※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
October 27, 2010

スライウォツキーの簡略版みたいな感じ−『ビジネスモデルを見える化するピクト図解』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
板橋 悟
ダイヤモンド社
2010-02-19
おすすめ平均:
実践的でわかりやすいビジネス書
むむ、ちょっとシンプル過ぎるかな。。
ピクト図がかけるくらいに分析できれは、もう答えは自ずから出てくる。
posted by Amazon360

 タイトルの通り、ビジネスモデルの書き方を解説した本。ビジネスモデルの書籍については、エイドリアン・スライウォツキーの著書を何度か取り上げたが、本書はその簡略版といった感じだ。

 スライウォツキーの戦略論は面白くて好きだ−『プロフィット・ゾーン経営戦略』
 今年印象に残った本ベスト10(第1位→第5位)(※2008年の記事。第2位に『ザ・プロフィット』を挙げた)

 スライウォツキーが20以上のビジネスモデルを紹介しているのに対し、本書に載っているのはたったの8つ。このぐらいなら大した数じゃないから、以下にまとめてみた。
(1)シンプル物販モデル
 ビジネスの主体が商品やサービスを製造・開発し、ユーザーに提供してその対価を受けとるという、ビジネスの基本形ともいうべきモデル。

(2)小売モデル
 商品をつくらず、仕入れて売るだけのビジネスモデル。

(3)広告モデル
 商品自体の価格を抑えるかあるいは無料にして、広告で大きく利益をあげるモデル。

(4)合計モデル
 消費者を呼び込むための商品を用意し、「ついで買い」を狙うモデル。(※筆者注:スーパーマーケット、100円ショップ、ユニクロなどがこれに該当する)

(5)二次利用モデル
 商品を2度、3度と再利用するモデル。再利用する際は開発コストを抑えられるというメリットもあり、「1粒で2度おいしい」利口なビジネスモデル。(※筆者注:出版社が雑誌の連載小説を単行本化するケースなどが該当する)

(6)消耗品モデル
 商品本体の購入の敷居を下げ、付属する消耗品やメンテナンスにお金を使いつづけてもらうことで徐々に収益率を上げていくモデル。

(7)継続モデル
 商品やサービスを長期間かつ定期的に使いつづけてもらい、一定の売上を確実にあげるビジネスモデル。

(8)マッチングモデル
 商品・サービスを提供する側とユーザーとを仲介するビジネスモデル。
 本書は単なるビジネスモデルの列挙にとどまらず、ビジネスモデルの「変革パターン」にまで踏み込んでいる点が特徴的だ。パターンの詳細はここでは省略する(というか、さすがにそこまで書くのは面倒くさい、汗)が、本書の中ではアスクルの文具通販ビジネスの発展を例にとって、各パターンが解説されている。

 ただ、アマゾンのカスタマーレビューにもあるように、全体的にシンプルにまとまりすぎている印象は否めない。もちろん、ビジネス全体を俯瞰するためにはシンプルに捉えることも重要だが、モデルを細かく記述することで得られるインサイトもあることは付け加えておきたい。

 例えば、(6)消耗品モデルの代表例であるプリンタ事業のビジネスモデルを、同書の方法にならって絵にすると、左図のようになる。本体の価格を下げる代わりに、インクカートリッジの価格を高めに設定して、利益を補填していることはよく知られている。

プリンタのビジネスモデル

 このビジネスモデルの重要成功要因(CSF:Critical Success Factor)を左図から読み取るならば、「とにかくインクカートリッジは純正品を買ってもらうこと」に尽きる。プリンタメーカーは、純正品以外のインクカートリッジをセットしても本体が動かないような仕様にするなど、顧客を外に逃がさないための策を講じる。

 しかし、左図には販売チャネルが記載されていない。そこで、左図に販売チャネルを付け加えてみる。本体の主要な販売チャネルは家電量販店である。一方、インクカートリッジは家電量販店に加えて、プリンタメーカーの直販サイトでも購入できるし、アスクルのような文具販売業のサイトからも入手することができる。

 販売チャネルを加えた右図からは、消耗品モデルのもう1つのCSFが見えてくる。顧客の立場からすると、消耗品はなくなったらすぐに手に入れられないと意味がない。よって、メーカーにとっては、「消耗品の販売チャネルを幅広く確保すること」も大切なポイントとなる。

 となると、右図には販売チャネルとして重要なものが抜けてはいないだろうか?そう、コンビニである。欲しいものがすぐに買える場所となれば、コンビニに勝るものはない。自宅で年賀状を印刷している時に、突然インクが切れたとする。わざわざ家電量販店に出向いたり、商品が届くまでに最低でも1日かかるWeb通販サイトを使ったりするよりも、すぐにでもコンビニでインクを買いたいと思うに違いない。しかし、現実には、インクカートリッジを取り扱っているコンビニは非常に少ない。

 では、なぜコンビニではインクカートリッジを取り扱っていないのだろうか?1つ目の理由として考えられるのは、各メーカーのインクカートリッジを取り揃えようとするとあまりに種類が多くなるために、コンビニのような小規模店舗では在庫を抱えきれない、という理由である。

 この点については、メーカー側がどのプリンタでも使えるインクカートリッジを増やすことで、種類を抑えることができる。また、コンビニでは最新モデルのプリンタに対応したインクカートリッジを中心に販売し、古いプリンタ用のインクカートリッジはメーカー直販サイトでのみ販売する、という棲み分けも考えられる。

 上記の問題がクリアされたとしてもなお、コンビニがインクカートリッジを置かない理由があるとしたら何だろうか?もう1つ想定されるのは、コンビニが商品の「回転率」を重視するということだ。日用品を扱うコンビニは、商品を早く回転させれば利益が増加すると考える。

 インクカートリッジは頻繁に買うものではないから、他の商品に比べると回転率は劣る。しかし、割高な価格からも解るように、利幅は非常に大きい。よって、不良在庫を出さないようにうまく販売すれば、それなりに利益が出るのではないだろうか?コンビニ側が「商品の回転率」ばかりに着目せず、「売場面積あたりの利益額」も考慮すると、コンビニの陳列棚にインクカートリッジを並べる余地が生まれるようにも思える。

 と、結論がはっきりしない自分勝手な文章をつらつらと書いてきたわけだが、要するにビジネスモデルのレベル感を変えることで、違った成功ポイントが見えてくるということを最後にもう一度強調しておきたいと思う。
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする