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October 18, 2010

サステナビリティ=環境経営になってない?−『戦略の実現力(DHBR2010年11月号)』

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 これで最後。この間も書いたけれど、普通の戦略論で特集を組むのではなく、今日紹介する論文のテーマになっている「サステナビリティにおける戦略」みたいに、もうちょっとスコープを絞って特集を組んでほしいんだなぁ…。

サステナビリティの緊急課題(デイビッド・A・ルービン他)
 サステナビリティは新たなメガトレンドであり、その経過をある程度予測することができる。過去にメガトレンドで成功を収めた企業の対処法について理解すれば、経営者がこの新たなメガトレンドで競争優位性を獲得するために必要な戦略とシステムを構築するのに役立つだろう。
 著者は「サステナビリティ(持続可能性)が最新のメガトレンドだ」と言っているけれど、サステナビリティ自体は目新しいコンセプトじゃないよな。古くはアルフレッド・チャンドラーが「ゴーイング・コンサーン(going concern:継続企業の前提)」という言葉を提唱して、企業は社会と共存し続ける1つの制度でなければならないと主張したし、数年前から頻繁に登場するCSR(社会的責任)という言葉にも、似たような意味が込められている。

 日本の場合は、江戸時代において近江商人が既に、「売り手良し、買い手良し、世間良し」という「三方よし」の原則を打ち出していた。さらに、明治時代に殖産興業の流れで近代的な企業が登場した時も、戦後の経済復興の中で現代の大企業へとつながる数々の企業が誕生した時も、多くの起業家は企業が社会の中で生かされる存在であることを認めており、社会との共存共栄を目指していた。

 それがたまたま、21世紀になって「地球資源の浪費」や「地球温暖化ガスの増大」が問題視されるようになり、その問題がたまたま「サステナビリティ」という言葉で語られているだけのことであって、「企業は社会との共存を目指して、社会からの要請を企業経営に取り入れる必要がある」という根っこの部分は何も変わっていないはずなのだ。

 だから、ゴーイング・コンサーンとかCSRとかサステナビリティとか、言葉は何だって構わないのだが、どの言葉を使うにせよ、天然資源の浪費や温暖化ガスの増大だけにフォーカスを絞り込んでしまうのは適切ではないだろう。

 本来であれば、あらゆる社会的要請、すなわち基本的人権の擁護、生物多様性の維持、異なる宗教や民族、政治体制に対する理解、国民のアイデンティティと深く結びついた伝統や歴史の尊重、少子化と高齢化が人々の不幸にならないような社会の構想など、様々な視点を包括的に論じる必要がある、と思うのである。

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グリーン成長に向けた製品戦略フレームワーク(グレゴリー・アンルー他)
 IBMの最近の調査によれば、エグゼクティブの3分の2はサステナビリティを増収要因と見なし、2分の1は環境イニシアティブが競争優位をもたらすと考えていることが明らかになった。過去10年間の間に企業のマインドセットと業務慣行に生じた劇的な変化は、環境責任が成長と差別化の両方を支えるプラットフォームになりうるという認識の高まりを反映している。
 先ほどはサステナビリティをめぐる総論的な話を長々としてしまったが、今月号のDHBRでは「サステナビリティ≒環境経営」ということになっているようなので、環境経営に絞ったコメントを少しだけ書いておこうと思う。

 先ほどの論文もこの論文も、内容的には非常によく似ている。両論文は、企業が環境負荷を低減し、低エネルギーな経営を実現する上で着手すべき、製品開発プロセスやマネジメントプロセスの変革のポイントについて書かれている。

 ただし、本当にポイントだけが列挙されているという印象であり、正直なところ、2年ほど前のマイケル・ポーターの論文の方がずっと詳しい。「競争優位のCSR戦略」(DHBR2008年1月号)では、ポーターお得意のバリューチェーンを使って、グリーン・エコノミーにおける社会的要請をバリューチェーンに組み込みながら、競争優位を再構築する方法が紹介されている。

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クリーンテク経済を活性化させる(マーク・W・ジョンソン他)
 我々が新しいシステムについて考察する際のフレームワークは、相互に依存し、お互いに強化し合っている次の4つの構成要素から成り立っている。

 (1)システム転換を可能にする技術
 (2)革新的なビジネスモデル
 (3)市場に導入するために慎重に作成された戦略
 (4)政府の好意的な政策

 クリーン・テクノロジーに関する昨今の議論では、ビジネスモデルと市場への導入について十分に取り上げられておらず、4つの構成要素を統合して全体像をつくり出すことに至っては、ほとんど語られていない。
 イスラエルにおける電気自動車の取り組みを例にとって、グリーン産業が産業として成立するための要件を、上記のように4つに絞って論じている。またしてもポーターの話で恐縮なのだが、この4つを見ていて、ポーターの「ダイヤモンド・モデル」を思い出した。

 「ダイヤモンド・モデル」とは、ある産業クラスター(産業集積)が競争力を持つための4条件をモデル化したものである。
(1)要素条件
 熟練労働者やインフラストラクチャーなど、任意の産業で競争するのに必要な生産要素に関するポジションを示す。

(2)需要条件
 その産業の製品やサービスに対する国内市場の需要の性質を示す。

(3)関連産業・支援産業
 国際的な競争力を持つ供給産業とその他の関連産業が国内に存在するか否かを示す。

(4)企業戦略・構造・競合関係
 企業の設立・組織・経営や、国内での競合関係の性質を左右する国内の条件を示す。
(マイケル・ポーター著『競争戦略論供戮茲蝓

マイケル・E. ポーター
ダイヤモンド社
1999-08
おすすめ平均:
名作である戦略論から少し派生した内容
けっして古くならない「古典」
最後の章は「米国の投資システムの破綻」。ほとんど10年前に書かれたとは思えない洞察力です。
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 ポーターによると、政府はこれらの4条件を底上げする政策を打ち出す役割を担う。例えば、(1)要素条件に関しては「熟練労働者の能力向上に対する投資」、(2)需要条件に関しては「顧客の初期購入を刺激する減税や補助金」といった政策が考えられる。

 マーク・W・ジョンソンが掲げた4条件は関連産業や競合関係という視点が含まれていないが、ポーターの4条件にだいたい対応している。

 (1)システム転換を可能にする技術=(1)要素条件
 (2)革新的なビジネスモデル=(4)企業戦略・構造・競合関係
 (3)市場に導入するために慎重に作成された戦略=(1)要素条件&(4)企業戦略・構造・競合関係
 (4)政府の好意的な政策=ダイヤモンド・モデルにおける4条件をバックアップする

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コメント

 金型屋として手軽なCSRは素材ををSLD-MAGICにすることだよな。

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