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January 04, 2011
達成欲求より権力欲求の方が重要なことを暗示しているね―『コンピテンシー・マネジメントの展開』
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コンピテンシー・マネジメントの原典とも言われる名著(らしい)。コンピテンシーとは、一言で言えば行動特性のことである。コンピテンシーの研究は、採用時の知識や知能の高さが入社後のパフォーマンスを約束するとは限らないという問題認識から始まっている。今思えば「そんなの当たり前じゃないか?」という感じだが、ペーパーテストの得点やIQのスコアの代わりとなる定量的な指標はそれまで確立されていなかった。
コンピテンシーは、ハイパフォーマーと通常の社員との「行動の違い」に着目する。そして、ハイパフォーマー特有の行動特性を複数の因子に整理し、さらにそれぞれの因子にレベルを設けて、定量的な測定を可能にしたのである。例えば、ある人について、「Aというコンピテンシーのレベルは3、Bというコンピテンシーのレベルは4」といった評価を行うイメージだ。
同書には、幅広い職種に及ぶ多数のハイパフォーマーを対象とした研究から導かれたコンピテンシーが非常に細かく記述されている。詳細は同書に譲るとして、ここでは同書に挙げられている6つのカテゴリと20のコンピテンシーを一覧にまとめておこうと思う。
Ⅰ達成とアクションところで、冒頭でコンピテンシーは行動特性だと述べたが、同書によると、コンピテンシーには5つのレイヤーがあるようだ。
(1)達成重視(ACH)
(2)秩序、クオリティー、正確性への関心(CO)
(3)イニシアティブ(INT)
(4)情報探求(INFO)
Ⅱ支援と人的サービス
(5)対人関係理解(IU)
(6)顧客サービス重視(CSO)
Ⅲインパクトと影響力
(7)インパクトと影響力(IMP)
(8)組織の理解(OA)
(9)関係の構築(RB)
Ⅳマネジメント・コンピテンシー
(10)ほかの人たちの開発(DEV)
(11)指揮命令―自己表現力と地位に伴うパワーの活用(DIR)
(12)チームワークと協調(TW)
(13)チーム・リーダーシップ(TL)
Ⅴ認知コンピテンシー
(14)分析的思考(AT)
(15)概念化思考(CT)
(16)技術的/専門的/マネジメント専門能力(EXP)
Ⅵ個人の効果性
(17)セルフ・コントロール(SCT)
(18)自己確信(SCF)
(19)柔軟性(FLX)
(20)組織へのコミットメント(OC)
a.動因これらの5つのレイヤーは、個人が特定の行動に至るまでの一連のステップを表している。人はまず、何かをしたいと思い(a.動因)、持っている情報やノウハウ(d.知識)を活用して、行動に移す(e.スキル)。b.特性とc.自己イメージは、様々な状況の下で、その人の軸足に基づいた一貫性のある行動を担保する要素であると言える。
ある個人が行動を起こす際に常に考慮し、願望する、さまざまな要因。
(※筆者注:端的に言えば、根源的な欲求)
b.特性
身体的特徴、あるいはさまざまな状況や情報に対する一貫した反応。感情の自己コントロールやイニシアティブ(率先行動)は、かなり複雑な「さまざまな状況に対する一貫した反応」の例である。
c.自己イメージ
個人の態度、価値観、自我像。
[例]個人がほとんどの状況で効果的に機能できるという信念、または自己確信は、その個人の自己イメージの一部に含まれる。
d.知識
特定の内容領域で個人が保持する情報。
e.スキル
身体的、心理的タスクを遂行する能力。
著者によると、aとbは人格の中核をなすものであり、後天的な開発が困難であるのに対し、dとeは表層的な要素であるため、開発が容易であるという(cはその中間に位置づけられる)。
先ほどの6つのカテゴリや20個のコンピテンシーが、それぞれa~eのどのレイヤーに属するのかについては、残念ながら同書に解説がない。おそらく、複数のレイヤーにまたがっているものと思われるが、6つのカテゴリについて、私なりに5つのレイヤーとの対応をざっくりと(半ば強引なところもあるが)整理してみた。
「Ⅰ達成とアクション」、「Ⅲインパクトと影響力」、「Ⅱ支援と人的サービス」は、「a.動因」のレイヤーに位置づけられる。これらの3つは、心理学者デイビッド・マクレランドが提唱した人間の根源的な3つの欲求=「達成欲求」、「権力欲求」、「親和欲求」に対応している。
「Ⅵ個人の効果性」のうち、セルフ・コントロール(SCT)は感情の制御に関するものであり、「b.特性」のレイヤーと関連が深い。SCT以外のコンピテンシー、特に自己確信(SCF)については、「c.自己イメージ」のレイヤーと結びつくと考えられる。
「d.知識」については、コンピテンシー=行動特性という定義からすると、厳密にはコンピテンシーの範疇ではないんじゃないか?という疑問はあるのだが、あえてこのレイヤーに該当するものを挙げるならば、「Ⅴ認知コンピテンシー」の技術的/専門的/マネジメント専門能力(EXP)であろう。
「e.スキル」に該当するものは、「Ⅴ認知コンピテンシー」と「Ⅳマネジメント・コンピテンシー」の2つである。前者は思考に関するものであり、後者は実行に関するものだ。2つのカテゴリが両輪のように機能することで、意図した行動が現実のものとなる。
「こんなパズルみたいなお遊びをして、一体何が面白いんだ?」と思われる方がそろそろ現れるかもしれないが、もうちょっと我慢してお付き合いください…。同書が特徴的なのは、各コンピテンシーの内容とレベルが詳説されているだけでなく、代表的な職種(技術職/専門職、営業、支援・サービス従事者、管理者)について、20のコンピテンシーのうち本当に重要なものはどれなのかを、実証研究に基づいて明らかにしている点だ。(※)
興味深いことに、4つの職種のうち、技術職/専門職を除く3つの職種において、「(7)インパクトと影響力」が最も重要なコンピテンシーであるという結論が出ている。支援・サービス従事者については、その職務内容からして、「Ⅱ支援と人的サービス」にカテゴライズされている「(5)対人関係理解」や「(6)顧客サービス重視」が上位に来るようにも思えるが、やはり1位は「(7)インパクトと影響力」なのである。なお、技術職/専門職についても、1位は「(1)達成重視」だが、2位には「(7)インパクトと影響力」がランクインしている。
先ほど、「Ⅰ達成とアクション」、「Ⅲインパクトと影響力」、「Ⅱ支援と人的サービス」は、マクレランドが提唱した人間の根源的な3つの欲求=「達成欲求」、「権力欲求」、「親和欲求」に対応していると述べた。マクレランドは、達成欲求の研究者として知られているが、実は「キャリアで成功するために重要なのは達成欲求ではなく、権力欲求である」といった主張を展開している。同書のコンピテンシー研究は、マクレランドの主張を裏付けるものでもあるような気がするのである。
(※)もちろん、個別の企業においてコンピテンシー・マネジメントを導入する際には、同書に載っている職種別のコンピテンシーをそのまま適用するのではなく、企業の戦略や業務特性に応じて固有のモデルを構築する必要がある点は強調しておきたい。
《追記》
ちなみに、同書でハイパフォーマーとそうでない人のコンピテンシーを見極めるための調査方法として紹介されているBEI(Behavioral Event Interview:行動結果面接)については、以下の書籍でもっと解りやすく説明されているので参考までに。
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コメント
Posted by: 鈴木秀美 | February 04, 2011 17:43