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January 08, 2011

【第3回】水平展開で事業エリアを拡大する―ビジネスモデル変革のパターン

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【パターンの概要と適用できるケース】
 これはアンゾフの成長ベクトルで言うところの「新市場開拓戦略(=既存の製品・サービスを新市場に向けて提供する戦略)」であり、「モデルの変革」とまで言えるかどうかやや微妙ではあるが、敢えてパターンの1つとして挙げた。なぜならば、既存の製品・サービスをそのまま新市場に投入すればよいという簡単な話ではなく、既存市場と新規市場の差異に着目して、差異を克服するべく既存のビジネスモデルを変革する必要があるからだ。

【パターンが当てはまる事例】
 グローバルで事業を展開する企業は、多かれ少なかれこのパターンのビジネスモデル変革を経験しているはずだが、一番解りやすいのはマクドナルドだと思うので、今回の記事ではマクドナルドを取り上げよう(今回の記事を書くにあたり、パンカジ・ゲマワットの著書『コークの味は国ごとに違うべきか』を主に参照した。それ以外の参考文献は末尾に記載)。

パンカジ・ゲマワット
文藝春秋
2009-04-23
おすすめ平均:
地に足が付いている分析。
「フラット化する世界」との違い
セミ・グローバリゼーションの下での経営戦略を学ぶ
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 水平展開で事業エリアを拡大する際の最大のポイントは、「標準化とカスタマイズのバランスを取ること」である。事業を効率的に拡大し、規模の経済を追求するためには標準化が欠かせない。しかしその一方で、地域によって微妙に異なる顧客ニーズや地域に根付いている文化、社会的・政治的な制度の違いを取り込んだカスタマイズも求められる。コカ・コーラでさえ、国によって微妙に味は違うのである。

 ここで言う標準化やカスタマイズは、製品やサービスの機能・品質だけにとどまらず、各エリアで展開されるマネジメントにも及ぶ。マクドナルドがどのようにして標準化とカスタマイズのバランスを取っているのか、簡単なプロセス図で表現してみた。

(3)水平展開で事業エリアを拡大する

 基本メニューやグローバル規模のキャンペーンは、本社主導で決定される。最近で言えば、「マックカフェ」はグローバル規模のキャンペーンの一環である。これに対して、各国での出店にあたっては、直営店だけでなく現地のフランチャイズを活用することが多い。フランチャイズは事業のスピーディーな拡大を後押ししてくれるが、それ以上に、現地の顧客ニーズや消費習慣をよく理解した地場企業を取り込むことで、ローカライゼーションを達成することができるというメリットがある。

 さらに、本社が見過ごしていた現地固有のニーズが本社にフィードバックされ、新しい標準製品を生み出すこともある。マクドナルドのビッグマックやエッグマフィンは、実は本社が開発したものではなく、フランチャイズのアイデアが基になっている。

 フランチャイズの活用のように、他地域における販売チャネルの拡大を目的として、現地のパートナー企業を活用するという手法は実によく採られる。例えば、日本のメーカーがかつてヨーロッパに進出し始めた頃には、いきなり子会社を設立せずに、現地の販売会社をパートナーとするのが普通であった。そして、ヨーロッパのビジネスが成長してキャッシュがたまってくると、今度は販売会社を買収して自社の傘下に収めてしまうのである。

 話をマクドナルドに戻そう。マクドナルドの効率的なマネジメントを統制する様々なルールのうち、約20%は現地独自のルールであり、残りの約80%がグローバル・ルールとなっている。現地ルールの適用の表れの1つが、ローカルメニューの開発である。てりやきバーガーが日本独自のものであることはよく知られているが、フィリピンには甘いバーガーやスパゲティがあり(ちなみに、イタリアにはスパゲティメニューはない)、インドではヒンドゥー教徒に配慮して羊肉バーガーが販売されているという。

 また、マスコットのイメージを各国の文化と調和させるため、プロモーション内容もカスタマイズする余地が与えられている。ドナルド・マクドナルドは、フランスではマクドナルドワインを、オーストラリアではフィレオフィッシュの販促を行う。そして、北アメリカではクリスマスを祝い、香港では旧正月を祝う。

 原材料調達と店舗オペレーションはグローバル・ルールの世界である。原材料を安定的かつ低価格で仕入れることを目的に誕生したのが「世界共同仕入(グローバル・サプライチェーン)」だ。これは、それぞれの国が単独に調達を行うのではなく、複数の国と情報交換を行い、世界中から調達を行うものである。

 この調達を支えるシステムが、アメリカで開発されたデータベースソフト・GPIAである。GPIAは、90年代初頭に日本を含めた世界中の担当者が中心となって開発が進められた。GPIAを活用すると、産地別の原料価格、関税、輸送費などが一目で解るため、調達担当者は最もよい条件で大量仕入を行うことが可能になるというわけである。(※1)

【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
 事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?
 ・製品・サービスのうち、標準化する部分とカスタマイズする部分の明確な区別
 ・マネジメントの方法のうち、標準化する部分とカスタマイズする部分の明確な区別
 ・カスタマイズ可能な部分については、各地域に権限を委譲し、実行に必要な経営資源を付与
 ・各地域のニーズや文化、習慣などに精通した外部パートナーとの提携
 ・各地域の個別ニーズを本社にフィードバックし、グローバル規模で標準化できそうなものとそうでないものを識別する仕組みの構築
 ・地域間の違いを学習する機会の提供
 (マクドナルドにおけるGPIAの開発は、各国のニーズやオペレーションの違い、さらには文化的背景の違いを学習する絶好の機会になったと思われる)
 ・特定の地域に依存しないリスク分散の仕組みの構築
 (マクドナルドの事例では特に触れなかったが、特定の地域に依存した収益モデルになってしまうと危険である。リーマンショック以降にトヨタの業績が著しく落ち込んだのは、北米市場への依存度が高すぎたためでもある。渡辺捷昭前社長は、経営陣の中で北米市場の強化を推進していた一人であると言われており、逆にBRICsへの進出には慎重であった(※2))

 ちなみに、今回の記事ではグローバル規模での水平展開について触れたが、同一国内の他地域に進出する場合でも、類似のCSFが当てはまると考えられる。例えば、ウォルマートはどの店舗でも全く同じオペレーションを実施していると思われがちだが、アメリカ国内でも地域によって微妙に違うニーズに適応するために、品揃えやサービス、オペレーションをセミカスタマイズする方法を模索しているという。(※3)

>>【シリーズ】ビジネスモデル変革のパターンの一覧へ

《参考》
(※1)「~新世紀到来!~マクドナルドの新たな挑戦
(※2)渡辺捷昭「トヨタのものづくり哲学」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2007年8月号)

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(※3)ダレル・K・リグビー「「脱」標準化のマーケット戦略」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2007年7月号)

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コメント

図の発想はなかなかよいですね。ただ、もうひとつ、本質が理解できていないようです。この本に注目したことマルです。より研鑽してください。

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