデザイン(店舗の内装、HPのデザイン、スタッフによる接客、顧客が感じる購買体験など)


《2012年5月6日追記》
(※1)井上達彦氏『模倣の経営学』に興味深い事例があったので紹介。最初にコーヒーを清涼飲料として缶コーヒー化したのはUCCで、発売から20年経った1989年当時でも、消費者10人のうち8人から9人はUCCコーヒーのブランドを好んでいたという。

 だが、売れ行きの面では、当時から日本コカ・コーラのジョージアが勝っていた。それは、日本コカ・コーラが全国に自動販売機網を整備していたからだ。自動販売機の台数を比べると、コカ・コーラの70万台に対して、UCCは16万台(1989年当時)にすぎなかった。その製品が提供する顧客価値を、顧客はいつ、どの場所で最も欲しがるか?を探求した差がこの数字に表れているのではないだろうか?

模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる―模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる―
井上達彦

日経BP社 2012-03-08

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(※2)SBLについては以下のサイトを参考にした。
 各地販売士協会だより 新企画!ワークショップ形式が大好評|社団法人日本販売士協会
 日本コカ・コーラ 「購買行動」を7つに分類、販促策の成功事例が相次ぐ|IT Pro

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