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October 25, 2010

新人・若手には「会社にとってのリスクは低いが、完結した仕事」を任せよう(2)

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 (その1からの続き)
 新人・若手には「会社にとってのリスクは低いが、完結した仕事」を任せよう(1)

 営業担当者の仕事を前回の記事で示した4つのフェーズに当てはめるならば、理想的なパターンは次のようになるのではないだろうか?

第1フェーズ:新規の小口顧客
 入社してからしばらくは新規の小口案件を担当する。小口であるから、失注が多くても会社へのダメージは少ない。小さな商談を最初から最後までやりきることで、営業活動のコツをつかんでいく。また、この時期に商談の敗戦を多く経験することは、メンタルの強化にもつながる。

第2フェーズ:既存の小口顧客
 第1フェーズで獲得した小口顧客を維持し、継続取引へと持ち込む。小口とはいえ、リピート受注が続けば会社にキャッシュを落とすことができるようになる。このフェーズでは、顧客と密なリレーションを構築し、顧客を深く理解することが求められる。そうした活動の中で、それぞれの顧客のビジネスポテンシャル(=将来の受注金額の見込み)に伸びしろがあるか否かを見極めることも大切である。

第3フェーズ:既存の大口顧客
 第3フェーズでの主要な役割は、前フェーズの小口顧客のうち、ビジネスポテンシャルが大きい顧客を大口顧客へと押し上げることである。小口の継続案件を受注し続けるより、1回の受注金額を拡大させる方が難易度が高い。これまで購入してもらっていた商品に、関連商品やサービスをつけて商談規模を膨らませようとするならば、顧客の潜在ニーズをじっくりと見極める必要があるからだ。大口顧客化に成功すれば、顧客と太いパイプが形成され、会社に多額のキャッシュを落としてくれるようになる。

第4フェーズ:新規の大口顧客
 第4フェーズでは、最も営業工数がかかり、最も難易度が高い新規の大口顧客にチャレンジする。市場におけるアーリーアダプター(早期採用者)のような、新商品を一気に市場に浸透させるための突破口となる顧客や、競合を打ち負かすために会社として絶対に獲りたい顧客を狙う。これは非常にリスクが高い仕事ではあるが、会社の将来を左右する重要な仕事である。

 第1フェーズをすっとばして、第2〜第3フェーズで細切れの仕事をさせると、社員が思うように成長しない。第2〜第3フェーズの顧客は既存顧客であるから、一からリレーションを構築する大変さが若手には伝わらない。また、既存顧客の商談はルーチン化している仕事も多くなってくるから、仕事のやり方を自ら設計する機会も少ない。この状態のまま第4フェーズの仕事をやらせようとしても、社員は勘所が解らないのである。

 大口の優良既存顧客を多数抱えている企業であれば、それでも収益を上げ続けられるかもしれない。しかし、顧客のバーゲニングパワーが強く、顧客がいつ離反するか解らない場合は、悠長なことを言っていられなくなる。

 先日、二次請けのSIerに勤める私の知人が、次のような悩みを語ってくれた。「うちの会社は大手SIerの下請けだから、元請けとうまく交渉すれば仕事は何とかもらえる。でも、うちは二次請けの中でも力が弱く、自分の下についている若手はいつまでも小さいプログラムしか開発できない。だから、開発スキルがなかなか上がらないし、まして、プロジェクトマネジメントのスキルを身につけようとか、ユーザ企業に積極的に営業をかけて案件を取りに行こうといった発想が生まれてこない。

 下請けだから、仕事を切られる時は本当にあっさりと切られる。仕事を切られた後に、若手がやっていけるのかどうか、見ていてとても心配になる」

 この会社の1つの方向性として考えられるのは、大手SIerがあまり攻めていない中堅企業から元請けで開発案件を受注することだろう(それでも最近は、どこの大手SIerも大手企業相手のビジネスだけでは苦しいので、中堅企業に食い込もうとしており、彼らとの競争は避けられない)。そして、二次請け案件の中でも特に小さな仕事しかやっていない新人・若手を積極的に元請け案件に移し、ある程度まとまった規模のプログラム開発を任せることではないだろうか?

 もちろん、営業と違ってシステム開発は失敗の許容度が低い。ただ、大手企業のように絶対に失敗が許されないような大規模案件に比べれば、中堅企業の場合は多少失敗をしても、顧客との交渉次第でリカバリするチャンスがあるように思う。そうした失敗を経験することは、開発プロセスのマネジメントスキルや顧客とのリレーション構築力を習得する機会でもある。中堅企業相手のビジネスは、会社にとってはそれほど売上・利益貢献をしないかもしれないが、新人・若手社員にとってはこの上ない学習ステージを用意してくれる。

 前回の記事で、第1フェーズの仕事は「失敗しても会社にとって痛手が少ない、小規模な仕事」と書いたが、これは決して、大勢に影響が出ないように仕事を細分化して任せればよいという話ではない。大勢に影響は出ないが、ある程度完結した仕事を担当させる必要がある。そうした仕事を通じて、新人や若手は、失敗を受け入れる度量や、仕事を自分一人でやりきることの難しさと責任を学習していくものだと思う。


《2011年3月31日追記》
 バランス・スコア・カード(BSC)で有名なロバート・キャプランとデイヴィッド・ノートン2人の著書『BSCによるシナジー戦略』を読んでいたら、新入社員ではないが、新人マネジャーを育成するGEのユニークな制度についての記述を発見したので、紹介しておきたいと思う。
 GEの元CLO(Chief Learning Officer:最高学習責任者)であるスティーブ・カーは、製品ラインと地理的多様性によって、GEが世界中の「ポップコーン工場」で働く若く有望なマネジャーにユニークな機会をどのように提供できるかについて述べている。「ポップコーン売り場」とは、その成否がGEの年次営業損益の最初の3桁(※これは誤訳で、下3桁が正しい)のいずれにも影響を与えないほどの小規模事業のことである。GEはこれらの事業のマネジャーの業績に関して集約した情報を利用し、誰を昇進させるべきか、誰に追加投資を行うべきか、世界中で経営されているGEのさまざまな別の子会社におけるより大きな責任を誰に与えるべきかといったことを評価している。
 「ポップコーン工場」にいる若手のマネジャーは、担当事業が小規模であるとはいえ、その損益に責任を負っているという点では、「完結した仕事」に従事していると言ってよいだろう。GEでは、「小規模の完結した仕事」で一通り事業をマネジメントできる能力を身につけながら、段々と大きい事業のマネジメントを担うように、キャリアパスが設計されている。

BSCによるシナジー戦略 組織のアラインメントに向けて (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)BSCによるシナジー戦略 組織のアラインメントに向けて (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
ロバート S キャプラン デビッド P ノートン 櫻井 通晴

武田ランダムハウスジャパン 2007-10-12

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