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October 01, 2010

この本を読んで、前提が崩れたマネジメント手法を整理してみた−『経営の未来』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
ゲイリー ハメル
日本経済新聞出版社
2008-02-16
おすすめ平均:
主体性と創造性を発揮するための経営とはどうあるべきかのヒントを提供
訳がひどい。。。
混沌と階層化
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 『コア・コンピタンス経営』で知られるゲイリー・ハメルの最新作(と言ってももう2年前だが)。2006年6月号のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに掲載されていた「いまこそマネジメント・イノベーションを」という論文を読んだ時は「マネジメント・イノベーション」の意味がよく解らなかったのだが(汗)、この本を読んだら大分ハメルの意図するところが理解できた気がする。

ダイヤモンド社
2006-05-10
おすすめ平均:
久々の感動企画!
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 ここ100年あまりの間に、世界中の企業家や経営学者、コンサルタントによって様々なマネジメントの手法が生み出されたが、実際のところその多くは19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて考え出されたものであるとハメルは指摘する。20世紀初頭と言えば、製造業に大量生産方式が取り入れられた頃だ。当時と現在では事業環境が比べものにならないほど違っていることに気づかない人はいないが、当時のマネジメント手法をほとんどそのまま使い続けていることに異を唱える人は少ない、とハメルは警告している。

 同書は、生物学、心理学、政治学、宗教学、社会学などの最新のトレンドを参考にしつつ、これからのマネジメントのあり方を提言するものである。旧来のマネジメントを刷新するという意味で、ハメルは「マネジメント・イノベーション」という言葉を使っていたんだな。

 この本を読みながら、20世紀に誕生した主なマネジメントの手法について、その手法が登場した時点で当然のこととして受け入れられていた「前提」と、時代が変化して前提が崩れたことによって生じている「問題」を列挙してみることにした。

階層別組織
【前提】一部の優秀な人材が合理的な規則に従い、上意下達で指揮命令を下せば、最も能率的に仕事が行える。
【問題】組織の規則はかつては合理的だったかもしれないが、環境の変化とともに合理性を失うことがある。また、管理職は昔のやり方で成功して昇進した人であるから、経験の罠に陥って今の時代には全く適さない意思決定をする可能性がある。

人事部による採用・配置・異動
【前提】人材の処遇については、人材評価に関する専門的知見を有する独立した機関が決定するのが合理的である。
【問題】人事部が膨大な社員の能力をつぶさに把握するのは困難になりつつある。なお、政治の場では、住民が首長を選び、国民が政治家を選ぶといった具合に、下の人間が上の人間を選ぶことになっているが、企業では一般社員が管理職を選ぶことができない(もちろん、国民主権の政治と、株主資本主義とも言われる企業を同列に論じることはできないが、株主でさえ企業の管理職を決めることはできない)。

マネジメントのPDCAサイクル
【前提】計画が適切であれば、後は実行するのみ。最後に確認をして、次に向けた修正を施せば足りる。
【問題】定型化された日常業務であればPDCAサイクルを回すことができるが、計画の不確実性が高まるにつれて、PDCAサイクルはサイクルとしての型をなさなくなる(計画と実行を明確に切り離すことができないし、そもそも何をもって「計画」と呼ぶのかさえ曖昧になる)。

事業部制
【前提】意思決定の権限については、本社に集中させるより各事業部に分散させた方が望ましい。
【問題】確かに意思決定についてはうまくいったが、一方で各事業部が肥大化したことにより、それぞれの事業部が独自に抱えるスタッフ部門の重複が目立つようになった。また、事業部間の「組織の壁」が大きくなり、イノベーションにつながるような部門横断的な活動が難しくなった。

予算配分
【前提】各部門の将来の予算は、過去の延長線上で決定することができる。予測が困難なイノベーションについては、研究開発部門に一定の予算をつけておけば足りる。
【問題】イノベーションは研究開発部門から生まれるとは限らない。ある事業部で新しいイノベーションの種が発見されても、硬直的な予算配分制度がイノベーションへの投資を阻んでしまう。

トップによる戦略プランニング
【前提】戦略立案に必要な知見と情報はトップに集まっているから、トップが戦略を立てるのが最も効果的である。
【問題】トップが少人数のグループで戦略的意思決定を行う場合、お互いの意見や価値観が似ているために、凡庸な戦略しか出てこないことがある。また、戦略立案に必要な情報は、往々にして現場に転がっている。

ブランド・マネジメント
【前提】メーカーが流通チャネルやマスメディアに働きかければ、メーカーの意のままにブランドを構築することができる。
【問題】流通チャネル(特に小売業)がバイイングパワーを急速につけてきており、メーカーの思い通りに動くとは限らない。また、ソーシャルメディアの台頭によって、メーカーが直接影響を及ぼせるメディアの割合が相対的に低下している。

標準作業分析
【前提】製造ラインように反復可能性が高い作業については、標準作業を規定して作業員がそこから逸脱しないようにトレーニングすれば、生産性が飛躍的に向上する。
【問題】製造ラインに従事する社員の割合は年々下がっている。経済のサービス化が進むにつれて、サービスの生産性の方が重要になる。にもかかわらず、未だにサービスの業務プロセスは属人的で非効率なままである。

会計制度
【前提】会計制度自体が、製造業を意識して設計されている。
【問題】会計制度の見直しは何度か実施されているものの、いずれもコーポレートガバナンスの観点からの見直しである。サービス経済、知識経済に適合した会計制度の構築は進んでいない。人的資本、知的資本、顧客資本など、目に見えない資本をどのように計上するかについて、コンセンサスが取れていない。

競争戦略
【前提】「ファイブ・フォーシズ・モデル」によって魅力が高い業界を選択し、適切なポジションを確保すれば、競合他社に打ち勝つことができる。
【問題】どの業界でも参入障壁が下がり、買い手がバイイングパワーを強めているから、魅力的な業界などそうそう存在しない。そもそも、「業界」の名前にこだわりすぎると、本当に重要な競合他社を見誤る(書店がアップルを競合他社として見なす日がくると、業界の誰が予測しただろうか?)。

バリューチェーン分析
【前提】付加価値の高いプロセスを自社で握り、それ以外のプロセスをアウトソーシングすれば、有利に事業を展開できる。
【問題】自社のケイパビリティには限りがあるから、ある程度付加価値の高いプロセスについても外部企業を活用せざるを得ない。結果的に、自社と外部企業は複雑で緊張したネットワークを形成することになり、自社が外部企業をコントロールできない状況が出てくる。さらに、時代によって付加価値がバリューチェーン内を移動する可能性を考慮していない。

知的財産管理
【前提】自社にとって重要な技術やノウハウは、法的なスキームを使えば保護することができる。
【問題】どんなに法的なルールを作ったところで、インターネットがそのルールを打ち破ってしまう。

 これ以外にも挙げていけばキリがない。こうした問題を解決する新しいマネジメントの手法を編み出すことが今後は大事になるね。では、ハメルはどのようなマネジメント手法を考案しているのか?続きは次回ということで。

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