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February 15, 2011

【第7回】製品を増殖させる―ビジネスモデル変革のパターン

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【パターンの概要と適用できるケース】
 過去6回は「顧客」に焦点を当てたビジネスモデル変革を取り上げてきたが、今日からは「製品」に焦点を当てたパターンを数回に渡って書いていきたいと思う。今回は、同じ素材をうまく活用して、類似の製品を多数生み出すパターンである。

【パターンが当てはまる事例】

(7)製品を増殖させる

《出版社》
 一番解りやすいのは、出版社の小説やマンガがドラマ化・映画化されるケースである。小説やマンガという素材から、ドラマ、アニメ、映画、DVDといった具合に、様々なコンテンツが派生する。そういえば、昨年最も売れた書籍である『もしドラ』も、今年はアニメ化、映画化されることが決まっているね。

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 また、3月に4年ぶりの新作が放送されるHTB(北海道テレビ)の「水曜どうでしょう」も、10年以上前の番組が未だにDVDとなって販売されているし(それでもコンスタントに10万枚ほど売れるという、とんでもないお化けコンテンツ)、番組の中に登場する個性的なキャラクターは、フィギュアなどのグッズにもなっている(「ディレクターの顔をした犬のぬいぐるみ」なんて作っているのは、おそらくこの番組だけだ)。

 このケースでしばしば起こるのが、「原作とドラマ・映画がかけ離れてしまっている」という問題である。好きな作家の小説が映画化されるので期待して映画館に足を運んだら、原作とあまりに違う内容になっていて失望したという経験がある人は少なくないだろう。

 途中で展開が解らなくなったら読み返せばいい小説とは違い、映像が次から次へと流れていってしまうドラマや映画は、シーンによってはどうしても展開を簡素化しなければならない。また、文章ならば読者の空想力に任せて自由に表現できるけれども、ドラマや映画の場合は、技術的に映像化が困難ならば別の表現で補うしかない。さらに、小説の作り手にその人なりの意図があるように、映像の作り手にもその人なりの意図がある。だから、両者が異なる作品になるのは、ある意味で必然である。

 よって、そもそも見る側の姿勢として、原作とドラマ・映画がほとんど同じになるのを想定すること自体が無茶な話なのかもしれない。こうした思い込みを顧客に抱かせないように、原作の売りとドラマ・映画の売りが異なるものであること、そしてその差異がどのようなものであるかということを、(物語の展開が先読みできない程度に)うまくプロモーションする術が供給側には必要なのだろう。

《日能研》
 こうした「製品増殖型」のビジネスモデルは、出版社やテレビ局の専売特許ではない。「シカクいアタマをマルくする」のキャッチコピーで知られる学習塾の日能研も、この変革パターンに該当する。少子化の影響により、大手の学習塾が統合・合併を繰り返している中で、「中学受験」だけに特化している日能研がそれなりにうまくやっているのは、この変革パターンを使っているからだと思う。

 学習塾が自社のコンテンツを活用して参考書などの書籍を販売するというのは、どこの学習塾でもやっている。日能研はさらに一歩進んで、IEインスティテュートというゲームソフト制作会社にコンテンツを提供し、NintendoDSのソフトも何本か出している。日能研はIEインスティテュートを通じて、ある程度のライセンス収入を得ている(販売数に応じた変動制になっているのか、最初の使用許諾の段階でまとまった金額をもらう契約になっているのかは定かではないが…)。

アイイーインスティテュート
2006-09-28
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 さらに、今年の正月にはフジテレビの特番である「平成教育委員会」のコンテンツ監修も手がけており、ここからもライセンス収入があったと考えられる(ただし、日能研にとっては自社の名前がゴールデンタイムに使われることで結構な宣伝効果があるから、ライセンス料は多少値引かれている可能性はある)。

 大人のちょっとした学習意欲を刺激するには、小難しい専門用語や公式を使わずに、頭を少しひねれば解けるレベルの問題がちょうど適している。大学受験に強い河合塾や東進ゼミナールなどの予備校だと、こうした問題は出しにくい。ごくまれに、東京大学などの数学の入試問題で、高校の学習内容を一切使わずに解ける”超”エレガントな問題があるけれども、そんな問題に食いつくのは一部の数学好きぐらいである(それこそ、数学が好きなビートたけし本人とか)。

 そういう意味で、「中学受験の問題」というのは、大多数の大人をターゲットとするのにうってつけであり、日能研が敢えて中学受験だけに絞って事業を展開している理由も合点がいくように思える。

《SHOICHI》
 出版社や日能研のビジネスモデルは、「コンテンツ」という複製が容易な製品だからこそできるのではないか?という疑問が聞こえてきそうなので、有形の製品でこの変革パターンを使っている事例を1つ取り上げたいと思う。

 流行の影響を受けやすいアパレルは、需要の読みを間違えるとたちまち大量の在庫を抱えてしまう。百貨店などでは、売れ残った製品を倉庫で保管しておき、初売りやプロ野球の優勝セールの時に店頭に並ぶ福袋に詰め込んで販売する、という方法をとっていることがある。

 まぁ、形を変えた在庫処分になるわけだが、単なる洋服から福袋を生み出している点では、製品を増殖させていると言えなくもない。だが、大阪にある有限会社SHOICHIという企業は、もっと面白いビジネスモデルを採用している。

 同社は、アパレルメーカーから売れ残った大量の在庫を買い取り、在庫品を組み合わせて新しいコーディネートを発案する。コーディネートした在庫品を人気モデルに着せて撮影し、インターネットで販売するという仕組みである。コートに使う秋冬用のベルトも、夏用のワンピースと組み合わせれば、ワンポイントアイテムとして販売可能だという。全く同じ製品であっても、組み合わせや活用シーンを変えることで、別の価値を訴求できるようになるというわけだ。

 有限会社SHOICHI
 LOVE FASHION OUTLET
 (同社が楽天市場に出店しているサイト)

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?

 ・元の製品との価値の違いを訴求するプロモーション
 これは、出版社やSHOICHIの事例で見てきた通り。

 ・増殖させた製品を販売するチャネルの開拓
 出版社の事例のように、製品を増殖させてくれる外部企業が既に販売チャネルを持っているならば問題にならないが、自社で製品を増殖させる場合は、増殖させた製品に合ったチャネルを独自に構築することが求められる。

 次の例は実現性がどのくらいあるか解らないけれど、仮にあるアパレルメーカーが複数のアパレルメーカーと協力してSHOICHIのようなビジネスを始めたとする。このアパレルメーカーは、既存の販売先とは全く異なる販売チャネルを自ら開拓しなければならない(なぜなら、既存の販売チャネルで売れなくて在庫になるのだから)。自社でWeb通販サイトやリアル店舗といったチャネルを持ったり、アウトレット専門の販売チャネルと連携したりする必要があるだろう。

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