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March 16, 2011

サービス・デザインでは「組織の価値観」を中核に据える―『サービスマネジメント入門』

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近藤 隆雄
生産性出版
2007-12
おすすめ平均:
入門書として最適
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 「サービス」という目に見えない製品をどのようにデザインするか?を丁寧に解説した本。参考になった点をいくつか整理しておこうと思う。

サービスの構成要素
 サービスという製品は通常、複数のサービスを含んだパッケージとして提供される。このパッケージを構成する諸々のサービスは、著者によると(1)コア・サービス、(2)サブ・サービス、(3)コンティンジェント・サービス、(4)潜在的サービス要素という4つに分類できるという。航空会社が提供するフライトサービスを例にとると、
(1)コア・サービス
 定刻通りのフライト。
(2)サブ・サービス
 機内食、機内ラジオ、機内映画、CAの接客など、フライトに付随するサービス。
(3)コンティンジェント・サービス
 フライトの変更・キャンセル、具合が悪くなった乗客への応対、(極端だが)飛行機が事故を起こした時の対応など、非定型的なサービス。
(4)潜在的サービス要素
 飛行機で空を飛ぶ快感、(ファーストクラスの乗客であれば)ステータスの高いサービスを受けたことに対する満足感など、サービス体験の持つ記号的な価値やイメージ消費に関連するもの。
といった感じになる。「自社は顧客に対してどのようなサービスを提供しているのか?」あるいは、「顧客は自社にどのようなサービスを求めているのか?」を整理する上で、この4つの分類は何かと役に立ちそうだ。特に、(3)のようなイレギュラーなサービスや、(4)のようなつかみどころのないサービスを明確に定義することは、競合との差別化を図る上で重要かもしれない。

サービス・マネジメント・システム
 著者は、企業が高品質のサービスを生産するマネジメント・システムの枠組みとして、リチャード・ノーマンのフレームワークを紹介している。
(1)マーケット・セグメンテーション
 このサービス・マネジメント・システムが前提とする特定タイプの顧客グループ。
(2)サービス・コンセプト
 顧客に提供しようとする特定の便益で、サービス商品として具体化される。
(3)サービス・デリバリ・システム
 人、モノ、技術等によってサービスを提供する仕組みをさす。
(4)イメージ(またはブランド)
 顧客や外部関係者(株主、納入業者等)、また従業員等が、サービス企業またはサービスそのものに対して抱く印象や概念。
(5)組織理念・文化
 サービス生産活動全体を導き統制する諸原理・価値観。
 同書で紹介されているノーマンの図はこんな感じ。

サービス・マネジメント・システム(1)

 「(1)と(3)、(2)と(4)は直接矢印で結ばれていないけれど、ダイレクトには関連しないのか?」という些細なツッコミを入れたくなる図ではあるが、この図で重要なのは、(5)組織理念・文化が中心に据えられている点であろう。つまり、サービス・マネジメント・システムは、組織の理念や文化、価値観、行動規範などによって強く規定されるということである。

 典型的な戦略論やマーケティング論によれば、市場ニーズを定量的に分析して、高い収益性が見込めるセグメントを特定し、そのセグメントにマッチした製品を提供する、というのが定石である。無論、サービス・マネジメントにおいても、こうした外部環境分析の重要性が薄れるわけではない。

 しかし、サービスは生身の人間を介して提供されるものである。よって、たとえ客観的に見れば”オイシイ”市場であっても、企業の価値観にマッチしないのに無理に手を出せば、やがてはサービスの担い手である社員が疲弊してしまうだろう。ノーマンのモデルは、この点を強調しているように思える(以前の記事「「組織の価値観」は顧客ターゲティングにも影響するかも―『バリュー・プロフィット・チェーン』」も参照)。

サービス・マネジメント・システム(2)

 ノーマンのモデルを、もう少し自分でも腑に落ちるような形でまとめ直してみた(上図)。ノーマンのモデルでは、「コンセプト」の中にサービスの具体化が含まれているものの、「コンセプト」はあくまでも基本的な考え方の柱であって、それを前述の4つの視点に沿って具体化していくフェーズは分けた方が自然な気がする。

 逆に、ノーマンは「サービス・デリバリ・システム」と「イメージ」を別物として扱っているが、すでに見てきたようにイメージ(ブランド)もサービスの一部であるから、それも含めて「サービス・デリバリ・システム」とするのが適切であると考える。

 また、「サービス・『マネジメント』・システム」というからには、PDCAサイクルの考え方を組み込みたくなる。サービス・デリバリ・システムを実現させるためには、様々な改革施策が求められる。顧客接点を担う人材のトレーニングや、サービスを提供するチャネルの再構築といったフロント系の改革に加え、サービス・プロセスを裏で支える組織体制やITインフラの整備などのようなバックヤード系の改革も実行しなければならない。

 これらの改革施策を体系的に整理し、優先順位をつけて実行計画の立案とリソースの配分を行うのが、「(6)システムを実現する施策立案」のフェーズである。その後、それぞれの改革施策が期待通りの効果を上げているかどうかを検証するのが、「(7)成果のモニタリング」だ。(7)の結果によっては改革施策の中身を修正しなければならないし、場合によっては(6)、(5)、(4)・・・と遡って見直す必要も出てくるだろう。

 重要なのは、(2)〜(7)のフェーズを全て、サービス・マネジメント・システムのコアである「組織の価値観」と連動させることである。確かに、外部環境分析から顧客ニーズを抽出し、それに対応する形で(2)〜(7)のフェーズを論理的に詳細化することは可能である。ただし、実際にはそれだけでは不十分なのであって、各フェーズでの意思決定に「組織の価値観」を用い、各フェーズから導かれる内容が「組織の価値観」と合致する状態を目指すべきだと思うのである。

 「じゃあ、具体的にどうするの?」っていうのは、今後継続的に検討する課題ということで(汗)。

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